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「スマート・プライシング 利益を生み出す新価格戦略」

4023309524 「スマート・プライシング 利益を生み出す新価格戦略 」 企業にとってプライシングは極めて重要なマーケティング要素の1つだ。だからプライシングに関して分析した本や、プライシングの理論書などは数多く出ている。(例えば、PSM:感情価格決定法ってただの受容価格帯調査じゃ… – papativa.jp)

本書は、プライシングの理論や手法を取り上げたものではない。本書で紹介されるのは、ここ最近に登場してきた新たなプライシング方法だ。その新しいプライシングを採用する業界や企業の紹介とともに、そのプライシング手法のメリット、そのプライシングがもたらすメリットや効果、そのプライシングモデルを採用する上での課題などをわかりやすくまとめている。
紹介されているプライシングのモデルのほぼすべては、すでに世の中に登場しているものなので、ほとんどの人は知っているものに違いない。しかし、その知っていたその手法が、意外な業界や企業に利用されたり、応用されていて意外な発見がある。

顧客自らにサービスや商品の価格を決める権利を与える「ペイ・アズ・ユー・ウィッシュ方式」が、カフェやレストランなどにも利用されて持続可能なビジネスを築いてるという事例。そういえば日本でもどこかの劇場が若手の漫才師の舞台で同じような方式をとっていたと記憶してるけど、あれは今も継続してるのだろうか?
中国企業がカラーテレビや電子レンジ業界で仕掛けた大胆な低価格競争が、単に「マーケティングの無知」からではなく、自社の資産や市場、そしてその価格の妥当性まで含めて、しっかりした見通しのもとに仕掛けられた戦略だったという事実。
アメリカの大手衣料品小売企業シムズでは、すべての婦人服の値札に「その商品の全米小売価格」「シムズ価格(初めて売り場に置かれた日につけられた価格)」、「そして以後10日間隔で付け替えられる3つの価格(いずれも前の価格より安くなる)」の情報が記載されている。あらかじめ明示された日に自動的に値段が下がり、それを顧客は正確に知ることができる。常識的に考えると、このような価格方式が採用されれば、価格が下がるまでの買い控えが発生するのではないかと考えてしまいそうだが、これがうまく機能してしまう仕組みや、適応しやすい商品・業界などの分析。このモデルもかなりユニークなモデルだ。リバースオークションモデルなどは、まだまだ他にも応用できそうだ。
各章で1つのユニークな価格モデル、価格戦略を取り上げ、それらを多面的に分析していて面白いし、色々な発見がある本だ。気軽に読めるので、興味ある人はぜひ手に取って欲しい。

個人的に非常に面白かったのは「サブスクライブ・アンド・セーブ─マーケティング収益性を高める価格設定」と「成果に基づく価格設定」のところだ。備忘録として内容をまとめておく。

■サブスクライブ・アンド・セーブ─マーケティング収益性を高める価格設定
この章で扱う本題は、サブスクリプション型モデルを全体収益の最適化に活用する視点や、ディズニーやマクドナルド社などがすでに飽和しているのではないかと思われる市場でいかにして売上・収益の拡大を行ったのか、そのためにどのような視点から彼らが事業開発、マーケティングに取り組んだのか、というよなところが語られるのだが、個人的には、章の冒頭で示される、私たちが毒されがちなある「見方」に、はっとさせられるところがあった。

データマイニングや分析などの世界では当たり前すぎることだし、経営者やショップのオーナーなども直感的には理解している人も多いことだけれども、ここ近年、色々な数値やデータが精緻に取る事ができるようになったからこそ、逆に、ついつい陥ってしまいがちなことなのではないかと思う。

仮に、私たちが青果と精肉の二つの商品しか置いてない食料品店のオーナーだった場合。

青果については二つの取引しか発生せず、最初の取引からは25ドルの粗利が、二つ目の取引からは5ドルの粗利益が得られるとする。青果は合計30ドルの粗利益を生み出すわけだ。精肉についても二つの取引しか発生せず、最初の取引からは35ドル、2つ目の取引からも35ドルの粗利益が得られるとする。精肉からは合計70ドルの粗利益が得られるわけだ。その場合、われわれがその店から得る粗利益は、下図のに示すように合計100ドルにある。

