iPhoneとツイッターで会社は儲かる/小さなチーム、大きな仕事

良い意味での「小さな」会社が大きな企業や市場相手に戦っていくための独自の分野や考え方に触れることができた二冊だった。
今までの「常識」だとか、世間一般の会社がやるような普通のやり方や考え方ではなく、「小さい」からこそ可能となる考え方や戦い方など色々刺激を受けた。

(「いろんな本から色々良いところどりするのは良くない。良いところどりばかりしてるので細かいところで矛盾や疑問が出てくる」という指摘を受けたので、いちおう断っておくと、読んで刺激を受けた本についてはなるべく感想を書いておきたいなと思っているだけで、すべて経営に取り入れようとか、マネジメントに役立てようと思ってるわけではないです。ただ、結果的にそんな風になってしまって元々の意見だとか主張が矛盾したりすることがあるのかもしれないです。すいません。いろんな本に手を出すのは不安とか自信のなさでもあるわけですが、一方で純粋な趣味だったりもするので、たぶん、これからもこれは辞めないとは思います。でも、あるものを受け入れる際にはよく咀嚼して、自分の主義や考えときちんと照らし合わせて、しっかりとした考えをもって取り入れていくように気をつけていこうと思います。)

4839934444iPhoneとツイッターで会社は儲かる」─ツイッターを全社に導入していくときの課題や、導入によって得られる効果みたいなことも参考にはなったのだけれど、何よりも本書内で一番面白いのは、やはりこのECスタジオという会社の独特の分野や考え方、オペレーション部分が垣間見られることだと思う。

たとえば、ECスタジオでは商談をすべて動画記録している。動画で記録しておくことで、それが議事録にもなるし商談への参加者を少なくもできる。また、生の現場を見られるのでそのまま教育ツールにもなる。これらの動画はGoogleApps上で共有され、社員は会社から支払いのiPhoneから出勤中でも移動中の隙間時間でも見ることができるようになっている。

また、電話サポートは一切行わず、基本メールのみでの対応なので、在宅勤務などの敷居も低くなるし、また社内が静かで仕事に集中できる。事務所の場所も中心部から外れることも可能になる。

IT企業が、ITをフル活用・実践して、その恩恵を蒙ってるケースというのは意外と少ないんじゃないかと思うけれどもECスタジオでは自らが新しい技術を積極的に取り入れ、その恩恵を最大限に授かろうとしている。著者は、インターネットは「弱者に光を当てる技術」と書いているが、自らがその実践者となっていく、見本を示していくということを積極的に行っているというわけだ。(だから、ECスタジオの会社サイトでは、「IT経営実践企業」と謳っているのだろう)

これらの仕組みが、単なるユニークさや奇抜さではなく、「小さな」会社がより効率的にそして効果的に戦っていくために欠かせない必須要素として会社に組み込まれているのは本当に凄いことだ。この姿勢は見習わないと思った。(でも、真似するのではなく、自分たちで考える仕方でね)


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小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則」─ 37シグナルズも非常にユニークな「小さな」会社だ。もともとは、ウェブデザインのコンサルティング会社としてスタートして、その後、プロジェクト管理ツールの「ベースキャンプ」や、簡易なCRMツール「ハイライズ」、ビジネス用リアルタイムチャット「キャンプファイアー」といった、ユニークなASPサービスを提供する会社として知られる存在となった。一方では、Ruby人気に火をつけるきっかけとなったフレームワーク「Ruby on Rails」の開発元である。うちの会社でもベースキャンプを利用しているプロジェクトはいくつかあったし、Ruby on Railsでも間接的にはお世話になっている。

提供している製品の利用ユーザー数や、その製品でやりとりされているトランザクションなどを見れば、大企業が提供する同分野製品などにも匹敵するような(むしろ上回るような)規模にも関わらず、この会社はいまだに、創業当時の「小さなチーム」の体制を維持している。社員は十数人だが、その社員は二つの大陸の八つの都市に散らばっていてお互いほとんど会うこともない。

他の多くの会社が、それがなければビジネスなどやっていけない、と指摘するようなものを、この会社では極力排除しようとしてる。彼らの製品は、無駄なものを排除して、徹底して必要な機能だけに絞り込んだ使い勝手の良さが最大の魅力だが、この製品を生み出す背景には、彼ら独自のポリシーや思想があり、それらポリシーや思想が彼らの会社運営そのもの会社のあり方そのものにも貫かれている。
その独自のポリシーや思想は、端的に言ってみれば、あらゆるものに「それ本当に必要か?」という疑問の目を向けて、不必要なものをそぎ落としてしまう、ということに集約される。

たとえば、彼らは「計画」が本当に必要か?と問いかける。普通人々は長期計画を何かを始める前に作るが、「重要なことを決定するのにこれ以上悪いタイミングはない。」と言う。皆が立てているのは「計画」ではなく、あくまでも「予想」に過ぎない。計画は「過去に未来の操縦をさせる」もので、それは「目隠しするのと同じ」。計画によって身軽さがなくなるのは間違っている。

今年ではなく、今週することを決めよう。次にやるべき最重要課題を見つけ出して、取り組むのだ。何かをするずっと前ではなく、直前に決定を下そう
 計画なしに仕事をするのは恐ろしく思えるかもしれない。しかし現実と折りあわない計画にしたがうのは、もっと恐ろしいことだ。

