HTMLコーディング専門会社のモデル

HTMLコーディング専門の会社さんってけっこう増えてきた気がする。

コーディングを専門に大量に行うことでノウハウを蓄積し、スピードアップを図ることが可能だろうし、1ページ当りの単価設定などの仕様化、規格化もしやすいので、Webソリューション系のビジネスにつきものの「企画」や「見積もり」「調整」といったところの負担はそんなにない商売かもしれない。

ただ、その分、品質レベルが著しく悪くなく、コミュニケーションが問題なければ、競争優位性をつくるのが難しい分野なので、価格競争に簡単に陥る可能性も高い。
そこが最大の問題だ。ある会社はチケット制などでの前金制にしたり、いろいろ工夫を凝らしたりもしてるが、そもそものサービスや成果物での差別化でなければ、いずれどこも真似をするだろう。
競争優位性を作りにくい領域でどうやって競争優位性をつくるか。その問題が1つ。

もう1つ、このビジネスは、熟練コーダーがすごく重要になるが、どうやってそういう人たちの給料を上げていけるような組織モデル、ビジネス構造が組み立てられるかというやっかいな問題もある。

全員バイトや契約社員というように、人件費を一定ラインでとどめておくことができるような労働力だけに頼ったモデルにして、社員を必要最低レベルの人数で留めればなんとかなるのだろうが、それだとコーディングという職人的な業務のノウハウを会社の力にしていくことは難しくなるかもしれない。

この手の会社は若い会社が多いので、年を重ねると平均人件費も上がるという構造になるところが多いだろう。平均人件費を上げないためには、皆の給料が上がれば、その分だけ安い人件費のスタッフを雇わなければならない。そして給料が高いものが安い人をうまく使う、リバレッジを利かせるみたいなモデルをとらないといけない。HTMLコーディングという分野だけで、こういう構造をつくれるだろうか。スタッフを増やし、その分、大きな規模のコーディングを請け負っていかなければならない。

HTMLコーディングというところに限っていくと、単価を上げていくのは相当難しいだろう。JavaScriptなどのフロントエンドテクノロジー的な領域までやっていかなければ1ページ単価は下がっていく。ある程度の処理の効率化などで、制作できるボリュームが増えるだろうから単価が下がっていく分を、量で補うことは出来るかもしれない。
が、スタッフの人件費があがっていく分、どうやって原資を確保できるか。普通に考えると、年を負うごとに1人当りの営業利益額が減っていく、効率が悪化していくという状況を招くことになるのではないだろうか。

まぁコーディングとは言っても従来のHTMLとCSSでは全然違うものになりつつあるだろうし、今後、この領域がどのように変化していくかはわからない。やはり常に刷新されていくんだろう。そうであれば、新しい技術に対応していくことで価格は維持できるのかもしれない。

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コメント

  1. ishibashi より:

    非常に優れた分析ですね!
    レバレッジ構造のあたりはマイスター著『プロフェッショナル・サービス・ファーム』を想起させます。
    永久に続くブルーオーシャンは存在せず、絶え間なく次のブルーオーシャンを開発し続けなければならない、というのが『ブルー・オーシャン戦略』の結びでもあり、クレイトン・クリステンセン教授の主張でもあります。結局はそういう結論にならざるを得ませんね。一生安泰なビジネスモデルなど無い(既成産業と超資本集約型事業くらいですね、例外は。典型例は電力会社)。

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