2006年10月28日
啓蒙かまぼこ新聞のすごさ
なぜか手元に古い宝島がある。1983年の2月号だ。古い雑誌を捨てられない性質なので探せばまだあるが、手持ちの宝島では一番古い号かもしれない。
たまにこういう古い雑誌を読み返すのは面白い。自分が未来人みたいな感覚で楽しめるのだ。
さて、この宝島にあの伝説の「啓蒙かまぼこ新聞」が掲載されている。まだ7回目。まさかこれがウェブページになっても続くものになるとは、このときは誰も想像できなかったろう。しかし、いまさらながらに「啓蒙かまぼこ新聞」はすごい。
この号では、新春巻頭対談として、かねてつの食品常務中村健と、中島らもの対談になっているのだが、この自虐ぶり、これを許すかねてつの鷹揚さは、今、この時代のマーケティングを考える上でも重要ではないか。完全に遊んでる。
村上:私がアメリカにいる間に、かねてつの企業イメージが...
中島:ハイ、秋の陽のつるべ落としと申しますか(笑)
村上:営々と築きあげてきた老舗のイメージが...
中島:ハイ、今やパンクかかまごこ屋というイメージに変わりつつありますね(笑) 今度、金ラメ入りのカマボコなんてどうですか?
なんていう冒頭の会話から始まり、
中島:ところでカマボコって家庭で作れるんですか?
村上:作れます。でもまあ、まる一日はかかりますね。下ごしらえして・・・頭と尾と皮と小骨と、それに脂の多いところは全部とっちゃう。エソっていう魚なんか一匹からオチョコ二杯分の肉しか残らない。
中島:もったいない
村上:ぜいたくな食物ですよ。その割に評価が低い。でも低カロリー低脂肪なので最近はアメリカ人もよく食べています。ボイルド・フィッシュ・ペーストっていうのね。
中島:今後はかまぼこを尊敬するようにします。とりあえずオカマボコと呼ばせていただいて(笑)
と、自然にかまぼこの基礎知識から、かまぼこがいかに体に良い食べ物かという語りに進むも、らもの最後の「オチ」で、この会話自体に宣伝くささや啓蒙くささを感じさせない。
今さらながらに中島らもはすばらしい広告マンだなととおもった。合掌。
2006年10月03日
電通、ネットでテレビCM受注へ
電通は10月をめどに、インターネットを使ってテレビCM(スポット枠)を受注する新システムを導入する。ネット上で申し込みから決済までを完結させる広告業界初の試み。映像などCM制作素材をパッケージにすることで制作放映にかかるコストと期間を抑え、手薄だった中堅・ベンチャー企業を開拓する。半年間で200社からの受注獲得を目指す。
本日の日経産業誌面から補足。
料金は関東地域で15日間に10回放映する場合、525万円(税込み/放送局は選べず)。
国内127局の参加が決まっている。
とのこと。しかし、「専用ホームページで約50種類の見本映像から「開業」や「販売」などテーマに合った素材を選択。音楽やメッセージを組み合わせて15秒のCMを完成させる。」とあったのが、CMみたいなもんを素材の組合せだけでつくって大丈夫なんだろうかという気がする。通常より安いとは故、10回放送するだけで500万以上するわけだ。このサービスがターゲットとする中小企業にとっては大金だと思う。そういえばうちの会社がとある音楽イベントに協賛したときも同じぐらいの金額だった。どっちが得かというと、たぶん後者だろうなと思う。
似たようなサービスを手がけてるのは、アメリカのスポットランナー。ここはテレビCMの制作・放映を500ドル以内で行う。
2006年03月15日
MKを選ぶ理由、ブランドをつくるのは
京都ではボクはなるべくMKタクシーに乗りたいと思っている。うちの同居人は元MKなのだが、そんなことが理由ではなく、単純にサービスレベルが高くて、失望することがないからというのが大きい。というよりむしろ、MK以外のタクシー会社のサービスレベルが低すぎるのではないかと。
タクシーをよく利用するなら、たいてい人は嫌な気分を味わっているのではないか。もちろん全員がそうというわけではないのだが、不満というのは、満足よりも強く記憶に残ってるもので、また人によく喋るわけで、さらに記憶が強化されていたりする。
近い距離だと、目的地を告げたとたんに舌打ち、荒い運転...
