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成果を上げるための時間管理

ドラッカーの「経営者の条件」を読む。どこを開いて読んでも珠玉の言葉ばかり。いつでもドラッカーは正しい。読むたびに今、組織に起きている問題のいずれかの解決を考える筋道を与えてくれる。

ドラッカーは成果を上げることは一つの習慣であると言う。そしてエグゼクティブが身につけなければならない習慣的能力を次の5つと言い切る。

  1. 時間を体系的に管理すること
  2. 外部に対する貢献に焦点をあてること
  3. 強みを基準に据えること
  4. 優れた仕事が際立った成果をあげる領域に、力を集中すること。優先順位を決定し、その決定を守る。
  5. 成果を上げるように意思決定を行うこと

(1)の「時間を体系的に管理すること」についてのメモ。
簡単に言うと成果を上げるためには時間をうまく使わなきゃならなん、という当たり前のことを言っているだけだ。時間を有効に使うためには、まず時間が何に使われているかを知らなければならない。知るためには記録をすることだ。リアルタイムで時間を記録していく。そして一つ一つの業務に「まったくしなければ、何が起こるか」「ほかの人間でもやれることは何か」ということについて考え、「あなたの仕事に貢献せず、あなたの時間を浪費させるだけであるようなことを私は何かしているか」と定期的に問うのだ。
そして、無駄な時間をできるかぎりなくし、細切れになっていた時間をひとつのまとまりにして、成さなければならないこと、他の人間にはできなことをやる。それが有効な時間管理だ。

さて、蛇足だけれども時間は何に浪費されるのか? ドラッカーは次の3つをあげている。

  • システムの欠如や先見性の欠如からくる時間の浪費
    • 繰り返し起こる危機は、ずさんさと怠慢の兆候の一つである
  • 人員の過剰から来る浪費。
    • 組織の上の人間が自分の時間の一割以上を、人間関係の問題に使っているならば、ほとんど確実に、人間が多すぎる
  • 組織上の欠陥。その兆候は会議の過剰。

うーむ。そういやうちも会議多い。ドラッカーは「人間は、仕事をするか、会議に出るかである。同時に両方することはできない」と言い、「思想的に設計された組織とは、会議のまったく開かれない組織である。」としている。ボク自身は、会議が必ずしも悪いものはないとは思ってはいるが、「''会議は原則ではなく、例外としなければならない。あらゆる人間が、常に会議をしている組織は、だれも何事も成しえない組織である」という言葉にはどきっとさせられる。

会議、報告会、説明会は、エグゼクティブの仕事の典型的な光景である。それらは、彼ら独特の日常の用具である。しかもそれらは、いかに時間を分析し、可能なかぎりコントロールしても、なお膨大な時間を要求する。
したがって、成果をあげるためには、会議や、報告会や、説明会から何を得るべきかを知り、何を目的とし、何を目的とすべきかを知らなければならない。「なぜこの会議を開くのか」「決定したいのか、情報を与えたいのか、確認したいのか」を問わなければならない。 さらにまた、会議を招集する前、報告会を開く前、説明会を準備する前に、それぞれの目的について徹底的に検討すべきことを主張しなければならない。そして、それぞれの会議が自分の貢献に役立つべきことを主張しなければならない。(P.92)

会議が貢献に役立つかどうか? つねにそれを問い続けよう。

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2004/08/08 01:51

2004年08月06日

360度フィードバック制度(日立)

2004年8月6日日経産業新聞
日立製作所が管理職を対象として360度フィードバック制度を導入して1年余。

日立が導入した360度フィードバック制度の特徴

  • 評価を賞与やポストなどの人事考課と結びつけない。制度の狙いはあくまでも本人の能力開発
  • 自分を評価する人(上司を除く)を、本人が選べるようにした(同僚三人以上、部下三人以上を候補に選ぶ)
  • 結果を本人に知らせる際に、丁寧な説明会を開催している(15人前後を1グループとして3時間程度かけて説明)

