いまさらながら「すごい会議」を

すごい会議』は発売当初に読んだのだが、最近再び読み返してみた。たまたまとあるプロジェクトで大橋禅太郎さんのマネジメント・コーチを受けた会社の方とご一緒したということもあり、そこでお聞きした話にも刺激を受けた。また、上期を終えて問題は多々ありながらも目標をほぼ達成し、下期または来期に向けて、新たな組織体制、人事によって前向きなムードが芽生えつつある今だからこそ、会社としての目標を再確認し、それをマネジメント陣できちんと共有したい、という思いがあり、もっと前向きで創造的な会議をしたいと再び手にとった次第だ。

すでにあまりにも多くの人が「すごい会議」を実践して、そのことについて書いているのだが、あらためて自身の勉強のため、『すごい会議』について考えて見る。進行方法や手順は本に書かれてあることにのっとるとして、実践してみて疑問に思うところやポイント、こうしたほうがいいのではないかという考えをまとめてみる。

会議の進行手順のおさらい

1)会議の参加者に「うまくいってること」を3つ以上書いてもらい、それを発表してから会議を始める

2)この会議で得たい成果を紙に書いて発表してもらう

3)達成の障害となっている問題や懸念を書き出し、それらを「どのようにすれば~」の形に書き換える。

4)「言えない問題はなにか」を書いてから、「どのようにすれば~」の形に書き換える。

5)「あなた自身のひどい真実はなにか」を答えを書いて発表してもらう

6)「戦略的フォーカス」を参加メンバー全員で創り、合意し、約束する。

7)戦略的フォーカスにニックネームを付ける。それを達成するのに、必要不可欠な担当分野を6程度決める。

8)コミットメントリストに各担当のコミットメントを記入する。

9)「いまから一ヶ月以内に、自分の起こす一番大きな、インパクトはなにか?」を各自が書いて発表する。


■問題や懸念点の解決方法

手順3)、4)、5)は言わば、「問題」「懸念」をその根本的なところまで遡って棚卸しするステップといえる。「言えない問題」というステップを踏むことで、表面的な問題からより深層の根本的な問題をあぶり出していくための質問だ。これらのステップの後に、「戦略的フォーカス」の作成へと進むわけだが、ボクがひっかかるのは、ここで棚卸しされた問題の解決案、解決方法を考えないのか?ということだ。 すでに「どのようにして~」という文章に変換することで、アイディアが出やすくなっている。その状況を一旦宙ぶらりにして、「戦略的フォーカス」に進むのはなぜだろう? 問題を棚卸ししてることによって「戦略的フォーカス」その後のコミットメントリストの作成といったものの土台が生まれているのかもしれないが、すべてでなくともその場で解決可能なことは合意しておいても良いのではないかと思うのだ。

『すごい会議』のなかでも問題解決方法が提示されている。
STEP.1 問題点または懸念を「どのようにすれば」という質問に変換、STEP.2 「私の主張では~」をつけて、現時点での状況を15個ほどあげる。 STEP.3 「私の提案では」をつけて、提案、代替案、創造的な解決策、検討の可能性をあげていく。ここからやるもの、やらないものを決めて、アクションを起こすのが適当な人に「リクエスト」を行い、コミットメントリストを作成する(担当者/期日/望まれる成果)。ミーティング終了前に、残った問題を誰がいつまでに解決するか(またはとりあえず放っておくか)を合意する。
この集団解決方法を、5)の後に置いてはどうかと考えている。これだけで、会議はおそろしく長くなってしまうだろうが、せっかくあがった問題や懸念点、それにたいして解決策がでやすい雰囲気が生まれているのだから、そこでできる解決のためのTODOは決めてしまったほうが良いのではないかと思うのだ。

・・・と思っていたのだが、ここを見ると、「
これは、意見は集めずに、「どのようにすれば○○か」という文章を集めるだけです。」との回答があった。
また、「手順6,7,8(※このエントリーでは3)、4)、5)のこと)は答えを作る場所ではないのです。」「問題を前向きな形でたな卸しするだけです。「答え」を提示する人がいたら、それはストップします(経営者自身がやってしまい そうになることも多くみます)ここで、誰かが「答え」を言ってしまうとドチッラケなのです。 その答えが、各自、 意識的または無意識のうちに手順11でコミットメントとしてその解決策が約束される可能性を最大化するためにやっているとお考えください。」という回答が…

なるほど。手順3)、4)、5)はあくまでもコミットメントの際に参照するためのものなのか… 

しかしこのFAQの存在は知らなかった。「1,3,5,2,4,6,7,8,9,1 0,11,12です。最初の1,3,5が準備段階で一人でやる部分で、2からが参加者と一緒にやる部分 です。」というのは手順を重視する「すごい会議」ではとても重要なことではないか。うーむ。後でこのFAQと手順を読み返してみてもう一度整理してみよう。