利益貢献額1:商品別
このようなカテゴリー別での集計はよく見るし、企業内でもよく使われるだろう。このような集計を行えば、

われわれの関心は個々の商品カテゴリーに集中する。特定のカテゴリーのすべての取引の利益を合計するという行為は、商品中心のビジネス観、すなわち商品は基本的にそれぞれ個別の利益センターであるという見方を強化するのである。

そう、上記の図だけで判断しようとすると、わたしたちは、「それぞれの取引からの粗利額が増大するように商品カテゴリーの変動費を低下させようとするだろう。そして、広告予算が限られていてひとつの商品しか宣伝できないとしたら、われわれは間違いなく精肉を宣伝することを選ぶだろう。」さて、これの何がいけないのだろうか? 著者は、次のように言う。

この見方は異なる商品間の関連を見落としてる。オーナーの視点からの最も重要な要素─利益が出るように商品を販売すること─に関心を集中しすぎると、消費者についての重要な真実が見えなくなることがあるのだ。
(略)
さらに重要な点として、このような商品中心の収益性のとらえ方をすると、顧客の動機が見えなくなる。

さて、角度を変えて、顧客中心の見方をしてみると、また別のパターンが見えてくるかもしれない。

どちらの商品カテゴリーでも、最初の取引を行ったのは、新鮮な青果に魅力を感じてわれわれの店を利用している青果重視の顧客であることが明らかになるかもしれない。
われわれの店が新鮮な青果を置くのをやめたら、その顧客は別の店で買うようになるだろう。だが、青果目当てで来店しても、その顧客はいったん店に入ったら精肉も購入して、35ドルというあのすてきな利益を生み出してくれる。したがって、この顧客は合計60ドルの利益貢献をしているのであり、われわれは下図でこれを顧客収益性と呼んでいる。同様に、どちらの商品カテゴリーでも、二つ目の取引を行ったのは、われわれの店の精肉を気に入ってる青果にはさほど魅力を感じていない精肉重視の顧客かもしれない。この顧客の利益貢献額は合計40ドルだ。視点を変えることで、青果重視の顧客は精肉重視の顧客より20ドル多い60ドルの利益貢献を行っていることが容易に見て取れるわけだ。
 店にとっての総粗利はやはり100ドルで、数字は何も変わってないことに注目してほしい。変わったのはわれわれが数字をどのように見るかという、その見方だけだ。特定の商品について、すべての顧客、もしくはすべての取引がの額を縦に集計するのではなく、特定の顧客について、すべての商品の額を横に集計しているのである。

利益貢献額2:顧客別収益
合計の数値は何も変わっていないにもかかわらず、見方を変えただけ、視点を変えただけで、今後私たちがこのお店のマーケティングやプロモーションで行っていくことの中身は全く違うものになる。「顧客収益性」視点から見た場合、私たちはこのお店を「新鮮な野菜や果物の店として宣伝」する方が得策かもしれない。あるいは、青果に赤字覚悟の価格をつけて、青果重視の顧客をもっと集めるという策を取るかもしれない。商品ごとの利益を重視していたときに陥っていた最も利益をもらたらす商品だけを宣伝する、とは180度違う施策を取ることになる。

小売企業のビジネスは、会計上の収益性や商品単位での単純な収益性という観点ではなく、このような「マーケティング収益性」というレンズを通して眺めて見ることは極めて重要だ。これはもちろん、オンライン店舗・ECサイトの分析やマーケティング戦略においても応用できる。アマゾンなどの先進的な企業が行う各種のマーケティングは、個々の商品やカテゴリーでの収益性の最大化ではなく、全体最適が目論まれていることは言うまでもないだろう。

■成果に基づく価格設定
この章は、タイトル通り、成果報酬型、成功報酬型の価格モデルが色々な業態に広がってるということを取り上げている。
会社でもいくつかのプロジェクトで成果報酬型のモデルへの取り組みは初めているが、成果報酬と一言で言っても、そこには様々なモデルがある。
たとえば、ジョンソン&ジョンソンは、2007年に新しい抗がん剤をこの方式で販売し始めた。J&Jは、このベルケイドという名の抗がん剤を四クール投与した後、癌がつくり出す異常タンパク質が25%減少していなかった患者については、代金を全額返金する、という条件を設定した。
ファイザーも「フロリダ州と、同州のメディケイド・プログラムが代金を負担する自社の特定医薬品について、その医薬品が同州の負担する医療費を削減しなかったと独立監査法人が判定した場合には、代金の一部を返却するという契約を結んだ」。
ハネウェル社は、自社のビル空調システムの料金を、そのビルのエネルギー・コスト削減額と連動させている。
アメリカの一流コンサルティング会社218社に対する調査で、成果ベースで料金が設定されている契約は5%に満たなかったことが判明した─この方式は急速に拡大していることが明らかになった。
人身被害専門の弁護士はずいぶん前から、時間たり報酬ではなく、和解金の30〜40%を受け取っている。
不動産仲介業者は自分が売った物件の売却価格の6~7%の手数料を受け取る。
ヘッジファンドのマネージャーは、預り資産の2%と運用益の20%を受け取っていた。

