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なぜ、ノウハウ本を実行できないのか―「わかる」を「できる」に変える本

44783500941分間マネジャー―何を示し、どう褒め、どう叱るか!」という本がある。この本、その後に「1ページ・マネジャー」やら「ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術 3分間コーチ」やらと、いろんなフォロワーを生み出した原点のような本だ。世間的にも相当大きな影響を与えた本だと思う。

昔、うちの会社でもこの本が流行った時期があった。すごく薄い本で、すぐに読めてしまうということも人気の秘密だったと思うけれど、そこに書かれてあることもシンプルながら説得力のあるマネージャーとしての心得や作法みたいなもので、当時、社員が増えはじめて、多くのメンバーが初めて本格的にマネジメントということを意識しはじめ、こぞってこの本を手にしたように記憶している。もちろん僕も読んで、けっこう感化されたと思う。

さて、この本にはどんなことが書かれていただろうか??

自問自答してみる。確か、部下を怒る時には、なにか間違いを犯した直後にその場で、何が悪いかを間違ってるかをはっきりと示すことが重要、みたいなことが書かれてたなぁ… 他には他には他には… 目標をシンプルにするとか、あれって、あれは「1ページ・マネジャー」の方だったけな??

ほとんど思い出せない。

あんなにこの本はすごいすごいと嬉々として受け入れて読んで、読んだ直後には意識して行動したり考えたりしていたはずなのに、たったこれぐらいしか記憶に残ってない。

振り返ってみる。
「1分間マネジャー」に書かれてることを実践できているか? 覚えてもいないのに出来ているわけがない。
意識してマネジメントしているか? 出来てるわけがない。
「これはすごい」と読んでてても、それを実践できるわけではない。実践できてもそれを持続できない。

4478004463なぜ、ノウハウ本を実行できないのか―「わかる」を「できる」に変える本」は、「1分間マネジャー」の著者の新作本である。
この本がテーマにしてることは、ズバリ、このタイトル通り、先程、「1分間マネジャー」を実践できていないという振り返りをしていた僕が陥ってる症状そのものの問題と解決法を指摘することだ。

たえず新しい情報に接することが習慣になっていると、忘れることも習慣になってしまう。実践することではなく、新しいことを知るトレーニングばかりしている。
(略)
本当に一つの分野をマスターするには、大量の情報に触れるより焦点をしぼった情報に取り組むべきです。
(略)
多量の知識を1、2度学ぶより、少量の知識を何度も学んだほうがいい。

ごもっともすぎる指摘というか。なんか完全に自分の弱いところを突かれてるような気がした。なにせ、この本を手にしていたのは昨日の東京帰りの新幹線だったけど、その脇には、この本と同時に買ったこれから読もうと待ち構えてる本が5冊も待ち構えてたりしたからだ。

「1分間マネジャー」に違わず、本書も非常にシンプルな構成、わかりやすい文章で綴られている。早い人なら30分もあれば充分に読みきってしまえるぐらいの文量しかない。でも、指摘していることはものすごく重要なことばかりだ。

本書では、「ノウハウ本を実行できない」理由を3つにまとめている。
情報過多」「ネガティブなフィルター装置」「フォローの欠如」だ。そして、それぞれの問題について解決策を提示する。
「情報過多」なら、先程の引用の通り、「少数のことを何度も行う」ことを奨める。この「少数のことを何度も行う」というのは、本書全体を貫く根本的なテーマでもある。
ネガティブなフィルター装置を外して、ポジティブに受け入れるためにも、「反復」が必要であり、何度も同じことを繰り返し考えていくことで、ポジティブな心が開けていくということを示す。「フォローの欠如」でも、「反復」が重要なキーワードとなっている。

教える
やって見せる
それをやらせる
見守る
上達を褒める、または方向を変えさせる
教える
やって見せる
それをやらせる
見守る
上達を褒める、または方向を変えさせる

何度もやらせて、見守る、上達を褒める、または方向を変えさせる、が繰り返されていくと、そのうち「頼む、やらせて見守る、褒める」になり、最終的には「自分で考えさせる、実行させる、自分で上達を褒める、または方向を変える」になる。
本編全編を通じて、繰り返すことや反復すること、少ないことに絞り込んでいくことをこれでもかというぐらい徹底して説いている。本書自体が、本書で提示されている「少数のことを何度も行う」ことの実践になっているというわけだ。

