短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント

4478300755 少し忘れかけていたことを思い出させてくれた。
本書が提唱する「行動科学マネジメント」の基本は、「結果を変えるためには行動を変えるしかない」という前提に貫かれている。
そして、リーダーの仕事は、結果を変えるために行動を見つけ出し、その行動を繰り返させることだと言い切る。
「結果」が「行動」の積み重ねの中にある、という単純な認識だ。単純ではあるけれども極めて重要な視点だと思う。

ビジネスは行動の積み重ねである。それらの行動のなかに収益に需要な行動があり、その行動を増やす、強化すれば、良い結果がもたらされる。逆に、良い結果をもたらさないならば、その行動は結果に重要な行動ではないということになる。
これらをきちんとメジャーメントすることで、良い結果を得るためにもっとも重要な行動を見つけ出し、その行動を増やしていけばいい。

例えば、受注プロセスにおいて、もっとも重要な行動とは何か? それは「適切な事例を話す」ことかもしれないし、「自社がその分野で能力を発揮することが可能なことを、具体的に示す」ことかもしれない。あるいは、ディレクターの制作進行業務において最も重要な行動とは何か? 「1週間に1回はスケジュールの確認、各人のTODOの洗い出し、各々スタッフとの今後の進行の認識合わせをする」ってことかもしれない。

といかく、良い結果をもたらすのに最も重要な行動を絞り込み、そして、その行動が行われた際にはリインフォースを行い、行動がより自発的に行われ、繰り返し行われるように強化する。これら重要な行動は、多くても5つ程度に絞り込む必要があると言う。ピンポイントで絞りこむことでメジャーメントもしやすくなるし、スタッフにとってもわかりやすい。

リインフォースとは行動を増やすための手順そのものを言い、行動の後にその行動をより強化するために利用するプレゼントや仕掛けをリインフォース因子という。
リインフォース因子は、ほんの数円の価値しかないようなポイントやオリジナルの紙幣、あるいは仲間内からの賞賛といったもので十分であり、お金をかければいいというものでは決してない。ちょっとした表彰制度やおかしやおやつが買えるレベルでもかまわない。リインフォース因子が効くかどうかは、下で説明する「PST分析」によってもわかるが、極めて重要なのは「タイミング」であり、その行動が行われた場合に「必ず」提供されるという確かさだ。

著者は、2:8の法則から、2割の人間を優遇するより、8割の人間のパフォーマンスを上げるほうが、ビジネスにとっては重要だと言う。
パフォーマンスは行動科学マネジメントによって、もっと上げていくことができる。そのポテンシャルを測る簡単な公式がある。

■パフォーマンスのポテンシャルを求める公式

ある行動を増やすことによって、パフォーマンスがどれぐらい改善させることができるのか、そのポテンシャルを求める公式がPIP分析だ。

  PIP= トップの成績の価値/平均的な成績の価値

という公式で導きだされる。例えば、トップ営業マンが月間1000万円の売上を上げ、平均的な営業マンが月間500万円の売上なら、
1000万円/500万円=2 という数字が導きだされる。これは同じ人員、同じコストで2倍のポテンシャルを持っているということを意味している。


■望ましい行動を繰り返させるために

ある行動を繰り返すのは、その行動を続けたくなるような結果が生まれる必要がある。ある行動に対してどのような結果を得られるかによって、その行動を今後も自発的に行っていくかどうかが決まるのだ。それを分析するのが「PST分析」だ。

行動の結果を「タイプ」「タイミング」「可能性」という3つの側面からチェックする。

タイプには「ポジティブ(Positive)」「ネガティブ(Negative)」
タイミングでは「即時(Sokuji)」か「 後(Ato)」
可能性は「確か(Tashika)」か「不確実(Fukakujitsu)」

にそれぞれ分けられる。

行動を繰り返させるのに最も効果的な結果を上記の頭文字を組み合わせて表現すると「PST」であり、次が「NST」となる。
つまり「PST」とは「ポジティブ/即時/即時」、「NST」とは「ネガティブ/即時/確か」である。
これらの3条件が揃うと、本人は自発的な行動を繰り返す。

例えば、「賞与」。多くの企業は行動を起こさせるために「賞与」を使おうと考えるケースが多い。しかし、この分析からは「賞与」は行動に影響を与えないということになる。賞与は「ポジティブ」か「ネガティブ」かと考えれば、それは「ポジティブ」になる。タイミングは、その望ましい行動が起きた瞬間でなく、かなり後の報償であるから「Ato」だ。可能性も、確実にもらえるかどうかは業績しだいということでわからないから「Fukakujitsu」となり、頭文字をつなげると「PAF」となる。
「PAF」は行動のためのフィードバックとはなりえない。だから、マネジメントとして何かの行動結果を賞与と結びつけていても殆ど意味がないといわけだ。

うちの会社でも「事務所の移転」や「社員旅行」のようなものを頑張っていくための1つのモチベーションにしよう、みたいな話が時々でるが、「事務所の移転」だと「ポジティブ」「後」「不確実」で「PAF」だし、「社員旅行」も「PAF」であり、共に自発的に望ましい行動を繰り返させるための要素にはなりえないということになる。

つまり、ある行動を繰り返し自発的に行わせるためには、「タイミング」と「可能性」が極めて重要なのだ。
その行動が発生した「瞬間」「即時」にそれが与えられ、そしてそれは「確実」なものであるとき、行動への影響力がもっとも大きい。

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