「成果に応じて支払う」方式を成功させるためには、まずなによりも「結果証明が可能である」ということがあげられる。成果が測定可能であり、証明可能でなければならない。つまり利得を量で表せるということ。
そして、これも重要なことだが、「クライアントの総合的な成功ではなく、特定の目的に焦点を当てた取引である」ということ。これはボクも深く考えていなかったけれども、確かにその通りだ。自身のコントロールが及ぶ範囲を明確にしておくことはリスク回避にもなる。例えば、ドットコムバブル時代に、弁護士やコンサルタントが、報酬を株式で受け取っていたことがあるが、これなんかは会社全体の成功と報酬を連動させてしまっているので、失敗した場合には極めて大きい代償を支払うことになりかえない。

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「ザ・プロフィット」で紹介されてる23の利益モデルのまとめ

4478374228 久々に、「ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか 」を読み返してみた。
この本は、ビジネスの仕組みやモデルを、どこから利益が生まれるかというポイントからモデル化して整理している本だ。最初読んだ時は、中途半端な物語形式に嫌気が刺したが、何度か読み返すたびに、「利益」というところに着目して、ビジネスを見てみるということが、物凄い発見だということがよくわかるようになった。

本の中では23の利益モデルが示されている。中には、それが「モデルなの?」ってツッコミ入れたくなるようなものもいくつか含まれていたり、このモデルとこのモデルのどこが違うのか、よーわかん、みたいなものもあるが、ひとまず簡単にポイントだけそれぞれのモデルについてまとめておこうと思う。世の中のビジネスは、それぞれどれか1つのモデルに当てはまるというよりは、複数のモデルの組み合わせによって成立しているもののほうが多いかもしれないけれど、儲かってるビジネスには、儲かるためのモデルがきちんと組み込まれているのだと思う。

自社のビジネスや仕事にあてはめて、これらのモデルがどこかに応用できるところがないのか、見落としてしまっているところはないのかを、点検してみるだけでも無駄ではないように思える。

今回のエントリーは、とにかく自分がいつでも後から参照できるようにと考えて、ただ23のモデルの要点をまとめただけになっている。本来、重要なのはこれらのモデルから、自身のビジネスにどのように適応できるかを考えることだろう。今回は、とにかくただ俯瞰できるチャート的なものを自分用に用意したかったということが主目的なので、特にここで何か検証したり、考えたりということはしてない。

(1) 顧客ソリューション利益モデル
ファクトセット社→資産運用者に金融情報を提供するというビジネスモデル
潜在顧客と見込んだ会社に2~3人チームを送り込み、その会社のあらゆることを調べる。
こうした情報に基づいて、顧客の特色や経済状況にあわせて、カスタマイズした情報製品やサービスを開発する。そして、契約に至った場合には、さらに時間をかけて自社製品を顧客のシステムに統合していく。この段階までのファクトセットの売上は微々たるもので、経費ばかりがかかり、莫大な赤字が出る。しかし、時間が立つにつれて利益が伸びていく。

3~4ヶ月でファクトセット社の製品は顧客の日常業務に溶けこんでいく。この段階では、フルタイムで人を投入する必要はなくなり、それこそパートタイマー1人でもサービスが維持できる状態となる。毎月のコストは1万ドルから8000ドルに減る一方で、売上は3000、5000、1.2万ドルと増えていく。

この利益モデルのポイントは、時間とエネルギーを注いで顧客に固有の情報をすべて知りつくすこと。そして、その知識を顧客固有のソリューションの開発に活かすこと。短期の損失には目を瞑り、長期の利益を実現する、というところだ。

