会社にお金を残さない! ~「ノルマなし!管理職なし!給料全公開!」の非常識な経営術~

4479792724会社にお金を残さない! ~「ノルマなし!管理職なし!給料全公開!」の非常識な経営術~  ─ カンブリア宮殿で放送されて話題だったみたいだけど、その放送は見ていない。

でも、本書を読むだけで、この会社の過激さというか、他の会社との違いはものすごくよくわかる。かなり衝撃的だ。

この会社のはノルマや目標がない。管理職がない。そもそも社長職も交代制。社員全員の給与が公開され、基本的には内部留保は0。利益はすべて社員かお客さんに還元する



最近やたらと、就業規則やら会社ルールでユニークな制度や手法が注目されたりしているので、これだけ聞くと、こういった突拍子もない制度やルールに目が奪われてしまって、なんだ、またそういうものにだけ拘った企業のように思えるかもしれない。しかし、この会社は違う。1986年創業以来、業績は右肩あがり。年商は85億円。現在のチェーン店は120店舗を超える。

しかも、この会社、もともと広島の大手メガネチェーンを辞めたメンバーによって立ち上げられた小さなメガネ屋からスタートしており、その大手メガネチェーンから目の敵にされながらも、このような成長を成し遂げてきている。
そう、この会社のユニークな考え方や制度は、人目を引くためだけの中身がないようなものではなく、こうしなければ厳しい競争に勝っていけないという切実な思いと、世の中で常識とされているものへ疑いの目を向けるという徹底した信念に裏付けされているのだ。

■内部留保ゼロのからくり
たとえば、内部留保ゼロのからくり。儲かった分をすべてボーナスで社員に還元するという方法でとられている。
ボーナスは年3回出るが、決算賞与のタイミングで経常利益がほぼゼロになるように社員に分配する。社員によっては賞与だけで500万円を超える収入になる場合などもある。
「儲かった分はボーナスとしてすべて還元される」というのは、逆に言うと、「儲からなければ還元はない」という意味だ。

実は、メガネ21には社員の月額給与額の最高は30万円程度という決まりがある。昇給は30歳まで。メガネ店で働くためのスキルは30歳までで身につけられられるからというのがその理由だ。つまり、月給ベースだと年収360万円が上限であり、それ以外はすべてボーナスとなっている。ボーナスは儲からなければ全く出ない。「ボーナスが500万円を超える人もいる」なんてところだけを聞くと、なんて社員に優しい会社なのだと勘違いしてしまうかもしれないけれど、実際は収入の大部分を業績に連動させているという意味では、非常にシビアな会社とも言える。

■業績悪化や資金需要へはどう対応するの?
また、内部留保がゼロなら、当然、何か起きたときにどうするんだ? 新店舗の開店や商品開発などで先にお金がいるときはどうするの?という疑問は湧くが、その裏側にもきちんとした彼らなりのロジックがある。

メガネ21にはいくつかの働き方のコースが用意されているが、それらのコースは大きく「一般職」と「経営職」にわかれている。一般職は賞与・給与が業績によって変動せず、利益分配は受け取れない。経営職は賞与・給与が業績によって変動する。どちらのコースでも先程出てきた基本給や30歳昇給ストップ、月額給与30万円程度という上限は同じ。つまり、一般職を選んだ人の年額給与の最高額は360万円が固定ということだ。

一方で、経営職でも実は年収は1000万円が上限と定まっている。配偶者控除を受けられるギリギリの額だからというのがその理由で、サラリーマンが受け取れる常識的な最高額として、いったんこの額で社内ルールを設定してしまっているのだ。
つまり、経営者コースの人は、640万円を業績連動の賞与によって得られる権利があるということになる。
現在は社員の収入の3分の2を賞与が占めているので、業績が悪化したらこれをカットすれば大幅な経費削減が可能になるという、かなりシンプルな仕組みがある。上限を決めて、それをオープンにしてしまうことで、イザという時にも見通しが立てやすくなってることは間違いないし、また、ルールが明確なので社員にとっても納得がいきやすいのだろう。

