ライブマーケティング―「見せる」広告から「まきこむ」広告へ

ライブマーケティング―「見せる」広告から「まきこむ」広告へ

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最近の広告業界というのは、どこを見ても「ブランド」ばかりだけれども、どうも抽象的、学術的な臭いがしてた。本書も言ってしまえばブランドビルディング手法を解説しているのではあるけれど、事例が豊富なのが良い。ブランドをひとつの体験、体験への関与と考え、生活者の生活導線にどのように「仕掛け」を盛り込んでいくのか、世界各国の成功事例が掲載されている。


著者も言うように、この手のマーケティング手法は、サービス提供側が効果測定や指標などの数値をきちんと把握していくことも大事ではあるが、クライアントの体制や理解も欠かせない。今までのように、広報や宣伝といった他の部門とはある種独立した部署や組織として運営されてしまっていると難しい。ドラッガーは企業に必要なのはマーケティングとイノベーションだと断言しているように、マーケティングとは、単なる企業の一部門の機能として成立するものではなく、企業活動そのもの、企業活動のDNAとして全部門、全活動に染み渡っていなければならないわけだ。


ブランド戦略シナリオ―コンテクスト・ブランディング

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「ライブマーケティング」が博報堂で、こっちは電通だ。

ちなみに、ここ最近広告会社が出版したいくつかの本を比べてみると、
ブランドへのアプローチというか捉え方の差異みたいなものが垣間見えて面白い。
オグリヴィーは「ブランディング360度思考」で、読広は「マーケティング・トランスファー8つの法則―顧客創造のアプローチ」と、どれもアプローチは違うが、「ブランド」「ブランドビルディング」を扱っている。どれもそれなりに面白いけれど、ボクは電博のこの2冊がやはり飛びぬけて面白いと思う。オグリヴィは抽象的すぎるし、読広は、新しい消費者像、社会システム論どまりで、共時的な社会しか捉えてない。この手のアプローチはすぐに形骸化する。


本書は「ライブマーケティング」に比べれば、かなり学術的側面が強いし、おそらくとっつきにくい。回帰分析、主成分分析といったアプローチから生活者のなかに眠るブランドのエッセンスを導き出したり、社内に眠るブランド資産の掘り起しと、そこからのコンテクストの作成アプローチなど、よくここまで考えて実際にやったもんだと驚いた。



個人的にはこちらの考え方のほうが水に合うというか、ブランドを考えるときは、それが製品ブランドであろうが、コーポレートブランドであろうが、結局のところ、いかにして生活者が考えるブランドイメージと、企業側が伝えたいブランドアイデンティティの統一、統合をはかるかということが重要なわけで、そのためには、ある体験に巻き込むというやり方だけでは弱いだろうと思う。もちろん「ライブマーケティング」は、ブランドビルディングにおける一側面に過ぎないわけだけれど…. しかし、本書で展開されているようなことをやっていけるのは、ほんの一握りの企業だけだろうし、またやっても成功するとは限らない。


ブランドビルディングって、そもそもコンサル会社や広告会社が入ってあれやこれやして、なんとかなるものなのかなとも思う。結局のところ、一人一人の社員のやる気やモチベーションや、倫理観やらに大きく依存するのだろうし。インターナルマーケティング領域ってのは、まだまだ開拓されきってない。リンク&モチベーションみたな会社が注目をあびるのはそのせいなのだろう(リンク&モチベーションは良い会社だと思うけど。ああいうのは、自然治癒力を引き出すためのきっかけを提供しているだけであって、一番大事なのは、やはり働く一人一人の意志の方だ。)

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