売れる仕組みこうすれば顧客は離れない

売れる仕組みこうすれば顧客は離れない」(服部隆幸)

服部さんの本は、ほとんど読んでいる。彼が生み出した「売上」の因数分解式は、最初の本から登場してくるもっとも重要な考え方の一つだ。僕はこの売上方程式を知って、はじめてOneToOneマーケティングの具体的な戦術の組み立て方法を知った。それまでドン・ペパーズの本を読んだり、さまざまな解説書にあたってはいて抽象的にはOneToOneマーケティングの重要性や可能性、考え方ということを知った気にはなっていた。けれど本当の意味で実践や現場に結びついたOneToOneマーケティングを学んだのは、服部さんの「入門ワン・トゥ・ワン・マーケティング―〈顧客〉ではなく〈個客〉の満足を高める新手法」を読んだときだと思う。それ以来のファンで出る本は必ず購入している。

本書もこの売上方程式をベースとした、リレーションシップの考え方、LTV向上とは何を意味するのか、優良顧客とは? といったマーケティングタームとしては当たり前すぎて誰も疑わなかったような概念を一つ一つ精緻に定義づけし、その間違いや誤解を解き解いていく。

OneToOneマーケティングは「優良顧客」を識別し、優遇するという考え方がベースにあるが、服部式のOneToOneマーケティングは、「優良顧客」だけを優遇しているような方法では売上は伸びないと断言する。「優良顧客」の識別方法として、一般的なのはABC分析やRFM分析などがあるが、本書ではRFM分析で識別された「優良顧客」がいかに一過性のものに過ぎず、そのような方法をベースとしたマーケティングアプローチでは駄目かということがかなりのページ数をもって語られている。

なるほど、確かに言われてみればそのとおりと思うことばかりだ。

服部式ではRFM分析ではなく、グレードアップ分析を行う。

グレードアップ分析とは、「過去から今日までの顧客ごとの累積売上金額」をもとに、顧客のグレード(等級)を区分けし分析を行う方法だ。RFM分析では、しばらく購入しなければ顧客のグレードダウンが生じるが、グレードアップ分析では、「累積売上」がベースとなるため顧客のグレードダウンは絶対に生じない。

分析に基づいたグレードに属する顧客に対して、グレードアップのためのリレーションシップシナリオを構築していく。優良顧客だけを優遇するという発想ではないところがミソだ。

グレードアップ分析の4つの基本型は以下になる。

Gは「グレード」のことであり、グレード分析はグレード軸に対して、「Recency:最終購入日」「Frequency:購入頻度」「Monetary:購入金額」というRFM分析の3軸をそれぞれ置いて分析を行う手法である。

G0分析(ジーゼロ分析)

  • グレード軸だけの分析手法
  • 顧客がどのグレードにいるかを把握し、リレーションシップ対応を変えていく

GR分析

  • 最終購入日を重視する業種、百貨店、アパレル、流通小売などに適する
  • 目的は、「グレードアップ」と「直近来店購入促進」
  • 顧客のLTV価値の評価のために使われる

GF分析

  • LTV評価を行うための分析手法
  • GR分析と同じような使い方。
  • 購入頻度を重視する業界(自動車、耐久消費財など何回購入して頂いているかがLTV評価に重要な商品)に適する

GM分析

  • 購入金額を重視する業界で適用する分析手法。

GR、GF、GM共に「売り場単位」と「店舗単位」、そして「全店舗単位」で分析を行い、基本的には、

  1. グレードアップシナリオを構築するため
  2. リレーションシップの目的を明確にするため
  3. グレードごとの顧客の活性化を評価するため

に使う。

顧客を切り捨てて、優良顧客に優遇するためではなく、各グレードにあわせたリレーションシップシナリオを構築し、各グレードの顧客を次のグレードにアップさせること、また、各グレード内から関係を切ったほうが良い顧客を発見すること。

この考え方は言われてみればなるほどなのだけれど、RFM分析やABC分析といった「切捨て」「発見」型のアプローチに頭を犯されているとなかなか思いつかない。

また、「リレーションシップ」も単に、「関係構築」といった漠然としたものではなく、それはシナリオがあり、そのシナリオはあくまでも顧客のグレードをあげるために行うものであるということも抽象的なマーケティングの考え方からは生まれてきにくい考え方だと思う。

今、いくつかのECサイトの提案や開発やコンサルティングを行っているが、ECサイトに服部式を応用したプランを適用してみることを考えてみよう。

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