資金需要に対しては、基本的には社員からの「直接金融」を実施している。資金繰りはすべて社員の出資によって成り立っているのだ。銀行からの借り入れはゼロ。
たとえば、社員には「社員借り入れ」制度というものがある。これは社員が会社に預金ができる制度だ。預金なので当然、利子が付く。この利子、なんと少し前までは10%で運用していたというから驚きだ。
現在は実施されていないが、会社に出資している額の50%を賞与として上乗せしていた時代もあった。1000万円出資すると500万円が、利子としてではなく、評価として賞与に上乗せされて支払われるわけだ。株式も基本、社員が持ち合う形になっている。

要は、いかにして社員が会社にお金を出したいと思わせるか、そして、自分の会社のオーナーであり、経営者であると思えるか、そのための仕組みや制度を考えられるかが重要なのだ。メガネ21の仕組みは、決して社員にやさしいわけではない、むしろ実は非常に厳しい仕組みだろう。給与の上限などの割り切りも理由としては尤もだけれどシビアだ。
しかし、「経営職」には本当の意味での経営視点や判断が求められ、それによってリターンを得られるというかなり単純なルールが持ち込まれている。社員たちが自然に「経営」に目が向くような仕組みが盛り込まれているのだ。

■管理職がいらない仕組み
全員が経営者、会社のオーナーであるという意識が裏付けにあるからこそ、管理職が必要なくなっている。
たとえば、会社として重要事項を決めるときも、何か提案がある場合には、すべて社内ウェブを使う、というルールになっている。提案に対して、反対する人が誰もいなければ即決定という仕組みだ。黙認は賛成となってしまう。稟議書もなければ、根回しもない、ある決定を下すための会議も必要ない。だから、必然的にいわゆる中間管理職は必要なくなってしまう。
これは社員が共同経営者という要素があるからこそ(また、財務情報や社員の給与など、必要な情報はすべて公開されているからこそ)、可能な仕組みだと言える。

■目標設定や社内競争も無駄
さらに、ほとんどの会社が最も大事なものだと考えてる「目標設定」も、メガネ21では「無駄な作業」だと一掃している。
「達成可能なラインの少し上に目標設定すべき」なんて言われているけれど、その適正値って何? それで社員のモチベーションが上がるの? と素朴な疑問を投げかける。 どれぐらいの目標設定が適切かということを考えるのに何時間も頭を使ったり、会議をしたりというのは、「それで仕事だと勘違い」しているだけで、「どうでもいい数字をこねくり回」しているだけじゃないの、という厳しい指摘。また、社内競争も意味がない。自分の店舗だけ儲かったらいいという意識が付くことはむしろ悪で、全体としてのスループットに意識が向かないと意味がない。
そして、著者は言は、ノルマや目標がなくても、「社員がやる気になる仕組みがきちんとあって、お客様の満足度を高めていければ、確実に業績は伸びます」と言い切る。

自分の大部分の報酬が賞与で決まっていて、それが業績で決まるとなれば、そして自身が株主であったり、銀行みたいな立場で会社に出資したり、お金を貸していたら、そう考えると、確かに「目標」なんてなくても、売上を伸ばそう、利益を伸ばそうという意識は働かないわけがない。会社全体の利益で賞与が決まるなら、自分の店舗だけ良ければいいなんて意識はまず働らかないだろう。業績に影響を与えるような提案があれば、それについて各自が真剣に考えて判断するだろう。
まさに経営者と同じ視点で仕事に取り組むような仕掛けがあるからこそ、こういった従来の常識とはまったく違う考え方でも、とてもすんなり受け入れられるようになっているわけだ。

■本書を読んで
ちゃんとすべてに理由があるのだ。ただ、やりたいから。なんとなくそうしたほうが社員にとっても良さそうだから。ユニークな会社に思われそうだから。まるでそんな要素はない。
これらの制度の1つや2つだけを真似て、自社に導入してうまくいくかというと決してそんなことはないだろう。
上辺だけを真似ても、場当たり的な制度となってしまい、むしろ状況は悪くなってしまうのではないか。かといって、世間の常識や、他社がこうやってるからというだけで盲目的に制度やルールを考えてしまうことも良くはない。

重要なのは「何を重視するのか」「何を強みとしていくのか」という根本の思想や信念だ。その思想や信念をより強くしていくために、それらが自然に敷衍していくための仕組みや仕掛けとして、どのようなルールや制度が考えられるのかということを考えていく必要があるのではないか。


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コメント

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