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2006年05月19日

見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み

見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み
見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み遠藤 功

東洋経済新報社 2005-10-07
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star現場力を鍛える第二弾

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まだ会社が小さくて、社員数も少なかった頃は誰が何をやってるかなんて誰もが理解してた。誰が今てんぱってて、誰がどのお客さんの案件やってて、どこのフェイズにいるのか、どんなトラブルが発生しているのか、意識せずとも「見え」ていた。次第に人が増え、情報の伝達の効率性や共通スキルの蓄積などのために部署ができ、業務が細分化され、気づけば「見えない」領域が広がっていた。

そして「情報共有」が経営課題として持ち上がる。「隣の人が何してるかもわからない」なんて悩みが俎上に上がり、掛け声のように「情報共有」が叫ばれる。

しかし、よくよく考えて見ると、当たり前だが、「情報共有」は目的ではない
「情報共有」はあくまでも手段だ。であれば、「隣の人が何をしているか」を把握する必要なんて実はないことも多いのではないか。何かの目的のために情報共有しなければならないのであって、ただ「隣の人が何をしてるか」を理解しても、その目的が達成されなければ意味はない。

昨今、トヨタ流の経営手法が人気で、「見える化」というキーワードもトヨタ経営の重要なワードの一つだけれども、「見える化」というのも一種の「情報共有」だ。

本書では、「見える化」の目的とは、ずばり問題を解決するためと言い切る。そして、「問題」とは「基準や標準の姿と現実に起きている姿とのギャップ」だ。

「情報共有」という抽象的な言葉を解いていくと、それは問題を解決するために、理想と現実のギャップを可視化すること、ということになる。問題を見えるようにすることで、組織がその問題を自律的に(ボトムアップ的に)解決させていくための現場力を養っていくことが必要なのだ。

本書では「見える化」の必要な領域を、「問題」を中核とし、それを取り囲む「状況」「顧客」「経営」「知恵」の4分野をあげている。

「問題の見える化」を以下の5分野と設定している。

1.異常の見える化
2.ギャップの見える化
3.シグナルの見える化
4.真因の見える化
5.効果の見える化

異常が発生していることを見えるようにすること。自らが見ようと意識せずとも見えてしまうような仕掛け(シグナル)を盛り込むことが重要だ。異常を見えるようにすることで、異常へどのように対処していくか、という意識が生まれる。もちろん、それが異常であると判断するには、何が普通か、基準かということが前提として明らかになっていなければならない(ギャップ)。そして、その異常や問題がなぜ発生したのかということが見え(真因)、さらに問題は解決されたのかどうか、どのように解決されたのか(効果)ということが見えなければならない。

私たちの会社にも問題は山積みだ。ただ莫大な問題を前に途方に暮れるのではなく、その問題を自律的に解決していけるための「見える化」を進めよう。

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2006/05/19 00:09

2006年04月06日

情報共有のスタイル

社員がどんどん増えてきて、それを取りまとめるために自然と階層が生まれていき、グループやユニットができあがり、それぞれが情報共有しなければという恐怖心からあらゆる接点、階層、ラインで情報共有を目的とした会議ばかりが行われる。

情報共有を否定するわけではなく、情報共有は絶対に必要なのだが、情報共有を目的とした会議に莫大な時間がつぎ込まれ、共有すべき内容自体を生み出すところに避ける時間がどんどん減っていくのは、なんとも矛盾しているではないか。

Web進化論のなかで、梅田さんは、電子メールは情報の送り手が受け手を選ぶ仕組みに支えられていて、それは従来の組織構造を支援するシステムだ、みたいなことを書いていて、この部分にすごく共感を覚えた。「電子メール」という1つのツールの話ではなく、今までの組織における情報共有という考え方の前提には、情報の送り手が、情報の受け手を選ぶという前提があるということだ。逆に、情報の受け手は、情報の送り手から情報が送られることを当たり前として、情報が共有できないことを情報を発信してくれていない、という不満に転嫁する。

ものすごく単純なことなのだけれど、新しい情報共有のスタイルとは、そもそも情報の受け手が情報を選ぶものにならなければならないのではないか。グーグルやはてなでは、それが出来ているということなのではないか。自分が興味ある範囲、自分の時間内で、必要な情報を見つける。誰も関心を示さない情報は自然と淘汰される。
こういう情報共有に関するパラダイムシフトは、前提としてみんなが自身がやってることや持ってる情報を、とにかくオープンにする、という原則がなければならない。