管理職の能力開発、育成として360度フィードバック評価はありかなぁと思っていたけれども、記事にもあるように「結果へのショックが逆効果になる場合」もある。自分のセルフイメージと、他人が自分に抱く像というのはたいていずれる。当たり前だ。セルフイメージってのは自分で都合の良いように解釈された自分像で、何の現実的根拠にも立脚していない。他者が見るのは、その人の行動だ。あくまでも行動によってその人がどんな人間かという像ができあがる。この行動は、セルフイメージとだいぶずれているのが常だ。なんで、360度評価のようなものをすると、たいていセルフイメージと大きな差がでてショックを受ける。しかし、このズレも含めて、他者から見る自分の姿ってのをきちんと知ることはすごく重要なことだ。自分自身では気づいてないことはたんとある。
日立のこの方法はズレの大きさによるショックを緩和できるような措置をとっていて、きちんとした本当に客観的な360度評価かどうかは若干あやしいけれど、よくできているなぁと思う。(そもそも客観的な評価なんてものはないし)

予想外の効果としては、評価される人が「部下や同僚は意外とよく見ていると気づく点」だそうな。

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2004/08/06 20:27

2004年05月13日

マネジメントの正体

マネジメントの正体―組織マネジメントを成功させる63の「人の活かし方」
スティーブン・P. ロビンズ, Stephen P. Robbins, 清川 幸美



おすすめ平均
使える一冊
世間一般のマネジャー向けの本ととらえれば、充分いい本なのでは
読みやすく、堅くない

Amazonで詳しく見る4797320532
このブログのコメントで教えてもらった「マネジメントの正体」を新幹線の中で読んだ。本書は63の短い章で構成されている。さらに章は大きく10の領域に分類されている。

1.採用
2.モチベーション
3.リーダーシップ
4.コミュニケーション
5.チーム作り
6.衝突の処理
7.職務設計
8.業績評価
9.変化への対応
10.行動

この10の領域を見ても、本書がマネジメントという問題を俯瞰的に、総合的に扱っていることがわかる。これがMECEかどうかはわからないが、少なくともマネジメントについて課題なりえるほぼすべての領域がカバーされているとは思う。

頭から読み進めても良いだろうし、この10の中から今関心のある領域のところだけを読むのも良いだろう。ページをめくっていって気になるタイトルの章だけを拾っていくのでも良いかもしれない。とにかくどんな読み方でもいいけれどもマネジメントという問題、課題に直面している人はぜひ手元に置いておきたい。そして何度も読み返したい。そんな本である。

コメントの中で例としてあげて頂いた「ほとんどの場合、生産性の高い従業員が充実感を抱くのであり、その逆ではない」という言葉はCase13「部下が仕事に満足しない理由」に登場する。この考え方にははっとさせられた。

多くの企業が従業員の仕事に対する満足感を高めようと努力している。福利厚生やフレックスやらと働き安い環境、魅力的な環境を提供しようと務めている。しかし、満足度を高めても生産性が向上するという相関性はない。

生産性が高まるから満足するのであって、その逆ではないらしい」というのが真実のようだ。生産性が高ければ褒められる機会が増え、給与レベルも上がり、仕事に対する充実感も抱ける。これが満足度につながるのだ。

この考え方は、形を変えて何度か本書のなかに登場する重要な考え方だ。
例えば、Case22「認めてあげると人はやる気を出す(おまけにお金もかからない!)」や、Case40「行動は言葉に勝る」、Case60「感情が行動を導くのか、行動が感情を導くのか」といったところで語られることにも関連していることだだろう。

満足度を高める方法に注力するのではなく、生産性を高めることに力を注ぐ。たとえば、「訓練にもっと費用をかける、職務設計を改善する、もっとよい設備を用意する。そして、優れた能力を持つ従業員にとって何か障害があればそれを取り除く。」

1章1章はものすごく短いけれども、マネージャーにとっては珠玉の言葉がつまっている本だ。

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2004/05/13 09:46

2004年05月06日

7つの習慣:目的を持って始める

「7つの習慣」第二の習慣は「目的を持って始める」だ。

「人生の最後の姿を描き、それを念頭において今日という一日を始めることである。そうすれば、自分にとって何が本当に大切なのかをベースに、今日の行動、明日の行動、来週の行動、来月の行動を計画することができる。」(P.27)