(2) 製品ピラミッド利益モデル
マテル社→バービー人形。
製品でピラミッドを築く。ピラミッドの一番下には、他社が簡単には真似したり、参入したりしにくいような低価格の製品が位置づけられる。この一番下の製品がファイアーウォールとなり、他社の追随を防ぎながら、稼ぎどころは、ピラミッドの上の段に位置づけられる高価格帯製品となる。
バービー人形は、20ドル、30ドルで売られている。これがファイアーウォール。しかし、バービー人形はここで儲けてるわけではなく、その上の100ドル、200ドルする市場で稼いでいる。100ドル、200ドルする人形を買うのは大人だ。自分も幼い時に20ドル、30ドルのバービー人形で遊んだ思い出がある。大人になり自由になるお金を得て、コレクターズアイテムとなるようなラグジュアリー的なバービー人形を買ってくれるというわけ。

(3) マルチコンポーネント利益モデル
コカコーラ社。1つの製品を様々なコンポーネントで販売して利益を生み出すモデル。
コカコーラという製品は、1つだが、食料品店、レストラン、自動販売機、というように複数のコンポーネントを持っている。利益の大半はレストランと自販機からもたらされている。顧客は購買機会に応じて異なる購買行動を示す。つまり、非常に幅のある価格感応性を示すので、同じ製品でも購買機会に応じて利益を上げられるところが変わる。

マルチコンポーネント利益モデルを「本屋」に適応させた場合。
「本を売る」というモデルでも、店頭売り、という基本のモデル以外に、個人向け直販、企業向け販売(企業の図書室や人材開発部向けとか)、読書サークル向け販売、というように、複数のコンポーネントで展開が可能となる。これもマルチコンポーネント利益モデルの考え方だ。

(4) スイッチボード利益モデル
マイケル・オーヴィッツ→ハリウッド映画の世界にテレビの世界では当たり前だった一括売り込みを持ち込む。タレントエージェントが、脚本家、主演俳優、ディレクター、助演陣を一括した完全なパッケージを制作会社に売り込むモデル。
パッケージにするためには、その世界において最も重要な要素、コアを抑えなければならない。
この場合は、優れた脚本の調達だ。優れた脚本の供給源を抑えることで、タレントへの影響力が強まる。タレントを組織できることで映画制作会社への交渉力が強まる。
さらに、もう1つのポイントがある。それは「量」だ。どれだけタレントを抑えられていたとしても、それが数人なら、映画制作会社にはいくらでも他の選択肢がある。ある一定の割合のタレントを抑える、つまりクリティカル・マスを超えた時点から、一気にあらゆるものへの支配力、影響力が強まっていく。臨界点を超えて支配力が高まれば高まるほど、それがあらゆる要素に波及して、さらに影響力た高まるという好循環が生まれていく。

(5) 時間利益モデル
インテル→新しい半導体を開発し、真っ先に市場に送り出すことで利益を生み出す。
魅力的な商品を真っ先に市場に市場に投入、そのコピー品が出回ったり、二番煎じ、三番線じが出回る前に荒稼ぎをするというモデルだ。下に出てくる「新製品利益モデル」と似ている。

(6) ブロックバスター利益モデル
とにかく大ヒット、ホームランをかっ飛ばすモデル。それってモデルなのかなとふと思ったが、言ってみれば、製薬会社なんかがこの利益モデルに当てはまるのだろう。
1つホームランがでれば、とてつもない利益が生み出されるので、ホームランを狙うために、研究開発に投資し、研究開発の確率が少しでも上がるように、様々な施策を講じる。
ホームランの確率を上げるためのマネジメントというのが、このモデルの最大のポイントだ。
研究開発競争でのリスクも大きいので、例えば、リード・プロジェクトには少なくとも1つ~2つのバックアップ用の製品の研究もあわせておかなければならないなどのルールを作ることや、それによって、リード製品が失敗しても、次の製品に教訓を活かせるようにするとか、複数に張ったどこかでホームランが生まれるように持っていくなど。

(7) 利益増殖モデル
1つの技術や権利で、何倍もの利益を生み出すモデル。
例えば、ディズニーのキャラクター。ホンダのエンジン開発の技術、などがそれに当たる。
マルチコンポーネント利益モデルとの違いは、利益増殖モデルは、同一のオリジナル資産から派生した異なる製品によって利益を生み出すというところだ。
初期の開発コストはかかるが、その開発されたものを様々なところで利用していくことで、結果的に原価が下がり、莫大な利益を生み出す。
最近の「映画」はこのモデルと、ブロックバスター利益モデルの組み合わせみたいなものではないだろうか。大ヒット映画を狙うというのは、当然のこと、単に映画の興業収入だけではなく、DVD化、キャラクターグッズ、音楽、テレビ放送権などなど、1つの素材をいろんなところに展開していってトータルとして利益を上げようというモデルだ。