本で読んだレベルなのでわからないが、TSUTAYA(CCC)なども、会議が全部録画されていたり、社員の机に引き出しがない(情報をクローズドにしない)など、個々人が持つ情報はとにかく、全員が閲覧、参照できる状態にし、欲しい人が自らアクセスする、という環境を整備していると耳にした。知ろうと思えば誰もが知ることできる。興味がなければ、あえて知ろうとしなければいい。

グーグルでは、この環境を支えるのは採用とテクノロジーだと言い切ってる。採用とはいかにして優秀な社員を雇用できるかというところ。優秀な社員は自分をコントロールできる。そしてそこに情報公開、共有のためのインフラ、例えばブログのようなものであったり、プロジェクト管理システムであったり、優秀な検索システムであったりするのだろうが、これらが組み合わされば、「情報共有」は実現できるということだ。

私たちの会社も社員が増えてくると、誰が何をやってるかわからない、情報が下りてこない、というような不満がでてきて、それを解決するために、情報共有の場が頻繁に持たれていくのだが、そもそもこのやり方で解決できるのだろうか。「情報が下りてこない」というような言い回しに端的に表れてるように、情報は一方方向的なものとする前提では、どれだけ頑張っても真の情報共有など可能になるわけがないのではないか。
「情報共有」という言い回しも、「共有」という言葉に引き面れて、あらゆる情報をあらゆる人が同じように知る必要があるように思えてしまうけれども、本来の情報共有ってのはそうじゃないだろう。必要な情報を必要な人が知ることができる環境があればいいのではないか。

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2006/04/06 11:04

2006年03月07日

LLPと他組織の比較

昨日の日経新聞にLLPと他の組織形態の違いについてまとめられていたのでメモ。

*LLP

    • 2人からの設立可
    • 自由なルールで運営可
    • 有限責任
    • 設立費用6万円から
    • 法人税なし

*株式会社

    • 1人から設立可
    • 取締役会など法定機関が必要
    • 設立費用24万円から
    • 法人税あり

*民法組合

    • 2人から設立可
    • 自由なルールで運営可
    • 無限責任
    • 設立費用ゼロ
    • 法人税なし

*NPO法人

    • 10人の構成員必要
    • 営利目的の設立不可
    • 設立費用ゼロ
    • 利益に法事税

LLP自体には法人税はかからないが、出資者に直接課税となる。LLPは止めるのも清算手続きが不要というところがいい。LLPを利用して得意を持ち寄ったジョイントベンチャーがどんどん生まれそうな気もするが、実はけっこう面倒なことも多いと聞く。出資の形態も単にお金ではなく、技術とか、ノウハウなんてこともありえるわけで、あがった利益の按分については、契約が重要になる。この契約を決めるのが大変だったりするのではないかと。

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2006/03/07 10:39

2006年01月07日

小倉昌男「経営学」

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今まで読んでなかったことをかなり後悔した。ヤマト運輸の2代目社長小倉昌男が、どのようにして「宅急便」というサービスをつくりあげたかを語った本ではあるのだが、しかし、内容は単なる「成功譚」ではない。ここに詰まってるのは「企業戦略」のすべてだ。「戦略」を学びたければ、ポーターやコトラーを読む前に本書を読むべきかもしれない。マネージャークラスは必読書だろう。

そもそもヤマト運輸が「宅急便」を開始するまでは、一般家庭、個人をターゲットとした宅配事業は、絶対に赤字になると誰もが思っていたわけだ。個人相手の宅配は需要は偶発的でつかみずらいし、また集配してみるまでどこへ届けるかかわらない。郵便小包より料金は高くとれないとなると、どう贔屓目に見ても赤字にしかならない。誰もがそう考える。しかし、小倉さんは、個人向け宅配市場のデメリットだけでなく、一般家庭は値切らないことや、現金で払ってくれること、百貨店などの配送業務では繁忙期と閑散期の差が激しいが、個人宅配は一度サービスが成り立ち、そのネットワークを小荷物が流れ始めれば、時期による大きな波もなく、安定した収益を確保できるといったメリットをも勘案し、個人向け宅配事業への進出を決断する。「JALパック」をヒントに、無形サービスの「商品化」(=規格化、マニュアル化)を行い、個人というターゲットのニーズや特性を多方面から検証し、取次店制度や地帯別均一料金といった新機軸を次々を打ち出す。同時に、圧倒的な優位性や差別化を築くために、「翌日配送」を掲げ、それを実現するためのオペレーションを整えていく。

