千円札は拾うな。

先週、なんとか引越をしたのだけれど、まだ家に問題がありすぎて、全然片付いてない。とりあえず寝られるというレベルで、しばらく時間がかかりそうだ。

電車通勤になったので、何冊か本を買った。前から気にいっていたのだけれど、タイトルが狙いすぎてるんじゃないかというまったく個人的な好みで敬遠していた。
でも買って本当に良かったと思った。

千円札は拾うな。
千円札は拾うな。安田 佳生

サンマーク出版 2006-01-20
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この手の経営哲学みたいなものというのは成功者には何かしら必ずあって、ある人はこう言うけど、別の人はまったく正反対のことを言ってる、なんてことはよくある。
どれが正解というわけではなくて、結局のところ、その考え方やポリシーに一貫性があるかどうかということだけが重要なのだろうと思う。ダメなのはある処ではこっちを真似て、またある処ではあっちを真似てというような無節操さなのだろう。

成功する人ってのは、自分が信じているものに自信があり「世間的には」「一般的には」「常識では」というような標準化されたマニュアルからはみ出してしまうことをいとわない。むしろはみ出しているからこそ、差別化でき、競争優位を築いている。
本書で書かれていることを実践していくには、相当の覚悟と自信が必要だろう。

本書の安田佳男さんの経営哲学の根本には、ビジネスとはまず投資だという考え方がある。そして、何十倍、何百倍という投資効率を生み出す可能性があるのは、人材情報、そしてブランドだけだ、と言い切る。

だから安田さんは、まず人に投資する。「優秀な人材には仕事をさせない」という過激な見出しも、裏を返せば、優秀な人に「自由な時間」を与えるほど効率のいい戦略はない、という投資対効果の考えがある。人の最も大切な能力は「新しいものを生み出す能力」であり、優秀な人はそれができる。目先の利益や売上を優先し、優秀な人が目先の仕事をこなすことに追われるほど無駄な投資はない。

社員が恐縮するぐらい大きな金額の決済権を与えることによって、社員にお金の使い方を学ばせたりということも、人への投資の一貫だ。会社とは決済する人が寄り集まっている場であり、社長とは一番決済できる金額が大きい人だ。だから一人一人の決済能力を育てることが、会社の成長にも繋がると考える。

また、本書では何度も登場する言葉で、タイトルにもなっている「捨てる」という勇気。今までの常識や偏見を捨てることによって、新しい価値を見いだしたり、大きな成長ができるのだと言う。「売上を伸ばすために顧客を捨てる」「大切すぎる顧客は作らない」という考え方も目の前の千円札を捨てることによって、より大きなお金を得ることができるという本書のタイトルに繋がっている。

常識や既存の事業の延長でしかビジネスを描けない状況を打破するためには、常識外れの目標を立てなければいけないと言う。これも安田さん流の捨てるためのフレームワークだろう。

残業をやめて週休3日にする」というところから考えてみる。
これはもうビジネスのやり方、方法、プロセス、すべて変えて考えなければならない。今やってることの改善だけでは到底可能にならない。
、常識外れだからこそ、まったく違うやり方、違う方法での解決を見つけ出さなければならなくなる。つまり頭を使わなければならなくなる。
松下幸之助さんの「値切りは半額に、値上げは三倍に」という考え方も根本はそこにある。常識の範囲内、今の延長でしか物を考えられないと、木を見て森を見ず。到底無理な目標があるからこそ、頭を使わなければならない。中途半端に1割、2割の値引きだと、下請けは頑張ってなんとかしようと思うかもしれない。しかし、半額となれば、頑張るでは通用しない。

東京に戻ってきて、いろいろな人から話を聞くごとに、ちょっとまずい状態だなぁと感じる。それは京都の比ではない。急成長、急拡大したツケが来ているということなのだろうか。

しかもボクも含めてだが、マネジャークラス以上全員が、今のビジネスモデルでしか事業を考えられてない。予算目標は昨年対比から自動で導き出され、そこから必要な社員数が割り出されて、採用が開始される… オペレーションができあがりつつあるといえばあるのだが、毎年毎年完全にゴムが伸びきった状態で、多くのスタッフが疲弊してぐったりするほどの状態でなしえたことを前提として、次年度戦略や予算をつくるので、規模が大きくなっていくごとに会社にとってすごく重要なものが疲弊していってる感は否めない。

取扱額が大きいという理由だけで、人を人とも扱わないようなクライアントの仕事が社員に任され、売上比率が大きくなっていけばいくほど、切られると困るという不利な立場に追いやられていく。

本書を読んで、会社のなかのさまざまな問題や課題が一気に駆けめぐり、今の考え方や常識に縛られてては、一向に問題は解決しないのではないかという思いが強くなった。僕たちは、もしかしたら「千円札」ばかり必死に拾っているのではないか。風に舞い、ちらばる千円札を追いかけ、少しでも取りこぼすまじと、人をどんどんつぎこんでは、ひたすら千円札を拾わせている。そんな気がした。

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コメント

  1. 本は読んでないんですけどね

    ワイキューブも、武蔵野さんも、
    けっこう知っていて、
    社内の現実をみると、
    どうにも、納得できない。

    それぞれ、社長さんたちは、
    キャラ立ちしているし、...

  2. はてさて より:

    千円札は拾うな。
    :疑うことと信じること
    気がつけば9月もまもなく終わり、長かった夏もようやく終わろうかと、今日の天気が...

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