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2007年08月24日

在宅勤務制度のためのメモ

在宅勤務制度関連についてのメモ。(東京IT新聞 8/21)

テレワーク人口倍増アクションプラン
2010年までに2005年度のテレワーカー人口比率を二倍にして、全就業者の20%をテレワーカーにすること。

平成19年度税制改正において、企業の在宅勤務のための設備導入に際しては、シンクライアントシステム、VPN装置等の取得後5年度分について、固定資産税の課税標準を三分の二に軽減(「テレワーク環境整備税制」)

報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドラインなんていうのもまとめられている。あとでしっかり読んでみよう。

この記事には在宅勤務環境に有効な製品として、フリービットの「MyVPN USBノード」が紹介されている。いわゆる物理認証。「QuaBiz」みたいなシンクライアントASPなどに組み入れて使えるそうな。

在宅勤務制度は、実現させたいとひそかに考えている制度のひとつだ。
これだけネットワーク技術が発達して、コミュニケーションツールの価格も落ちてるなか、毎日何時間も同じ場所に、みんなが集まって仕事をしなければならない理由はない。
といっても、全員が各自ばらばらに顔を寄せ合うこともなく仕事ができるとも思ってない。ただ今のように「毎日」である必要はないだろうということだけだ。

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2007/08/24 08:36

2007年05月30日

クレームや相談への対応

昨日(29日)の日経産業新聞に、顧客や部下からクレームや相談を受けた際に、リーダーがどのように対応するのが適切かという例が載っている。身につまされるところが多々あるのでメモしておこう。

●遅刻が相次ぐ部下に注意する
<好ましくない例>
「何回遅刻しているんだ」と本人を責める
<好ましい例>
「うちは『遅刻ゼロ』の職場を目指している。協力して」。個人を責めず、職場全体の課題と置き換える。

●昇格が決定。新任地で部下を前に挨拶することに
<好ましくない例>
「ビシビシいきます」「厳しくやります」。本人は軽いノリのつもりだが、地位が上だけに部下は威圧感を覚える。
<好ましい例>
「一緒に頑張りましょう」と呼びかけ、自分の方針や目標を具体的に述べる。

他にもクレーム対応などへの心構えや例みたいなものが載っている。
同じ状況のとき、自分ならどうするかということをシミュレーションしてみると、全然出来てないことに気づく。
ダメだなぁ。他人が同じことをするときは、よくわかるのだけれど、自分のこととなると全然だ。

ただ、上記の例を紋切り型として、どんなケースでもそれでOKかというと、そうではないだろうと思う。少し危機感を与えるために、あえて厳しくしたり、人身御供ではないけれども、その人を怒ることで、周りにもその規律を意識させたり、使い分けは必要だとは思う。その使い分けの適切さが、よくわからなかったりするので困るのだけど。

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2007/05/30 09:04

2007年05月27日

雑記

昨日の面接ではこんなことがあった。ある求職者に対して、ボクは、
「将来、起業したいとか、自分でビジネスを興してみたいとかそういう夢はありますか?」という質問をしてみた。この質問はあえて「はい、いいえ」(あるいは「よくわかりません」)で答えられるような形で質問している。その人の何が知りたいというわけではない。答えが「はい」でも「いいえ」でもかまわなくて、その答えに対して、その人がどういう考え方を持っているのかということを知りたいだけだ。

さて、その人はどう答えたか。しばし、うーんと空を見ながら考え、
「そうですねぇ。やっぱり私もお金持ちになりたくないといったら嘘になりますし、やはりお金はたくさんあるにこしたことはないんですが、でもお金のために何かするというのもそれはそれで違うと思ってるんです。」
と話し始めた。しばらくボクは聞いていた。しばらくお金が大事なところと、お金が大事ではないところの話が続き、最後に、
「ということで、私自身はあまり起業などは考えていません」と結んだ。

最初、ボクはなんのことを言ってるのかさっぱりわからなかった。最初は彼が質問を何か聞き間違えたりしたのだろうかとも思ったが、彼の最後の答えを聞いてる限りでは、きちんと質問内容は伝わっているようでだ。

そして気づいた。なるほど、彼はどうやら「起業する」「会社をつくる」を、「お金持ちになる」という意味で捉えてしまっているようなのだ。なぜ、そんな風につながったのかはわからないが、彼の中には、もしかしたら「社長=お金持ち」というような構図があって、無意識のうちに「起業する→自分が社長→お金持ち」とつながったのかもしれない。あるいは、「起業する人」=「もっとお金を稼ぎたいと思っている人」というような意識があるのかもしれない。
とにかく、彼が「ビジネス」や「起業」「社長」みたいなところに抱いているイメージが「お金持ち」であることは間違いないようだ。

「起業」や「会社を興す」ってことが「お金持ち」につながるってのもわからなくはないけれども、でも随分と偏った考え方だと思う。

会社を興して成功する確率なんて、びっくりするほど低い。成功するどころか新しく設立した会社が5年以上継続する確率もかなり低いはずだ。(以前、何かの文献で見た。でもネットによって生き残れる確率は確実にあがってるとは思う。)
創業から7、8年目ぐらいまでのうちの社長の報酬はたぶんびっくりするぐらい低かった。いまでもそのリスクとか背負ってるものの大きさに較べると、低すぎるんじゃないかと思うことはよくある。

ともあれ、彼のその偏った考えたを聞いて、もしかしたら彼のように考えている人が実はけっこう多いのではないかとも思った。
社長や役員はたくさんお金がもらえるからいいなぁ、みたいな感覚だ。それでボクも、私も、もっと出世したいと思ってもらえるならそれはそれでいいけれど、たくさん報酬をもらうということは、その分リスクもあるし、結果責任も問われるし、そのプレッシャーは半端なもんじゃないということだって、やはりちゃんと理解してもらいたいなと思うわけだ。
経営者になるというのは、お金持ちになるどころか、むしろいつも会社のことを考え続け、いつもどこかに恐怖を感じ続けながら、生きることを引き受けることなのだ。キャッシュが目減りしていけば胃が痛むし、営業状況が悪ければ、夜も眠れぬ不安に苛まれる。
投資したビジネスがうまくいかなければどうしよう。何をしてるときも、どこにいるときも、そんな不安や恐怖につきまとわれるのだ。

もちろん、そういうリスクや苦しさに代わるだけの、喜びや充実感、愉しさがあることもまた事実で、だからこそそう簡単に辞められないのではあるが。


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2007/05/27 00:10

2007年05月18日

弱みよりも強みに目をむけよ

今週はいろいろ教えられた。とても勉強になった1週間。

ドラッカーは
「強みよりも弱みに目を向ける者をマネジャーに任命してはならない。できないことに気づいても、できることに目のいかない者は、やがて組織の精神を低下させる。」
と言っていて、ボクは何かある事にこの言葉を思い返してるのだけれど、ついつい恐怖心や不安から、口をつく言葉は自分の意図とは間逆のものだったりすることが多々ある。

まさに、ここでドラッカーが言ってるような「組織の精神を低下させる」ようなマネジャー的言動をとってしまうのだ。
立場が立場だけに、そういうところを指摘してくれる人は周りにはなかなかいないので、自分では気づきにくい。

でも、今週、ある人からそのことを指摘されて、ボクは今、猛烈に反省している。
そしてその人にかなり感謝している。このまま指摘されなければ、口ではもっとスピードを上げてと支持をしながら、一方でブレーキを引いてるという最も、嫌なマネジャーを演じ続けることになっていたかもしれない。N君、感謝です!

このドラッカーの言葉。よくよく考えると、商品やサービスにだってこの言葉はあてはまるのではないか。
商品の欠点やマイナス面ばかりを指摘するのではなく、その商品が持つ強みや特長に目を向け、どうやったらそれをより伸ばしていけるのか、競合優位性を築いていけるのか。もちろん、欠点を改善していくということも重要なことには違いないけれども、強みに目を向けるという視点がなければ本当のイノベーションは生まれないのかもしれない。

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2007/05/18 09:17

2007年03月19日

「決定」で儲かる会社をつくりなさい


"「決定」で儲かる会社をつくりなさい" (小山 昇)

前作というのか「儲かる仕組みをつくりなさい」には相当影響を受けたというか、かなり参考にさせていただいた。 今日の役員会議でも同じような話になったのだが、結局、「●●●●をやれ」と指示するだけで、●●●が速やかに確実に実行されるのであれば、経営なんていらない。マネジメントなんていらない。ただ言ってるだけでは出来ないからこその経営なのだ。それをやらざるをえない仕組みや、やることにモチベーションや働きがいを感じさせる仕掛けなど、●●●がなされるために環境や仕掛け、仕組みを用意していく。そこにこそ経営の醍醐味があり、ダイナミズムが潜んでいる。小山さんの方からボクはそんなことをほんの少し学んだ。

しかし、小山さんのやりかたというのは、ちょっと劇薬すぎるというか「普通」からはやはりだいぶズレている。これを実行するにはかなり勇気が必要だ。
もちろん、他と違うことをするから意味があるのであって、他の会社がやってることをそのままなぞっていても駄目なことはわかっている。それでもどうしても長いものに巻かれろ精神というか、大方の人がそうであろうと考える方法をあまり深く考えずに採用しがちなのが会社経営だ。でも、それってよくよく考えてみれば、会社経営でもなんでもない。小山さんの本を読むと、そういうことを考えさせられ、改めさせられる。

前作が「仕組み」であり、そういう仕組みをつくることで、そうせざるをえなくするという様々なテクニックや考え方が披露されたが、今回は「決定」だ。経営にはさまざまな「決定」がつきまとう。決定一つで会社が傾くかもしれないし、決定一つで大きく成長カーブを描くこともある。決定ができるのは経営者だけだ。本書ではさまざまな場面における小山流の「決定」方法、「決定」への考え方、ポリシーが明らかにされる。銀行との交渉方法など、ちょっとした裏技的なテクニックも明らかにされていて面白い。
でも、今作は前作に比べると、やっぱり物足りないなぁと思う。やはり前作から漏れた事象を拾い集めた感は否めず、全体に散漫な感じはする。それでもやはり得られるものは少なくない。読んでおいて損はなし。

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2007/03/19 01:16

2007年02月13日

言葉の力

佐藤優の本は去年から読み続けてて、だいたい主要なものは読んでいる。彼の本を読むと、外交というものがどういうものなのかということが、本当に具体的によくわかる。今まで「外交」という言葉で漠然とイメージしていたことが、鮮やかな彩りを与えられる。
国家の自縛」の中に、とてもわかりやすく「外交」を伝える一文があったので抜粋しておく。

外交の力は言葉の力なんです。伝えたいメッセージは同じでも、「お前、嘘つくな」と言えばみんな怒る。「お互い、正直にやろうぜ」とやれば誰も怒らない。言葉は発言だけにとどまらない。文化行事もメッセージを持つ外交の言葉なんです。

国家がどのようにして、どのようなメッセージを発するのか、そのメッセージの裏側の意味は、それにどのような歴史的・地理的認識を持って応対していくのか、すべての「外交」はメッセージであり、レトリックといっても過言ではない。

