オオヤミノル「美味しいコーヒーって何だ?」

オオヤミノル。知る人ぞ知る、京都在住の焙煎家だ。オオヤさんのコーヒーといえば、真っ黒な深煎り豆だったり、「ジュースのような」と表現されるような独特の酸味だったりするのだけど、そう言ったオオヤテイストも、実は色んなコーヒーに情熱を注いだ先人たちの努力や工夫をオオヤさんなりに研究し、追求してきたものだったんだな、ということが本書を読むと垣間見られて面白い。僕はてっきりオオヤさんって人は、もっとアバウトというか、あまり歴史とか研究とか、そういう積み上げ式の努力みたいなものから少し距離を置いてる人なんじゃないかと、勝手に想像してたところがあった。なので、本書でのオオヤさんはすごく意外で新鮮だった。

僕は、知り合いから紹介してもらって、三年間前ぐらいからオオヤさん焙煎の豆を定期購入させてもらってる。直接お話をさせてもらったことは殆どないけれど、イベントなどにはちょくちょく顔を出させてもらって、直接オオヤさんがコーヒーを淹れる様も何度か見ている。そのコーヒーを淹れる姿とか、その道具がなんとも格好いいのだ。型にはまってないというか、いい意味での「テキトーさ」というか、焙煎やコーヒーを淹れることを仰々しいものとして捉えず、すごく自然な感じがして、豆の味とかそのものよりも、むしろそういうオオヤさんのスタイル含めて、僕はオオヤさんの焙煎した豆が好きなのかもしれない。

オオヤさんから豆を買わせてもらってはいたものの、実際、焙煎のことなんてなんにも、知らなかった。
この本読んで、初めて、こんなにマニアック、職人の世界なんだと知って、かなり吃驚した。

そこまで微妙な風味にこだわって、それこそ何秒空気を入れるとか熱するとかそんなレベルで味を追求している人がいるなんて、コーヒーの世界ってのは深いんだなぁと。

僕なんて、またまだ大雑把な味しかわかんないから、そこまで繊細に意識された淹れたコーヒーも、インスタントも、殆ど見分けもつかないかもしれない。
もっとほんとにおいしいコーヒーを飲んで舌を鍛えないとね。本書に登場する名店と呼ばれるところに行って、そこまでのこだわりを体験してみたいなぁ。

しかし、本書のオオヤさん、ほんと格好いい。いや、普段が格好よくないという意味ではないんだけど、コーヒーにこんなに熱いってこと知って、また一層好きになった。

数々のダメ出しをされながら、食い下がり、諦めないその姿勢。とはいいながら、強引に自分の主張を押し通していくのでもなく、きちんと相手の言ってることや、その意味も把握して、受け止めていこうというひたむきさと、探求心、向学心。オオヤさんってそんな人だったんだ。僕は良くも悪くももっとちゃらんぽらんで、自己流で、自己主張が激しく、テキトーな人だとばかり思い込んでつけど、本書のオオヤさんは、いい意味でそんなイメージを完全に崩してしまった。なんて熱心、なんとコーヒーに愛情を注ぎ、コーヒーのことを真剣に考えてるのだろう。

もちろんオオヤさんだけでなく、本書でのオオヤさんと対談してる方々のコーヒーに対しての造詣や意識の高さは半端ない。

最近、所謂、サードウェーブと呼ばれるような、新しいコーヒーの提供・消費スタイルが日本でも徐々に広がりを見せつつあり、多くの若者たちがお店をオープンさせているけれど、まだまだオオヤさん世代、あるいはその上の世代の人たちにも頑張って欲しいなぁと。

オオヤ深煎り、どんなにダメ出しされても、僕は多分ずっと好きだし。

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