サービスの100%保証システム
Harvard Business Review 2004.6月号に1998年マッキンゼー賞受賞論文の「サービスの100%保証システム」が掲載されている。1998年ということでちと古いし、「100%保証」って概念は、日本なら神田さんをはじめとするマーケターに紹介されてるので、比較的馴染みある概念なので、今更という感じもしないではない。しかし、実は僕らのようなサービスで100%保証ってのが可能なのか不可能なのかってことについては、個人的には随分と前から考えていることだ。たいてい誰に言っても「無理」と言われるのだが….
顧客満足を100%保証すると謳うには以下の5つの条件を満たしてなければならない。
- 留保条件がない
- わかりやすく、伝えやすい。
- 何らかの意味がある
- 保証の請求が簡単で、顧客に負担がかからない。
- 払い戻しがスピーディーである。
100%保証を謳っていても、これらの条件を満たしておらず、結局「詐欺」に近いことをやってる企業も多いだろう。いざ保証を利用しようとなると、厳密な審査があったり、何枚も書類を提出したり。もともと実はものすごく細かい条件がついていたりとか。
これらの条件を満たせないなら、100%保証の意味はほとんどなくなる。逆に、顧客不満足を導くだけだ。
しかし真の100%保証を掲げるならばその企業は以下の5つの副産物が得られると筆者は主張している。
- 組織全体が、マネジャーの仮説ではなく、顧客が定期する「優れたサービス」に注目するようになる。
- サービスに関する具体的な基準を設定し、従業員のサービスの質やモラールを向上させる。
- サービスが悪い場合、それを示すデータが払い戻しを通じてフィードバックされる。
- サービス・デリバリー・システムにおいてミスが発生しやすい部分をおのずと検討するようになる。
- 顧客の信頼を得ると同時に、売上げやシェアが向上する。
100%保証ってのは、どちらかというと顧客獲得側面での「手法」として語られることが多いけど、それよりも実は、100%保証は組織の改善に大きな影響力を及ぼすのではないか。つまりここで言うように、組織全体が、自然と顧客視点にたったサービスのあり方ということを考えるようになるということだ。顧客視点にたったサービスとは言うは易し、行うは難し。100%保証っては荒治療だけど、組織に顧客視点を導入するには良い方法かもしれない。もちろんリスクは大きいけど。
この論文の前半にでてくるマイアミを拠点とする害虫駆除会社、バグズ・バーガー・バグ・キラーズ(BBBK)は、競合のほとんどが「納得できる水準まで駆除するまで(害虫を)駆除する」と謳ってるのに対して、「完全に退治する」ことを約束している。
その徹底した約束は凄い。「建物内から害虫獣が根絶するまで、びた一文もいただきません」「サービスに満足いただけない時には、最長一年にさかのぼって料金を払い戻し、さらに翌年貴社が選ばれた当社以外の駆除会社の料金をお支払いいたします。」などなど。
100%満足しない場合には料金は貰わないということを宣言している。
この保証制度によってBBBKは、同業他社の最高10倍もの料金を設定していながら、各営業地域内ではずばぬけた高いシェアを誇るという。
1986年は売上3300万ドルに対して、支払った保証金は12万ドル。売上から見ればびびたるものだが、この保証制度が嘘ではないことを示している。
Webソリューション分野で100%保証の可能性はあるのだろうか。
一切ミスがないプロジェクト。顧客が100%満足してくれるプロジェクト。もちろん常にそんなプロジェクトを手掛けたいと思うが、実際はかなり難しい。
でも分野を絞ったり、商品を特定すれば100%保証ってのは十分考えられるだろう。それは顧客にも意味ある保証になるだろうと思う。それが何かはここでは語らないけど。