「外交」ではないが、政治の世界にもレトリックの力学というのは大きな意味を持つ。
2010年NTT解体」という本の中で、NTTが報道発表した「次世代ネットワーク構築のロードマップの資料」について言及されている件がある。
その資料の当初の案では、次世代ネットワークの構築にNTTドコモが参加する、というくだりは、「移動系との一体化を実現」という表現が使われていたが、発表された資料では「移動系とのシームレス化を実現」する予定と、すげ替えられたそうだ。
「一体化」という言葉からは、バックボーンのネットワークを固定系と移動系で一つにするように見える。NTTドコモとしてはNTTが描くFMCの構想の上に、自社が位置付けられてしまうことからは距離を置き、チャンスあらば、FMS(fixed mobile substitution)のコンセプトもちらつかせて行きたい。そのためには「一体化」という言葉ではなく、曖昧、漠然とした「シームレス」という言葉を使わせたかったということだ。
この些細なメッセージの差異で、何百億というビジネスが動いているのだから面白いなと思う。「一体化」を「シームレス」という言葉に変えさせるために、相当な駆け引きがあったのだろうし、どこまで譲歩すべきか、その譲歩によってどんなメリット、デメリットが引き出せるのかという、いくつもの「読み」があったことだろう。

そういえば、佐藤優は「インテリジェンス」の大半は発表されている資料をつぶさにあたることで把握できるというようなことを言っている。
NTT、NHK、放送法絡みの政府発表や、それを受けた各新聞紙面での語り口などを分析すると、そこには必ず何かしらの意図が見えてくるだろう。たぶん、ただ日経を読んで、その上辺の情報を租借するよりも、ずっと深い情報をえぐり出すことができるだろう。

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2007/02/13 20:20

2006年12月02日

第一回すごい会議の実施

今日は休日にもかかわらず、各部門のマネジャー陣が集まり、第一回目の「すごい会議」セッションを実施した。
予定時間は9時間(休憩1時間程度)だったが、結局、コミットメントリストの作成は月曜日に。

戦略的フォーカスの策定に入る前の「過去の振り返り」でだいたい2時間程で、順調のように思えたのだが、やはり戦略的フォーカスの策定と部門の洗い出しはかなりの時間がかかった。
本来、戦略的フォーカスは1つに絞り込むべきだが、今回は2ステップの目標設定となった。まぁこれも良しとするか。

とても時間のかかる会議ではあったけど、いつものだらだらとコメント交換だけに終始している会議よりはよほど内容の濃いものになったのではないかと思う。たぶんみんなかなり疲れたとは思うけど。でも、ボクも何も今回は進行役だったにせよ、これはこれでかなり疲れた。議論が変な方向に行かないように、自分なりにはコントロールしたつもりだったが、どうだったろうか。でも、こういう疲れ方はまだ気持ちがいい。いつもの会議の後の徒労感とは違う疲労感だ。

会議ってのは、効率云々の前に、効果的かどうかを問わなければならない。どんなに効率的な会議でも、意味がなければなにもない。時間がかかろが、疲れようが、その会議が効果を生み出せばそれは、有意義な会議だ。

こういう会議手法が嫌いな人もいるかもしれないけれど、ボクは紙に書いて発言するという方法は、その部分だけ切り出しても、すばらしいアイディアだと思っている。時間はかかるが、全員が問題に対して考え、人の意見に左右されず発言ができるという場をもてることはすごく重要なことだ。たいていの会議は、最初の発言者の発言内容に意見が左右されてしまったり、場が流れていったりする。気づけばだらだらと関係のない話し合いがもたれる。
そういうのは、たぶん飲みの場でやればいいのだ。そういうだらだらと考えてることを話し、共有するということも、コミュニケーションとしてはもちろん必要なものだけれど、あえて会議という場でやる必要はない。


■反省点
・「約束を守る」ことの徹底。
時間を守る、報連相を行うという、ほんとに基礎の基礎をしっかりマネジャー陣がやらないとなぁと思う。
何時何分からはじめる、と言っても、その時間に必ず誰か揃っていない。その誰かを待ってると、その間に誰かがまた席を外す。遅れてたものが帰ってきたときには別の誰かがいない状態になってる... これが繰り返されて、必ずといってほど、休憩を挟むと、会議開始が5分から10分遅れていく。このことへの意識がすごく弱い。これはボク自身も日頃そうなので、しっかりとしなければいけないところではあるけれど、スタッフの規範の第一歩としては、ほんとにこういう基礎の基礎を軽々とできてしまわなければいけないだろうと思う。

・戦略的フォーカスに数字面の裏付けを先に前提として用意しておくことも必要かもしれない。
例えば、これを各部門ごとにやるときには、部門の売上、粗利目標が設定されている状態で、その数値目標達成のための戦略的フォーカス、あるいはその数値目標を達成することによって、どのような精神的インパクトを得たいか、というところから議論に入るほうが良いかもしれない。

・部門を上げる際に、そもそも戦略的フォーカス遂行のための「プロジェクト管理・進捗管理」という部門が必要になるという意見が出てくるケースがある。が、進捗管理は、各部門のメンバーが毎週コミットメントリストの進捗を報告しあうことで、相互チェック、確認、状況把握を行っていくという流れがあるので、この部門は必要ないという説明を最初にしておいたほうが良いかもしれない。

・コミットメントリストの作成時には、その戦略的フォーカス策定のために必要なアクションを3~5個に絞って、あげてもらうのが良い。あまりにも細かくなりすぎると、意味のないコミットメントリストが多数でてくる可能性がある。
また、コミットメントリストにまとめあげる際に、メジャーメントを設定していく形にしたほうが良い。

何はともあれ第一回を終えた。この手法を全社的、階層的にうまくインストールしていくことがボクの目標でもあり、マネジメント層の底上げのために考えた戦略なのだが。頑張らねば。

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2006/12/02 22:41

2006年11月05日

いまさらながら「すごい会議」を

すごい会議』は発売当初に読んだのだが、最近再び読み返してみた。たまたまとあるプロジェクトで大橋禅太郎さんのマネジメント・コーチを受けた会社の方とご一緒したということもあり、そこでお聞きした話にも刺激を受けた。また、上期を終えて問題は多々ありながらも目標をほぼ達成し、下期または来期に向けて、新たな組織体制、人事によって前向きなムードが芽生えつつある今だからこそ、会社としての目標を再確認し、それをマネジメント陣できちんと共有したい、という思いがあり、もっと前向きで創造的な会議をしたいと再び手にとった次第だ。

すでにあまりにも多くの人が「すごい会議」を実践して、そのことについて書いているのだが、あらためて自身の勉強のため、『すごい会議』について考えて見る。進行方法や手順は本に書かれてあることにのっとるとして、実践してみて疑問に思うところやポイント、こうしたほうがいいのではないかという考えをまとめてみる。

会議の進行手順のおさらい

1)会議の参加者に「うまくいってること」を3つ以上書いてもらい、それを発表してから会議を始める

2)この会議で得たい成果を紙に書いて発表してもらう

3)達成の障害となっている問題や懸念を書き出し、それらを「どのようにすれば~」の形に書き換える。

4)「言えない問題はなにか」を書いてから、「どのようにすれば~」の形に書き換える。

5)「あなた自身のひどい真実はなにか」を答えを書いて発表してもらう

6)「戦略的フォーカス」を参加メンバー全員で創り、合意し、約束する。

7)戦略的フォーカスにニックネームを付ける。それを達成するのに、必要不可欠な担当分野を6程度決める。

8)コミットメントリストに各担当のコミットメントを記入する。

9)「いまから一ヶ月以内に、自分の起こす一番大きな、インパクトはなにか?」を各自が書いて発表する。


■問題や懸念点の解決方法

手順3)、4)、5)は言わば、「問題」「懸念」をその根本的なところまで遡って棚卸しするステップといえる。「言えない問題」というステップを踏むことで、表面的な問題からより深層の根本的な問題をあぶり出していくための質問だ。これらのステップの後に、「戦略的フォーカス」の作成へと進むわけだが、ボクがひっかかるのは、ここで棚卸しされた問題の解決案、解決方法を考えないのか?ということだ。 すでに「どのようにして~」という文章に変換することで、アイディアが出やすくなっている。その状況を一旦宙ぶらりにして、「戦略的フォーカス」に進むのはなぜだろう? 問題を棚卸ししてることによって「戦略的フォーカス」その後のコミットメントリストの作成といったものの土台が生まれているのかもしれないが、すべてでなくともその場で解決可能なことは合意しておいても良いのではないかと思うのだ。

『すごい会議』のなかでも問題解決方法が提示されている。
STEP.1 問題点または懸念を「どのようにすれば」という質問に変換、STEP.2 「私の主張では~」をつけて、現時点での状況を15個ほどあげる。 STEP.3 「私の提案では」をつけて、提案、代替案、創造的な解決策、検討の可能性をあげていく。ここからやるもの、やらないものを決めて、アクションを起こすのが適当な人に「リクエスト」を行い、コミットメントリストを作成する(担当者/期日/望まれる成果)。ミーティング終了前に、残った問題を誰がいつまでに解決するか(またはとりあえず放っておくか)を合意する。
この集団解決方法を、5)の後に置いてはどうかと考えている。これだけで、会議はおそろしく長くなってしまうだろうが、せっかくあがった問題や懸念点、それにたいして解決策がでやすい雰囲気が生まれているのだから、そこでできる解決のためのTODOは決めてしまったほうが良いのではないかと思うのだ。

・・・と思っていたのだが、ここを見ると、「
これは、意見は集めずに、「どのようにすれば○○か」という文章を集めるだけです。」との回答があった。
また、「手順6,7,8(※このエントリーでは3)、4)、5)のこと)は答えを作る場所ではないのです。」「問題を前向きな形でたな卸しするだけです。「答え」を提示する人がいたら、それはストップします(経営者自身がやってしまい そうになることも多くみます)ここで、誰かが「答え」を言ってしまうとドチッラケなのです。 その答えが、各自、 意識的または無意識のうちに手順11でコミットメントとしてその解決策が約束される可能性を最大化するためにやっているとお考えください。」という回答が...

なるほど。手順3)、4)、5)はあくまでもコミットメントの際に参照するためのものなのか... 

しかしこのFAQの存在は知らなかった。「1,3,5,2,4,6,7,8,9,1 0,11,12です。最初の1,3,5が準備段階で一人でやる部分で、2からが参加者と一緒にやる部分 です。」というのは手順を重視する「すごい会議」ではとても重要なことではないか。うーむ。後でこのFAQと手順を読み返してみてもう一度整理してみよう。

少し話は変わるが、そもそも「すごい会議」は、会議の効率を上げるための手法ではないということ。これは見落としがちだけれどもしっかりと理解しておかなければならない。
もちろん「すごい会議」は結果的には会議の効率を上げてくれるものではあるけれども、先に「効率の改善」を考えていると、おそらくうまく機能しない。そもそも会議は効率的かどうかよりも先に効果的かどうかを問わなければならない。どれだけ効率的でも、効果的ではない会議は意味がない。果たして今、会社で開かれる種々様々な会議が効果的かどうかということを問うてみよう。そして、効果を生むための会議手法として「すごい会議」の導入を考えると良いだろう。実際、最初に「すごい会議」を開くと、かなり時間がかかる。しかし、「すごい会議」でかけられた時間は、通常の会議のように時間のほとんどが「コメント」の交換だけで終わる会議より、ずっと大きい効果を得ることができる。


■会議の発言をファシリテーターがコントロールする

『すごい会議』の中で、会議の中での発言を「提案」「リクエスト」「明確化のための質問」の3つに絞るという方法がさらりと提示されている。このテクニックだけでも本書を手に入れる意味があるのではないかと思う。『すごい会議』の中で、大橋禅太郎さんがあれやこれやとこれじゃうまくいかないんじゃないか的な発言をしていたとき、ハワードさんが「では、おまえの提案はなんだ?」と聞いている。うまくいかなり理由を指摘するときは、「代替案を提示」しろということだ。ちょっとしたことだけれども会議内でファシリテーターがこの一言を発せるかどうかは鍵だろう。「リクエスト」の際には、「誰が」「特定の日付と時間」「そして、なにをもって成功とするのか」ということを記述するようにする。会議前のルールとして、会議では原則「提案」「リクエスト」「明確化のための質問」という3つのどれかを意識して発言してもらうことを説明しておくと良いかもしれない。
ちなみに、『すごい考え方』では会議では「一般的な意見」「提案」「コミットメント」という3種類の発言があり、会議の目的は最終的に「コミットメント」を得ることとしている。「一般的な意見」の中から「提案」につながる要素を抽出したり、そこから「コミットメント」を導き出したりという役割がファシリテーターには求められる。
書いてから発表する、という方法をとることそのことが、実は「コメント」を減らすことにもなるので、まずは面倒でもとにかく書いて、整理して発表するという手順を徹底させることも重要だろう。


■1つの戦略的フォーカスに収斂させる方法?