この本に限らず、本から得られる知識は大きいし、どんな本にもたいてい何か重要なヒントが隠されていたり、自分の考え方や行動を変えてくれるきっかけが潜んでいたりするわけだけど、問題はせっかくそういうものを得ても、吸収できたのはその時、その瞬間だけで、すぐに忘れてしまう、ということだろう。すぐに忘れてしまい、また新しいソリューションを求める。以前にも同じようなソリューションには接しているのかもしれないけれど、毎回毎回新鮮なものとして受け入れて、そして忘れていく。これの繰り返しだ。
だから、自分がこれだと思うものに集中して何度も取り組む、考えることをしていくほうが、多くのものを吸収して何もしないよりも余程、結果が出る。その通りだと思う。
たぶん、多くのマネジメント本に手を伸ばして、色々な手法を取り入れるよりは、「1分間マネジャー」に書かれてあることだけを徹底して繰り返して実践できたほうが良い結果を生み出していたのだろうと思う。少し反省。

というような指摘を受けながらも、僕はこれからも引き続き、新しい本やら知識を貪欲に取り入れていこうと奔走するんだろうと思う。貧乏性と健忘症を兼ね備えて反省することなく、同じことを繰り返すんだろうな。新しいもの好きだし、本を読むのは僕にとっては何かのためというよりも、完全に趣味の領域なんで許してもらいたい。
でも、会社に取り入れていくソリューションはなるべくシンプルに、少なく、そして繰り返すということを意識していきたいと思うんで。ということで、もう一度、「1分間マネジャー」も読み返してみて見ようと思う。

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会社にお金を残さない! ~「ノルマなし!管理職なし!給料全公開!」の非常識な経営術~

4479792724会社にお金を残さない! ~「ノルマなし!管理職なし!給料全公開!」の非常識な経営術~  ─ カンブリア宮殿で放送されて話題だったみたいだけど、その放送は見ていない。

でも、本書を読むだけで、この会社の過激さというか、他の会社との違いはものすごくよくわかる。かなり衝撃的だ。

この会社のはノルマや目標がない。管理職がない。そもそも社長職も交代制。社員全員の給与が公開され、基本的には内部留保は0。利益はすべて社員かお客さんに還元する

最近やたらと、就業規則やら会社ルールでユニークな制度や手法が注目されたりしているので、これだけ聞くと、こういった突拍子もない制度やルールに目が奪われてしまって、なんだ、またそういうものにだけ拘った企業のように思えるかもしれない。しかし、この会社は違う。1986年創業以来、業績は右肩あがり。年商は85億円。現在のチェーン店は120店舗を超える。

しかも、この会社、もともと広島の大手メガネチェーンを辞めたメンバーによって立ち上げられた小さなメガネ屋からスタートしており、その大手メガネチェーンから目の敵にされながらも、このような成長を成し遂げてきている。
そう、この会社のユニークな考え方や制度は、人目を引くためだけの中身がないようなものではなく、こうしなければ厳しい競争に勝っていけないという切実な思いと、世の中で常識とされているものへ疑いの目を向けるという徹底した信念に裏付けされているのだ。

■内部留保ゼロのからくり
たとえば、内部留保ゼロのからくり。儲かった分をすべてボーナスで社員に還元するという方法でとられている。
ボーナスは年3回出るが、決算賞与のタイミングで経常利益がほぼゼロになるように社員に分配する。社員によっては賞与だけで500万円を超える収入になる場合などもある。
「儲かった分はボーナスとしてすべて還元される」というのは、逆に言うと、「儲からなければ還元はない」という意味だ。

実は、メガネ21には社員の月額給与額の最高は30万円程度という決まりがある。昇給は30歳まで。メガネ店で働くためのスキルは30歳までで身につけられられるからというのがその理由だ。つまり、月給ベースだと年収360万円が上限であり、それ以外はすべてボーナスとなっている。ボーナスは儲からなければ全く出ない。「ボーナスが500万円を超える人もいる」なんてところだけを聞くと、なんて社員に優しい会社なのだと勘違いしてしまうかもしれないけれど、実際は収入の大部分を業績に連動させているという意味では、非常にシビアな会社とも言える。

■業績悪化や資金需要へはどう対応するの?
また、内部留保がゼロなら、当然、何か起きたときにどうするんだ? 新店舗の開店や商品開発などで先にお金がいるときはどうするの?という疑問は湧くが、その裏側にもきちんとした彼らなりのロジックがある。

メガネ21にはいくつかの働き方のコースが用意されているが、それらのコースは大きく「一般職」と「経営職」にわかれている。一般職は賞与・給与が業績によって変動せず、利益分配は受け取れない。経営職は賞与・給与が業績によって変動する。どちらのコースでも先程出てきた基本給や30歳昇給ストップ、月額給与30万円程度という上限は同じ。つまり、一般職を選んだ人の年額給与の最高額は360万円が固定ということだ。

