「デジモノに埋もれる日々」の「blog記事の自立 - 「正面玄関」と「ビーム」と「シャワー」はひじょーに面白く、興味深いエントリーでした。(参照元の記事も含め)
トップダウン型のウェブサイト構成というのは、今や製作者の幻想なのかもしれないですね。
検索エンジンの進化や、RSSやAtomなどのメタデータ提供と摂取、ブログなどを介した情報・コンテンツのフィルター機能などなどによって、今やユーザーにとってウェブサイトは、ますます全体的、包括的なものから小さなパーツの集まりになりつつあるようです。
このトレンドはウェブ製作業界に身を置くものとしては無視するわけにはいきません。
CKさんのエントリーで思い出したのは、Webユーザビリティで有名なニールセン博士の「情報提供記事は注文をとらなければいけない」という記事です。この記事に書かれてあることも、こういったトレンドがもたらす一つの兆候なんでしょう。
P&Gのサイトで子猫用の餌を探すというユーザーテストを行った時の興味深いユーザー行動がとりあげられています。テストユーザーはP&Gサイトで子猫用の餌選びのためのTipsを与えてくれるとても良いコンテンツを見つけることができました。でも....
テストユーザたちはとても満足した。彼らは子猫に何を与えればよいのか、良いアドバイスを見つけたのだ。残念なのは、P&G が彼らのニーズにあった商品を 売っていることに気付かなかったことだ。それどころか、彼らはページの上部隅の画像にあったブランド名にすら気付かなかったのだ。ページ上部の隅というのは必要がなければユーザが見ない場所だ。このページには "May we recommend a product for your cat?"(あなたの猫にお勧めの製品は?)というリンクがあったのだが、左側の余白部分(ここもユーザがまず見ない場所)にあり、ユーザが探していた情報を見つけるずっと前に見えなくなっていたのだ。
「HomeAlone」時代のウェブサイトでは、こういうことがしばしば起きるのでしょう。検索エンジンを利用してユーザーは「回答」を探します。「回答」を見つけて満足し、そこを去っていくのです。これでは企業サイトはウェブサイトで商品や製品に関しての有用な情報を提供しても、単にボランティアになってしまいます。いくらアクセスが増えても、それが成果につながらなければ意味がありません(アクセス数が成果なら、それはそれで良いのかもしれないですが。アクセスして記事を読んだだけで、その記事を提供している会社にロイヤリティを感じたりするほどユーザーはお人好しではないでしょう)
CKさんが言われている「サーチエンジン・シャワー」や「ピンポイント・レーザー」を、某大手の新聞社のように完全に拒否してしまうというのも勿体無いですが、現状のほとんどの企業ウェブサイトがそうであるように、トップページを「玄関」と見なし、全体を設計しているだけでは、これらに対応できない可能性があります。
ニールセン博士は別の記事で、このようなユーザーを「つまみ食い」ユーザーと名づけています。「つまみ食い」ユーザーへ対応するためには、グローバルナビゲーションなどは役に立たず「コンテクストリンク」で、より熱心なユーザーが情報を求めていけるようにするべきだというようなことを語っています。
検索エンジンが回答エンジンになるとき
http://www.usability.gr.jp/alertbox/20040816.html
「こちらも参照」リンクで豊富に答えを飾ること。関連するコンテンツやサービスへのリンクを設けておくのだ。グローバルナビゲーションでは、答え探しをしている人が無視するだけなので、役に立たない。彼らはサイト自体には興味がないのだ。だが、コンテキストリンクであれば、熱心なユーザは深く掘っていく。そして、彼らこそが、課金サービスの見込み客として逃したくない人々だ。参照リンクは文中に埋め込むこともでき(私がこのコラムで行っているように)、記事の最後に置いてその後のアクションのための補足とすることもできる。後者は、ただ単に情報提供しているだけではなく、実際に商品を売っているということを示すことができる。
もちろん、このように自サイトのどこかのページにやってきたユーザーをうまくつかまえていく(という言い方はあまり良い言い方ではないけど)という発想も重要ですが、Amazonのように、Webサービスやアフィリエイトを活用して、「Amazonで購入する人を増やすのではなく、購入したらAmazonだった」みたいなコンテクストをつくっていくという発想も必要でしょう。
どちらにせよ、今までのトップダウン型のウェブサイトの作り方、考え方では、ユーザーの行動や環境変化に対応できなくなってきているんじゃないでしょうか。
というようなことを考えていると、ますます「トップページラフから作る間違い」を痛感する今日この頃です。