ポストモダンマーケティング

Axela生活も1週間が経ったわけですが、今日700kmを超えた。
来週は1,000km点検だなぁ。今日はなぜか淡路島にいってタコを食って帰ってきた。
行きは明石大橋帰りはフェリー。2年間海外を放浪してたSとも会えて、なかなか面白い1日でやした。

ポストモダン・マーケティング―「顧客志向」は捨ててしまえ!
スティーブン・ブラウン

ダイヤモンド社 2005-01
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おすすめ平均 異性の口説き方を考えてみると。。。
この世でもっとも不足しているものは『不足』である!
マーケティングに答えは無い。

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タイトルに惹かれて買った本。マーケティングまで「ポストモダン」か。著者のスティーブン・ブラウンはハーバードビジネスレビュー誌上でコトラーと論争などして有名。ドラッカーやレビット、コトラーといったマーケティンググルをからかい、捻くり、あざ笑う「異端者」だ。

内容はたいしたものとは思えない。「『顧客志向』は捨ててしまえ!」というサブタイトルがついているが、ブラウンが言ってるのは「他人と違うことをせよ」ということにつきるからだ。全員が顧客志向を唱えるなら、「顧客志向」を捨ててしまえというわけだ。
しかし、登場するさまざまな事例やトリビア、そして人を小馬鹿にしたような皮肉たっぷりの文章、レトリックは今までのお堅いマーケティング書とは明らかに違う。要はこの本自体が他と「違う」という意味で、彼の唱えるマーケティング論を具現化しているのだ。

ブラウンはマーケティングの目的を「消費者にモノを売ることです。それ以上でもそれ以下でもありえません。」(P.66)と言い切り、顧客志向というのはその手段の一つだけれども、顧客を無視したり、否定したり、拒んだりすることも有効だとする。つまり「顧客志向」が溢れ変えってるなら、「顧客志向」を捨ててしまうこともマーケティング目的を達する戦略の一つになりえるのだというわけだ。

「誰もが例外なく顧客第一主義を主張し顧客を甘やかすことでは一致団結している世界で、競合優位をどうやって達成することができるのでしょうか、そしてもっと重要なことは、それをどうやって維持することができるのでしょうか?」(P.2)

ブラウンはSTP(セグメント/ターゲティング/ポジショニング)や3C、4Pといったマーケティングの概念に変わる戦略としてTEASEを提唱する。(「TEASE」という言葉自体が「からかう」なのだけど)

TEASEとは、Trick(トリック)、Exclusivity(限定)、Amplification(増幅)、Secrecy(秘密)、Entertainment(娯楽)という言葉の頭文字を繋げたもの。マーケティングに必要なのは「顧客志向」ではなく、この5つだと言う。

トリック
真実を誇張した仕掛けで売る。
「トリック」の例としては今世紀最大の発明などと商品が明らかになる前に大量のパブリシティを生み出した「ジンジャー」の事例などがある。

限定
希少価値の戦略。まぁ「限定」するってのは古くからある手法だ。旧大阪球場前のスーツ屋は何十年間「店じまいセール、本日限り」をやり続けていた。
「希少性」をコントロールすることで大成功をおさめたのはダイヤモンドのデビアスだろう。ダイヤモンドは別に希少性の高いものでもない。地球のどこでも手に入る。デビアスはほんの10年前までダイアモンドの市場を事実上独占することによって、希少性を人工的に作り出してきたわけだ。「誰もが所有するようになれば、繁栄の終わりは近くなります」(P.129)は真実だろう。

増幅
ウワサになっていることをウワサにして売る。これまた古典的な手法だ。
過激な広告で物議を醸し出し、それによって大量のパブを獲得するベネトン。
「ピカソの名前を悪用したかどでフランス芸術体制派の怒りを買い、そのことが大きく宣伝されたおかげで一万台もの予約注文を受けた」(P.160)シトロエンの「ピカソ」。

秘密
そのまま。人々は「秘密」が好き。「秘密」で誘惑して人々に追い掛けさせようということ。ケンタッキーフライドチキンでお馴染みカーネルサンダース。秘密の材料の秘密は、秘密の材料が存在しなかったこと。KFCの「真の」秘密は、カーネル・サンダースが最高のショーマンであ」(P.183)ったことのようだ。秘密は不思議を誘い、不思議は誘惑を促進する。

娯楽
「想像を超えた驚きと変化の素早さで売る」
ラスヴェガスなんてその象徴みたいなところだろう。しかし、世の中にはエンターテイメントがありふれてるわけで、そのなかでさらに一枚上のエンターテイメントじゃなきゃならない。マドンナが事例としてとりあげられている。その過激さや過激さで増幅を勝ち取っていく功名さ、そして何よりもコロコロと時代にあわせて変わっていく節操のなさ。ここで書かれてることが本当ならマドンナってのはかなりのやり手だ。

最後に、「ハリーポッター」を昨今の事例のなかで最高のトリックスターとして分析している。「ハリーポッター」TEASEのすべてを兼ね備えている。本が手に入りにくい環境をつくりだしたり、トップシークレットのはずの発売前の本が「不可抗力」でウォルマートで販売され、それを購入した子供が「奇跡的にも」世界中のマスコミに発見・追跡され…と、このあたりの事例を著者は、明らかに「秘密」をつくりだそうとする、そしてそれを「増幅」させようとするハリーポッターマーケティングであり、意図的に生み出され、コントロールされているという立場にたっている。大袈裟に宣伝されるのを嫌っているという著者のJ・K・ローリングのウワサはマスコミにとりあげられ、それ自体が大きな宣伝にもなっていたり。

本書で言われてることを否定するわけではない。顧客志向を捨てよう、という過激な煽り自体が、「増幅」の役割を担っているのだろうし、「秘密」でもあるのだろう。ただ、この本をそのまま鵜呑みにするのもどうだろう(ってそんな奴はいないか)。取り上げられている事例はかなり偏ってるし、極端すぎるものが多い。でも、一旦立ち止まって「顧客志向」を疑ってみることは必要だろう。差別化や競争優位の戦略を「顧客志向」を強化していくという馬鹿の一つ覚えみたいな方法しか持ち得ないようなら、それはそれでかなり問題だろう。

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