少し話は変わるが、そもそも「すごい会議」は、会議の効率を上げるための手法ではないということ。これは見落としがちだけれどもしっかりと理解しておかなければならない。
もちろん「すごい会議」は結果的には会議の効率を上げてくれるものではあるけれども、先に「効率の改善」を考えていると、おそらくうまく機能しない。そもそも会議は効率的かどうかよりも先に効果的かどうかを問わなければならない。どれだけ効率的でも、効果的ではない会議は意味がない。果たして今、会社で開かれる種々様々な会議が効果的かどうかということを問うてみよう。そして、効果を生むための会議手法として「すごい会議」の導入を考えると良いだろう。実際、最初に「すごい会議」を開くと、かなり時間がかかる。しかし、「すごい会議」でかけられた時間は、通常の会議のように時間のほとんどが「コメント」の交換だけで終わる会議より、ずっと大きい効果を得ることができる。


■会議の発言をファシリテーターがコントロールする

『すごい会議』の中で、会議の中での発言を「提案」「リクエスト」「明確化のための質問」の3つに絞るという方法がさらりと提示されている。このテクニックだけでも本書を手に入れる意味があるのではないかと思う。『すごい会議』の中で、大橋禅太郎さんがあれやこれやとこれじゃうまくいかないんじゃないか的な発言をしていたとき、ハワードさんが「では、おまえの提案はなんだ?」と聞いている。うまくいかなり理由を指摘するときは、「代替案を提示」しろということだ。ちょっとしたことだけれども会議内でファシリテーターがこの一言を発せるかどうかは鍵だろう。「リクエスト」の際には、「誰が」「特定の日付と時間」「そして、なにをもって成功とするのか」ということを記述するようにする。会議前のルールとして、会議では原則「提案」「リクエスト」「明確化のための質問」という3つのどれかを意識して発言してもらうことを説明しておくと良いかもしれない。
ちなみに、『すごい考え方』では会議では「一般的な意見」「提案」「コミットメント」という3種類の発言があり、会議の目的は最終的に「コミットメント」を得ることとしている。「一般的な意見」の中から「提案」につながる要素を抽出したり、そこから「コミットメント」を導き出したりという役割がファシリテーターには求められる。
書いてから発表する、という方法をとることそのことが、実は「コメント」を減らすことにもなるので、まずは面倒でもとにかく書いて、整理して発表するという手順を徹底させることも重要だろう。


■1つの戦略的フォーカスに収斂させる方法?

手順6の参加者全員で「戦略的フォーカス」を創り、合意するというところ。「X年Y月Z日までに~~~(なんらかの数字または測定できること)~~~を達成することによって、~~~(欲しいインパクト)となる。」という3行の文章を完成させるというステップだが、ここの進め方がいまいち理解できていなかった。ここでも、1人1人がこの文章を完成させて読み上げていくわけだけど、最終的にはそれを1つにまとめあげなければならない。「すごい会議」の第四章では、そのまとめあげかたは書かれていない。なんとなく意思決定者が最終的に決定を行うのかなというレベルなのだが、それで良いのだろうか?

意思決定者が最終決定を行うとして、せっかく1人1人があげている戦略的フォーカスだ。これをうまく収斂させてチームの目標にできなければ、その後のステップには意味がないのではないか。
1つの方法としては、全員の戦略的フォーカスが出そろった段階で、今度はそれらの戦略的フォーカスを包括するさらに上位概念の戦略的フォーカスを全員に考えてもらう、というステップをとる方法。そうやって可能な限り上位の包括的戦略的フォーカスをつくっていき、最終的に意思決定者によって決定する。最終の戦略的フォーカスへの合意の際にも、まず自分がベストと思うものを提示し、自身のアイディアが採用されなくてもなされた意思決定が正しく機能するためにサポートしていく姿勢を生み出す。


トップマネジメントから「すごい会議」を導入する

全員で目標をつくり、コミットメントリストをつくり、ということで考えると、「すごい会議」は合議に基づくボトムアップ型のマネジメントスタイルのように思える。「戦略的フォーカス」などは、トップマネジメントでつくり、それを達成するために各階層のマネジメントが行われるというようなトップマネジメントスタイルを志向する会社には適合しにくそうなイメージがある。トップマネジメントで「すごい会議」を実践するなら、そこで合意された「戦略的フォーカス」が会社目標となるから問題はないのだろうが、ある部門やある階層のメンバーで行うとなると、下手するとそこでできあがる戦略的フォーカスが、会社の方向性とそぐわないものになる可能性もあるのではないか。

そういうことが起きないようにするためには、結局、会社としての「戦略的フォーカス」と「コミットメントリスト」を社員全員が知っておかなければならないだろう。これは当たり前のことのようだけど、実際、売上目標などの数値目標以外、会社がどういう方向を志向し、どうなろうとしているのかということを社員一人一人にまで理解してもらうことは大変なことだ。まずはトップマネジメントが「すごい会議」でしっかりとした戦略的フォーカスとコミットメントリストをつくり、その目標にむかって邁進し、その成果を達成することのインパクトやすばらしさを伝えていくことが必要なのだろうと思う。

すごい会議-短期間で会社が劇的に変わる!
すごい会議-短期間で会社が劇的に変わる!大橋 禅太郎

大和書房 2005-05-18
売り上げランキング : 26309

おすすめ平均 starstarいやはやスゴイ・・導入は至難の技
star書籍の内容はともかく・・・
star非常に重要なことが2つ分かった

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク

コメント

  1. すごい会議

    すごい会議-短期間で会社が劇的に変わる!大橋 禅太郎 大和書房 2005-05...

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です