雇用を生み出してるのはベンチャー

medium_6812456155photo credit: Barack Obama via photopin cc

もう随分前の話だが、昨年開催されたKRP-WEEKの中での1セッションで、で起業家むけセミナーとして「ビジネスプランって何?」というセミナーがあって、その時の話で印象に残ってる話がある。

講師はSARRの松田さん(合同会社SARR-Science & Research for Reconstruction)。松田さんは、自身も国内初の地域密着型ベンチャーキャピタルである北海道ベンチャーキャピタルを設立したりと、自ら起業家でもありながら、起業家の支援活動をずっと行ってこれれた方だ。

そのセミナーの中で、極めて興味深い論文が取り上げられていた。

「日本経済再生の原動力を求めて」(BDTI:日本経済再生の原動力を求めて)という一橋大学経済研究所の深尾京司教授とに日本大學の権教授がまとめた論文だ。

興味深かったのは、「誰が雇用を創出しているのか」というポイント。

論文では、雇用を生み出してるのは、実は、創業10年未満の若い企業(と外資系企業)であり、また活発な雇用を創り出しているのは、従業員5人未満の零細企業と、500~1,000人規模の中堅企業であるということが明らかにされている。
大企業や社齢が高い大企業は、雇用を生み出していない。海外移転や国内子会社への雇用移転などもあり、ここ数年、雇用を生み出すどころかむしろ比率としては喪失させてきていたという実態が報告されていた。

実際のデータの読み方や解釈の仕方は色々あるだろうけれども、単純にこの調査結果から考えるならば、日本における経済施策の1つとして起業促進がいかに重要であるかがわかる。起業が増えなければ、雇用が促進されにくい。雇用が促進されなければ、経済成長や発展は難しい。

起業家促進施策というのは税制面やら法制面、教育機関との連携など、様々な要素が必要で、それらは政府や行政も取り組んでいるのだろうけれども、民間レベルでも起業家の支援や起業家マインドの育成みたいなことは意識していくべきだろう。

「起業家」の創出が経済の活性化に重要である、という背景がありつつ、残念ながら日本という国での「起業家マインド」(起業性)は、先進諸国の中では、極端に低い。これは、毎年世界で行われてる「グローバル・アントレプレナーシップ・モニター調査」の結果を見ても明らかだ。

グローバル・アントレプレナーシップ・モニター調査とは、その名の通り、起業活動の水準を国ごとに調査するものだ。
大和総研ホールディングス /コラム:長期的な成長戦略を支えていく起業家教育」には次のように触れられている。

国内の起業活動は、景気低迷の長期化を受けて好ましくない状況にある。2009年のGEM(グローバル・アントレプレナーシップ・モニター)調査 によると、起業・創業の活性度合いを示す「起業活動率」は3.3%である。2004年調査の1.5%から上昇してきたが、2008年調査(5.4%)から5年振りに減少に転じた。最近発表された2010年調査でも3.3%と、調査対象全59か国中58番目という下位に低迷している。


同じKRPの別のセッションでも、アメリカやシリコンバレーなどでは、どんなに小さな会社でも、自身で会社を興して、会社をやっているということは、周りの人から尊敬される。それはどんな大会社の高いポジションよりも自分で会社をやっているということは評価に値するのだ、というような話もあった。そういう文化もアメリカやシリコンバレーが起業欲を駆り立てる大きい要因にもなっているのだろう。

よく言われるが、日本ではベンチャーでの失敗が、そのまま失敗者としての烙印を押されて付きまとい、それがネガティブなイメージとして語られることが多い。シリコンバレーなどでは、むしろ起業経験、起業の失敗などは、その人の経験や知識を見る上でも重視されており、ベンチャーキャピタルの中では、何回かの起業失敗をしていないと、大きい出資に踏み切らないということもあるということだった。このへんの感覚も随分違う。

ただ、ここ最近では随分と状況も変わりつつあるようにも思える。学生のマインドの変化とか、それまでの日本のVCとは違う欧米型のVCや、新しいタイプの個人投資家の登場やら、スマートフォンやfacebookみたいなグローバルを前提としたプラットホームの浸透やらと、そういう状況やら環境が後押しをして、随分と「起業」というものへの意欲も盛り上がってきてるようにも思える。
実際、それが数値としてどうなのかはわからないけど、ムード的にはITバブル以前でのITベンチャーブームの時にぼこぼこと新しい企業が生まれてきたような時と似たような感じを受ける。これはとても良いことだ。こういうトレンドをもっと盛り上げていくべきだと思う。

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