儲けを生みだす表現力の魔法―感動は設計できる

儲けを生みだす表現力の魔法―感動は設計できる

儲けを生みだす表現力の魔法―感動は設計できる

人身事故で新幹線がとまっていたときに読んだ本。
著者は「100万人感動倶楽部」なる会員組織を主催する自称「感動プロデューサー」だ。

下手するとそれこそ30分もかからないうちに読み終えてしまいそうなぐらいに文字数が少ない本だし(やけに空白が多い。1ページの文字数が少ない。小林恭二の小説みたいだ)、書かれてあること自体は他でもよく見られるものでとりててて目新しさはないのだけど、説明や考え方の見本として使われる題材や比喩が演劇や映画、歌舞伎といった分野だったりして、ボクにとってはちょっと新鮮だった。ボクはもともと8mm映画を撮ってた人間なので、映画や演劇のことはある程度知っているつもりだったけど、たとえば、戦略を「脚本」、戦術を「演出」、「戦闘」を「表現力にたとえるような発想は全然なかった。(著者は「戦略」や「戦術」「ターゲット」「攻略」といった言葉が、「戦争用語」だという点に疑問を感じる。「誰に勝つ負ける」なのかと。こういう考え方・視点は面白い)

著者が主張しているのは実に単純なことで、とにかく顧客を感動させようということだ。それも心の底から、本当に感動させなくちゃならないと。感情を揺さぶるには表現力を鍛えるしかない。では、その表現力を誰に学ぶか。それはそれを一番知ってる人に学ぶのが良い。それは常にお客さんが感動したかどうかを価値基準とし、それを実行している演劇の役者や脚本家、映画監督、俳優、ディズニーランドのキャストといった人達を参考にしようということだ。

著者自身、演劇をやってきたことで、演劇とマーケティングを融合させ生み出した「感情」に働きかけるマーケティング手法を生み出し、それを著者は「ドラマティックマーケティング」と名づける。

マーケティング手法の名前はどうでもいいけど、神田さんは自身のマーケティング手法をはじめ「エモーショナルマーケティング」と言った。こちらも顧客の「感情」という普遍的で変わらないもの(と、神田さん自身は考えている)と考え、そこに焦点をあわせたマーケティング手法だった。
神田さんがダイレクトマーケティング業界で培われてきた考え方や、心理学的アプローチを採用し、顧客の心理的側面、反応をマーケティングにうまくいかすための施策を語るのに対して、平野さんは、顧客の感情を階段を上るようにして、これでもかこれでもかと高めさせていくことで、「感激」してもらうことが大事だと説く。
神田さんが「変化球タイプ」なら、平野さんは「直球勝負タイプ」といったところだろうか。もちろんどちらが大事とか重要とか偉いとか、そういう話ではない。重なる部分は多いけれど、タイプとしては全然違う。

顧客の感情段階とは
著者は「感動は設計できる」と主張している。「感動」は「顧客満足」という次元にはない。そのことをわかりやすく次のような公式を使って表現している。

顧客の期待>実行
は不満・クレームにつながり、
顧客の期待>>実行
は、怒りや「こんな商品買っちゃいけない」という口コミにもつながる。

顧客の期待=実行
ならどうか? もちろんこれなら「顧客満足」につながろうだろう。でも実は「顧客満足」が高くてもブランドスイッチは起こる。本書でも取り上げられているGMの調査は有名だ。90%の顧客が「満足した」「とても満足した」と答えたのにも関わらず、買い替え時にGMの車を選んだのは僅かだったという結果だ。この結果はよく単なる「顧客満足」では、ブランドスイッチを防ぐことはできないという事例の典型としてよく使われる。

では、著者はどう考えるか。
顧客<実感 を提供することだ言う。
期待通りの「実行」ではなく、期待を超えた「実感」を提供すること、これしか成功の秘訣はないと言い切る。

さらに、
顧客<<実感
では顧客は感激し、
顧客<<<実感
では感謝や熱狂のレベルになる。

つまり、提供すべき感情のレベルは、

怒り<不満<満足<感動<感激<感謝・熱狂

ということになる。

「満足」という地点に立ち止まらず、「感動」さらには「感激」、そして「感謝・熱狂」という境地にまで顧客の感情を持っていかなければならないというわけだ。

カンカラコモデケア
感動を巻き起こすためには、「表現力」を鍛えなければならない。伝わらなければ、感動など到底起こすことはできない。ということで著者は、「表現力」を磨く方法や、感動させるための表現方法などをレクチャーしてくれる。
いくつか面白いものがあったが、1つだけメモ代わりに取り上げておく。それは「カンカラコモデケア」だ。

毎日新聞広告局長だった故山崎宗次さんが主催した「山崎マスコミ塾」の中で語られた伝説の作文術である「カンカラコモデケア」。
「表現」に「カンカラコモデケア」を盛り込むことで、より伝わる表現になるというものだ。(ボクは「カンカラコモデケア」という言葉は聞いたことがあったが、誰がつくったものかは知らなかった。検索してみると、がんばれ社長では、評論家の扇谷正造さんが著作のなかで書いていたとされている。)
  • カン
    感動」:文章に「感動」を入れる。「はっ」とするような驚きや発見、自分が感じた感情を入れるということ。
  • カラ
    カラフル」:視覚の大きな要素、カラー(色)を入れる

  • 今日性」:旬な話題、情報を入れる。

  • 物語性」:ストーリーを語ること

  • データ」:データを入れる

  • 決意」:強い思いやメッセージを入れる

  • 明るさ」:明るい未来を感じさせるもの、文章自体の明るさ
ボクの書く文章には、基本的に「カンカラコモデケア」が欠けてるなぁと痛感。
「カンカラコモデケアカンカラコモデケアカンカラコモデケア…」と、念仏のように唱えてこれから文章を書くことにしよう。

カンカラコモデケアについては、以下のページにも詳しいことが載っている。参考までに。

カンカラコモデケアの法則
http://www.willseed.co.jp/diary/html/200307/25.htm

がんばれ社長!-文章力を鍛える-
http://www.e-comon.co.jp/magazine_show.php?magid=256

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