2004年08月22日

ドラッカーに学ぶマネジメント入門

ドラッカーに学ぶマネジメント入門」を読む。ドラッカーの入門書のようなものだが、ドラッカーがさまざまなところで語っていることがうまくまとめられている。
マネジメントを「仕事のマーケティング」という観点から整理しているのもわかりやすい。ドラッカーの視点はつねに「顧客」からスタートし、顧客が望むもの、欲するものを生み出すことをマーケティングの基本と説くが、実はマネジメントでもその考え方は同じだ。マネジメントは従業員から始まる。従業員各々の欲するところ、強みを組織化していくことが「仕事のマーケティング」なのだ。

知識を基盤とする組織は「上司」や「部下」といった縦の関係で成り立つ組織ではないとドラッカーは言う。ドラッカーは知識組織の理想系をシンフォニー・オーケストラを例にとって語ってる。

「第一バイオリンの奏者は、ハープ奏者の上司ではない。同僚である。ハープのパートはあくまでもハープのパートであって、第一バイオリン奏者や指揮者から委譲されるものではない。
 オーケストラは、さまざまの楽器によって音楽という成果を創造する知識組織である。それは、さまざまな楽器の演奏者という専門家から成る専門家集団でもある。」 「それぞれの演奏者はオーケストラという組織によらなければ交響曲を演奏することはできないが、オーケストラという組織は個々の演奏者なしでは結成できず、いずれの場合も交響曲の演奏という成果を実現することはできない。その意味で、演奏者という個人とオーケストラという組織は相互依存関係にある。」

「指揮者は、よりよい演奏を創造するというオーケストラの成果を実現するために全体の調整をはかり、リードする場合もあるが、彼がトップというわけではなく、専門家という点では、それぞれのパートの担当者と同格である。つまり、オーケストラは専門的な組織であり、上下関係はまったくない。それぞれが自分のパートをこなしているうちに、シンフォニーの演奏という成果が生み出されていくのである。」
(P.135~136)

オーケストラというのは実に巧い比喩だと思う。「縦」の命令と服従の関係ではなく、「横」の関係。それは個々人が上司、部下ではなく「パートナー」である。さらに個々の「パートナー」は専門家であり、それらの専門性が一つの成果に向けて相互補完の関係をつくりあげる。このような組織形態は確かに理想だ。

オーケストラでは「成果」がわかりやすいが、会社組織においてはさもすると各従業員が「成果」を見失ってしまうことも多い。仕事に人を合わせるのではなく、人を仕事に合わせなければいけないとドラッカーは語るが、人を仕事にあわせるためには、仕事に対しての共通の価値観と目標を全従業員が理解しなければならない。トップマネジメントの役割とはオーケストラの演奏曲のような誰もが理解できる明確な目的、目標を持たせること。そして「成果」とは何かを理解してもらうこと。その語りかけだろう。

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categories [ マネイジメント ] 2004/08/22 18:36