あるいは、彼らは「顧客の声」は書き留める必要はない、と言う。製品の利用顧客からは様々な要望や意見が上がってくるだろう。普通の会社ならそれらをスプレッドシートやデータベースに記録したり、ファイリングシステムで管理したりといことをするだろうが、彼らは「本当に気にしなければならない顧客の要求はあなたが繰り返し聞くことになるものだ。」として、記憶できずに忘れてしまうようなものは、重要出はないというサインだと考える。

また、「書類上の合意は幻想」だと言い、「解決策」でさえも、「そこそこ」のもので構わないのだと考える。

製品に対しての考え方もシンプルで一貫している。彼らの製品はすべて「自身のビジネスに必要な製品を作っている」。「解決しようとしているのが自分自身の問題であれば、足元は明るく、どれが正しい答えかがわかるはずだ」と説く。

ECスタジオの「IT経営実践企業」と同じように、自分たちが作る製品やサービスにおいても、自分たちが必要なもの、自分たちが使うものを作るというのは最も利に適っている考え方だろう。自分たちが使わないような製品やサービスを他社に提供して、他社が納得して買ってくれるだろうか。
また、「中途半端な1つのものより、とてもよくできた半分の大きさなものの方がいいに決まっている」と言い、「多くのものは小さくすればするほどよくなる。」と断言する。

僕らもいくつかの製品やサービスをリリースしているが、競合製品やサービスのバージョンアップや追加機能のリリースはすごく気になってしまう。機能比較表で◯をつけられないところがでてくるのが恐怖というか、ついつい機能数の競争に巻き込まれてしまいそうになる。お客さんへのプレゼンテーションでも、常に機能の数が重要な比較要素になっている気がして、機能の数が足りなくて選ばれないと思ってしまう。なので、追いつけ追い越せと、機能の追加に勤しむことになる。
しかし、本当に機能の数が、その製品の魅力や競争優位なのだろうか? 機能をてんこ盛りにしていくことは、その製品をどんどんありきたりのモノにしていってるに過ぎない。

だから彼らは、競合相手が何をしているかを心配するのは意味がない。気にせず、あなたが信じるもので戦えばいいと諭す。

競合相手を打ち負かすには、なにごとも相手よりも「少なく」しかしないのだ。簡単な問題を解決して、競合相手には危険で難しくて扱いにくい問題を残す。ひとつ上を行くかわりに、ひとつ下回るようにしてみよう。やりすぎるかわりに、やっていることが相手以下になるようにしてみよう。

上級者向けの機能を追加していって、そもそもの顧客に合わない製品にしていくよりは、顧客が製品(あなたを)を追い抜けるようにして、基本的な製品に絞り込めばいい。

基本的なものへのニーズは不変だ。それを必要としている顧客の供給は際限なくある。
 そして常に、あなたの製品を使ってる人よりも使ってない人のほうが多く存在する。こうした人たちが使い始めることができるように簡単になっていることを確かめよう。

いやぁほんとすごい言葉だと思った。言われてみればそうだけれども、リリースした製品をずっと「基本的なもの」にしておくことには、それはそれで勇気がいることだ。最初の顧客が成長してその製品の仕様にあわなくなっていくことに、僕らはやはり恐怖を感じる。顧客が製品を離れていくことに寂しさや悔しさを感じる。
でも、彼らは顧客に製品を追い越してもらったほうがいいと割り切る。基本的なものへのニーズは不変だと言い切る。
これらの言葉にはすごく自信を与えられたし、自分たちが作っていくもの、手がけていく製品やサービスでも、本当に基本的なものや基礎的なものが何なのかということをしっかり見つめなければならないと思った。

最後に、この2つの企業に共通することで、「小さなチーム、大きな仕事」にも触れられていたけれど、すごく重要な考え方。
それは会社のノウハウや舞台裏を「教える」「あからさまにする」ということじゃないかと思った。

「教える/あからさまにする」ということが「小さな会社」にとって、大きな企業と戦っていく上での重要な武器になるということ。それを37シグナルズもECスタジオも実践しているのではないだろうか。
「小さなチーム、大きな仕事」から、長い文章になるけれど引用しておこうと思う。この一連の文章にはすごく心をうたれた。グランズウェルやソーシャルや何だかんだ、とあれこれ考えたり悩んだりするよりも、ありのまま、そのままを見せればいいのだという大きな励ましを受けた気がしたのだ。

大きな企業は、スーパーボウルにCMをドンと打つことができるが、あなたには無理だ。でもあなたは「教える」ことができる。大企業はノウハウや戦略を秘密にする方が利益につながると考えている。大きな企業が同じようなことをやろうとすると、弁護士のチェックが入り、面倒くさい手続きをくぐり抜けなければならない。教えることには、彼らと充分に戦えるチャンスがある。
(略)
人々を舞台裏に導くと新しい関係が生まれる。彼らはつながりを感じ、顔の見えない企業ではなく、あなたを人間として見てくれるようになる。彼らは、製品やサービスに捧げられた汗と努力を見だろう。そして、彼らはさらに深い理解や評価をしてくれるだろう。
(略)
欠点を見せることを恐れてはいけない。不完全さはリアルであり、人はリアルなものに反応するのだ。だから、僕たちはいつまでも変わらないプラスチックの花より、しおれてしまう本物の花が好きなのだ。どのように思われるか、どのように振舞うべきか、あれこれ心配する必要はない。すべてありのままの本当の自分を世界に見せればいい。
(略)
だからあなたらしく語ろう。他の人が話題にしたくないようなこともはっきりと見せるのだ。欠点を隠さず、出来上がってなくても、今取り組んでいるものの一番新しい形を見せるのだ。完璧でなくても大丈夫。「プロフェッショナル」の顔がなくなったとしても、面白みと親近感のある香をつくれるのだ。

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