手順6の参加者全員で「戦略的フォーカス」を創り、合意するというところ。「X年Y月Z日までに~~~(なんらかの数字または測定できること)~~~を達成することによって、~~~(欲しいインパクト)となる。」という3行の文章を完成させるというステップだが、ここの進め方がいまいち理解できていなかった。ここでも、1人1人がこの文章を完成させて読み上げていくわけだけど、最終的にはそれを1つにまとめあげなければならない。「すごい会議」の第四章では、そのまとめあげかたは書かれていない。なんとなく意思決定者が最終的に決定を行うのかなというレベルなのだが、それで良いのだろうか?

意思決定者が最終決定を行うとして、せっかく1人1人があげている戦略的フォーカスだ。これをうまく収斂させてチームの目標にできなければ、その後のステップには意味がないのではないか。
1つの方法としては、全員の戦略的フォーカスが出そろった段階で、今度はそれらの戦略的フォーカスを包括するさらに上位概念の戦略的フォーカスを全員に考えてもらう、というステップをとる方法。そうやって可能な限り上位の包括的戦略的フォーカスをつくっていき、最終的に意思決定者によって決定する。最終の戦略的フォーカスへの合意の際にも、まず自分がベストと思うものを提示し、自身のアイディアが採用されなくてもなされた意思決定が正しく機能するためにサポートしていく姿勢を生み出す。


トップマネジメントから「すごい会議」を導入する

全員で目標をつくり、コミットメントリストをつくり、ということで考えると、「すごい会議」は合議に基づくボトムアップ型のマネジメントスタイルのように思える。「戦略的フォーカス」などは、トップマネジメントでつくり、それを達成するために各階層のマネジメントが行われるというようなトップマネジメントスタイルを志向する会社には適合しにくそうなイメージがある。トップマネジメントで「すごい会議」を実践するなら、そこで合意された「戦略的フォーカス」が会社目標となるから問題はないのだろうが、ある部門やある階層のメンバーで行うとなると、下手するとそこでできあがる戦略的フォーカスが、会社の方向性とそぐわないものになる可能性もあるのではないか。

そういうことが起きないようにするためには、結局、会社としての「戦略的フォーカス」と「コミットメントリスト」を社員全員が知っておかなければならないだろう。これは当たり前のことのようだけど、実際、売上目標などの数値目標以外、会社がどういう方向を志向し、どうなろうとしているのかということを社員一人一人にまで理解してもらうことは大変なことだ。まずはトップマネジメントが「すごい会議」でしっかりとした戦略的フォーカスとコミットメントリストをつくり、その目標にむかって邁進し、その成果を達成することのインパクトやすばらしさを伝えていくことが必要なのだろうと思う。

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2006/11/05 17:44

2006年10月10日

管理職とリーダー

社長からウェルチの言葉が流れてきた。
管理職とリーダーは違うという話。
管理職という言葉を使うのは考え物である。

<ものごとの先に進めるよりもコントロールしようとする。ものごとを単純にしないで複雑にしようとする。アクセルを踏まずに、ブレーキをかけようとする>・・・・そういう人たちを、管理職と呼ぶからだ。

どうすれば事態は改善するか。その明確なビジョンを人々に示すのがリーダーである。ルーズベルトも、チャーチルも、レーガンも、みんなそうだった。
それに対し、どうでもいいような細かいことに時間を費やしているのが管理職である。管理職は、ものごとを複雑にすればよいと考えている。そうすればひとよりも頭がよくみえると勘違いしている。これでは、部下は絶対に発奮しな
い。わたしは、管理を連想させるものがすべて大嫌いである。部下をコントロールし、抑え込む。必要な情報を与えない。報告書作成などつまらない仕事で部下の時間を無駄にする。部下にまとわりついて監視する。これが管理であ
る。管理をして、部下に自信を植え付けることはできない

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2006/10/10 20:31

2006年10月04日

人材派遣の時給高騰

人材派遣料金が半年で1割も上昇しているという話。

  • IT技術者はシステムエンジニアなどの専門知識を持つ人材の時給が3000~4500円
  • IT技術者が不足しているため納期間近の欠員に「8000円程度まで一時的に時給をつり上げるケースも」

さすがに時給8000円ってのはなぁ... 人日8万円、人月160万円。

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2006/10/04 10:14

2006年05月19日

見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み

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まだ会社が小さくて、社員数も少なかった頃は誰が何をやってるかなんて誰もが理解してた。誰が今てんぱってて、誰がどのお客さんの案件やってて、どこのフェイズにいるのか、どんなトラブルが発生しているのか、意識せずとも「見え」ていた。次第に人が増え、情報の伝達の効率性や共通スキルの蓄積などのために部署ができ、業務が細分化され、気づけば「見えない」領域が広がっていた。

そして「情報共有」が経営課題として持ち上がる。「隣の人が何してるかもわからない」なんて悩みが俎上に上がり、掛け声のように「情報共有」が叫ばれる。

しかし、よくよく考えて見ると、当たり前だが、「情報共有」は目的ではない
「情報共有」はあくまでも手段だ。であれば、「隣の人が何をしているか」を把握する必要なんて実はないことも多いのではないか。何かの目的のために情報共有しなければならないのであって、ただ「隣の人が何をしてるか」を理解しても、その目的が達成されなければ意味はない。

昨今、トヨタ流の経営手法が人気で、「見える化」というキーワードもトヨタ経営の重要なワードの一つだけれども、「見える化」というのも一種の「情報共有」だ。

本書では、「見える化」の目的とは、ずばり問題を解決するためと言い切る。そして、「問題」とは「基準や標準の姿と現実に起きている姿とのギャップ」だ。

「情報共有」という抽象的な言葉を解いていくと、それは問題を解決するために、理想と現実のギャップを可視化すること、ということになる。問題を見えるようにすることで、組織がその問題を自律的に(ボトムアップ的に)解決させていくための現場力を養っていくことが必要なのだ。

本書では「見える化」の必要な領域を、「問題」を中核とし、それを取り囲む「状況」「顧客」「経営」「知恵」の4分野をあげている。

「問題の見える化」を以下の5分野と設定している。

1.異常の見える化
2.ギャップの見える化
3.シグナルの見える化
4.真因の見える化
5.効果の見える化

異常が発生していることを見えるようにすること。自らが見ようと意識せずとも見えてしまうような仕掛け(シグナル)を盛り込むことが重要だ。異常を見えるようにすることで、異常へどのように対処していくか、という意識が生まれる。もちろん、それが異常であると判断するには、何が普通か、基準かということが前提として明らかになっていなければならない(ギャップ)。そして、その異常や問題がなぜ発生したのかということが見え(真因)、さらに問題は解決されたのかどうか、どのように解決されたのか(効果)ということが見えなければならない。

私たちの会社にも問題は山積みだ。ただ莫大な問題を前に途方に暮れるのではなく、その問題を自律的に解決していけるための「見える化」を進めよう。

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2006/05/19 00:09

2006年04月06日

情報共有のスタイル

社員がどんどん増えてきて、それを取りまとめるために自然と階層が生まれていき、グループやユニットができあがり、それぞれが情報共有しなければという恐怖心からあらゆる接点、階層、ラインで情報共有を目的とした会議ばかりが行われる。

情報共有を否定するわけではなく、情報共有は絶対に必要なのだが、情報共有を目的とした会議に莫大な時間がつぎ込まれ、共有すべき内容自体を生み出すところに避ける時間がどんどん減っていくのは、なんとも矛盾しているではないか。

Web進化論のなかで、梅田さんは、電子メールは情報の送り手が受け手を選ぶ仕組みに支えられていて、それは従来の組織構造を支援するシステムだ、みたいなことを書いていて、この部分にすごく共感を覚えた。「電子メール」という1つのツールの話ではなく、今までの組織における情報共有という考え方の前提には、情報の送り手が、情報の受け手を選ぶという前提があるということだ。逆に、情報の受け手は、情報の送り手から情報が送られることを当たり前として、情報が共有できないことを情報を発信してくれていない、という不満に転嫁する。

ものすごく単純なことなのだけれど、新しい情報共有のスタイルとは、そもそも情報の受け手が情報を選ぶものにならなければならないのではないか。グーグルやはてなでは、それが出来ているということなのではないか。自分が興味ある範囲、自分の時間内で、必要な情報を見つける。誰も関心を示さない情報は自然と淘汰される。
こういう情報共有に関するパラダイムシフトは、前提としてみんなが自身がやってることや持ってる情報を、とにかくオープンにする、という原則がなければならない。

本で読んだレベルなのでわからないが、TSUTAYA(CCC)なども、会議が全部録画されていたり、社員の机に引き出しがない(情報をクローズドにしない)など、個々人が持つ情報はとにかく、全員が閲覧、参照できる状態にし、欲しい人が自らアクセスする、という環境を整備していると耳にした。知ろうと思えば誰もが知ることできる。興味がなければ、あえて知ろうとしなければいい。

グーグルでは、この環境を支えるのは採用とテクノロジーだと言い切ってる。採用とはいかにして優秀な社員を雇用できるかというところ。優秀な社員は自分をコントロールできる。そしてそこに情報公開、共有のためのインフラ、例えばブログのようなものであったり、プロジェクト管理システムであったり、優秀な検索システムであったりするのだろうが、これらが組み合わされば、「情報共有」は実現できるということだ。

私たちの会社も社員が増えてくると、誰が何をやってるかわからない、情報が下りてこない、というような不満がでてきて、それを解決するために、情報共有の場が頻繁に持たれていくのだが、そもそもこのやり方で解決できるのだろうか。「情報が下りてこない」というような言い回しに端的に表れてるように、情報は一方方向的なものとする前提では、どれだけ頑張っても真の情報共有など可能になるわけがないのではないか。
「情報共有」という言い回しも、「共有」という言葉に引き面れて、あらゆる情報をあらゆる人が同じように知る必要があるように思えてしまうけれども、本来の情報共有ってのはそうじゃないだろう。必要な情報を必要な人が知ることができる環境があればいいのではないか。