「最期の姿」を念頭において、というのも極端な考え方であるが、要は長期的な目的をブレイクダウンして1日という日を送らなければならないということである。

「目的を持って始める」ということは、リーダーシップの原則に基づいている。 「マネイジメントは手段に集中しており、どうすれば目標を達成できるかという質問に答えようとするものである。一方、リーダーシップは望む結果を定義しており、何を達成したいのかという質問に答えようとするものである。」(P.132)

「リーダーシップ」と「マネイジメント」をどう切り分けるかということはたいした問題ではないが、ここで著者が言っているような「目的を定義する」能力(リーダーシップ)と「目的を達成させるための能力」(マネイジメント)は、組織においても当然欠かせない。 私自身もそうだったのだが、「マネイジメント」に率先してあるべき「リーダーシップ」については極めて曖昧な考え方しかしていなかった。ここでこの二つが切り分けられ、そしてそれが歯車の両輪であって、どちから一方でも欠けては目的達成は叶わないということを学んだ。ロジカルシンキングでも問題を要素に分解して、それぞれの要素について考えるというフレームの有効性はよく言われる。「マネイジメント」と「リーダーシップ」の問題は、僕のなかでは今までほぼ同一のもんとして一緒にまとめられていた。これを切り分けて考えることで、かなりいろんなことが整理される気がする。

目的を持って始める最も簡単で効果的な方法の一つとして、著者はミッション・ステートメントを書くことを推奨している。どうなりたいのか、何をしたいのか、自分の行動の基礎となる価値観や原則はどういうものなのか。 自身の価値の基準となるもの、自分自身に課すべき長期的な目標、価値観をつくるのだ。 ミッション・ステートメントをつくり、それを生活の中心に置くことで、それは「安定性方向性知恵、ならびにの根源となる」(P.147)

「リーダーシップ」は、ころころ目標を変えてはいけない。自身が目指す価値や目標に沿って一貫した決定や行動をとっていく必要がある。そうでなければ「マネイジメント」が困るからだ。「マネイジメント」は「リーダーシップ」が照らし出す方向性へ効果的/効率的に進むための手段であり、能力だ。照らし出される方向が間違っていたり、ころころ変わっていてマネイジメントがうまくいくはずがない。

今から3、4年前に僕らも組織のミッション・ステートメントをつくった。1年近い議論を重ねて、最終的に完成したミッション。最初は自分達でつくっていながら、どことなく地に足のついていない感じがしていたのだけれど、最近になってようやくそれをつくっておいて良かったと思えるようになった。非常に抽象的な価値観の表明ではあるけれども、自分達が向かう方向や、尊いと思う価値、信条などがミッション・ステートメントにきちんと備わっている。最後の砦はいつもそこ。遠くおぼろげながらそのミッションを守ろうという意識がどこかに根付いている。 前回の面談のなかでも何人かのマネージャーの口から「ミッション・ステートメント」の話が出た。そのミッション・ステートメントが自身の仕事観にもぴったり合っていると感じられる瞬間があったとか、それが大事だということがわかったというようなかなり嬉しい言葉だった。 ミッション・ステートメントを作成しているときは、まだ社員は20人にも満たなかった。日々の資金繰りで四苦八苦しているような状況でとてもミッションなんてこと言ってる場合でもなかったのだけれど、今思えばあの時つくっておいて本当に良かったと思う。

しかし、個人的なミッション・ステートメントというのは考えたことがなかった。 会社のミッション・ステートメントをつくっていたときには既に「7つの習慣」は読んでいたはずだったのだけれど、全然結びついてこなかったし、思い出しもしなかった。恥ずかしいことだ。

会社のミッション・ステートメントをつくっていたときもそうだったけれど、ミッション・ステートメントをつくるのは凄く難しい。それがすべての価値基準・規範となるということになれば、そうそう安易にはつくれない。いきなりミッション・ステートメントを書きないさいと投げ出されても、ほとんどの人はそこで行き詰まってしまうのではないだろうか。

そこで著者は「役割と目標を決める」という前段階を提案している。

私たちは生活のなかにさまざまな役割を持っている。たとえば、父であったり、妻、あるいは友人、会社の課長、部長、社長などなど。 まず、自分にはどのような役割があるかとういことを書き出してみること。そして、それぞれの役割に、自分はどのような人になろうとしているのか、どのような価値観によって導かれるべきかということを書き上げていくというわけだ。

