首相官邸サイトの運営費が2億弱だけれど、これは高いのだろうか?

首相官邸のサイトやらの運営費、委託費用などが公開されている。
首相官邸ホームページ・メルマガの制作運営費をリストにしてみた:小鳥ピヨピヨ
何年か前も小泉メールマガジンと首相官邸サイトの委託費が年間7億円で高い、安いみたいな話があったと思うけど(その時の資料が今ごろまたたまたま取り上げられただけなのかな。内訳が2005年までだし)
あまり詳しくは見てなかった。今回、いちるさんが答弁書の内容をわかりやすくまとめてくれていた。

首相官邸HPの制作・運営費
2001年度: 1億985万円
2002年度: 1億7062万円
2003年度: 1億7863万円
2004年度: 1億5118万円
2005年度: 2億1639万円

これらはIIJに委託されている。
ここにはサーバやら回線やらといったインフラ費は含まれてているのだろうか?
IIJ以外の委託先を見ても、インフラ系を担いそうなのはJ-Streamぐらいだ。IIJがそもそもインフラ会社だということを考えると、この費用にはサーバ・インフラ関連の費用も含まれているということだろう。

この費用は高いだろうか? 一般の人の感覚だと、たかがホームページごときに2億近い費用をかけるなんて馬鹿げてる。私たちの税金はまたこんなところに無駄に使われているんだろうと、なるんだろうとは思うけれど、僕は正直、この額で出来るんだなぁというのが最初の感想だった。つまり、思ったより安い、ということだ。

首相官邸のサイトはほとんど見たことがなく、今回改めて見てみたけれど、お世辞にも良いサイトとは言えない。大量のページは都度都度のデザインやテンプレートで起こされていて、統一感がなく、ナビゲーションシステムは機能していない。アクセシビリティ等への配慮もあるのはわかるが、クリエイティブ面でも相当いただけない。また、基本的なWebユーザビリティ上の問題が多く見受けられる。ただ、まぁ首相官邸のサイトにはエンターテイメントを求めてるわけでもないし、必要な情報、求めてる情報がきちんと見つかり、得られればそれでいいのだろうから、あまり煩く突っ込んでも仕方ないのだろうが。
普通の企業のサイトでこのレベルのサイトを運営したら、年間はどう考えても1億はいかないだろう。というか1億あればもっとマシになりそうな気はする。

ただ、やはり一般企業と国は違うだろう。ただのページ追加や更新業務とはいっても、一企業のそれと首相官邸ではプレッシャーが違う。ぱっと見でも更新はかなり多そうだ。何かしらCMSが入っていようがいまいが、更新業務は相当入念なチェックも求められるのではないかと思う。単純なテンプレートへの組み込みや吐き出しなんだから、こんな更新ぐらい誰でもできるだろうというは、そりゃそうなのだがミスや間違いなどが基本許されないところでの作業はどんな簡単なものでもシビアだし、またチェック工程なども面倒くさーいフローや手続きをとらなければならないことが多い。(誰もが自分の責任にしたくないので、何十にもチェックを敷く。で、責任をとらなければいけない人のところの承認に来る頃には、ほぼミスがない、完璧な状態となってやってくる、みたいなことが殆どだろう。一般企業でも、金融系などはシビアで、ミスが許されない世界だから似てるかもしれないけど)
1ページの追加や更新や削除やらといったことにも大変な労力、時間がかかるんだろうなということは容易に想像がつくので、普通の企業でのやり方よりは費用はかかるだろう。

ちなみに、一般企業も、Webサイトの運営や維持費に実はけっこうな額を払ってるんだよということは、Webインテグレーション会社の最大手のIMJさんのIR資料などを覗いてみるとわかる。

直近の決算説明資料には説明がないのだが、例えば、2006年9月期の決算説明会資料には、「大型案件の受注が好調。2億円超のクライアントは、前期比5倍に増加」というような文字がある。もともと2億超のクライアントが何社かあったかは正確にはわからないが、1社、2社ではなかったことは確かだ。(もちろん一般企業だけじゃなく、行政関連も入ってるのかもしれないけど)
2005年度の資料には、「クライアント数は851社」、トップ10クライアントでの売上占有率は69%となっている。この2005年9月期のWebインテグレーション部門の売上は約56.8億。このうち10社で年間39億ぐらいの売上を上げていることになる。IMJは広告とインテグレーションのセグメントは別なので、これは純粋なWebインテグレーション業務の売上ということになろう。上位10社でも1位と2位、それ以下では差はかなりありそうな気もするが、単純に平均で考えても、上位10社は1年で4億弱のお金をIMJに支払っているということだ。
IMJの事例にあがってる楽天の運営は、間違いなくこの上位10社、年間2億以上を制作・運用コストとして支払っているクライアントだろう。
楽天内にはIMJがチームごと常駐していて、ちょっとした中堅規模ぐらいの制作会社ぐらいの人数が専属で楽天業務に関与しているらしいが、そうなると2億、3億では済まないだろうと思う。

IMJはWebインテグレーションでは最大手だといこともあるので、IMJがこうだから他もそうだとは言えないけれど、でも、大手制作会社で年間1億ちょいの予算のクライアントというのは大きいけれど、それは途方も無い規模ではない。
そのサイトの運営のために優秀なプロデューサーやコンサルタントがほぼ専属でたって、そこに柔軟に対応できるような専属の制作チームなどを置けば、そのチームを運営する固定費だけでも相当なものになる。

IIJが首相官邸サイトの運営にどのような体制で望んでいるかはわからないが、まず専属チームを用意していることは間違いない。2~3人がシニアレベルの営業、窓口担当として立っているんではないか。(普通のWebインテグレーション業務のように、プロデューサーやコンサルタントが立ってというような形態とは少し違うような気がするが) 全員が専属ではないにせよ、最低1人はほぼこの案件に張り付きだろう。この人にはかなりの色々な意味での経験やコミュニケーション能力が求められるだろうと思う。市場でも見つけるのはけっこう難しく、当然、年収も高い。
制作チームとインフラ関連のチームがあって、制作チームは10人ぐらいは専属に近いのではないか。秘密保持や業務委託契約の関係もあり、このチームスタッフは派遣や契約ではなく、おそらくIIJ社員で構成されているのではないだろうか。インフラチームも24時間365時間体制は当然だろうし、ここもけっこうな人を交代制で張り付かせないといけないだろう。(もちろん、IIJはここが本業だろうから、本業でやってるフローに組み込めば、専属ではなくともなんとかなるのかもしれないが)
と考えていくと、ここでもけっこうな規模の制作会社一社分ぐらいの固定費がかかってるんではないかと。
で、考えると、年間2億弱は決して高くないんじゃないかなと思う。

ま、もちろん質とコストの関係があるし、税金を無駄使いするなとも思うんで、より安くより高品質なものが作れて管理できるところがあるなら、委託先の選定も考えていったほうがいいとは思うけれども。

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