一方で、経営職でも実は年収は1000万円が上限と定まっている。配偶者控除を受けられるギリギリの額だからというのがその理由で、サラリーマンが受け取れる常識的な最高額として、いったんこの額で社内ルールを設定してしまっているのだ。
つまり、経営者コースの人は、640万円を業績連動の賞与によって得られる権利があるということになる。
現在は社員の収入の3分の2を賞与が占めているので、業績が悪化したらこれをカットすれば大幅な経費削減が可能になるという、かなりシンプルな仕組みがある。上限を決めて、それをオープンにしてしまうことで、イザという時にも見通しが立てやすくなってることは間違いないし、また、ルールが明確なので社員にとっても納得がいきやすいのだろう。

資金需要に対しては、基本的には社員からの「直接金融」を実施している。資金繰りはすべて社員の出資によって成り立っているのだ。銀行からの借り入れはゼロ。
たとえば、社員には「社員借り入れ」制度というものがある。これは社員が会社に預金ができる制度だ。預金なので当然、利子が付く。この利子、なんと少し前までは10%で運用していたというから驚きだ。
現在は実施されていないが、会社に出資している額の50%を賞与として上乗せしていた時代もあった。1000万円出資すると500万円が、利子としてではなく、評価として賞与に上乗せされて支払われるわけだ。株式も基本、社員が持ち合う形になっている。

要は、いかにして社員が会社にお金を出したいと思わせるか、そして、自分の会社のオーナーであり、経営者であると思えるか、そのための仕組みや制度を考えられるかが重要なのだ。メガネ21の仕組みは、決して社員にやさしいわけではない、むしろ実は非常に厳しい仕組みだろう。給与の上限などの割り切りも理由としては尤もだけれどシビアだ。
しかし、「経営職」には本当の意味での経営視点や判断が求められ、それによってリターンを得られるというかなり単純なルールが持ち込まれている。社員たちが自然に「経営」に目が向くような仕組みが盛り込まれているのだ。

■管理職がいらない仕組み
全員が経営者、会社のオーナーであるという意識が裏付けにあるからこそ、管理職が必要なくなっている。
たとえば、会社として重要事項を決めるときも、何か提案がある場合には、すべて社内ウェブを使う、というルールになっている。提案に対して、反対する人が誰もいなければ即決定という仕組みだ。黙認は賛成となってしまう。稟議書もなければ、根回しもない、ある決定を下すための会議も必要ない。だから、必然的にいわゆる中間管理職は必要なくなってしまう。
これは社員が共同経営者という要素があるからこそ(また、財務情報や社員の給与など、必要な情報はすべて公開されているからこそ)、可能な仕組みだと言える。

■目標設定や社内競争も無駄
さらに、ほとんどの会社が最も大事なものだと考えてる「目標設定」も、メガネ21では「無駄な作業」だと一掃している。
「達成可能なラインの少し上に目標設定すべき」なんて言われているけれど、その適正値って何? それで社員のモチベーションが上がるの? と素朴な疑問を投げかける。 どれぐらいの目標設定が適切かということを考えるのに何時間も頭を使ったり、会議をしたりというのは、「それで仕事だと勘違い」しているだけで、「どうでもいい数字をこねくり回」しているだけじゃないの、という厳しい指摘。また、社内競争も意味がない。自分の店舗だけ儲かったらいいという意識が付くことはむしろ悪で、全体としてのスループットに意識が向かないと意味がない。
そして、著者は言は、ノルマや目標がなくても、「社員がやる気になる仕組みがきちんとあって、お客様の満足度を高めていければ、確実に業績は伸びます」と言い切る。

自分の大部分の報酬が賞与で決まっていて、それが業績で決まるとなれば、そして自身が株主であったり、銀行みたいな立場で会社に出資したり、お金を貸していたら、そう考えると、確かに「目標」なんてなくても、売上を伸ばそう、利益を伸ばそうという意識は働かないわけがない。会社全体の利益で賞与が決まるなら、自分の店舗だけ良ければいいなんて意識はまず働らかないだろう。業績に影響を与えるような提案があれば、それについて各自が真剣に考えて判断するだろう。
まさに経営者と同じ視点で仕事に取り組むような仕掛けがあるからこそ、こういった従来の常識とはまったく違う考え方でも、とてもすんなり受け入れられるようになっているわけだ。

