TENGU (柴田 哲孝)


“TENGU” (柴田 哲孝)

つくづくこういうのに弱い。帯買いというやつだ。帯のコピーにつられて買ってしもた。大藪春彦賞受賞とか。
なんか全体的に文章の古くささというか、そういうものが気になってしかった。大昔のハードボイルド小説の登場人物たちが口にしそうなセリフには少しがっかりする。もう少し今っぽい演出が欲しい。

「天狗」が最後には「あれ」ってのもなぁ、どんでん返しがあるわけでもなく、後半はほぼそのままという感じでエンディングを迎える。UMA好きの人ならいいんだろうけど、そこに行くならもっと細部のリアリティが欲しい。帯には「細部の検証の確かさが作品全体に堅牢なリアリティを与えている点は、ノンフィクションで培った技量の現れというべきだろう」(日下三蔵)なんてコメントが引用されてたりしたのだが。本当にそうだろうか。ある世界を成り立たせるためには、事実を積み重ね、その中にさりげなく嘘を入れつつも、圧倒的な情報や科学的根拠やらで塗り固めていく必要がある。最近流行ったものでいけば「ダヴィンチコード」だ。あの小説が成功するのは、あの大胆な仮説を裏付けるための世界づくり(嘘も含めて)の巧さだ。例えば、中島らもの「ガダラの豚」とか、山本弘の「神は沈黙せず」とか。彼らの「嘘」に対しての気合いの入れ方は尋常じゃない。良い嘘をつくるためには嘘を嘘だと思わせないためのストーリーの仕掛けが必要だし、その細部に事実と嘘を織り交ぜていく。その徹底。

この小説の扱ってる題材とかはすごく面白いものだと思うのだが、やはりそこが圧倒的に弱い。後半にほとんどストーリーの核心を集約させてしまってるだけで、壮大な嘘をつくための準備や仕掛けが不足してることは否めないと思う。

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