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2006/04/06 11:04

2006年03月07日

LLPと他組織の比較

昨日の日経新聞にLLPと他の組織形態の違いについてまとめられていたのでメモ。

*LLP

    • 2人からの設立可
    • 自由なルールで運営可
    • 有限責任
    • 設立費用6万円から
    • 法人税なし

*株式会社

    • 1人から設立可
    • 取締役会など法定機関が必要
    • 設立費用24万円から
    • 法人税あり

*民法組合

    • 2人から設立可
    • 自由なルールで運営可
    • 無限責任
    • 設立費用ゼロ
    • 法人税なし

*NPO法人

    • 10人の構成員必要
    • 営利目的の設立不可
    • 設立費用ゼロ
    • 利益に法事税

LLP自体には法人税はかからないが、出資者に直接課税となる。LLPは止めるのも清算手続きが不要というところがいい。LLPを利用して得意を持ち寄ったジョイントベンチャーがどんどん生まれそうな気もするが、実はけっこう面倒なことも多いと聞く。出資の形態も単にお金ではなく、技術とか、ノウハウなんてこともありえるわけで、あがった利益の按分については、契約が重要になる。この契約を決めるのが大変だったりするのではないかと。

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2006/03/07 10:39

2006年01月07日

小倉昌男「経営学」

小倉昌男 経営学
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今まで読んでなかったことをかなり後悔した。ヤマト運輸の2代目社長小倉昌男が、どのようにして「宅急便」というサービスをつくりあげたかを語った本ではあるのだが、しかし、内容は単なる「成功譚」ではない。ここに詰まってるのは「企業戦略」のすべてだ。「戦略」を学びたければ、ポーターやコトラーを読む前に本書を読むべきかもしれない。マネージャークラスは必読書だろう。

そもそもヤマト運輸が「宅急便」を開始するまでは、一般家庭、個人をターゲットとした宅配事業は、絶対に赤字になると誰もが思っていたわけだ。個人相手の宅配は需要は偶発的でつかみずらいし、また集配してみるまでどこへ届けるかかわらない。郵便小包より料金は高くとれないとなると、どう贔屓目に見ても赤字にしかならない。誰もがそう考える。しかし、小倉さんは、個人向け宅配市場のデメリットだけでなく、一般家庭は値切らないことや、現金で払ってくれること、百貨店などの配送業務では繁忙期と閑散期の差が激しいが、個人宅配は一度サービスが成り立ち、そのネットワークを小荷物が流れ始めれば、時期による大きな波もなく、安定した収益を確保できるといったメリットをも勘案し、個人向け宅配事業への進出を決断する。「JALパック」をヒントに、無形サービスの「商品化」(=規格化、マニュアル化)を行い、個人というターゲットのニーズや特性を多方面から検証し、取次店制度や地帯別均一料金といった新機軸を次々を打ち出す。同時に、圧倒的な優位性や差別化を築くために、「翌日配送」を掲げ、それを実現するためのオペレーションを整えていく。

小倉さん自身は本書のなかで経営には「戦略的思考」が必要であると語る。
ある時は「シェア第一」「売上第一」と語り、決算が近づくと「利益第一」、その時々で「環境第一」や「安全第一」というようなころころと「第一」を変えては、スローガンを掲げているような経営者は戦術思考しかできていないと言い切る。

「第一を強調するには、第二を設定すれば良い」

単純だけど、これを徹底するのは極めて難しい。しかし、小倉さんは「宅急便」の事業をスタートさせる際は「サービスが先、利益は後」というスローガンを掲げ、それを徹底する。ヤマト運輸では宅急便事業が開始するまでは、毎月支店長を集め、各支店ごとの月次収支を基に実績検討会議というものが開かれていた。しかし宅急便事業を開始する際、会議の冒頭で小倉さんはこう宣言する。「これからは収支は議題としたないで、サービスレベルだけを問題にする」。

小倉さんはこんな事例で語ってる。「たとえば過疎地に集配のための営業所を作るとする。当然、家賃などの固定費をベースから荷物を移送する(横持ちする)ための車両経費が増える。人件費は所長一名分が増える。ドライバーの分は、集配の能率が上がる分だけ安くなるかもしれないが一応変わらないとしよう。総体的に経費は増える。一方で、過疎地の翌日配達が確実になるなど、サービスは飛躍的に向上する。」
さて、このような場合、どのような思考で判断するか?

普通ならば、プラス要素とマイナス要素を比較検討して差引きプラスならば営業所の新規設置の決断を下す、というような答えになるのではないだろうか。

しかし、小倉さんはこの考え方ははたして正解だろうかと疑問を投げかけるのだ。

「宅急便を始めた以上、荷物の密度がある線以上になれば黒字になり、ある線以下ならば赤字になる。したがって荷物の密度をできるだけ早く“濃く”するのは至上命令である。そのためにはサービスを向上して差別化を図らなければならない。コストが上がるから止める、というのはこの場合、考え方としておかしい。サービスとコストはトレードオフだが、両方の条件を比較検討して選択するという問題ではない。どちらを優先するかの判断の問題なのである。」

この例は、すべての業態においてあてはまるわけでは当然ない。重要なのは、個人向け宅配サービスという業態においては、荷物の密度、つまり配送ネットワーク内に流れる荷物量を最大化させることを何よりも優先させなければならず、そのためにはサービスを向上させる、ということをまず第一に据えなければならない。その背景と優先順位にのっとって、決断を下す、という、その一連の思考プロセスの一貫性なのだ。

業態が違えば「第一」とするもの「第二」とするものは変わるだろう。しかし、一番やってはならないことは、「第一」がころころと変わるような「戦術的レベル」の思考、決断だ。
「毎年、期の始めになると、売上高の目標は対前年10%と示され、絶対に目標を達成せよと厳命が下される。半期が終わり、売り上げはそこそこ目標に近づいたが、営業利益が目標より低いと、売り上げは多少足りなくなってもいいから、利益率の低い仕事はやめ、利益の目標は達成せよと指令が下りる。安全月間になるともちろん“安全第一”の号令が下る。製品クレームが来ると、品質第一で頑張れと命令が下る。(略) だが、“第二”がなく、“第一”ばかりあるということは、本当の第一がない、ということを表していないだろうか」

うーむ。経営に携わるものとしてはかなり身につまされる思いだ。
形こそ違えど、ボクがやってることなど、まさにここでダメな例としてあげられる社長像そのままではないか... このような戦術的思考に陥ってしまうというのは、そもそも「戦略」がないからだろう。いや、あると思っている「戦略」が「戦略」ではないということだろう。要は戦略レベルまで自社の「業態」がどういうものなのか、それにふさわしいハードウェア、ソフトウェア、ヒューマンウェアが何なのかとことを考えきれていないということなのだろう。

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2006/01/07 19:50

2005年09月12日

問題を起こす社員とは?

会社には、社長の足りないところを顕在化させるために、問題を起こすのに最適なメンバーが集まっている。だから、その働く場自体を向上させていかなければ、いつになっても同じ問題の繰り返しになるんだ。
(『成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語』P.208)

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2005/09/12 09:06

2005年09月10日

迷ったら。

迷ったらとりあえず、すがるのはドラッカーだ。

ここ最近の忙しさですっかり忘れてた。
ドラッカーは言ってるじゃないか。

・過去ではなく未来を選ぶこと
・問題ではなく機会に焦点を合わせること

と。

問題ではなく機会に。忘れないように唱え続けないといけない。
今、そこにある問題は、未来のチャンスなのだ。

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2005/09/10 00:26

2005年07月20日

サイバーエージェントの「近距離手当」の目的

日本経済新聞「会社とは何か」より。

数年前から顕著になってきた傾向として会社に入っても短期間で退社していってしまうという現象。大卒者の二割が職に就かず、入社後三年で約三割が離職らしい。
若者が会社での自分の居場所、働く意義を見失いつつあることが原因だと言う。
最近の若者は所属する職場や集団を「ウチの会社」ではなく、「ウチら」と呼ぶそうだ。


こういった若者たちを取り込み、新しい連帯感の構築を目指す事例として、サイバーエージェント(CA)の「近距離手当」制度がとりあげられている。この制度は面白い。

ストックオプション目当てなどで集まった人材の流出に悩んでいたCAでは「組織力を高めるのは仲間意識」として、東京渋谷の本社から二駅圏内に住めば毎月三万円を補助する制度を導入した。これにより社員の四割が半径二キロのエリアに居住。もちろんこの制度だけが功を奏したわけではないだろうが、離職率は18%から8%に激減したそうな。

CAの離職率が8%というのは知らなかった。もっと高そうなイメージがあったのだけれどな。「近距離手当」がもたらしたものは、「ウチら」意識の強化だろう。この記事には「ウチら」を「仲間と共に働き、成長を実感できる場という意味が込められている」と分析している。職場から同僚がみな近いことにより、大学のサークルに近いノリが形成されるのだろうか。

社内の制度みたいなものはただつくれば良いというものではなく、その制度が人の考え方や働き方にどんな作用を与え、組織にどんな化学変化をもたらすのかという視点が必要だなと思う。ただ、今は人材の流出がどこも激しいので、ついつい「従業員満足度の向上」みたいなところばかりを目指した単なる「甘やかし」制度がつくられていき、失敗するのではないかと思う。CAの「近距離手当」は、ただ従業員の満足度をあげるという目的ではなく、その制度によって従業員の連帯感の醸成を見越しいるという意味では良い制度なのだろうと思う。

※従業員の満足度を上げる、という意味では、「マネジメントの正体」の一節『生産性が高まるから満足するのであって、その逆ではないらしい』をボクは信じている。制度としても生産性を高めてやること、大きな仕事に取り組め、責任を与えられること、そういう環境を生み出すのに役立つ制度を考えていきたいと思っている。

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2005/07/20 13:17

2005年07月18日

エレベーターピッチでは説明しきれないものを

エレベーターピッチなんてことをよく言われる。VCや投資家から投資を受けるためには、
エレベーターが目的の階に着くまでのわずかな時間でそのビジネスの魅力や優位性を伝えられなければならない、なんて意味だったかと思う。要は、自社の魅力は簡潔に簡単に伝えられるものでなければならないということだ。

ビジネスモデルの魅力や、技術的な優位性といったもので勝負するベンチャー企業や、それこそ最終目的をバイアウトにおいてる企業なら、エレベーターピッチは特に重要かもしれない。

しかし、ボク自身は企業の魅力や優位性みたいなものは簡単には語れない、説明できないところにこそ存在していると考えてる。簡単に言葉にできない、説明できないからこそ、「強い」「競合優位」だったりすることのほうが多いのではないかと思うのだ。そういう強みを持った会社というか組織のほうが、簡単にはへこたれないんじゃないか。説明しずらい領域ってのは、そのほとんどが「人」に依存するところだ。

例えば、サウスウェスト航空の強みは「旅客機の統一、不要な機内サービスの廃止、短距離輸送へのフォーカス、飛行機の陸上待機時間の短縮などを通じて徹底的な効率化をはかることで、格安運賃を実現する」ということにあるのではないのではないだろう。もちろんそういった「モデル」というのは重要だろうけれども、そんなものは他の航空会社だってやろうと思えばできる。サウスウェスト航空の強みは従業員の会社にたいしてのロイヤルティの高さや、仕事に対する熱意みたいな、非常に漠然としたものだ。そういう曖昧なものをベースとして、個々の業務がポーターの言い方を借りるならフィットしあっているということだ。そこに強みや優位性があるわけだ。そのベースがなければ、格安中距離路線モデルの成功はない。

