「進撃の巨人」はやっぱり面白いじゃないか

4063842762進撃の巨人」─ 2011年の「このマンガがすごい!」オトコ編で堂々の1位に輝いた作品。まだ完結もしてない、しかもまだまだ物語は始まったばかり、ほとんど何もわかっていない。にもかかわらず、1位というのもどうかと思うが、それでも1位にしたくなるぐらい面白いということだろうし今後の展開から目が離せないということか。
409182580X(という意味では、同賞で9位に入った花沢健吾の「アイアムアヒーロー」も、負けず劣らず、ほとんど状況も意味もわからず、ただ増殖していくゾンビから逃れるというだけの展開だが。こちらも面白い。)

読みたい読みたいと思ってて、ようやく手にすることができたのだけど、確かに圧倒的に面白い。
なんだこの設定は。物語の設定自体がもうすでに謎だらけで、その時点で人を惹き込んでしまう。
多分、第一話を読んだ時点で、生理的に受け付けないという人と惹きこまれてしまう人にキッパリ分かれるんじゃなかろうか。いずれにせよ、とにかくかなり強い引力というか独特の磁場みたいなものがあることは間違いなく、そこに馴染めるか馴染めないか。ボクは一発でノックアウトされた。ボクはそもそも、こういう意味がわからない世界、不条理な世界に翻弄される物語が大好きなのだ。

何者かよくわからない気持ち悪い巨人たちと、巨人たちから逃れるために巨大な壁をこさえて、閉じられた世界で暮らしている人間たち。「巨人」ってのがなんとも言えない不気味さ。で、何重かの高い壁。安部公房の世界か、パノプティコンか。人々は高い壁を作って巨人たちを見張ってるつもりだったが、ある時、それまでの巨人とは比較にならないような大きな巨人が現れ、その巨大な壁はあっさり破壊されてしまう…  その時、その壁は、逆に、人々を閉じ込める壁となり、人間をそれとなく見張ってるのは巨人の側となる。この倒錯と絶望。

巨人は何者かはわからないが、ただ人間にだけ関心を示し人間を食べる。しかし、それも食料としてなのか、はたまた単に殺戮という動機だけで本能的に動いてるかも定かではない。壁の外にどんな世界が広がっているのか、巨人はどこからやってきて、何を目的として人を襲うのか。壁の外の世界で、巨人は何を食べているのか。壁の中で暮らす生き残った人類以外に、もう人類は本当に絶滅してしまったのか。物語のほとんどは謎に包まれている。

巨人を何かのメタファーとして解釈すれば、それっぽい教訓話にもなるけれど(例えば、分かりやすいものとしては「戦争」だ。壁の中の人々は、「日本人」だと考えると、もっとも典型的な構図ができるのだろうけど。)、しかしそれは一番やっちゃいけないことかなと思う。そのマンガの巨人は、この意味不明な巨人のまま、その不気味さや気持ち悪さ、残虐さをそのまま受け入れて愉しむべきだ。下手な意味付けなど必要ない。むしろ、意味付けをせずに、この不条理さや、この世界の行き詰まり感、人々の絶望感を味わうべきだ。


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