(8) 起業家利益モデル
これが利益モデルなのかどうかというのは、正直疑問だ。
社員1人1人に起業家精神を持たせることが、このモデルの肝なのだが、モデルというよりマインドの問題だ。要は、マインドというものも、モデルとかと同じように、利益構造に大きく影響を与えるのだ、ということをい言っているのだと思う。確かにそうだ。

(9) スペシャリスト利益モデル
EDS(エレクトロニック・データ・システム社)→システムインテグレーション分野を角立した企業。
ヘルスケア、銀行、製造業といった事業分野を選び、それぞれについて、自社のサービス提供コストだけでなく、顧客のビジネスポロセスやコストを隅々まで調べ、個々の詳細な数値を掴む。特定の業界や分野に特化し、その分野について深く深く入り込み、知識をつけることで、オペレーションコストの削減や、競合他社に対して優位な値付けなどが可能となる。
スペシャリスト化した企業は、提供する商品やサービスのメニューを細かく作れることで、より適切で有利な価格設定を行うことができるようになる。
このモデルと、下に出てくる「経験曲線利益モデル」「専門品利益モデル」が組み合わさると、より大きな利益ゾーンを創出できるのではないだろうか。

(10) インストール・ベース利益モデル
これはわかりやすい。有名なところでは、かみそり。あとコピー機、浄水器とフィルターとか、よく見ていくとこういうモデルを採用してるところは多い。
最初にインストールされた製品によって、その後、その製品を利用していくために必要な消耗品などによって稼ぐというモデル。
最初の製品の売買時には、買い手に選択権があるが、その製品を購入した後では、売り手が主導権を握ることになる。つまり、エプソンのプリンターを購入したら、エプソンのインクを買い続けなければいけない、というようなことだ。
ボクは、個人的にこのモデルがすごく好きだ。なんか非常に仕組みとして考えられているモデルだと個人的には思っている。肉を切らせて骨を立つというか、ビジネスの組み立てとしてすごく優れたアイディアだと思う。

(11) ディファクト・スタンダード利益モデル
このモデルの典型がマイクロソフト。誰もがディファクト・スタンダードになりたいと思っている。
何かのディファクト・スタンダードになれば、それを基点としてあらゆるところに収益のストリームを作ることができる。マイクロソフトなら、OSのアップデートはもちろんだが、周辺ソフト、周辺機器、それらを作るためのライセンスやらなんやらかんやら。OSというコアのディファクトになることで莫大な利益がもたらされる。
このモデルの肝は、一度ディファクトができてしまうと、マーケティングコストが極めて安くつくというところだ。ボクらも、創業当時、全員マックを使っていたが、お客さんの大部分がWindowsという状況で、最初、仕方なしにWindowsも使うようにしていったという過去がある。マイクロソフトが販促やマーケティングコストをかけなくても、それを使わざるを得ないような環境や圧力が自然と生まれるわけだ。

(12) ブランド利益モデル
ブランドによって価格プレミアが付けられる。
例えば、トヨタとGMの合弁会社NUMMIは、同じ工場、同じ労働者、同じプロセスで2つの名前を持っていた。トヨタのネームプレートを付けた乗用車はGMのものより一台あたり300ドル高い値段で売れる。(NUMMIは、もうなくなってしまったけど)
ブランドを作ることで、そのブランドネームが付加価値になる、競争優位になる。
ブランド構築のために、長い年月をあけて莫大なマーケティングコストを投下する必要があることは言うまでもないが、そうやって気づいたブランドをうまく活用すれば、様々な利益モデルが組み立てられる。
最近だと、「バンテリン」が、そのブランドを色々な製品に拡張したりしてる。
肩こりや、痛みに利く、ってところのブランドイメージから、内服液にもこのブランドを付けることで、より疲労や筋肉痛などに利くというイメージを持ってもらい、それが内服液自体の差別化になるというような感じだ。

(13) 専門品利益モデル
専門的な新製品(ユニークなニッチ製品)のバリエーションを増やす。ニッチ製品ということで汎用品よりも高い価格プレミアムを得ることができる。
ニッチとはゆえ、時間が経過すれば特許権が喪失したり、儲かるとわかれば競合参入も増えてくる。なので、このモデルも時間利益モデルと同じく、いかに、次のニッチ製品を産み出していけるかというR&D領域のマネジメントが重要だ。

