ネット時代10年後、新聞とテレビはこうなる


“ネット時代10年後、新聞とテレビはこうなる” (藤原 )

201X年にメディアの真の「融合」が実現する。筆者はその概念を「eプラットフォーム」という言葉で表現する。その「融合」はホリエモンが掲げたように、テレビ番組とインターネットサイトが連動・連携するというような生易しいものではない。「eプラットフォーム」上では、すべての旧メディアはeプラットフォームにメディアとしての役割を譲って「コンテンツ・プロバイダー」に変わっていく。つまり、「メディア」=「コンテンツの媒介物」と「コンテンツ」が分離し、すべてのコンテンツが同じ「メディア=eプラットフォーム」上にのっかるという世界だ。

「eプラットフォーム」は、いわば「インターネット」の未来系のことだ。現行の通信法や放送法の制約によって実現できてないものが、2011年の地上派の完全デジタル化、それとあわせて起きているブロードバンド環境の浸透、そして圧倒的なハードディスク容量を持ったテレビ、パソコンの登場といった条件が絡み合い、201X年に「融合」が起きると著者は力説する。

本書で描かれる世界や問題に特に目新しさはないし、「eプラットフォーム」という概念もどちらかというと、新聞社やテレビ局の重鎮にわかりやすく説明するために作られたメタファーのような気もする。(著者は「メタファー」ではなく、本当にそういうものが実現すると信じてるようでもあるけれど) ただ、通信、放送の問題や、新聞社が抱える問題など、アメリカの事情なども交えてわかりやすくまとまっている。

確かに、ボクらの業界にとっても2011年というのは、とても重要な年だ。あと5年だ。この5年間の最初の1年が2007年、今年だとボクらの会社では位置づけている。2011年に向けてコミュニケーション業界がどのような変化を進むのか、まだわからないことも多い。しかし、この業界においては確実にパラダイムシフトが起きるということは間違いないだろう。そのためにボクらが準備しなければならないことは何なのか、本書はそのことを考える素地をつくってくれると言えるだろう。

以下、レバレッジ・メモ。

(本書の内容とはほとんど関係ないけれど、個人的に面白かったのでメモしているところも多いので…)

  • 新聞というメディアの経営は、販売収入と広告収入がほぼ同じ
  • 米国は1970年、電波を使った放送免許を握るてテレビ局が娯楽番組を自社制作することを禁じる規制を導入し、政策的に放送のハード(電波放送)とソフト(番組制作)を分離した」(日本経済新聞05年12月20日)
  • 日本の放送業界はソフトとハードの一体体制となっている。
  • 米国における利用者が五千万人に達するまでの年数が、ラジオの三十八年、テレビの十三年に比し、インターネットは四〜五年である。
  • テレビの視聴時間が減少しない理由の根幹は、「ただ」であること
  • 県単位の電波行政→地元スポンサー企業からの収入が、全収入の二割程度しかないローカル局も珍しくなくなっている
  • ローカル局は、放送する番組の約90%を外部に依存しており、しかも約70%は、キー局、準キー局から自動的に送られてくる。つまり、自力で調達する番組はわずか30%程度ということになる。自社制作が10%。他局や番組販売会社から買い付けるのが20%だ。
  • 自社制作の代表格がローカルニュースである。ところが、この花形番組、総じて売れ行きが悪い。
  • 放送は公共性が高いとの理由から、著作権処理を簡素化できる『優遇措置』がとられている。具体的には、番組でCD音源の楽曲を流すのは、後で使用料をまとめて払えば自由にできる。
  • 文化審議会の著作権分科会法制問題小委員会では、IP放送の著作権処理を「同時再送信」に限り、有線放送並みに簡素化するよう、著作権法を改正すべきだとする報告書をまとめた。(06年8月)
  • デジタル化で放送は具体的にどう変わるのか。(1)多チャンネル化(2)高精度画面(3)双方向(4)データ放送等各種サービス
  • 日本の放送業界全体の売り上げがタイムワーナー一社の売り上げより小さいのは、国民から見ると疑問だ(産経新聞2005年12月7日)
  • フリーペーパーの代表格が、メトロ・インターナショナルである。メトロ・インターナショナルはスウェーデンが発祥の地で、1995年に発刊された。そしてすでに「二十カ国で新聞発行部数が八百万部になった」(日経産業新聞2006年6月7日)
  • アメリカで行われた調査『ニュースメディアの現状』によると、新聞を『信用できる』と答えた回答者の比率は85年に80%だったが、04年には50%に減少。テレビも、85年の84%から61%に落ちた。
  • 日本と欧米のもっとも顕著な違い。欧米はチラシが本紙紙面に取り込まれている。日本は本紙にチラシがはさみ込まれる形。販売店の収益となっている。日本はチラシが効果を発揮するエリア(狭い地域)と、紙面が配られるエリア(全国または広い地域)が重ならないため、各地域ごとにチラシとしてはさみ込まれて配られる。
  • 「あまりにも個々人の情報、個々人が持っている関心領域だけに情報を特化してしまうと、(中略)最低限知るべき知識としうものが失われるのではないか。ひいては社会常識が失われてくる危険性はないだろうか(『調研クオータリー』2005年冬号=読売新聞調査研究本部)」
  • 情報はローカル化する。電通総研の分析によると、「広告主のプロモーション予算の管理単位は『期間×商品×エリア』である。この式がある限り、エリア予算の『受け皿』としてのローカル媒体社の存在意義はなくならない」
  • アメリカでは日本と違って、ケーブルテレビや衛星経由の放送が発達しているので、全人口の15%しか地上派を見ていない。他方、日本では全国でほぼ100%の世帯が、しかも1日3、4時間もテレビを見ている。

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