プレゼンである会社が嫌いになった話

あるプレゼンでphoto credit: purplemattfish via photopin cc

先日、ある会社のプレゼンがあった。
名前を言えば誰もが知ってる大手企業だ。

このプレゼンのために、当社の社員はお盆休みも返上して準備にあたった。
プレゼンの内容はそのブランド戦略から、新しいイメージ展開、マーケティング施策、そしてWEBサイトの位置づけやら、他メディアとの連動プランまで、かなり多岐に渡ったものだ。
お声掛けしてもらった総合代理店さんと、提案書を作っていったのだが、最後の1週間は夕方ぐらいに関与者全員で集まって提案書内容の確認をし、その場で上がった意見などをその夜(とうか朝)3時、4時までかかってあーでもない、こーでもないと調整していき、ということを繰り返した。そんなこともあって、最終的に完成した提案書はなかなか良くできているものに仕上がった。

本プレは昼1時30からだった。その会社の重役へのプレゼンであり、持ち時間も30分厳守、プレゼンに参加できる人数は何名、開始時間絶対厳守など、かなり厳しめの条件がついていた。もっと気軽なプレも少なくはないけれど、今回のはある意味「本格的」なプレの体裁をとっていたというわけだ。

1時30分きっかりにプレ開始となった。相手は6名。年齢層は少し高めだ。
最初に、代理店の営業さんが簡単な挨拶を行い、プレゼンテーターがプレゼンを始めた直後だろうか、全員の視線が正面のプロジェクターに向かう中、ふと気になって向かい側を見てみると、私の前に座っている50代、60代ぐらいの男性がすでに頭をガクリと垂れているではないか。そう、完全に寝てるのだ。
しばらくすると、その男性は大きな鼾をかき始めた。プレゼンテーターの声に完全に被ってくるぐらいに大きな鼾だ。会議室全体にプレゼンテーターの声と、その鼾が響き渡る、少し異様なムード。

昼直後、ご飯を食べてお腹が満たされて眠くなるのはわかる。
プレゼンにも興味はないのだろう。あまりウェブのことは詳しくないのかもしれない。

だが、しかしだ。最初から寝るというのはさすがに失礼だろう。そもそも最初から聞く気がない。聞く気がなければ出席しなければいい。

6人いるから1人ぐらい、とうような発想なのかもしれないけど、じゃぁプレに出てくるなよと言いたい。高給取りなんだから。あなたが寝てる時間のフィーは、現場の誰かが汗水たらして稼いでるんだぞと言ってやりたいぐらいだ。

プレゼンテーターの方も、後からの話で、最初から寝てることに、プレゼンする気が一気に失せたと語っていたが、そりゃそうだろうと思う。この数週間、このプレのために、過酷な労働を強いられてきたのだから。

そうこうしてるうちに、別の1人もうとうとし始めた。さすがに鼾はかかないけれど、コクリコクリ、首が揺れてる。意識も朦朧だ。この人もおそらくプレの内容の大部分は覚えてないだろう。

もうこうなると、さすがに呆れてしまった。

まぁ、二人目はプレゼンの内容が刺さらなかったから眠くなったということもあるのかもしれないけど。でも、たかだか30分なのだ。そしてたかだか30分のプレゼンだけど、その会社もけっこうな予算を決定する会社に託すことになるのだ。30分ぐらい我慢ができないのだろうかと思う。その30分のためにこちらが昼夜考えてきたその時間のことを少しでも慮ることができないのだろうか。
(体裁上プレとしてるだけで、実は委託先はもう決まってて、だからどうでも良かったとうい説も考えられるけど)
こんな人たちを選定者としてるプレゼンって何なのだとも思う。

また、私が憤るのは、それよりもそういう人たちに注意を一切しない他の4人だ
両隣の人物でもいい、ほんの少し注意を促せばさすがに起きるだろう。ちょっと小突くぐらいできないのか。鼾でプレゼンが聞きづらくなってるぐらいなのに。
余程、貴方たちの態度から見直さないと、ブランディングなんて絵に描いた餅ですよ、と言い放ってやりたかったが、代理店の手前上、さすがにそんな口上も切れない。
(そういうば、ワンダーマンの本だったか、オグルヴィーの本だったかで、同じような話で、プレゼンを聞く側の態度があまりにも悪いのでそこを指摘したら、実はそれがプレゼンの「テスト」みたいなものだったらしく、きちんとそういうところを指摘できる会社だということで受注が決まったみたいな話があったように記憶している。この会社も実はそれだったら恐いけど)

私が逆の立場で、社員が寝てたりしたら、どうするだろうか。

一度、プレゼンではないが、ある企業が商品の説明に会社に来てくれたことがあった。
興味ある人ということで声をかけて、何人かのディレクターやらプロデューサーやらが、その商品説明会に参加したのだが、その際に寝てはいないが、商品説明をしている人から見て、明らかにこの人は興味ないなという態度を如実に出しているスタッフがいた。

頑張って説明している営業マンを前に、完全に顔を下げ、その資料やプロジェクターを一切見ず、メモもとらず、指遊びのようなことをしているだけ。退屈さ、興味なさをわざわざ全身でアピールしている。(本人は気付いてないのかもしれないが)

それを見て、私は耐え切れなくなり、さりげなくその人物の肩を叩いて注意を促した。
興味ないなら帰れと。そしてその後、その営業マンが帰った後に、二度とあんな態度をとるなと叱った。自分が営業マンだったら、そんな態度をとられて気分がいいだろうか?

興味ないなら出席しないほうがよっぽどマシだ。営業マンからしてみたら、その人物の態度は、そのままうちのの姿勢や印象に映るかもしれない。決して良い印象を持たないだろう。社員の一人がどうだから、会社全体もどうだみたいな短絡的な発想はさすがにないかもしれないけれど、こういうものの積み重ねは、私は意外と大事だと思っている。

その商品が仮にうちにとってあまり意味がなかったとしてもだ、同じ業界である以上、その営業マンはどこかでうちにとっても重要な人物になる可能性だってあるだろうし、その商品からうちにとって仕事になりえるような取り組みも生まれるかもしれない。取引先を紹介してくれるかもしれない。

何か見返りがあるから、ちゃんとする、話を聞くという発想は変だけれども、社会人なんだから自分のしたいように振舞うだけでなく、自分の振る舞いが相手に与える影響や印象ぐらいは考慮するってのは当たり前のことだろう。それができない会社や社員はみっともないと思う。

今回のプレゼンでは、プレに参加したこちらのメンバーのほとんどは、その会社にかなり悪印象を抱いてしまった。
私は少なくとも、その会社の名前が友人の口にあがったら、その話をするだろう。
そんな数人レベルのクチコミで、その会社の評判が下がるとか、何か業績に影響を与えるなんてことはなだろうけど、でも、本当にブランドを作っていくには、おそらくそういう細かい接点からどうしていくかということも大事なのではないかと思う。

どれだけテレビCMやらのマス広告でそれらしい誠実なイメージを敷衍させたところで、実際の生活者が接するところでのボロが出てたら、生活者はその企業がハリボテ企業だということをあっさり見抜いてしまう。
コンタクトポイントの最適化だとか360度マーケティングだとか色々言われてるけど、多分、一番重要なのは一人一人の社員の意識の持ち方と振る舞い、言動だろうと思う。そこを無視して何がブランディングだ、何がイメージ戦略だと言いたい。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です