早朝会議革命―元気企業トリンプの「即断即決」経営
ここ最近やたらと目にするようになったのが分野の一つに「会議」を扱った本がある。
日本人はよくディスカッションが下手な民族だと言われるが(そういった紋切り型の民族感というのもどうかと思う)、確かに会社という場では、人数が増えれば増えるほど、会議の量、時間は多くなっていく。無駄な会議の時間を削るだけで、相当なコスト削減になるだろうし、会議の生産性をあげれば、会社が変わるというのも、あながち嘘ではないだろう。
日本の会議の特色は、コンセンサスを得ることであり、それが必ずしも悪いわけでもないとは思うが、なんでもかんでも「会議」という言葉で括られると、本来は結論を出さなければいけない会議でも、なんとなくゆるーい共有認識を得た、というレベルで会議が終了してしまい、そこで課題となっていたことや、TODOはほったらかしになってしまう、というようなこともよくあることだろう。
今、世に出ている会議本のほとんどは、会議のテクニック、技法、運営方法を説明した解説本、マニュアル本だ。僕も何冊か読んでいるが、その中身は驚くほど似通っている。そして、その本に書かれてあるとおりにやろうと思うと、結果的に、議事や、議長には相当なスキルと技量が必要だということを思い知らされるだけなことが多い。結果、なかなか続けられない。
この本は、トリンプが16年間にわたって続けている早朝会議をとりあげている。面白いのは、議長の役割は何かとか、ファシリテーターが何をして、とか会議の決まりはどうで、といった会議の技法を説明するのではなく、ある日の早朝会議の模様を、ほぼそのままに近い形で、ライブ形式で収録しているところだ。
ライブを読むだけで、トリンプがいかに決定の早い会社かということがよくわかる。そして、心がけやテクニックや役割といった会議技法そのものについても、ライブ形式のほうが、伝わってくるところがある。
トリンプの会議は、吉越社長が、気になることや、朝得たニュースなどを、担当者にどんどん「訊いて」いくことからはじまる。そして、そのやり取りを通じて、TODOが決まり、TODOが決まると、デッドラインが必ずひかれ、その場で担当はその責任者となる。デッドラインは、どんなに遅くとも1週間であり、1週間以内にどのようなものでも答えを得なければならない。これは絶対的なルールとなっている。
そして、毎朝の早朝会議で、そのTODOの進捗が追いかけられ、デッドラインを過ぎてしまうと、担当者はかなり厳しいお叱りを受けることになる。
関心するのは、吉越社長の質問力だ。とにかく、思いついたことを猛烈なピードで訊いてゆき、その回答を即座に求められる。もちろんん、「わかりません」という回答もあるが、そういった答えにたいしては、「じゃぁ、考えておいて、何日までに回答下さい」というように、さっさっと「誰が」「いつまでに」「何をするか」ということが決められていくのだ。
ライブで収録されている日の会議では、40ものテーマが議題に上っている。しかも1つ1つのテーマに関連性があるわけでもなく、今、吉越社長が気にしていること、興味をもったもの、ふと思い出したこと、などが脈略もなく次々とテーマとしてあげられる。担当者としても、何を訊かれるかわからないことが多く、常に、答えに対しての準備や、考え方の整理というものを求められるわけだ。これが毎朝あるのだとういう。
これは凄い経営スピードだ。
朝にこのような会議を行うことで、与えられた役割を担当はすぐにその日から動き始めることができるというメリットがある。なにせどんなテーマでも期限は最大で1週間しか与えられない。毎日やってると、担当者にはどんどんテーマが与えられていくので、担当者は毎日TODOをこなしていくことに必死になる。
毎朝の会議には現場の担当ももちろんのこと役員も全員でるため、その場ですべてが即決される。16年連続で増収、増益を達成しているというのも頷ける。とにかくスピードを最重要視し、スピードを出すために、活動のフィットが行われているのだ。
この会議が成立しているのは、なんといっても吉越社長のリーダーシップ、カリスマ性によるところが多く、これをまったく同じようにやろうと思っても、他の会社ではなかなかこうはいかないだろう。とにかくトップがどんどん質問し、それに対して、ゴーン流に言えば「コミットメント」を求められるのだ。
しかし、考えて見ると、世にある会議本を読んでも、おそらく本にあるような有意義な会議を恒常的に開くことができる会社はごく僅かだろう。
が、このトリンプ方式では、1人の強烈なリーダーシップを持った、俯瞰力のある人間がいれば出来る可能性もあるという意味では、かもすると、トリンプ方式のほうが、会社の文化として定着せしめ、長続きさせられるものなのかもしれない。
僕はこの手の本を読むと、早速実践してみたくなる。悪い癖でもあり、良い癖でもある。(そしてたいてい長続きしないのだが)
トリンプでも最初は部門会からはじまり、徐々に参加者も増えていき、会社全体に関わる会議になっていったという歴史があるようだし、早速何かしらの会議で同じようにやってみようかな。ということで早くも僕は吉越社長モードだ。
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