「フランクリン・プランナー」には、ミッション・ステートメントを書くところが用意されている。また、ミッション・ステートメントを書くために必要な、自身の価値基準を見つめなおすための質問も用意されていて、その質問に答えていくことで、徐々に自身の価値基準が明らかになっていくという仕組みだ。

演習1が「価値観/説明文」をあげていくこと

価値観:プロ意識
説明文:
・毎日優れた仕事をする
・他の人のアイディアに対してオープンである
・積極的な態度を貫く
・チームプレイヤーとして貢献する

演習2は「役割」とその役割に対して「鍵となる人々」と理想の行動を「説明文」としてつけていくこと。

役割の例グラフィックデザイナー
鍵となる人々上司、編集者、顧客
説明文能力のかぎり完璧でクリエイティブな仕事をする

演習3は「スタートとなる質問」として、次ぎの2つに答えること。

  1. 仕事の中で、これを行えばすばらしい結果をもたらすと思われるものがあるとすれば、それは何ですか?
  2. プライベートの生活の中で、これを行えばすばらしい結果をもたらすと思われるものがあるとすれば、それは何ですか?

演習4が「ある(Be)、する(Do)、持つ(Have)」を明らかにすること。
「どのような人物になりたいか?(Be)」
「したいことのすべて(Do)」
「一生の間に所有したいものすべて(Have)」
をリストアップする。

演習5は、自分が死ぬとき皆からどんな人物だったと思ってもらいたいか、どのような人物として記憶に残って欲しいかということを具体的にイメージする。

そして、最後。
演習6は、以下の5つの質問に答えること。

  1. わたしが最も幸福で充実感を感じるのはどういう時だろうか。
  2. わたしが仕事において最も楽しく充実感を覚えるのはどんなことだろうか。
  3. わたしが私生活で最も価値があると考える活動はどんなものだろうか。
  4. わたしが身につけたい才能や能力はどのようなものだろうか。
  5. わたしが最も貢献できることは何だろうか。

この演習1~6を自身の頭で考え、イメージし、実際に書いていくことで、少しづつ自分の価値観が明らかになってくるというわけだ。フランクリン・プランナーを購入してから僕もこの演習を寝る前にやっているのだけれど、これが結構難しい。おそらく今まで考えたこともなかったことだからだ。

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2004/05/06 08:28

2004年04月25日

マネジャーにおける真摯さの欠如

新しいカテゴリーで「マネイジメント」というものをつくった。ここ数年来のテーマであり、自分でもここには意識的に取り組んでいかなきゃならない。無理矢理カテゴリーをつくっちゃうことで、「マネイジメント」に対してのアンテナを広げていきたいと思っている。

で、初エントリーは、マネイジメントといえばドラッカーだろうと。(もしかしたらドラッカー書物の備忘録になっちゃう可能性もあるな。)

ドラッカーは「真摯さを絶対視して、初めてまともな組織といえる」と語り、真摯さというものを組織の条件であると語る。そして、マネジャーとして失格とすべき真摯さの欠如の定義として次の5つをあげている。

  1. 強みよりも弱みに目を向ける者をマネジャーに任命してはならない。できないことに気づいても、できることに目のいかない者は、やがて組織の精神を低下させる。
  2. 何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者をマネジャーに任命してはならない。仕事よりも人を重視することは、一種の堕落であり、やがては組織全体を堕落させる。
  3. 真摯さよりも、頭のよさを重視する者をマネジャーに任命してはならない。そのような者は人として未熟であって、しかもその未熟さは通常なおらない。
  4. 部下に脅威を感じる者を昇進させてはならない。そのような者は人間として弱い。
  5. 自らの仕事に高い基準を設定しない者もマネジャーに任命してはならない。そのような者をマネジャーにすることは、やがてマネイジメントと仕事に対するあなどりを有無。
  6. (【エッセンシャル版】マネイジメント 基本と原則 P.147~148)

(1)の「強みよりも弱み」というのは、裏を返すと「組織は問題ではなく機会に合わせなければならない」ということと同義だろう。この言葉は非常に重い。ついつい僕らはすぐに「問題」にばかり目が行く。悪いところばかりが目につく。しかし、マネジャーは、本来、弱みよりも強みを視なければならない(これは、弱みを見ないということではない)。

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2004/04/25 18:27