下がり続ける時代の不動産の鉄則

下がり続ける時代の不動産の鉄則

下がり続ける時代の不動産の鉄則

べつに家を買おうなんてこれっぽっちも思っていないのだけど、仕事で、クライアントから「共通言語」をつくりたいので読んでおいて下さいと、この本を含む3冊の本が指定された。ということでまずはこいつ。

書かれてある内容はおそろしく当たり前のことばかりのような気もするのだけど、マスメディアを賑わす言葉は確かに世の常識とは少しずれてるような気がする。
「ピークに比べれば、かなり値下がりした。今が下げのピークだろう」「一部の地域では値が上がりはじめている。不動産は今が買いどき」
そんな言葉がまことしやかに囁かれる。

このような噂をを著者は一掃する。
著者は、不動産の価格下落の真因は、

日本の地価が90年以降、下落を続けているのは、不況による影響は多少あるが、より根本的な要因は「不動産を取り巻く環境が構造的に変化してしまった」こと


と説明する。

そのロジックは明快だ。

  • 小子化、高齢化の加速。日本人口は2006年頃をピークとして減少に転じていくといわれている。50年後には日本の人口は1億人の大台を割り込む可能性がある。
  • 既に日本では、住宅数が総世帯数を上回って空家数が600万戸近くになり、空家率は11.5%。9戸に1戸は利用されていない状況となっており、「家」あまりが顕在化している。
  • 経済のグローバル化や、日本における企業活動のコストの高さを要因として、より低いコストで生産できる地域で企業活動を行う企業が増加。企業が日本に保有する土地を売却したり、賃貸に切り替えるケースが増加。

こういったマクロ的要因を考えれば、不動産が値上がりしていくことはおかしい。すでに日本では「不動産」は余っている状況であり、今後の不動産価格は完全に二極化していくと結論づける。
当たり前といえば当たり前だ。しかし当たり前のことが当たり前にならないのが不動産業界の不思議だ。確かに、家を購入するにあたって、このようなマクロ的視点からきちんとリスクを分析して判断している人は少ないような気がする。

貴重な場所の選定は、「面」ではなく「ポイント」で峻別される時代だ。
その結果、利用目的にピッタリと合致しない不動産は、容赦なく選別され、振り落とされて、価格は驚くほどの低い価格となる。需要の二極化が起きて、それに歩を合わせるように価格の二極化が進むという市場構図になっている。


都道府県別に人口の転入や転出の状況を見ても、

首都圏と愛知県、滋賀県、福岡県、沖縄県などが増加傾向にあるが、その他の府県ではマイナスか、増えていない状況


というデータからビジネスの東京への一極集中化の加速が進むが、その他の地域は今後も地価価格は下落し続けるだろうと説明する。
(著者は1989年に「関西圏から不動産価格が大幅に下落する」を発表し、その予測の正しさを実証したらしいが、その分析も、このような人口動態の分析から導き出されている)

著者は、バブル崩壊後、1994年頃から新築分譲マンションや新築の建売住宅が飛ぶように売れていってる状況を、「住宅バブル」と名づける。
それは住宅取得への金融緩和などにより、無理矢理つくりだされたものだと言う。新築住宅の購入者には全額ないしはそれに近い融資が行われ、「頭金ナシ」でも購入が可能なり、30歳前後の若いシングル、DINKS(子供のいない共働き夫婦)の需要が伸びたからだ。

しかし、不動産保有には維持管理コスト、固定資産税、都市計画税など予想以上のコストがかかる。デフレ時代に借金をして家を購入するということは、いくら低金利とは故、極めて危険な行為だと警告する。構造的なデフレ状況では、給料が上がり続けるとは限らないし、会社も安泰とは限らない。また、いざ不動産を処分しようと思っても、上記のような「家余り」「完全二極化」の状況では、よほど立地の良いところでもない限り、ただ同然でも売り手がつかなくなる可能性がある。

「住宅バブル」の崩壊は、今後、不動産購入者の自己破産の増加などでより著しく顕在化してくるだろうと、著者は予測する。

このような状況の中、不動産所有に対しては以下のような考えを持って対処すべきだ。

これから先の不動産所有の基本的な考え方においては「量より質」を重視する方向転換を図る必要がある。すなわち、質の高い物件を「数少なく」所有する方が効率が良い


住居として、あるいは企業活動に土地が必要になったときは、とりあえず利用する必要最低限度で取得したい。必要以上に購入すれば、そのぶんだけ資産ロスが大きくなってしまう。もちろん、希少性が極めて高い特殊な不動産は別であるが、通常のものであれば、必要以上に買い急ぐことはない。


うちの会社でも最近、マンションや家を購入する人がちらりほらり出てきている。彼らは資産というよりは「住まい」としての利用目的をしっかり考えて、購入している。しかし、家購入者を横目で見ながら、いざとなったら「貸せばいいや」「売ればいいや」的な発想で購入を検討している人もいる。

しかし、著者が言うように、「必要以上に買い急ぐことはない」だろう。
なぜなら、不動産価格は今後も下がり続けるからだ。
少なくとも、本書を読んでから購入を検討しても良いのではないだろうか?

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コメント

  1. おめでとうございます。

    よくまとめられていますね、びっくりしました。

    さて、住宅ローン減税は来年から縮小していくこと。
    ⇒今年はマンション購入の駆け込み需要が予想される。プチバブル

    さらに、2005年にかなりのマンション供給が想定されている。
    ⇒2005年までが勝負。その後は、(HPを)少し内容を変えて、買った後どうかなどを追加していってもいいのではないか。

    金利が上昇していきそう。(ゆるやかにではあるが)
    ⇒4000万円借りれた人が3000万円しか借りれなくなる。現在は20代マンション購入者が多くいる。おかしい。いずれは、貯金してから購入しようと考えて、正常な30代に変わるであろう。

    走り書きですが、思いつくままにマンション動向を予想してみました。

    参考までに。

  2. 賃貸ブログリンク

    大阪市平野区賃貸物件確認日記(http://bukkaku.seesaa.net/) 大阪市平野区JR関西本線(大和路線)平野・加美を中心としたA(ええ)...

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