■本書を読んで
ちゃんとすべてに理由があるのだ。ただ、やりたいから。なんとなくそうしたほうが社員にとっても良さそうだから。ユニークな会社に思われそうだから。まるでそんな要素はない。
これらの制度の1つや2つだけを真似て、自社に導入してうまくいくかというと決してそんなことはないだろう。
上辺だけを真似ても、場当たり的な制度となってしまい、むしろ状況は悪くなってしまうのではないか。かといって、世間の常識や、他社がこうやってるからというだけで盲目的に制度やルールを考えてしまうことも良くはない。

重要なのは「何を重視するのか」「何を強みとしていくのか」という根本の思想や信念だ。その思想や信念をより強くしていくために、それらが自然に敷衍していくための仕組みや仕掛けとして、どのようなルールや制度が考えられるのかということを考えていく必要があるのではないか。

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「ザッポスの奇跡」を読んで、あらためて誓うこと

4862234054ザッポスの奇跡 The Zappos Miracles―アマゾンスタッフが屈したザッポスの新流通戦略とは」この本を読んだのは昨日なのだけれど、この本をスタッフが読んだら、この前僕が話をした「企業文化」の話は、この本から影響を受けたんだろうと勘違いするかもしれない。昨年末ぐらいから、僕は社内の人たちに「企業文化」の話を何度かしている。そこで話をしたことと、本書に書かれてることがあまりに似ているのだ。

僕が話をしているのは、6年前にある大学で起業を考える学生向けの講義みたいなものをお願いされ、その時に話した内容だ。資料も当時つくったものそのまま使ってる。なので、本書に書かれてることの詳細は全然知らなかった。(ザッポスというカスタマーサービスが凄くて、ソーシャルネットワークをフル活用しているECサイトがあって、それがAmazonに買収された、という話はしっていたけど。詳しい話は本書を読んで知った)

読んで見てほんとに驚いた。その資料に書いたこととすごく近い。もちろん、ザッポスと同じことを考えていたから凄いとか、そういうことを言いたいわけではない。「企業文化」ということを真剣に考えたら、結局、皆同じような考えになる。重要なのは、ザッポスのその信念へのこだわりや忠実度だ。

僕らは「それが重要」「そうでなければならない」と思いながら、それを徹底してこれなかった。
たしか、バランススコアカードのキャプラン博士だったかが、戦略の失敗の大部分は、「戦略が実行されないこと」に依るものだというようなことを言ってた。そう。考えたり、思いつくことは誰でもできるのだ。
それを実行できるのか、徹底できるのか。この違いは大きい。

僕は、本書を読んで、あらためて自分が考えていたことの原点への信念を確かなものにしたし、まだまだ僕らだってザッポスのような強烈な企業文化を作っていくことができるはずだという確信を深めた(ザッポスと同じような文化を作りたいとうわけではなく、僕らに固有の文化という意味)。そして、再度、企業文化の重要性をスタッフたちにも伝えていかなければならないと思った。

だから、あえてその講義のことと、講義からの6年間について振り返ってみようと思う。

その大学での講義は2003年12月のことだ。
大学からは起業を考える学生たちも増えてるので、実際にベンチャーを起業されて、経営されている方から何か話をしてあげて欲しいというようなオーダーだったと思う。

当時会社はまだ30人を超えたぐらいだったろうか。ちょうど東京の事務所を今の事務所に引っ越した年だ。その年以降の3〜4年間で、一気に社員が増えた。ある年だけで50人近い人を採用したこともある。ものすごい数の仕事が押し寄せてきて、とにかくその仕事をどうやってこなすかということで頭がいっぱいだった。他から見たらこのレベルの成長を成長とは呼ばないかもしれないけれど、かなり家族的にアバウトにやってきた会社にとって、1年で社員が倍以上になったりというのは、相当の「変化」だったと思う。

その講演を行ったのはちょうどその頃。つまり、うちの会社がサークルみたいな感覚でわいわいと愉しくやっていた時期から、その後の何年かの急成長を迎える端境期にあたる。

その時の語ったテーマは「起業と文化」というものだ。

大学側からしてみれば、ホントはビジネスモデルだとか、マーケティングだとか、資金調達だとか、そういう話を期待していたのかもしれないけれど、僕らは当時騒がれていたようなIT系ベンチャーのような野心や貪欲さみたいなものは生憎持ち合わせていなかったし、その手の面白い話もなかったので、仕方なしに自分たちが考える会社について話をしたのだと思う。

その内容はこんな感じのことだ。

最近の、特にIT系ベンチャーなどの起業を志す人は、ビジネスモデルだとか事業だとかに心を奪われすぎてるのではないか。エレベーターピッチで語られるようなビジネスモデルや、コースターの裏側に書いたビジネスアイディアで莫大な投資を受けただとか、そういうベンチャーの神話みたいなものばかりに目が行きがちだけど、企業の強みというのは、何もビジネスモデルや技術力や営業力みたいなものだけではない。

