効率とかだけではわからない

効率


会社の運営やビジネス展開の中での判断や決断に際して、効率化とか効率的かどうか、という視点から考えるということはすごく重要だということはわかる。
非効率は悪であり、非効率な部分を解消し、効率を良くしていくことが、ビジネスをうまく回していくためには欠かせない。

確かにそうかもしれない。

しかし、効率だけで判断し、非効率な部分を取り除いていけば、それが効率化につながるかというと、必ずしもそうではないのではないか。効率を優先したら、結果、それが非効率に繫がるってこともたくさんある。

話は変わるが、サントリーには、様々なな事業部門があるが、実は、ビールの部門は2008年に黒字化するまで45年間赤字部門だったらしい。

サントリーは非上場企業だ。もちろん上場しようと思えばいつでも出来るわけだけれど、あえて上場してないのは、色々な理由がある。その中の1つが、この「ビール部門の赤字」だという話を聞いたことがある。つまり、上場してしまうと、市場や株主は会社に効率化を強く求めてくるようになる。そうなると、真っ先に「ビール部門」を辞めてしまえ、売却してしまえ、というような声が上がってくるに違いないということだ。

仮に、「ビール部門」が大きな赤字を出して、他の部門の黒字で、その赤字をカバーしているとする。その結果だけ見たら、赤字の「ビール部門」を辞めてしまえば、もっと利益は増えるだろ。そう考えるのは無理もないかもしれない。
しかし、サントリーにとっては、赤字だからといって「ビール部門」を辞めるというわけにはいかない。酒造会社にとって、「ビール」というのは、非常に大きな意味を持っているもので、ビール製造を辞めてしまえば、それは酒造事業全体に影響があるとサントリーは考えていた。だから、ビールは辞めなかった。サントリーにとって、ビールを辞めることは、事業全体の効果を貶めることに繋がると認識していたわけだ。

でも、この効果とかを数値で実証するのはかなり難しいことだ。もちろん、ビール事業の赤字自体を直接的に見えなくするような部門割とか会計上の集計テクニックみたいなものはあるし、そういうものを使えばなんとかなるということかもしれない。けど、その説明や実証にかけるパワーや労力こそ無駄だろう。

コンビニエンスストア各社、各店も、その店の多くは23時以降の深夜~早朝時間は赤字だと言う。しかし、その時間帯の営業を止めてしまうと、今度は日中の売上も減る。これは、確かどこかのコンビニエンスストアが実験して、そういう結果が出たとかなんとか。
利用するのが日中だけの人でも、深夜営業を止めてしまうことで、そのコンビニの利用を避けてしまったり、店がしまってるのを見てしまった利用者は、日中でも別のコンニビを利用する傾向が強まったり、このへんは人間の心理の微妙なところなんだろうと思う。深夜営業の「無駄」が、実は事業やサービス全体の効果を高めることにつながっているということだ。

効率だけで判断する方法というのであれば、その決定には経営者は必要ない。
優秀な経理がいれば、色々な確度から、数値だけ検証して、数字の悪いところをなくしてしまう、と決めればいいだけだ。

しかし、サントリーやコンビニの事例みたいに、数値上は非効率に見えてるところでも、事業全体として意味がある、というものは絶対にある。効率だけを意思決定基準にしてしまえば、こういうところはすり抜けてしまう。

でも、こういうものに理由や数値的裏付けやらというものを用意していくというのは、大変な手間や労力がかかるものだ。
それはもう直感とか、信念とかそういう世界に近いところに属するものだからだ。いくら数値を積み重ねても、わからない人にはわからないし、気に食わない人には気に食わない。そういうものだと思う。そういうものに対して、それが是だと、信念を持って言い切れるかどうか。

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