『脱・場所貸し業』模索

昨日(2004年12月22日)の日本経済新聞に「『脱・場所貸し業』模索」(下)という面白い記事が載っていた。

三越は「お帳場客」と呼ばれる富裕層顧客を抱えており、これが三越の強みでもあった。しかし、顧客の高齢化が進み、現在26万8000人いるお帳場客の大半が60歳以上らしい。
このままでは先細りになるということで、顧客層を広げる試みとして導入したのが「三越版CRM」。

買い上げ顧客数に買い上げ頻度を掛け合わせた指標の「L値」を開発。全売り場でL値を5%アップさせる運動を始めた。
例えば、L値導入で本店婦人靴売り場では従来、顧客の八割が年一回しか利用していなかったことが判明。リピート率を高めるために導入した足の診断カルテを印刷したポイントカードが好評で、今上期にL値と売上高が前年同期比それぞれ14%、11%増えた。

顧客数と買い上げ頻度で分析するという方法自体は別に珍しいものではない。そもそもそんな顧客情報を保持していながら、分析がまったく行えてなかったということに少し驚いた。

この前紹介した服部さんの本のなかでは、「グレードアップ分析」ということで今までの商品購入総額をG=グレードとして、そこに「最終購入日」や「頻度」といった軸を絡めて分析していく手法が紹介されていた。
その本のなかでも再三語られていたが、RFM分析やABC分析といった「切捨て」型の分析ではなく、顧客をセグメントごとに「グレードアップ」させていくという方向転換が必要であるということ。CRMにRFM分析などが組み合わされた場合、ついつい上位客と下位客を明らかにし、下位客へのコミュニケーション頻度を下げて、上位客ばかりを狙うということになりがちだ。しかし、あたりまえだけれどもそのような分析で上位客ばかりにコミュニケーションを行っていれば、上位客はすぐに下位客に転じていってしまうだろう。

三越版CRMのL値は「切捨て」ではなく「グレードアップ」戦略だ。
L値の「グレード」に基づき、それぞれのグレードを一つ上のグレードにアップさせるためにどのようなコミュニケーション、リレーションを行うべきかという発想に基づいている。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です