(14) ローカル・リーダーシップ利益モデル
単純にある特定のローカルで圧倒的なシェアをとってしまうというモデル。
スターバックスやウォルマートがそれにあたる。一定の地域に集中して店を出して、その地域の同業他社を駆逐する。特定地域に集中することで配送コストやマネジメントコストも軽減され、また販促や宣伝費用も抑えることができる。集中出店のあと、同業他社が駆逐されれば、店の数を減らしたりというような調整をしたりすることもある。

これは「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books) 」(ストーリーとしての競争戦略 – papativa.jp)にも事例として取り上げられていた。
なぜ、スターバックスは特定のエリアに集中して店を出すのか。そんなに近くに店を出して店同士でバッティングしてしまわないのか。店舗を増やすのになぜ、フランチャイズシステムを採用しないのか。など、スターバックスの戦略の裏にどのような一貫したストーリーが流れているかを明らかにしたもので、かなり興味深いものだった。

(15) 取引規模利益モデル
取引規模が大きくなればなるほど1件当たりの売上の上昇が1件あたりのコストの上昇より急勾配になる。広告会社などは大きい取引の仕事を獲得できればできるほど、大きい利益を生み出すことができる。
このモデルのポイントは、リスク負担だ。大口顧客に集中するあまり、小規模取引も取りこぼして、且つ大口顧客も獲得できないということもある。そのリスクを取ってでも、大きい取引の獲得に集中できるかどうか。
そして、このモデルでは何よりも大口顧客との関係作りが最も重要な要素となる。取引の開始前に当たっても、あるいは取引開始後も、いかに取引先との関係を密に保てるか。
面白いのは、「オープン・ドア・シンドロームの克服」も重要であると指摘しているところだ。
つまり、大きい取引を獲得するために、リスク負担や、忍耐、関係づくりといったことをやってきて、ようやく念願かなって何か大きな取引のチャンスが扉が開いた時に、その扉をくぐらない、というようなことが起きる。それが「オープン・ドア・シンドローム」だ。

確かに、大きい取引の仕事は、喉から手が出るほど欲しいだろう。しかし、取引を開始したらしたで、それを自社できちんと処理していけるのか、対応していけるのか不安に苛まれ、取引を辞退してしまうということだってあるだろう。しかし、このモデルの肝は大きい取引の仕事をするということで、そのために様々な取り組みがあるわけなので、チャンスが開けば、そこには勇敢に乗っかっていくということも、必要不可欠なことなのだ。

(16)価値連鎖ポジション利益モデル
バリューチェーンにおけるもっとも重要なポイントをコントロールすることで大きな利益が生み出されれる。実は、多くの業界で利益は、バリューチェーンの中の限られたポイントに集中すると言われてる。
マイクロソフトとインテル陣営は、パソコンビジネスの中でのコントロールポイントを押さえているからこそ、ほとんど利益がでないこの業界で莫大な利益を生み出している。スイッチボード利益モデルで上がったハリウッド映画においけるオーヴィッツも同じくだ。

(17)景気循環利益モデル
このモデルを図なしで説明するのは難しい。言葉だけで捉えると、景気の上下の波をどう利用するかというようなモデルに思えるかもしれないが、ニュアンスは少し違う。
景気循環利益モデルで成功している代表企業はトヨタだ。他社よりも安いコスト、固定費を実現することで利益を生み出す。他社よりほんの少しでも原価が安い、固定費が低いということによって、莫大な利益を生み出すことができるというモデルだ。

(18)販売後利益モデル
価格が高く、価格の幅が大きく、そして選択肢が多い場合に価格感応性が高くなる。
逆に、価格が安く、価格の幅が小さく、そして選択肢が少ない場合に価格感応性は低くなる。
販売後利益モデルが大きな利益を生む理由はここにある。
コンピューターや乗用車、コピー機、工業機器などの製品の売買取引では、買い手の価格感応性が最も高いゾーンで行われている。買い手は少しでも安い価格で製品を手に入れようと考えている。
ところが、最初の取引が成立すると、それまで存在しなかったフォローアップ製品の重要が生じる。
これらの製品の価格感応性は低い。
モデルとしては「インストール・ベース利益モデル」と似てて、あまり区別が付かない。
ただし、インストール・ベース利益モデルでは、製品メーカーが利益を得るのに対して、販売後利益モデルでは、製品メーカーに限らない。ある製品のフォローアップ製品として、新たなミニマーケットが誕生し、そこに利益を生み出せるビジネスが出てくるというところだ。