でも、サウスウェスト航空の強みみたいなものって、たぶん「エレベーターピッチ」としては面白くないものなのだろう。「人」ってやつは損得だけでは動かないし、数学の方程式みたいにきちんと解があって、こうやぅてこうやったったらこうなる、みたいなことがない。会社のミッションに「従業員は協力、励ましあい...」みたいなことが掲げられていても、それが実践できるかどうかはまったく別の話だ。投資家などにとっては判断しにくい材料だろう。いくらそんなこと言われても、それが会社の成長や業績にどんな好影響を与えるのかということを数字として明確に説明できるものでもないし。

一時期ボクは、自社の強みを「低離職率であること」と説明していた。これもエレベーターピッチみたいなものだけれど、これは投資家や銀行の人には魅力的には映らなかったようだ。ボクは今でも、「低離職率、高いモチベーション、スタッフが仲が良い。強い団結心」こういうものががソリューションという非定型属人的業務には強みになるだろうと信じてはいる。最近こそ、人数が増えてしまったこともあるのか、入社する人、退社する人がもう今までとは考えられないペースで増えてるのは確かだ。それが慣れっこになってしまいつつある状況には多少の危機を感じてはいる。ただ、安易にモデルに乗っかかり、人のことを置き去りにして会社が発展していくような変なイメージを描いたりはしないぞ、とは心に誓っている。

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2005/07/18 14:03

2005年05月15日

図解・仕事術 最強の時間力―タイムマネジメントの法則60

図解・仕事術 最強の時間力―タイムマネジメントの法則60
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star基本
starなかなか良い本だ
star直ぐに実践に移せる時間管理術の本

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これは良い本だ。なるほど、と発見がたくさんある。
明日からすぐに取り入れたり考え方、ツールがてんこ盛り。
単なる時間管理、マネジメントの手法を唱えるだけではなく、組織のあり方や、仕事の本質などをきわめてわかりやすく、論理的に説明している。

ビジネスマン、特にマネジャーやリーダーなどは必読である。

■「四つの時間」をコントロールする

仕事と時間の関係は、

・自分一人の仕事の「(a)はじめ」と「(b)終わり」
・他人と共同の仕事の「(c)はじめ」と「(d)終わり」

この四つに集約される。

この四つをコントロールすることがタイムマネジメントの第一歩とし、著者らが提唱するのは、(a)と(d)の二つの管理─つまり、自分一人の仕事のはじめ他人と共同の仕事の終わりだ。

(d)の管理というのはたとえば、相手からアポが入ったときに「10時から11時までの1時間ならOKです」というように、終わりの時間を決めることや、会議、ミーティングなどでも、開始よりも終わりの時間を参加者に意識させるということなどだ。

(a)を管理するには、「自分にアポイントを入れる」ことが必要だと言う。
著者は具体的に、

(1)自分一人でやる重要な仕事を
(2)4週間先まで
(3)スケジュール帳に記入する
(4)時間としては一日に1~2時間程度でOK!

と述べている。

自分にアポイントを入れる

少し話はそれるが本書のなかで、従来のタイムマネジメントが提唱してきた「緊急度:高い/低い」「重要度:高い/低い」という四象限マトリクスに業務を分けて、管理するという方法は失敗すると説明されている。

この四象限は、『「7つの習慣」の重要事項を優先する』にも出てくる重要な考え方だ。では、これは「7つの習慣」の考え方を否定しているのかというと、そういうわけではない。
「7つの習慣」でこの四象限が出てくるのは、あくまでも僕らの日常は「重要度高×緊急度高」「重要度低×緊急度高」の二つの領域の時間に大部分をとられてしまい、きわめて重要な「重要度高×緊急度低」項目が後回しにされていく、ということに警笛を鳴らしているだけだからだ。

ここで言う(a)のために「自分にアポイントを入れる」という考え方は、「7つの習慣」で言う「重要度高×緊急度低」事項を後回しにしないための一つのテクニックと考えて良いだろう。

なお、
本書では、「重要度」と「緊急度」のマトリクスではなく、
「イ.自分か、他人か」「ロ.今か、後か」という単純な組み合わせで考え、

A:今、自分がやる仕事
B:後で自分がやる仕事
C:他人でもいい仕事

さらに、突発的にやってくる仕事を「X業務」として、

AX:今、自分がやる仕事
BX:後で自分がやる仕事
CX:他人でもいい仕事

という6つの優先順位を設定して、Aランク(AもしくはAX)の仕事から着手することと説明している。


■「情報処理」と「業務処理」

仕事のためのスキルとは、大きく「情報処理」と「業務処理」にわかれる。

情報処理とは、「コミュニケーションの技術」「仕事の進め方の技術」であり、業務処理とは「仕事の進め方の技術」と「その分野の専門知識・技能」だ。

情報処理と業務処理の両方に共通する「仕事の進め方の技術」であり、これはある意味「タイムマネジメント」(=仕事の管理)なのだ。

つまり、仕事とは「コミュニケーションの技術」「仕事の進め方の技術」「その分野の専門知識・技能」という三つの技術、技能によって成立する。

個人と組織の関係を考えるとき、個人はこれら3つのスキルの修得に励み、組織は三つのスキルの環境整備とルールづくりに励む、という関係が相互補完をもたらす。

昨今、組織構造として「フラット型」か「ピラミッド型」かというような議論がなされるが、そのような議論は意味がなく、著者は、

・業務処理はピラミッド型
・情報処理はフラット型

として、組織は二つの組織構造を併せ持たなければならないと言う。
そして、「情報処理」は、バーチャルなもので十分としている。

このような組織を考えるとき、中間管理職(リーダー)は、「個人とバーチャルである組織の接点」「業務処理と情報処理の接点」となる接着剤のような存在であり、不必要どころか、きわめて重要な役割となる。

このような架け橋を演じる中間管理職に必要なのは、業務処理、情報処理に共通するスキルである「仕事の進め方の技術」ということになる。

話が脱線するが、ハーバードビジネスレビュー誌に掲載された「チーム」に関するいくつかの論文を集めた『いかに「高業績チーム」をつくるか』という本のなかに、「バーチャルチームの優位性」という論文が掲載されている。


ここで言う「バーチャルチーム」とは、実際に同じ場所で業務にあたったり、直接顔をつきあわせて会議や報告会を行う「リアルチーム」に対して、「各所の散らばる人材をITで結束させる」運営形態をとるものとされている。

僕の感覚では、「リアルチーム」に比べれば、「バーチャルチーム」はまだまだ非効率だろうし、やはりフェイス・トゥ・フェイスに勝るものはないのではないかというのが正直なところなのだけれども、この論文を読むとこういう固定概念は覆される。
「バーチャルチーム」は必ずしも「リアルチーム」に劣るわけではなく、むしろ「リアルチーム」よりも高い成果を生み出す可能性を秘めている。

本論文の結論としては「プロジェクトに多種多様な能力と支店が求められる場合、またsの仕事がデジタル・ツールでまかなえる場合には、フェース・トゥ・フェースで働くリアルチームよりもバーチャル・チームを選択したほうがはるかに賢明である」(P.68)だとしている。

たとえば、複雑なプロジェクトなどでは、意思決定が頻繁に求められるが、意思決定を全員が集合するまで延期することは、すべてが遅延していく原因になる。ミーティングが近くなると、だれもがそこで実際の意思決定が下されると考え、ミーティングが開かれるまで手を止めてしまったりする。

もちろんバーチャルチームで何もかもうまくいくわけではない。バーチャルチームを選択するときには、三つの問いをしっかり考えなければならない。

・チームをどのように発足させるか
問題解決のために、チームメンバー全員に意見を求め議論し同意を得る。バーチャルチームだからこそ頻繁な会議を行うことができる。

・どのようなテクノロジーを活用するか
面白いのは、eメールやTV会議などは成功しているバーチャルチームはたいてい役に立たないと考えていることだ。ここではチームメンバーが利用する専用のバーチャル上のワークスペースがうまく行くとされている。「ワークスペース」はうちで言うとWikiみたいなものか。うちの場合は、Wikiとメールとインスタントメッセンジャーが、バーチャルチームが利用するツールになるのかもしれない。

・チームリーダーがどのようにチームメンバーに相互支援させるか
結束させるために一週間か二週間、臨時でペアを組ませて働かせたりする。
各メンバーたちに共通項を見つけさせ、結束を強めてやる。バーチャルチームだからこそ、お互いが深く理解できるために、何かしらの共通項を見つけてやるなどしなければならない。

と、大きく脱線したが、「情報処理のフラット型組織」ということを考えると、この「バーチャルチーム」の考え方は頭に入れておいても良いものかなと思った。「コミュニケーションの技術」の一つとして、バーチャルチームを成功に導くための法則は必要だろう。

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2005/05/15 01:03

2005年04月25日

しつけの問題

岸田秀は「しつけの問題」(『続・ものぐさ精神分析)』というコラムのなかで、次のようなことを言っている。

要するに、親は、自分の感性、人格、器量、徳性などの程度以上のしつけを子どもに与えることはできないのである。子供は粘土ではないのだから、誰か専門家に「正しいしつけ方」を教わって、その通り実行すれば、「理想的な」子どもができあがるというわけにはいかないのである。もし親が「正しいしつけ方」とやらを学んで、自分の程度以上のしつけを子供に与えようとすれば、前述の母親のように子供を表裏ある人間にし、かえってよくない結果を招く。
絶望的なことを言うようだが、もし親が子どもを人格的に程度の高い人間に育てたいと思うならどうあがいてみても、まず親自身がおのれの人格を高める以外に方法はない。世の中には虫のいい親がいて、子どもを親の思い通りになる「親孝行者」に育てようとしたりするが、そのような育てられ方をされた子どもは、子どものためを考えずに親の都合のいいように子どもを利己的に利用しようとしたその親そっくりそのままに、親のためなんか考えず親を利用しようとしかしない利己的な子どもに育つであろう。

子供をどのように育てたらよいかわからない親が育児学の専門家や専門書に助けをもらって、「理想のしつけ」をしようと試みるのは、子どもを条件付けできる存在として見なすことであり、それは「子どもが主体性のない機械的反応体で、親との情緒的コミュニケーションがいっさい欠けているという前提に立」たなければ成立しないと言う。

さて、この文書を「親」を「上司」、子どもを「部下」あるいは「親」を「会社」、子どもを「その社員」と変えて読んでみよう。「しつけ」を「教育」や「育成」という言葉に代えてもいいだろう。

最後のくだりなんかはドキっとする。

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2005/04/25 02:02

2005年04月13日

従業員の価値とは?

仕事に使えるゲーム理論』のP.312「従業員の最適配置」より

ジェーンは、1日にスイッチ1個か、もしくは歯車1個をつくれる。
ビルはスイッチ2個か、もしくは歯車7個をつくれる。

この極めて単純なモデルから、従業員の能力を判断するのに必要な考え方が得られる。
ジェーンとビルを比較すれば、ビルのほうが価値ある人間であることは間違いない。

では、ジェーンを解雇すれば良いか?
表面的に見れば、ジェーンはスイッチをつくるにせよ、歯車をつくるにせよ、ビルの能力に劣る。ジェーンのパフォーマンスはビルに含まれているので、ジェーンは解雇してしまえばいいのではないか。

しかし、これは間違いだ。
仕事を交換すればジェーンは二日間に歯車7個もつくれる。これが理解できるだろうか?

