なぜ、ノウハウ本を実行できないのか―「わかる」を「できる」に変える本

44783500941分間マネジャー―何を示し、どう褒め、どう叱るか!」という本がある。この本、その後に「1ページ・マネジャー」やら「ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術 3分間コーチ」やらと、いろんなフォロワーを生み出した原点のような本だ。世間的にも相当大きな影響を与えた本だと思う。

昔、うちの会社でもこの本が流行った時期があった。すごく薄い本で、すぐに読めてしまうということも人気の秘密だったと思うけれど、そこに書かれてあることもシンプルながら説得力のあるマネージャーとしての心得や作法みたいなもので、当時、社員が増えはじめて、多くのメンバーが初めて本格的にマネジメントということを意識しはじめ、こぞってこの本を手にしたように記憶している。もちろん僕も読んで、けっこう感化されたと思う。

さて、この本にはどんなことが書かれていただろうか??

自問自答してみる。確か、部下を怒る時には、なにか間違いを犯した直後にその場で、何が悪いかを間違ってるかをはっきりと示すことが重要、みたいなことが書かれてたなぁ… 他には他には他には… 目標をシンプルにするとか、あれって、あれは「1ページ・マネジャー」の方だったけな??

ほとんど思い出せない。

あんなにこの本はすごいすごいと嬉々として受け入れて読んで、読んだ直後には意識して行動したり考えたりしていたはずなのに、たったこれぐらいしか記憶に残ってない。

振り返ってみる。
「1分間マネジャー」に書かれてることを実践できているか? 覚えてもいないのに出来ているわけがない。
意識してマネジメントしているか? 出来てるわけがない。
「これはすごい」と読んでてても、それを実践できるわけではない。実践できてもそれを持続できない。

4478004463なぜ、ノウハウ本を実行できないのか―「わかる」を「できる」に変える本」は、「1分間マネジャー」の著者の新作本である。
この本がテーマにしてることは、ズバリ、このタイトル通り、先程、「1分間マネジャー」を実践できていないという振り返りをしていた僕が陥ってる症状そのものの問題と解決法を指摘することだ。

たえず新しい情報に接することが習慣になっていると、忘れることも習慣になってしまう。実践することではなく、新しいことを知るトレーニングばかりしている。
(略)
本当に一つの分野をマスターするには、大量の情報に触れるより焦点をしぼった情報に取り組むべきです。
(略)
多量の知識を1、2度学ぶより、少量の知識を何度も学んだほうがいい。


ごもっともすぎる指摘というか。なんか完全に自分の弱いところを突かれてるような気がした。なにせ、この本を手にしていたのは昨日の東京帰りの新幹線だったけど、その脇には、この本と同時に買ったこれから読もうと待ち構えてる本が5冊も待ち構えてたりしたからだ。

「1分間マネジャー」に違わず、本書も非常にシンプルな構成、わかりやすい文章で綴られている。早い人なら30分もあれば充分に読みきってしまえるぐらいの文量しかない。でも、指摘していることはものすごく重要なことばかりだ。

本書では、「ノウハウ本を実行できない」理由を3つにまとめている。
情報過多」「ネガティブなフィルター装置」「フォローの欠如」だ。そして、それぞれの問題について解決策を提示する。
「情報過多」なら、先程の引用の通り、「少数のことを何度も行う」ことを奨める。この「少数のことを何度も行う」というのは、本書全体を貫く根本的なテーマでもある。
ネガティブなフィルター装置を外して、ポジティブに受け入れるためにも、「反復」が必要であり、何度も同じことを繰り返し考えていくことで、ポジティブな心が開けていくということを示す。「フォローの欠如」でも、「反復」が重要なキーワードとなっている。

教える
やって見せる
それをやらせる
見守る
上達を褒める、または方向を変えさせる
教える
やって見せる
それをやらせる
見守る
上達を褒める、または方向を変えさせる

何度もやらせて、見守る、上達を褒める、または方向を変えさせる、が繰り返されていくと、そのうち「頼む、やらせて見守る、褒める」になり、最終的には「自分で考えさせる、実行させる、自分で上達を褒める、または方向を変える」になる。
本編全編を通じて、繰り返すことや反復すること、少ないことに絞り込んでいくことをこれでもかというぐらい徹底して説いている。本書自体が、本書で提示されている「少数のことを何度も行う」ことの実践になっているというわけだ。

この本に限らず、本から得られる知識は大きいし、どんな本にもたいてい何か重要なヒントが隠されていたり、自分の考え方や行動を変えてくれるきっかけが潜んでいたりするわけだけど、問題はせっかくそういうものを得ても、吸収できたのはその時、その瞬間だけで、すぐに忘れてしまう、ということだろう。すぐに忘れてしまい、また新しいソリューションを求める。以前にも同じようなソリューションには接しているのかもしれないけれど、毎回毎回新鮮なものとして受け入れて、そして忘れていく。これの繰り返しだ。
だから、自分がこれだと思うものに集中して何度も取り組む、考えることをしていくほうが、多くのものを吸収して何もしないよりも余程、結果が出る。その通りだと思う。
たぶん、多くのマネジメント本に手を伸ばして、色々な手法を取り入れるよりは、「1分間マネジャー」に書かれてあることだけを徹底して繰り返して実践できたほうが良い結果を生み出していたのだろうと思う。少し反省。

というような指摘を受けながらも、僕はこれからも引き続き、新しい本やら知識を貪欲に取り入れていこうと奔走するんだろうと思う。貧乏性と健忘症を兼ね備えて反省することなく、同じことを繰り返すんだろうな。新しいもの好きだし、本を読むのは僕にとっては何かのためというよりも、完全に趣味の領域なんで許してもらいたい。
でも、会社に取り入れていくソリューションはなるべくシンプルに、少なく、そして繰り返すということを意識していきたいと思うんで。ということで、もう一度、「1分間マネジャー」も読み返してみて見ようと思う。



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