ボクなど一度、おつりの小銭がないということで、逆切れされ、近くのコンビニまでこちらの料金でつれていかれ、且つ、両替をさせられ、お金を払ったとたん、「ここでええやろ、兄ちゃん」と走り去られてしまったなんて経験がある。ほいほいと乗務員のことを聞いて従ってるボクもボクだが、それにしてもむちゃくちゃだ。
「○○○橋を越えたすぐの交差点を右折でお願いします」とお願いしたのに、○○○橋にさしかかっても右折する気配がないので「ここの交差点ですよ」と指摘するや、これまた逆切れで「○○○交差点って言ってもらわなわからんな」と言われ、明らかにそれとわかるような怒りの込めた荒っぽい運転をしだす。
そんなことが何度も積み重なって、ほとんどのタクシー会社をボクは信用してない。タクシー乗るときに、また嫌な気分を味わうのではないかと気にしてしまうぐらいだ。
しかし、MKタクシーだけは別だ。MKなら信用できる。MKの人でも、態度の悪い人もいるのだが、最低レベルは満たされている。(ボクは別にMKの回し者ではないのだけれど)
MKタクシーはタクシー業界のなかでは異端児で、他のタクシー会社からの評判は悪い。京都駅のタクシー乗り場には、MKタクシーは入れないし、他のタクシーに乗ると、時々、MKの悪口を言う乗務員がいる。MKは事故を起こしても乗務員が責任をとらなければならないとか、タクシー業界の掟を破って市場を壊したとか、いろいろ。
何が本当で何が嘘なのかはわからない。一番信用できるのはけっきょく、自分が受けたサービスだけで、それで考えると、どう贔屓目に見ても、MKのサービスレベルは非常に高い。乗務員の教育もしっかりしてる。MKにはかなりの回数乗車してるけれども、他のタクシー会社で味わったような不満はさすがにない。
たぶん、ボクと同じようにMKを選んで乗る人は多いだろう。たぶん、MKが登場する前までは、タクシーを選ぶという発想なんてなかったんじゃないか。MKの乗務員は、1人1人がきちんとしたサービスを行うことで、顧客がMKを指名で選んでくれるようになることを知っているのではないか。MKというブランドをつくる、もっとも重要な接点は乗務員の対応だ。1人1人がその意識を持つことで、MKというタクシー会社のブランドが強くなる。フロントにいる人間がブランド構築の要なのだ。他のタクシー会社も少しは考えて欲しい。他のタクシー会社の乗務員は、ほとんどがその会社のネームを背負ってる、ブランド構築の一端を担ってるなんて意識はほとんどないだろう。
これは何もタクシー業界だけの話ではない。よくあるブランド構築の話だ。従業員一人一人がブランドをつくっていくための接点なのだと。1人の電話の対応が悪いだけど、その会社全体の対応に不満が募る、1人の営業マンの対応が会社全体の対応ととられる... 顧客はそういうものだ。ボクらももっと気をつけなければならない。
ちなみに、京都ではMK以外では、最近ちらほら見かけるようになったエコロタクシーは好きだ。数が少ないので乗る機会はほとんどないけど、この前たまたま乗れて、話をしたら乗務員が会社の志をきちんと理解していて、すごく共感が持てた。サービスも良かった。
2004年10月19日
オーソライズド・バリューとパーソナライズド・バリュー
メモ。宣伝会議の11月号「eマーケティングフォーラム」の模様を伝える記事にこんな文章。
"みんな"をキーワードに社会的認知のある「オーソライズド・バリュー」を創るマス広告と、"あなた"をキーワードに個人的な「パーソナライズド・バリュー」を創るインタラクティブ広告
オーソライズド・バリューとパーソナライズド・バリューね。
マス広告がオーソライズド・バリューを創るとあるけれど、いまやオーソライズ・バリューはAISASの最後のSによって形成されることも多いんじゃないだろうか。
2004年09月09日
ブランド形成-愛着度×情報感度
久々の更新だ。 今月号のアイ・エム・プレスに、第五回CRMソリューション・セミナーの模様や講演内容の要約が載ってる。ここで気になったもの。
基調講演「成功・失敗事例&CRMベンチマーク・データに見る顧客主導型マーケティング成功のポイント」より
- プロモーションで伸びた売上の構成は、安いものしか買わない「スイッチャー」層によるものが大半。
- 当然だろうと思ってはいたが、飲料メーカーにおけるロイヤルユーザーとスイッチャーの割合ってデータは面白かった。サントリーだけがスイッチャーよりロイヤルユーザーの比率が高い。
- ブランド形成には「情報感度」と「愛着度」が深くかかわっている。この二軸でブランドをマッピングしてみる。情報感度は、年齢や周囲への情報発信力と関係。愛着度はそのまま。ブランドへの愛着。
- 例)
- ポカリスエットは愛着度が高く、情報感度は低い
- アクエリアスは愛着度が低く、情報感度が高い
ポカリスエットはリニューアルしても、ブルーに白い線のデザインは変えない。アクエリアスはリニューアルするたびにパッケージのデザインを変える。
どちらが良い悪いではなく、そのブランドの生き様が違うだけ。
重要なのは、有力ブランドは、愛着度も情報感度も低い象限には3年は留まっていないとうこと。逆に言えば、購買層が3年続けて愛着度も情報感度も低い層であった場合、そのブランドはアウトだということ。