答えを聞けば簡単だ。そのまま引用しよう。

あなたの会社にビルしかおらず、急にスイッチ二個が必要になった。スイッチ二個作るのにビルは1日掛かる。つまり、その日は歯車は作れない。スイッチ二個をつくるために、あなたの会社は七個の歯車を諦めることになる。ここでジェーンを雇ったとしよう。ジェーンは二日でスイッチ二個を作り終える。ビルはスイッチ作りから解放され、その時間で七個の歯車を作る。会社にすれば、ジェーンが二日働くことで七個の歯車が余分に作れたことになる。つまりジェーンは、二日で歯車七個を作れるだけの価値を持つ人間なのだ。

この極端な事例からわかるのは、会社として、組織として、チームとして、得意分野を持つ人間がそれぞれの仕事を交換することで1人で行うよりもパフォーマンスが向上するということと、従業員の能力とは、「その人自身に何ができるかだけでなく、その人に他の従業員の仕事を代行させた時、代行された従業員がどれだけの仕事をこなせるかまで考慮する必要がある」ということだ。

ドラッカーが弱みには目をつぶり、強みに目を向けろ、と言ってるのは、このような「交換」による全体価値の最適化が背景にあるのだろう。従業員の能力を考えるとき、その人の能力だけでなく、その人の存在がもたらす、チームとして会社としてのパフォーマンスも充分に考慮する必要がある。
そして、全体としてパフォーマンスが出るように仕事の交換を行っていかなければならないわけだ。

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2005/04/13 00:55

2004年11月20日

人事・評価制度を考える

今、ボクの一番の関心は、同業種の会社がどんな人事・評価制度を持っているのかということだ。人事・評価制度って詳細なものはなかなか表には出てこないので伺い知れない。デザイナーやシステム、ディレクターという職種ごとにどのような評価軸を設けているのか、あるいは設けていないのか。その評価をどのように給与に反映しているのか。「成果主義」を導入する場合、デザイナーやプログラマーといったどちらかとういと専門技能職系の人たちはどのような評価要素を設けているのか?
昇格や昇級の基準を社員は理解しているのかなど等。同業界の方、教えて下さい。あなたは自分が何で評価され、その評価がどのように給与に反映されているかを知ってますか?

人数が増えてくるにつれて、人事・評価制度の重要性は高まってくる。それまではほとんどマネジャーの一存で決めていたものが、そうはいかなくなる。「どうしてあいつが?」「なぜ私がこういう評価なの?」という不満が必ず出てくる。

もちろん人事・評価制度というのは、給与の問題だけではない。どうすれば給与が上がるのかという指標は、何を学んでいけばいいのか、何をすれば良いのかという教育や学習の指針にもなるだろうし、モチベーションを支えるものにもなるだろう。

結局、人事・評価制度というのは、どんな風に社員を教育していくかとうこととも関係しているし、社員の教育が絡めば当然、会社の方向性や文化みたいなものにもつながる。財務と並んで、人事ってのは会社の要の一つだ。

最近は「成果主義」の導入があちこちの雑誌や新聞で話題になっている。たいていの語り口は成果主義を導入。新入社員でも給与に最大いくらの差が!みたいなものばかり。どうも成果主義の嫌な面ばかりを誇張しているように思える。

「成果主義」と「能力主義」の違いは何だ?
単純に言うと、「能力主義」が「~ができる」ということに対して評価を下すのに対して、「成果主義」は「~できている」「~した」という成果に対して評価されるということだろう。(思いっきり単純化しているけど...)

人事・評価制度をつくっていくときに、ものすごく悩むのは「相対評価」と「絶対評価」の問題だ。「相対主義」では、評価を行う母集団を分母として、ある評価レベルに偏らないように評価する。評価が5段階だとして、全員が5ということはありえない。分母に対して、相対的な評価が下される。
労働分配率なんかを考えると、社員の平均年収というものを想定しなきゃならない。平均年収を想定するということは、相対的に評価するということだ。平均年収を500万円に抑えたいと思えば、3人の会社なら1人が800万円、1人400万円なら、1人は300万円になる。全員を800万円にはできない。

しかし、「相対評価」では社員同士が教育しあい、助け合い、高めていこうという文化は生まれ難いのではないか。そりゃそうだ。全員が並んでレベルアップということはありえないのだから。他人の評価が上がるということは下手すると自分の評価を下げることになりかねない。そんな状況で「育てる」なんていう発想が生まれるだろうか。

そうすると、「絶対評価」だ。全員が高い評価を受ければ、全員の給与がアップする。そういう制度が一番望ましいと思う。

「絶対評価」を行おうと思うと、「成果主義」を導入しなければならないのではないか。「能力評価」では厳密には「絶対評価」は行えないだろう。その「能力」が必ず「成果」に直結していれば良いが、そんなうまくはいかない。安くて良い商品が売れないのと同じように「能力」と「成果」は関係ないとは言えないが、絶対ではない。「能力主義」で「絶対評価」をしていたら、下手すると会社は危なくなる。全員の給与は上がったけれど、会社は瀕死。これでは当然会社も社員もうれしくはない。

「成果主義」というのは、同じ年齢の人間でもすごい価格差が出てしまう、というようなただ人間的つながりとかそういったものを希薄にするようなものではない。「成果主義」によって全員がハッピーになれる土台をつくれる可能性がある
「成果主義」を導入するとしたら、こういう考え方をベースとしなければならない。「結果がすべて」という割り切りをクローズアップするのではなく、みんなで幸せになるための考え方として捉える必要があるのではないか。

ただ、ボクは「成果」だけで評価するのもどうかと思ってる。

「成果」というと「売上」だとか「粗利益」だとか、「新規プラクティスの獲得数」だとか、そういうものだけになってしまうけれども、完全にそれだけで割り切って評価するのも危険だろう。結果に至るプロセスや考え方だって重要だし、それらを支える知識や技能だって必要不可欠だろう。「結果がすべて」という文化が広まれば、ある意味結果を生むためなら何をやってもいいなんて暴走にもつながってしまいかねない。
そうすると、最も成果を上げている人がやっていることや考え方みたいなことも「成果」として捉えたほうがいいだろう。言わば「コンピテンシー」ってやつだけど。そして、それを支えるための「知識・技能」という能力。さらに「会社の道徳規範や倫理観」(これはものすごく評価し辛い)。これらを複合して評価基準ができれば良いのではないかと思う。

うちの会社では「シニア、ミドル、ジュニア」という3階層があるけれども、「ジュニア」では「知識・技能」や「道徳規範や倫理観」での評価ウェイトが高く、ミドル、シニアになっていくにつれて「成果」や「コンピテンシー」のウェイトが高くなる。しかし、どれか一つに完全に偏ってしまわない。こういうモデルにしなきゃならないだろうと考えている。そして、全員がある意味100点満点をとれたとき、会社はその分の高い業績を実現していなければならない。

今、ボクが考えている評価方法のベースはこんな感じだ。これにどのように給与体系、処遇方法、昇級基準、昇格基準をつくっていくか。運用していくか。そんなことをここしばらくずーっと考えている。

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2004/11/20 18:19

2004年08月22日

ドラッカーに学ぶマネジメント入門

ドラッカーに学ぶマネジメント入門」を読む。ドラッカーの入門書のようなものだが、ドラッカーがさまざまなところで語っていることがうまくまとめられている。
マネジメントを「仕事のマーケティング」という観点から整理しているのもわかりやすい。ドラッカーの視点はつねに「顧客」からスタートし、顧客が望むもの、欲するものを生み出すことをマーケティングの基本と説くが、実はマネジメントでもその考え方は同じだ。マネジメントは従業員から始まる。従業員各々の欲するところ、強みを組織化していくことが「仕事のマーケティング」なのだ。

知識を基盤とする組織は「上司」や「部下」といった縦の関係で成り立つ組織ではないとドラッカーは言う。ドラッカーは知識組織の理想系をシンフォニー・オーケストラを例にとって語ってる。

「第一バイオリンの奏者は、ハープ奏者の上司ではない。同僚である。ハープのパートはあくまでもハープのパートであって、第一バイオリン奏者や指揮者から委譲されるものではない。
 オーケストラは、さまざまの楽器によって音楽という成果を創造する知識組織である。それは、さまざまな楽器の演奏者という専門家から成る専門家集団でもある。」 「それぞれの演奏者はオーケストラという組織によらなければ交響曲を演奏することはできないが、オーケストラという組織は個々の演奏者なしでは結成できず、いずれの場合も交響曲の演奏という成果を実現することはできない。その意味で、演奏者という個人とオーケストラという組織は相互依存関係にある。」

「指揮者は、よりよい演奏を創造するというオーケストラの成果を実現するために全体の調整をはかり、リードする場合もあるが、彼がトップというわけではなく、専門家という点では、それぞれのパートの担当者と同格である。つまり、オーケストラは専門的な組織であり、上下関係はまったくない。それぞれが自分のパートをこなしているうちに、シンフォニーの演奏という成果が生み出されていくのである。」
(P.135~136)

オーケストラというのは実に巧い比喩だと思う。「縦」の命令と服従の関係ではなく、「横」の関係。それは個々人が上司、部下ではなく「パートナー」である。さらに個々の「パートナー」は専門家であり、それらの専門性が一つの成果に向けて相互補完の関係をつくりあげる。このような組織形態は確かに理想だ。

オーケストラでは「成果」がわかりやすいが、会社組織においてはさもすると各従業員が「成果」を見失ってしまうことも多い。仕事に人を合わせるのではなく、人を仕事に合わせなければいけないとドラッカーは語るが、人を仕事にあわせるためには、仕事に対しての共通の価値観と目標を全従業員が理解しなければならない。トップマネジメントの役割とはオーケストラの演奏曲のような誰もが理解できる明確な目的、目標を持たせること。そして「成果」とは何かを理解してもらうこと。その語りかけだろう。

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2004/08/22 18:36

2004年08月11日

3つのチーム型

ドラッカーは組織のチーム型には「野球型」「サッカー型」「テニスのダブルス型」があると語っている。このどれかが唯一正しいというものではなく、「何をなしうるか」「何に使うか」という点でそれぞれ強み、弱みがある。(「実践する経営者」第25章◎チームの種類と使い方ー野球型、サッカー型、テニス・ダブルス型)

野球型

  • 選手はチームに属してプレーするが、チームがプレーするわけではない
  • 選手のポジションは固定されている
  • 一人一人を評価し、目標と責任をもたせることができる
  • 自らの強みを限度一杯まで伸ばすことができる。他のメンバーに調子をあわせる必要がない
  • 柔軟性がない
  • 例)心臓手術を行う外科チーム

サッカー型

  • 選手のポジションは決まっているがチームでプレーする
  • 野球型が直列なら、サッカー型は並列
  • 高い柔軟性を持つが、前提条件として、サッカーの監督が指示する戦術のような楽譜を必要とする
  • あらゆるメンバーがチームのリーダーに従う
  • チームのリーダーが許したときのみソロを演じる

