夢野久作「少女地獄」

4041366054 「少女地獄 (角川文庫) 」 好きな短編。二冊目は夢野久作だ。GW前後だったろうか、ぱらぱらとテレビのチャンネルを変えてると、NHKのJブンガクでロバート・キャンベルと杏が夢野久作の「少女地獄」について対談していた。番組終了間際だったのでちょっとだけしか見られなかったのだけど、すぐに読みたくなって、青空文庫でダウンロードして読んだ。(青空文庫「夢野久作 少女地獄」)こういう時、青空文庫は本当に便利だ。ちなみに、ボクはiPhoneでは、i文庫を使っている。色々なリーダーを試しているが、一番文字もキレイで読みやすいと思う。操作性もいい。

「少女地獄」は3つの短編で構成されている。どの作品も少しミステリアスで狂気の色を帯びた女性が登場する。

1つ目の「何でも無い」は臼杵医師から白鷹医師へ、虚言癖を持つ魅惑的な女、姫草ユリ子が自殺した旨を伝える報告書(手紙)の体裁をとっている。2偏目の「殺人リレー」は、バス会社に勤める女(トミ子)が、バス会社勤務に憧れを抱く女へ送った手紙という構成をとりながら、さらにトミ子に届いた月川ツヤ子からの手紙が入れ子構造となる構成。
最後の「火星の女」は、ある女子高の物置で起きた火事と、その現場から見つかった黒焦げの少女の遺体を巡る報道記事から始まり、この事件の首謀者である「火星の女」から「校長先生」への手紙によって真相が暴露される構成となっている。

面白いのは、主人公である女自身は、伝聞や手紙という体裁の中でしか登場しないということだ。直接的に描写されないからこそ、彼女たちはより神秘的に輝くし、また魅力も増す。夢野久作らしい仕掛けと練った構成、そして少し歪んだ世界が堪能できる短編作品だ。

特に、個人的には、「何でも無い」の姫草ユリ子にはとても惹かれる。美少女と虚言癖。その設定だけでもすでに魅力的ではないか。彼女の嘘の大胆さには格好良いって感覚を抱いてしまう。

はて、姫草ユリ子ははたして本当に自殺したんだろうか。彼女の虚言癖は、必ず月初めということが明らかになるが、遺書に残された日付は12月3日だ。小説内では、このあたりの説明などはないけれども、こういうちょっとした徴に、あーだこーだと頭を働かせられてしまうところが、夢野久作作品特有の迷宮ぶりなんだろうと思う。

夢野久作なら、「ドグラ・マグラ」は間違いなく大傑作で、死ぬまでに絶対に読んでおきたい一冊にあげたい小説だけれども、長編ということもあり、いきなりここにチャレンジするのもハードルが高いという人もいるだろう。というところで、彼の世界観に足を踏み入れるなら、この「少女地獄」などは、文量的にも作品自体の面白さも丁度いい入門書的な役割を担うのではないかと思う。

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