「コクリコ坂から」はとてもハッピーな映画

スクリーンショット(2011-07-31 23.17.39) 「コクリコ坂から」を観てきた。映画館でジブリ作品を観るのは本当に久しぶりだったけれども、いやぁ感動した。思い立ってふと観に行ったけれど、ほんと観て良かった。たぶん、DVDも買うし、出来ればもう一回映画館に観に行きたいぐらい。

一緒に観に行った妻と、傑作すぎるだろ、ということで同意し、これはと、普段は手にしないパンフレットと、映画の原作のコミック本まで買ってしまった。とにかく良い映画、色々な愉しみ方が出来る映画だ。古き良き時代の日本や日本人の姿にノスタルジーを馳せるのも良ければ、今時映画でしか見られないような、なんとも模範的な少女と少年のまっすぐな恋に焦がれてもいいだろう。

恋と俊の関係に、「耳をすませば」を思い起こす人もいるだろう。ボクの場合で言うと、「耳をすませば」の方には、直視していらないぐらいの気恥ずかしさみたいなものを感じたし、そのあまりにも理想的すぎる性格やら二人の関係やら強い意志やらに、なぜか自分に振り返って考えて惨めになってしまうというか、悔しさみたいなものを感じたのだけれども、この映画で感じたのはそういうものとは全く違う感覚だった。それは、自分が単に歳をとったというだけなのかもしれないけれども、海や俊の恋は、純粋に応援したくなったのだ。映画の中の理事長みたいな感覚か。だから、中盤で二人の秘密が明らかになった時、ボクも二人と同じようにとてもがっかりした。ひどい話もあるもんだ、と、なんとかならんもんかいなと色々思案を巡らせたぐらいだ。
(ネタバレあるよ)

ふとしたことから、実の兄妹だということを知ってしまった二人。兄妹でなければ、これからバラ色の恋愛生活、学園生活が待っていただろうに、なんたる不幸。その二人の悔しさや辛さ。しかし、このストーリー展開って、実に俗っぽいというか、下手なメロドラマみたいな安っぽい設定だ。今時、そんなベタな設定が….とツッコミたくなるぐらいベタなのだけど、この映画が成功しているのは、この最も扱いの難しい設定のところを劇的に盛り上げないようにしたところではないか。下手にひっぱりすぎず、またかといって蔑ろにもしない。
並行して、男子学生の部活動や研究活動などの巣窟である「カルチェラタン」の存続を賭けての集会や大掃除、理事長への説得というところとのユーモラスさというか、前向きさというか、こちらの筋とのバランスが絶妙だ。この対比があるから、なおさら、理事長への直談判の帰りに、海が自身の解釈とそれでも好きだということを俊に訴えるあのシーンにはぐっと来るものがあるんだろう。そこからの展開もそんなうまく行くのってぐらい、うまく行きすぎていくんだけれども、その疾走感は実に爽快だ。うむ。やっぱり映画はハッピーエンドでなければ。

また、この映画の魅力は、この時代の日本の姿や、映画に登場する今はもうすっかり見ることはなくなってしまった様々なな道具やその道具を使う人々の所作だ。(という意味では、「ALWAYS 三丁目の夕日」とかが醸しだすものとも近いのかもしれない)
海たちが暮らす海を見下ろす山沿いの高台に立つ洋館や、学生会館のカルチェラタン、多くの人が行き交い、活気を見せる下町の商店街。この映画に出てくるあらゆるモチーフが好きだ。冒頭シーンでの、朝起きてから釜に火を入れたり、花瓶の水を換えたり、目玉焼きを作ったり、旗を上げたりという一連のシーン、ここだけで一気にボクは映画に引きこまれてしまった。このシーンで、この海という女の子がこういう暮らしを毎日当たり前のように続けている、毎日の生活を細かいところまで手を抜かずにきちんとやっているのだな、ということがわかる。映画全体が持つトーンがこの冒頭で決定的になっていて、ほぼこのシークエンスだけど、あぁこの映画はボクにとっていい映画になるに違いないと確信できたぐらいだ。

なぜ、今、宮崎親子は、1963年という時代を映画の舞台としたのだろうか。
カルチェラタンの取り壊しへの反対集会に、俊が口上をかます。

古くなったから壊すというなら
君たちの頭こそ打ち砕け!
古いものを壊すということは
過去の記憶を捨てることと同じじゃないのか!?
人が生きて死んでいった記憶を
ないがしろにするということじゃないのか!?
新しいものばかりに飛びついて
歴史を顧みない君たちに未来などあるか!!
少数者の意見を聞こうとしない君たちに
民主主義を語る資格はない!!

脚本が父宮崎駿だが、このへんの主張には、いかにも宮崎駿らしさを感じる。たぶん、俊の若さや真っ直ぐさ、素直さに、自身の思いを語らせたのではないかと思う。この時代の人々や暮らしの中に、今の僕たちが忘れてしまった何か重要なものがあるんではないか、ということを考えさせてかったのではないだろうか。

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