テニスダブルス型

  • 少人数編成のジャズバンドや大企業の経営陣がこの型
  • メンバーはせいぜい5人から7人の少人数
  • 基本のポジションがあり、パートナーの強みや弱みに応じ、あるいはゲームの状況に応じ、お互いをカバーする
  • チームが機能するようになるには、時間をかけて訓練を積み、共に働く必要がある
  • 個々のメンバーの仕事は柔軟であっても、チーム全体の目標は明確でなければならない
  • 業績をあげるのはチームであって、メンバーはチームに貢献するだけ

チームをどのような型にしていくべきか。もともと30人程度のスタッフ数のときにつくったチーム体制は、70人近くになった今となってはいろいろな弊害もでてきていると思う。現状では機能別のグループが前提としてあり、グループ内にいくつかの目的別チームが分かれている体制となっている。しかし、これが果たしてクライアントが求めるものにふさわしい体制だろうか? 機能別にグループが分断されている最大の弱点は、成果をあげるための業務がグループ単位で分断されてしまうことだ。コミュニケーションが最も必要なところで、それを難しくしているとも言える。もちろん、こういったグループ分けをとったことのメリットも多い。各グループであたえられた機能のついての洗練を行っていくには良かった。もちろんこの組織はそのままにマトリクス型に案件ごと、あるいはクライアント単位でのチームを用意していくということもありかもしれない。あるいは、まったく違う考え方に基づいて組織しなおす方法もありかもしれない。

それはディレクターや、アートディレクターといった役割や業務範囲の問題とも密接に絡んでいる。「アカウントプランニング思考」のなかでクリエイティブの一所発想、二所発想みたいな話がでてきて、興味深く読んだ。現状はどちらかというと二所発想の体制が組まれているわけだけれども、理想はやはり一所発想なのだろうなぁと思う。とすると、やはりアカウントプランナーなのだろうか。アカウントプランナーの下に、プロダクションマネジャーやアートディレクターが構成されるチーム体制が望ましいのだろうか? いやいやそもそもドラッカーは職務を設計して、その職務に合う人を探すということが組織を弱くするんだといっているじゃないか。職務は仕事の要請により規定されるが、その職務はスタッフの強みを最大に生かせるところでなければならない。うーむ。まだまだ考えが足りない。思案中。

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2004/08/11 09:52

2004年08月08日

ドラッカーメモ/貢献へ焦点をあてること・強みを生かすこと

(2)外部に対する貢献に焦点をあてること
成果をあげるためには貢献に焦点をあてなければならない。
「組織の業務に影響を与えるような貢献は何か」を自らに問わなければならない。

成果には3つの領域がある。

  1. 直接的な成果の領域(売上や利益)
  2. 価値の創造と価値の再確認の領域(要するに組織としても目的を確認したり、つくったりすること)
  3. 明日のための人材育成の領域(「明日自らのマネジメントに当たるべき人間を、今日用意しなければならない)

これら三つの領域で成果があげられなければ組織は死ぬ。したがって、この三つの領域における貢献を、あらゆる仕事に組み込んでおかなければならない。

人間関係のあるべき姿
貢献に焦点を合わせることによってのみ、

  1. コミュニケーション
  2. チームワーク
  3. 自己開発
  4. 人材育成

という成果をあげるうえで必要な四つの人間関係上の基本条件を満たすことができる。

「コミュニケーション」とは、「組織、おようび上司である私は、あなたにどのような貢献の責任をもたせるべきか」「「あなたに期待すべきことは何か」「あなたの知識や能力を最もよく活用できる道は何か」と聞く。こうして初めて、コミュニケーションが可能となり、容易に行われるようになる。(P.88)

「チームワーク」とは横へのコミュニケーション。「私の生み出すものが成果に結びつくためには、だれがそれを利用してくれなければならないか」と問うこと。

「自己開発」も貢献に焦点をあてなければならない。「組織の業績に対する自分の最も重要な貢献は何か」と自問し、「いかなる自己開発が必要か」「なすべき貢献のためには、いかなる知識や技能を身につけるべきか」「いかなる強みを仕事に適用すべきか」「いかなる基準をもって自分の基準とすべきか」を考えること。

「人材開発」は貢献に焦点をあてることで他人の「自己開発」を誘発すること。属人的な基準ではなく、仕事のニーズに根ざした基準を設定し、卓越性を要求すること。

(3)強みを基準に据えること
組織の役割は、人間一人一人の強みを、共同の事業のための建築用ブロックとして使うところにある。
他人に成果をあげさせるためには、決して「彼は私とうまくやっていけるか」を考えてはならない。「彼はどのような貢献ができるか」を問わなければならない。また、「何ができないか」を考えてはならない。常に「何を非常によくできるか」を考えなければならない。

強みに基づいた人事には四つの原則がある。

  • 人間にはできない職務をつくらないように気をつけなければならない
  • 前職において十分な仕事ぶりを示してきた人間を二人三人と挫折させる職務は、そもそも人間の職務ではない
  • 職務はすべて、多くを要求する大きなものに設計しなければならない
  • 職務が要求するものではなく、その人間にできることからスタートしなければならない
  • 強みを手にするためには、弱みはがまんしなければならない。

人事考課は「できないこと」を明らかにしたり、弱みを分析するものではあってはならない。「われわれは、一人一人の人間が組織の成果のために果たす貢献について、徹底的に考えなければならない。なぜならば、具体的な成果への期待に関してのみ、人間の成果は評価できるからだ」。
「成果をあげるエグゼクティブは、通常、彼ら独自の考課方法を工夫している。そのような人事考課は、まず、過去と現在の職務において期待されるべき貢献、およびその貢献の目標に関して、実際の成果を記録する。その後、次の四点について評価する。」

  1. 「彼(または彼女)がよくやった仕事は何か」
  2. 「彼がよくできそうな仕事は何か」
  3. 「彼が強みを発揮するためには、何を知り、何を身につけなければならないか」
  4. 「彼の下で自分の子供を働かせるか
  5. (i)そうであるならばなぜか
    (ii)そうでないならばなぜか

ついつい評価となると、「彼(彼女)は何ができない」「あれが苦手」という欠陥探しが始まってしまう。しかし弱みに焦点をあわせた人事は組織を疲弊させるだけだろう。強みに焦点をあわせ、その強みを成果に貢献できるよう職務を設計することが必要なのだ。

今、潜在化している問題の一つは確実にここにある。

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2004/08/08 20:43

成果を上げるための時間管理

ドラッカーの「経営者の条件」を読む。どこを開いて読んでも珠玉の言葉ばかり。いつでもドラッカーは正しい。読むたびに今、組織に起きている問題のいずれかの解決を考える筋道を与えてくれる。

ドラッカーは成果を上げることは一つの習慣であると言う。そしてエグゼクティブが身につけなければならない習慣的能力を次の5つと言い切る。

  1. 時間を体系的に管理すること
  2. 外部に対する貢献に焦点をあてること
  3. 強みを基準に据えること
  4. 優れた仕事が際立った成果をあげる領域に、力を集中すること。優先順位を決定し、その決定を守る。
  5. 成果を上げるように意思決定を行うこと

(1)の「時間を体系的に管理すること」についてのメモ。
簡単に言うと成果を上げるためには時間をうまく使わなきゃならなん、という当たり前のことを言っているだけだ。時間を有効に使うためには、まず時間が何に使われているかを知らなければならない。知るためには記録をすることだ。リアルタイムで時間を記録していく。そして一つ一つの業務に「まったくしなければ、何が起こるか」「ほかの人間でもやれることは何か」ということについて考え、「あなたの仕事に貢献せず、あなたの時間を浪費させるだけであるようなことを私は何かしているか」と定期的に問うのだ。
そして、無駄な時間をできるかぎりなくし、細切れになっていた時間をひとつのまとまりにして、成さなければならないこと、他の人間にはできなことをやる。それが有効な時間管理だ。

さて、蛇足だけれども時間は何に浪費されるのか? ドラッカーは次の3つをあげている。

  • システムの欠如や先見性の欠如からくる時間の浪費
    • 繰り返し起こる危機は、ずさんさと怠慢の兆候の一つである
  • 人員の過剰から来る浪費。
    • 組織の上の人間が自分の時間の一割以上を、人間関係の問題に使っているならば、ほとんど確実に、人間が多すぎる
  • 組織上の欠陥。その兆候は会議の過剰。

うーむ。そういやうちも会議多い。ドラッカーは「人間は、仕事をするか、会議に出るかである。同時に両方することはできない」と言い、「思想的に設計された組織とは、会議のまったく開かれない組織である。」としている。ボク自身は、会議が必ずしも悪いものはないとは思ってはいるが、「''会議は原則ではなく、例外としなければならない。あらゆる人間が、常に会議をしている組織は、だれも何事も成しえない組織である」という言葉にはどきっとさせられる。

会議、報告会、説明会は、エグゼクティブの仕事の典型的な光景である。それらは、彼ら独特の日常の用具である。しかもそれらは、いかに時間を分析し、可能なかぎりコントロールしても、なお膨大な時間を要求する。
したがって、成果をあげるためには、会議や、報告会や、説明会から何を得るべきかを知り、何を目的とし、何を目的とすべきかを知らなければならない。「なぜこの会議を開くのか」「決定したいのか、情報を与えたいのか、確認したいのか」を問わなければならない。 さらにまた、会議を招集する前、報告会を開く前、説明会を準備する前に、それぞれの目的について徹底的に検討すべきことを主張しなければならない。そして、それぞれの会議が自分の貢献に役立つべきことを主張しなければならない。(P.92)

会議が貢献に役立つかどうか? つねにそれを問い続けよう。

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2004/08/08 01:51

2004年08月06日

360度フィードバック制度(日立)

2004年8月6日日経産業新聞
日立製作所が管理職を対象として360度フィードバック制度を導入して1年余。

日立が導入した360度フィードバック制度の特徴

  • 評価を賞与やポストなどの人事考課と結びつけない。制度の狙いはあくまでも本人の能力開発
  • 自分を評価する人(上司を除く)を、本人が選べるようにした(同僚三人以上、部下三人以上を候補に選ぶ)
  • 結果を本人に知らせる際に、丁寧な説明会を開催している(15人前後を1グループとして3時間程度かけて説明)

管理職の能力開発、育成として360度フィードバック評価はありかなぁと思っていたけれども、記事にもあるように「結果へのショックが逆効果になる場合」もある。自分のセルフイメージと、他人が自分に抱く像というのはたいていずれる。当たり前だ。セルフイメージってのは自分で都合の良いように解釈された自分像で、何の現実的根拠にも立脚していない。他者が見るのは、その人の行動だ。あくまでも行動によってその人がどんな人間かという像ができあがる。この行動は、セルフイメージとだいぶずれているのが常だ。なんで、360度評価のようなものをすると、たいていセルフイメージと大きな差がでてショックを受ける。しかし、このズレも含めて、他者から見る自分の姿ってのをきちんと知ることはすごく重要なことだ。自分自身では気づいてないことはたんとある。
日立のこの方法はズレの大きさによるショックを緩和できるような措置をとっていて、きちんとした本当に客観的な360度評価かどうかは若干あやしいけれど、よくできているなぁと思う。(そもそも客観的な評価なんてものはないし)

予想外の効果としては、評価される人が「部下や同僚は意外とよく見ていると気づく点」だそうな。

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2004/08/06 20:27

2004年05月13日

マネジメントの正体

マネジメントの正体―組織マネジメントを成功させる63の「人の活かし方」
スティーブン・P. ロビンズ, Stephen P. Robbins, 清川 幸美



おすすめ平均
使える一冊
世間一般のマネジャー向けの本ととらえれば、充分いい本なのでは
読みやすく、堅くない

Amazonで詳しく見る4797320532
このブログのコメントで教えてもらった「マネジメントの正体」を新幹線の中で読んだ。本書は63の短い章で構成されている。さらに章は大きく10の領域に分類されている。