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僕らが重視していたのは、従業員のモチベーションが高いということだ。従業員が愉しく、真剣に、そして助け合いながら仕事ができれば、それは十分に競争力や差別化要素になる。

サウスウェスト航空はビジネスモデルた突出しているから成功したのか? なぜ競合他社は、同じような中距離格安航空事業を始めてもうまくいかないのか? それはサウスウェスト航空の強みがビジネスモデルにあるのではなく、従業員のモチベーションや行動といった領域にあるからだ。(当時、僕はサウスウエスト航空のことを書いた「破天荒!―サウスウエスト航空 驚愕の経営」を読んで、心底この会社のことが好きだった。今も好きだけれど。「破天荒!―サウスウエスト航空 驚愕の経営」は、「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則 」とならんで、僕の企業観を最も決定づけた本の一つ)

従業員のモチベーションや行動といったものは、こうしろああしろという強制力や指示から生まれるものではない。それは、企業の文化や雰囲気、ムードみたいなものでしか産み出せないものだ。
だから企業は「文化」をどんな風に作っていくのか、「文化」をどうやって共有するのか、従業員の誰もがわかるようにするのか、ということに真剣に取り組まなければならないのではないか。

こんな内容の話だ。
ベンチャーが「文化」なんて言ってる場合でもないのかもしれない。でも、ザッポスも社員が90人に達した頃に「カルチャーの定義」を始めた。これ以上増えてしまっては、もう「企業文化」を作るのは難しくなるという決断があり、今につながるザッポスの強烈な文化の醸成は始まったわけだ。
人数が増えてから、事業が安定軌道にのってから、組織基盤が整ってからというのでは、むしろ遅い。従業員数が少なく、企業としても未熟だからこそ、企業文化を意識するべきなのだ。僕らはビジネスモデルや事業構造やマーケティングよりも(もちろんこれらが大事じゃないというわけではない)、企業文化というものを大事にしていて、それを強みにしたい。
どんな事業をするのか、どんな仕事をするのかよりも、どんな人と働くのかということを重視したい。

僕らが重視していた文化とは、「良い会社とは、一緒に働いていて愉しい人たちと働ける会社である」という信念に基づいている。この言葉は、創業当時にメンバーで「どんな会社が良い会社なんだろう?」という話をしていた時に、現イー・三六五社の代表取締役の島田くんがポロリと言った言葉だった。僕らは全員、この言葉に飛びついた。

せっかく自分たちで会社を作るんだから、愉しい会社にしたい。仕事に従事してる時間は、もしかしたら人生のどの時間よりも長いかもしれない。であれば、愉しくない時間なんて過ごしたくない。そこが愉しいかどうかは、一緒に働く人たちで決まるのではないか。どんな事業をやるのか、どんな商品を手がけるのか、どんな顧客を獲得するのか、ということの前に、良い人たちと働きたいという願望があったわけだ。

この信念に基づき、この文化を強化し、そして文化という目に見えない抽象的なものに実体のようなものを付与していくために、会社内の様々な諸制度やルール、規則は作られなければならない。他がこうだからとか、一般的にはこうだからというのではなく、自社の文化やカラーをより強固なものにしていくためにこそルールを作る。
だから、当時までの作ってたルールだとか、規則みたいなものは、「文化を作る」ってことをすごく意識して作ってた。

本書の中で登場する、ザッポスがいかに文化を大切にし、その文化を強固なものとするためにどんなことをやっているのかということを読んでもられば、「文化を作る」ことの意味はわかってもらえると思う。ザッポスぐらいの徹底や工夫には及ばないけれども、でも自分たちで様々なことを考えて取り組んでいた。

このセミナー資料を作ってた時は、それまでの会社の作り方や自分が本当に大事なものだと考えていたことをまとめたつもりだったし、そこに嘘や偽りはなかった。今後もそうでありたいと思っていた。

でも、今思えば、そのセミナー以降、会社は「成長」ということを優先して、こういった「企業文化」についての意識を後回しにしたと思う。
顧客の要望に応えていくために、どんどん人を採用する。多少、会社の文化に合わなさそうでも、スキル優先で採用が決まっていった。もともとは能力やスキルよりも、人柄や「その人と働きたいかどうか」ということを基準において採用していたのが、「即戦力」が優先されるようになった。
人が増えると、今までは何のルールもなく「あうん」の呼吸でなんとかなってたものに色々歪が生じてくる。なので、否応なくそこにとってつけたような間に合わせのルールや規則を当てはめて行くことになった。間に合わせで、だいたいの企業はこういうことだし、こうしとこうとか。大企業だとこれが普通だからとか。
自分たちの企業がどうありたいか、どんな文化を醸成したいのかということではなく、大人数の組織をひとまずなんとかコントロールしていくためだけにルールがつくられていった。

