戦略PR 空気をつくる。世論で売る。

戦略PR 空気をつくる。世論で売る。 (アスキー新書 94) (新書)
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とある仕事で、戦略PR関連の提案打ち合わせに参加させてもらって興味が湧いた。H君が一足先に手に入れてたので貸してもらった。AISASだとか、AIDMAだとか、そういうユーザー行動心理モデルは、常に「A→I」から始まっているけれども、そもそもこの前に、もう一つ「Interest」が必要なのではないかと提唱する。それを、著者は「カジュアル世論」と呼ぶ。

「カジュアル世論」とは、言い方を変えれば、その商品やサービスが受け入れられたり、買いたくなるような空気や雰囲気、ムードのことだ。

事例としてあげられている永谷園の「冷え知らず」がわかりやすい。戦略PRにより今まで脇役に過ぎなかった「生姜」が、今来てる、ブームだというような世論を作り出す。世論操作というと、洗脳やプロパガンダなどの悪いイメージがついつい過ぎってしまうけれども、あくまでも「カジュアル」という形容がついていることもポイントだろう。
カジュアル世論を作り出すための著者は次のようなステップを設定している。

STEP.1 商品の便益に関連しそうな、世の中の「関心事」を調べる
STEP.2 商品の便益を世の中や消費者の関心に合わせて翻訳する
STEP.3 その二つを結びつけ、テーマを設定する
STEP.4 テーマを「ニュース」にするための材料を用意する
STEP.5 テーマを広がるための具体的なPRプランを用意する


STEP.1~STEP.3まででの「テーマの設定」がものすごく重要だ。テーマはこちらが言いたいことではなく、あくまでも消費者がどのような関心を持ってるかということから設計しなければならない。
大ヒットしたニンテンドーDSの「漢検DS」は、「漢字力が低下している」というテーマ設定を行い、それを戦略PRの軸に据えた。パナソニックの美容家電「ナノケア」では忙しい女性にあわせた「効率美容」。オバマ大統領なら「チェンジ」がそれにあたる。その商品やサービスを買いやすくする、買いたくなる空気。これこそが、AISASやAIDMAの「AI」の前に位置する「Interest」だ。

こうして設定されたテーマを敷衍させて、「カジュアル世論」を醸成するためには次の3要素が重要だと言う。
それは「おおやけ」「ばったり」「おすみつき」だ。これら3要素をメディアやチャネルに絡めて語ると、

「おおやけ」感を生み出すために 「マスコミ」の活用
「ばったり」感を生み出すために 「クチコミ」の活用
「おすみつき」感を生み出すために 「インフルエンサー」の活用

と整理される。非常にシンプルでわかりやすい。「生姜」の例ならば、各種マスコミが「生姜ブーム」を取り上げ「おおやけ」感が生まれ、そこにインフルエンサーとして料理研究家の村田裕子さんが起用されて「おすみつき」が得られる。そして、こういった一連の活動などからクチコミが誘発されて「ばったり」感が醸成されるというストーリーだ。

「戦略PR」という言葉は、360度マーケティングや、ホリスティックマーケティング、メディアニュートラルというような言葉とも重なる部分が多いと思う。要は、ユーザーにいかにして意味・意義ある情報を届けていくのか、情報への到達の筋道を立てて行くのか。商品やサービスが魅力的に見える、あるいは買いたくなるような環境を作りあげるのかということ。PRというとどうしてもパブリシティのことしか思い浮かばず、ついついプレスリリースを投げること=PRのように捉えてしまいがちだけれども、そうではない。あくまでも情報環境をどう作るか、そこには俯瞰的な視点が求められるだろう。

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コメント

  1. 新版 戦略PR 空気をつくる。世論で売る...

     最近は、モノを売るのが難しいようだ。その原因は、ネットの発達などにより溢れかえる情報と、商品やサービスに対して冷めた目で見ている「疑い深い消費者」の増加ということら ......

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