1.採用
2.モチベーション
3.リーダーシップ
4.コミュニケーション
5.チーム作り
6.衝突の処理
7.職務設計
8.業績評価
9.変化への対応
10.行動

この10の領域を見ても、本書がマネジメントという問題を俯瞰的に、総合的に扱っていることがわかる。これがMECEかどうかはわからないが、少なくともマネジメントについて課題なりえるほぼすべての領域がカバーされているとは思う。

頭から読み進めても良いだろうし、この10の中から今関心のある領域のところだけを読むのも良いだろう。ページをめくっていって気になるタイトルの章だけを拾っていくのでも良いかもしれない。とにかくどんな読み方でもいいけれどもマネジメントという問題、課題に直面している人はぜひ手元に置いておきたい。そして何度も読み返したい。そんな本である。

コメントの中で例としてあげて頂いた「ほとんどの場合、生産性の高い従業員が充実感を抱くのであり、その逆ではない」という言葉はCase13「部下が仕事に満足しない理由」に登場する。この考え方にははっとさせられた。

多くの企業が従業員の仕事に対する満足感を高めようと努力している。福利厚生やフレックスやらと働き安い環境、魅力的な環境を提供しようと務めている。しかし、満足度を高めても生産性が向上するという相関性はない。

生産性が高まるから満足するのであって、その逆ではないらしい」というのが真実のようだ。生産性が高ければ褒められる機会が増え、給与レベルも上がり、仕事に対する充実感も抱ける。これが満足度につながるのだ。

この考え方は、形を変えて何度か本書のなかに登場する重要な考え方だ。
例えば、Case22「認めてあげると人はやる気を出す(おまけにお金もかからない!)」や、Case40「行動は言葉に勝る」、Case60「感情が行動を導くのか、行動が感情を導くのか」といったところで語られることにも関連していることだだろう。

満足度を高める方法に注力するのではなく、生産性を高めることに力を注ぐ。たとえば、「訓練にもっと費用をかける、職務設計を改善する、もっとよい設備を用意する。そして、優れた能力を持つ従業員にとって何か障害があればそれを取り除く。」

1章1章はものすごく短いけれども、マネージャーにとっては珠玉の言葉がつまっている本だ。

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2004/05/13 09:46

2004年05月06日

7つの習慣:目的を持って始める

「7つの習慣」第二の習慣は「目的を持って始める」だ。

「人生の最後の姿を描き、それを念頭において今日という一日を始めることである。そうすれば、自分にとって何が本当に大切なのかをベースに、今日の行動、明日の行動、来週の行動、来月の行動を計画することができる。」(P.27)

「最期の姿」を念頭において、というのも極端な考え方であるが、要は長期的な目的をブレイクダウンして1日という日を送らなければならないということである。

「目的を持って始める」ということは、リーダーシップの原則に基づいている。 「マネイジメントは手段に集中しており、どうすれば目標を達成できるかという質問に答えようとするものである。一方、リーダーシップは望む結果を定義しており、何を達成したいのかという質問に答えようとするものである。」(P.132)

「リーダーシップ」と「マネイジメント」をどう切り分けるかということはたいした問題ではないが、ここで著者が言っているような「目的を定義する」能力(リーダーシップ)と「目的を達成させるための能力」(マネイジメント)は、組織においても当然欠かせない。 私自身もそうだったのだが、「マネイジメント」に率先してあるべき「リーダーシップ」については極めて曖昧な考え方しかしていなかった。ここでこの二つが切り分けられ、そしてそれが歯車の両輪であって、どちから一方でも欠けては目的達成は叶わないということを学んだ。ロジカルシンキングでも問題を要素に分解して、それぞれの要素について考えるというフレームの有効性はよく言われる。「マネイジメント」と「リーダーシップ」の問題は、僕のなかでは今までほぼ同一のもんとして一緒にまとめられていた。これを切り分けて考えることで、かなりいろんなことが整理される気がする。

目的を持って始める最も簡単で効果的な方法の一つとして、著者はミッション・ステートメントを書くことを推奨している。どうなりたいのか、何をしたいのか、自分の行動の基礎となる価値観や原則はどういうものなのか。 自身の価値の基準となるもの、自分自身に課すべき長期的な目標、価値観をつくるのだ。 ミッション・ステートメントをつくり、それを生活の中心に置くことで、それは「安定性方向性知恵、ならびにの根源となる」(P.147)

「リーダーシップ」は、ころころ目標を変えてはいけない。自身が目指す価値や目標に沿って一貫した決定や行動をとっていく必要がある。そうでなければ「マネイジメント」が困るからだ。「マネイジメント」は「リーダーシップ」が照らし出す方向性へ効果的/効率的に進むための手段であり、能力だ。照らし出される方向が間違っていたり、ころころ変わっていてマネイジメントがうまくいくはずがない。

今から3、4年前に僕らも組織のミッション・ステートメントをつくった。1年近い議論を重ねて、最終的に完成したミッション。最初は自分達でつくっていながら、どことなく地に足のついていない感じがしていたのだけれど、最近になってようやくそれをつくっておいて良かったと思えるようになった。非常に抽象的な価値観の表明ではあるけれども、自分達が向かう方向や、尊いと思う価値、信条などがミッション・ステートメントにきちんと備わっている。最後の砦はいつもそこ。遠くおぼろげながらそのミッションを守ろうという意識がどこかに根付いている。 前回の面談のなかでも何人かのマネージャーの口から「ミッション・ステートメント」の話が出た。そのミッション・ステートメントが自身の仕事観にもぴったり合っていると感じられる瞬間があったとか、それが大事だということがわかったというようなかなり嬉しい言葉だった。 ミッション・ステートメントを作成しているときは、まだ社員は20人にも満たなかった。日々の資金繰りで四苦八苦しているような状況でとてもミッションなんてこと言ってる場合でもなかったのだけれど、今思えばあの時つくっておいて本当に良かったと思う。

しかし、個人的なミッション・ステートメントというのは考えたことがなかった。 会社のミッション・ステートメントをつくっていたときには既に「7つの習慣」は読んでいたはずだったのだけれど、全然結びついてこなかったし、思い出しもしなかった。恥ずかしいことだ。

会社のミッション・ステートメントをつくっていたときもそうだったけれど、ミッション・ステートメントをつくるのは凄く難しい。それがすべての価値基準・規範となるということになれば、そうそう安易にはつくれない。いきなりミッション・ステートメントを書きないさいと投げ出されても、ほとんどの人はそこで行き詰まってしまうのではないだろうか。

そこで著者は「役割と目標を決める」という前段階を提案している。

私たちは生活のなかにさまざまな役割を持っている。たとえば、父であったり、妻、あるいは友人、会社の課長、部長、社長などなど。 まず、自分にはどのような役割があるかとういことを書き出してみること。そして、それぞれの役割に、自分はどのような人になろうとしているのか、どのような価値観によって導かれるべきかということを書き上げていくというわけだ。

「フランクリン・プランナー」には、ミッション・ステートメントを書くところが用意されている。また、ミッション・ステートメントを書くために必要な、自身の価値基準を見つめなおすための質問も用意されていて、その質問に答えていくことで、徐々に自身の価値基準が明らかになっていくという仕組みだ。

演習1が「価値観/説明文」をあげていくこと

価値観:プロ意識
説明文:
・毎日優れた仕事をする
・他の人のアイディアに対してオープンである
・積極的な態度を貫く
・チームプレイヤーとして貢献する

演習2は「役割」とその役割に対して「鍵となる人々」と理想の行動を「説明文」としてつけていくこと。

役割の例グラフィックデザイナー
鍵となる人々上司、編集者、顧客
説明文能力のかぎり完璧でクリエイティブな仕事をする

演習3は「スタートとなる質問」として、次ぎの2つに答えること。

  1. 仕事の中で、これを行えばすばらしい結果をもたらすと思われるものがあるとすれば、それは何ですか?
  2. プライベートの生活の中で、これを行えばすばらしい結果をもたらすと思われるものがあるとすれば、それは何ですか?

演習4が「ある(Be)、する(Do)、持つ(Have)」を明らかにすること。
「どのような人物になりたいか?(Be)」
「したいことのすべて(Do)」
「一生の間に所有したいものすべて(Have)」
をリストアップする。

演習5は、自分が死ぬとき皆からどんな人物だったと思ってもらいたいか、どのような人物として記憶に残って欲しいかということを具体的にイメージする。

そして、最後。
演習6は、以下の5つの質問に答えること。

  1. わたしが最も幸福で充実感を感じるのはどういう時だろうか。
  2. わたしが仕事において最も楽しく充実感を覚えるのはどんなことだろうか。
  3. わたしが私生活で最も価値があると考える活動はどんなものだろうか。
  4. わたしが身につけたい才能や能力はどのようなものだろうか。
  5. わたしが最も貢献できることは何だろうか。

この演習1~6を自身の頭で考え、イメージし、実際に書いていくことで、少しづつ自分の価値観が明らかになってくるというわけだ。フランクリン・プランナーを購入してから僕もこの演習を寝る前にやっているのだけれど、これが結構難しい。おそらく今まで考えたこともなかったことだからだ。

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2004/05/06 08:28

2004年04月25日

マネジャーにおける真摯さの欠如

新しいカテゴリーで「マネイジメント」というものをつくった。ここ数年来のテーマであり、自分でもここには意識的に取り組んでいかなきゃならない。無理矢理カテゴリーをつくっちゃうことで、「マネイジメント」に対してのアンテナを広げていきたいと思っている。

で、初エントリーは、マネイジメントといえばドラッカーだろうと。(もしかしたらドラッカー書物の備忘録になっちゃう可能性もあるな。)

ドラッカーは「真摯さを絶対視して、初めてまともな組織といえる」と語り、真摯さというものを組織の条件であると語る。そして、マネジャーとして失格とすべき真摯さの欠如の定義として次の5つをあげている。

  1. 強みよりも弱みに目を向ける者をマネジャーに任命してはならない。できないことに気づいても、できることに目のいかない者は、やがて組織の精神を低下させる。
  2. 何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者をマネジャーに任命してはならない。仕事よりも人を重視することは、一種の堕落であり、やがては組織全体を堕落させる。
  3. 真摯さよりも、頭のよさを重視する者をマネジャーに任命してはならない。そのような者は人として未熟であって、しかもその未熟さは通常なおらない。
  4. 部下に脅威を感じる者を昇進させてはならない。そのような者は人間として弱い。
  5. 自らの仕事に高い基準を設定しない者もマネジャーに任命してはならない。そのような者をマネジャーにすることは、やがてマネイジメントと仕事に対するあなどりを有無。
  6. (【エッセンシャル版】マネイジメント 基本と原則 P.147~148)

(1)の「強みよりも弱み」というのは、裏を返すと「組織は問題ではなく機会に合わせなければならない」ということと同義だろう。この言葉は非常に重い。ついつい僕らはすぐに「問題」にばかり目が行く。悪いところばかりが目につく。しかし、マネジャーは、本来、弱みよりも強みを視なければならない(これは、弱みを見ないということではない)。

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2004/04/25 18:27

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