それまでの家族的、サークル的なムードから、徐々に企業っぽさが侵食しはじめた。
それがすべて悪いことだとは思わない。
実際、それまでの会社の規模では、ちょっと何か起こればそれこそ会社存続の危機に直面したものだけれども、成長によって会社としては多少の余裕が生まれた。社長は、常に、従業員が人並みの暮らしができることや、安定した生活ができることを最優先していたけれど、(実際、当時、会社は愉しかったけど、従業員の給与水準はとてつもなく低かった。その給与では多分、結婚して子供を産んでという「普通の生活」を送るのは難しかったと思う。)会社の売上は伸びていき、それに伴ない、従業員の平均給与も伸びていった。

一方で、会社全体としては激務との戦いとなった。社員の稼働は常に高く、プレッシャーも相当なものだったろう。鬱病になるスタッフがちらほら現れ、離職率が急激に上がった。それに伴ないモチベーションの低下も目につくようになった。

会社としては余裕は生まれたが、今度は、どうやって稼働をまともにするのかという問題が会社の最優先課題になった。
従業員がまともに帰れて、プライベートも充実した生活を送ってもらえるようにするにはどうしたらいいのか。様々なアイディアや取り組みを実施した。
稼働の問題はいまでも解決しているとは言えない。仕事上、やむ得ないところもあるが、それでも一部で集中的に稼働が高くなるということは発生している。取り組みも徹底されているとも言えない。しかし、全体として見たときには数年前とは雲泥の差であることも事実だ。

稼働の問題として、新規の「受託開発」比重が高いことも原因の一つだと考えた。受託開発は営業や受注のコントロールが非常に難しい。どうしても顧客の要望が最優先となるため、多少の無茶にも対応していかなければならない。相談からプロジェクト開始、そして完了までの期間はどんどん長期化していて、キャッシュフローもよくない。

そこで受託開発の比率を下げて、ASPやシステム保守や運用などの毎月定額で売上が立つものの比率をあげていこうということになった。その比率が上がれば、受託開発をしていくにも余裕が生まれる。今日、明日の日銭に切迫して、無理な受注をとっていく必要もなくなる。それによって従業員の稼働も調整しやすくなるのではないか。
それまで会社にはまったく余裕がなく、何かへ投資することなどほとんど不可能だったわけだけれど、「成長」によって得た資金(といっても、たいしたものではないけれど)で、新しい事業やサービス開発に取り組むことが可能となった。

受託開発と同じ部隊でそれをやると、どうしても受託開発側に引っ張られてうまくいかないことが多いので、スタッフを別会社に移したりして、「受託開発外」の事業化というものに力を入れた。こういう取り組みに力を入れだしたのが、この3~4年だ。これらの取り組みでもうまくいかなかったもの、予想以上にうまくいったもの、色々あったけれど、取り組みの成果は着実に出ていて、会社全体のポートフォリオとしては、受託開発への依存度は下がってきてる。こちらもこれからが正念場ではあるけれど、でも良い方向に進んでいるとは思う。

そして講演会から6年が過ぎた。

今年僕らは創業から15年を迎える。
15年を迎えるということだけが理由でもないのだけれど、ふとした折に、この講演資料を読み返してみた。
そうだ、そんな風に考えていたな、と気付かされた。「気付かされた」ということは、それを考えてこなかったことの裏返しだ。
この6年、僕らは、やはり「企業文化」ということに真剣には取り組んでこなかったと思う。
最初の3年はがむしゃらに「成長」に突き進み、そしてこの3年は「稼働」を適性にすること、事業を分散させることに注力していた。もちろん、その背景には、社員を幸せにしたいという思いがあるのは嘘偽りはない。
でも、ある種のトレードオフがあったことは事実で、そのトレードオフにおいて、「企業文化」という、それまで最も重視したいと思ってきたものを後回しにしたことも事実だろう。

でも、15年という節目を迎えて、あらためて僕は原点に戻ろうと思っている。
ザッポスの奇跡 The Zappos Miracles―アマゾンが屈したザッポスの新流通戦略とは」を読んで、よりその決意は固いものになった。僕が「企業文化」というものをどう考えてるかは、この本を読んでもらえばだいたいがわかると思う。
再度、この「企業文化」をどうやって作るのかというところに、もっと情熱や時間を費やしていこうと思っている。