小倉さん自身は本書のなかで経営には「戦略的思考」が必要であると語る。
ある時は「シェア第一」「売上第一」と語り、決算が近づくと「利益第一」、その時々で「環境第一」や「安全第一」というようなころころと「第一」を変えては、スローガンを掲げているような経営者は戦術思考しかできていないと言い切る。

「第一を強調するには、第二を設定すれば良い」

単純だけど、これを徹底するのは極めて難しい。しかし、小倉さんは「宅急便」の事業をスタートさせる際は「サービスが先、利益は後」というスローガンを掲げ、それを徹底する。ヤマト運輸では宅急便事業が開始するまでは、毎月支店長を集め、各支店ごとの月次収支を基に実績検討会議というものが開かれていた。しかし宅急便事業を開始する際、会議の冒頭で小倉さんはこう宣言する。「これからは収支は議題としたないで、サービスレベルだけを問題にする」。

小倉さんはこんな事例で語ってる。「たとえば過疎地に集配のための営業所を作るとする。当然、家賃などの固定費をベースから荷物を移送する(横持ちする)ための車両経費が増える。人件費は所長一名分が増える。ドライバーの分は、集配の能率が上がる分だけ安くなるかもしれないが一応変わらないとしよう。総体的に経費は増える。一方で、過疎地の翌日配達が確実になるなど、サービスは飛躍的に向上する。」
さて、このような場合、どのような思考で判断するか?

普通ならば、プラス要素とマイナス要素を比較検討して差引きプラスならば営業所の新規設置の決断を下す、というような答えになるのではないだろうか。

しかし、小倉さんはこの考え方ははたして正解だろうかと疑問を投げかけるのだ。

「宅急便を始めた以上、荷物の密度がある線以上になれば黒字になり、ある線以下ならば赤字になる。したがって荷物の密度をできるだけ早く“濃く”するのは至上命令である。そのためにはサービスを向上して差別化を図らなければならない。コストが上がるから止める、というのはこの場合、考え方としておかしい。サービスとコストはトレードオフだが、両方の条件を比較検討して選択するという問題ではない。どちらを優先するかの判断の問題なのである。」

この例は、すべての業態においてあてはまるわけでは当然ない。重要なのは、個人向け宅配サービスという業態においては、荷物の密度、つまり配送ネットワーク内に流れる荷物量を最大化させることを何よりも優先させなければならず、そのためにはサービスを向上させる、ということをまず第一に据えなければならない。その背景と優先順位にのっとって、決断を下す、という、その一連の思考プロセスの一貫性なのだ。

業態が違えば「第一」とするもの「第二」とするものは変わるだろう。しかし、一番やってはならないことは、「第一」がころころと変わるような「戦術的レベル」の思考、決断だ。
「毎年、期の始めになると、売上高の目標は対前年10%と示され、絶対に目標を達成せよと厳命が下される。半期が終わり、売り上げはそこそこ目標に近づいたが、営業利益が目標より低いと、売り上げは多少足りなくなってもいいから、利益率の低い仕事はやめ、利益の目標は達成せよと指令が下りる。安全月間になるともちろん“安全第一”の号令が下る。製品クレームが来ると、品質第一で頑張れと命令が下る。(略) だが、“第二”がなく、“第一”ばかりあるということは、本当の第一がない、ということを表していないだろうか」

うーむ。経営に携わるものとしてはかなり身につまされる思いだ。
形こそ違えど、ボクがやってることなど、まさにここでダメな例としてあげられる社長像そのままではないか... このような戦術的思考に陥ってしまうというのは、そもそも「戦略」がないからだろう。いや、あると思っている「戦略」が「戦略」ではないということだろう。要は戦略レベルまで自社の「業態」がどういうものなのか、それにふさわしいハードウェア、ソフトウェア、ヒューマンウェアが何なのかとことを考えきれていないということなのだろう。

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2006/01/07 19:50

2005年09月12日

問題を起こす社員とは?

会社には、社長の足りないところを顕在化させるために、問題を起こすのに最適なメンバーが集まっている。だから、その働く場自体を向上させていかなければ、いつになっても同じ問題の繰り返しになるんだ。
(『成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語』P.208)

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2005/09/12 09:06