ここ5年で入社した人にとっては、「は?」と思うところもあるかもしれないけれど、今でも僕は、「良い会社とは、一緒に働いていて愉しい人たちと働ける会社である」という信念を持っている。
あたりまえだけど、文化みたいなものが今日、明日で生まれ変わるわけでもない。それはちょっとずつ時間をかけて醸成されていくものだ。誰かの号令一つで変わるものでもない。そこにはスタッフ全員の創意が必要だ。
時間はかかるかもしれない。でも、やっていきた。やり遂げたいと思っている。

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より大きい価値や成果のために

創業して3年目だったろうか。

東京事務所を開設しようということになり、ひとまず単身でボクが東京に行くことになった。なぜ、ボクみたいな営業下手が東京に行くことになったのか、その頃の経緯は覚えていないけど、多分、ボクが担当していたある大手のお客さんが東京のお客さんだったということが大きいんだろう。
東京最初のオフィスはある企業さんに間借りする形でスタートした。

当時、東京のお客さんというのはその大きいお客さんとあと数社ぐらいだったと思う。

間借りしている会社の社長さんにはいろいろな会社への営業に同行させてもらったりして、そこからポツリポツリと新しい仕事が生まれたりもしたけど、ほとんどの稼ぎは、元々京都にいた頃に獲得したそのお客さんからの仕事からが殆どだった。

その仕事は、今思えば、内容としてはたいした仕事ではないのだけど、毎月100万円ちょいぐらいの運用費みたいなものが頂ける仕事で、当時社員が数人だったうちの会社にとっては命綱みたいな仕事だった。

結局、その仕事はなんだかんだと4年近く続いたと思う。

その間にも会社は成長していった。事務所も間借りから、自前のものになったし、社員も増えた。でも、その案件の主担当は相変わらずボクがやってた。

会社全体としての売上は伸びてはいるものの、それでもそのお客さんからの売上や利益はまだまだうちの会社には大きいシェアだったし、そこはなんとしてでも死守していかねばと、ボクも使命感に燃えていたと思う。

ボクはその案件でかなりの時間をとられてたし、また、緊急の対応や無茶な要求にも応えていた思う。スケジュールが厳しくて、まともに寝られない日々が続いたり、実際、倒れて立ち上がれなくなってしまったことも何回かあった。気付いたら鼻血がでてたり、過労のせいか、真っ直ぐに歩けなくなってたり、耳鳴りや頭痛が続き、並行感覚がなくなったことも何度もある。

若かったからなんとか出来てたけど、今は到底無理な体力勝負の泥臭い仕事だ。

当時はこのお客さんは自分にしかコントロールが難しい、仕事も内容が多岐に渡るんで自分がやるしかない、他の人に引き継ぐのは難しいと思っていた。お客さんからも、ある程度の信頼は獲得できていたので、別の人がやることでクライアントの不信感に繋がり、案件を落としてしまっては元も子もない。

なので部分的にはスタッフにサポートはしてもらうものの、大部分の業務は一人でやってた。業務が大変だから、他の人に引き継いだら、その人が可哀相だろうとも思っていて、自分が犠牲になれば、会社にも大きい利益があるのだからそれでいいんだぐらいに考えていた。

こいう犠牲こそがリーダーの役割であり、グループの長の宿命みたいなものだと自分に言い聞かせていたのだ。

けど、実のところは、引き継ごうと思えば、なんとでもなったのかもしれない。

色々な理由や大義名分はあるけど、本質は、引き継げないではなく、引き継ぎたくなかったんではないかと思う。

当時、自分がどう考えていたかはもう覚えてもいないし、今までずっと、「引き継ぎたくても引き継げなかった」という文脈で過去を回想していたということもあり、実際どうだったのかは自分にもわからない。

でも、人間なんてものはセルフイメージを維持するために、知らぬ間に自分自身に嘘をつく。内心はそうじゃないとわかってても、自分の能力や立場や役割みたいなものを守るために、様々な偽証を働くものだ。

多分、あの頃、ボクはその仕事を、その案件を人に取られたくなかったのだ。
でなければ、あんなに頑なにあの仕事を自分でやり続けるわけがない。今、思えばいくらでも引き継げるチャンスもあったし、人もいたはずだ。

本来自分がやらなければならなかったことや、やるべきことから目をそむけるために、この仕事の忙しさを言い訳にしていたんではないかと思う。

他の人に引き継いでしまったら、自分が育ててきたお客さんを失ってしまうなんて、まるで自分一人の力で案件を獲得して維持してきたかのように思い込んでいたし、また、毎月継続的に安定的に粗利を産み出してくれるお客さんの担当でなくなってしまうということは、自分は同じような利益を生み出すための新しいお客を獲得しなければいけない立場に立つということを意味するわけで、営業が苦手なボクとしては、そういうところから逃れたいという思いもあったに違いない。

でも、当時、本来ボクがやらなければならなかったのは、そのお客の仕事を自分以外のメンバーもが対応できるようにしていき、自分がまた新しい仕事、お客さんを獲得していく、会社の環境や働き方を変えていく、そういうところだったのだと思う。

当時の東京事務所ではボクはリーダーだったし、職位もかなり高かった。職位が高い人間は、職位が高いからこそ出来る仕事、職位が高いからこそやらなければいけない仕事に時間を注ぎ込まなければいけない。

そのボクが、特定のクライアントの案件で時間をとられているというのは、会社全体で見てみたら全然好ましくない。確かに、そのクライアントで粗利は稼げているかもしれないけど、結局、ボクのキャパやそのクライアントのキャパで制限がかかってしまう。

結局、そのクライアントへの依存度が高くなり、会社としてのリスクが大きくなる。

ややこしい、難しいお客さんに生殺与奪権を握られている状態からいかに脱却していくのか、どうやって安定した売上や利益を得ていくための仕組みをつくっていくのか、そんなことを考えたり、そこを形にしていける人ってのは、ある程度の権限が必要だし、リーダーシップが必要だ。

現場の1担当者がそんなことできるかというと、なかなか難しい。そういう難しい領域、より会社的な視点や俯瞰的な視点にたった最適化に自身の能力や時間を注ぎ込むこと

これが結果的には、辛く厳しいクライアントの仕事に振り回され、逃れることができなくなっているよな状況を打開していくことになり、スタッフに良い職場や仕事を提供することができるようになる。

今、同じような話を現場のリーダーやマネジャーしてたりしていて、ふと、自分もそうだったということに気づいたのだ。

リーダーやマネジャーにも役割やら権限やら色々あるんだろけど、忘れてはならないことは、1案件や1つのクライアントの売上やら利益やらということに固執しすぎないで、もっと俯瞰的な視点でより大きなスループットを達成するにはどうすべきか、もっと大きい成果のためにどんな環境や状況を作っていくべきなのかというところに視点を持たなければならないということだ。

これは自戒の意味も込めてしっかりと胸に刻み込んでおこう。

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ヨセミテの第1期決算情報

みんなの闘病サイトOnlifeを運営する株式会社ヨセミテ
会社サイトに第1期の決算情報(2008年1月4日~2008年12月31日)が掲載されていた。

上場してなくても決算を開示するところは少なくなくなってきてはいるけど、やはりこれは勇気がいる。創業期ということもあるだろうし、サービスの立ち上げがメインだったので、大きい赤字が出ている。かといって流動資産が潤沢というわけでもない。

今年はどこかで増資か借り入れ必要になるだろうか。それとも何かサービス面での秘策があるのだろうか?

販管費が月180万円ぐらいだろうか。創業期ということで、最初に多少はかかってるだろうから、実際の今の固定費はもう少し小さいだろうか。
Onlifeなどの広告収入を柱にするとして、月固定費ぐらいの広告収入を目標とするとどれぐらいのPVが必要だろう。ジャンルがジャンルだけに、通常の広いターゲットにリーチするようなメディアよりは1PVの価値は高いだろうけれど。(病院に配布されているフリーペーパーの広告がずっと満稿状態って話を聞いたことがある。何かしら身体に問題を抱えている人は、不謹慎だが広告主から見たときに絶好のターゲットに映ったりするんだろうか)
しかし、とはゆえやはり広告費だけでこの固定費をまかなっていくのはけっこう大変なんじゃないかという気がする。すると、何かしらコンテンツ提供や連携、OEMみたいなある程度大きい月額費用を見込めるようなサービスを考えるのだろうか。

どのような舵取りをするのかすごく愉しみだ。この決算からもうすぐ6ヶ月。半期が終わろうとしている。今のところはあまり動きは見えないけれど。

ちなみに、ヨセミテさんは、楽天を退社して4Travelを設立して、1から日本最大の旅行クチコミサイトを育てあげた津田全泰さんが代表をつとめる会社。たぶん、津田さん本人は覚えてらっしゃらないと思うけれど、一度名刺交換をさせて頂いた。びっくりするぐらい感じの良い人で、人の良さが滲み出ていた。

ヨセミテが考えていることや、社会企業家みたいな考え方をボクはまだまだ完全には理解できてない。けれど、やろうとしてることはすごく意義のあることだと思う。ぜひぜひ頑張って社会を変えていって欲しいなと思う。

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