(19)新製品利益モデル
「市場がゴールドラッシュを迎えたとき、底のほうで利益の爆発が起きる。利益率は高く、販売量は急増する。二つを掛けあわせれば利益の大海原が広がる」
時間利益モデル、専門品利益モデルと混同されやすいモデルとして、以下のような違いの説明がなされている。

▼時間利益モデル
サイクル:24ヶ月/必要な能力:スピード/たとえ:レースカーの運転
モットー:バックミラーに後続車が写ったらアクセルを踏め
例)半導体、家電、金融商品

▼新製品利益モデル
サイクル:60ヶ月/必要な能力:資源のシフト/たとえ:サーフィン
モットー:最後の波から真っ先に降り、次の波を真っ先につかまえろ
例)自動車、コピー機

▼専門品利益モデル
サイクル:120ヶ月/必要な能力:選択/たとえ:地震観測
モットー:最も豊かな油田を見つけろ─顧客のニーズと技術的な実現可能性があり、過当競争がない場所
例)特殊科学製品、医薬品

(20)相対的市場シェア利益モデル
GM、IBM、GEなど。
相対的な市場シェアが高い企業は、
・製造における規模の経済性が働き、コスト競争力を持てる
・購買における優位性を得ることができ、安い価格で材料等を購入できる
・マーケティング、宣伝活動でも大量に資源を投入でき、製品1個あたりのコストは最も低くできる
・ユニット当たりの間接費や研究開発費が最も低くなる。
・優秀な人材のリクルーティングに有利である

など、相対的なシェアを最大化させることで、様々なメリットが生まれ、それが利益の創出に関係していく。
ランチェスター理論は、市場シェアでの競争戦略論だ。いかに相対的市場シェアを高くすることで、有利な戦いが行えるかということを分析している。「相対的」なので、自分たちが勝ち易い、シェアをとりやすい分野、テリトリーをどのように設定するかということが重要なポイントになる。
それは特定の製品かもしれないし、特定顧客層かもしれないし、あるいは地域かもしれない。どこかのレイヤーや領域でナンバーワンを作りだせば、それが多くのメリットを引き寄せてくれるのだ。

ローカル・リーダーシップ利益モデルは、ある意味、地域やエリアでの「相対的市場シェア利益モデル」と言えるのかもしれない。

(21)経験曲線利益モデル
経験の累積によってコストが削減されたり、スピード化されたたりで利益が生まれる。
経験曲線利益も相対的市場シェア利益も、市場で優位に立つことが目的のモデルと言える。
しかし、一般的には経験曲線利益モデルだけで、利益を生み出すというのは、今や至難だろう。経験曲線利益モデルに何かが組み合わせていく必要があるのではないかと思う。

(22)低コスト・ビジネスデザイン利益モデル
文字通りビジネスを圧倒的に低コストで運営することによって利益を創出するモデル。
経験曲線利益モデルは、学習量の総体によって結果的に低コストを実現していくようなモデルだとするならば、低コスト・ビジネスデザイン利益モデルは、その市場のビジネスモデルや業界平均みたいものを完全に時代遅れにしてしまうようにビジネスそのものの根本を変えることを意味する。
中距離航空会社のサウスウェスト航空や、直販モデルのDELLなど。後発参入するからこそ、そもそも先行する競合たちとはまったく次元の異なるモデルを構築して参入し、競合を駆逐していく。

(23)デジタル利益モデル
「デジタル」に移行することで何十倍もの生産性を実現し利益を生み出す。
もちろん、「デジタル移行」は生産性の向上だけではない、様々なメリットを生み出すだろう。これはこの業界に属する人たちなら言わずもがな。

■最後に… いとこ同士の利益モデル

●インストールベース利益、デファクト・スタンダード利益、販売後利益
●時間利益、新製品利益、専門品利益
●相対的市場シェア利益、ローカル・リーダーシップ利益
●ブロックバスター利益、取引規模利益
●マルチコンポーネント利益、利益増殖
●経験曲線利益、スペシャリスト利益

4478372667 本書の魅力は、単にモデルをチャート化したことだけではない。このまとめではきちんと触れられていないチャオとスティーブの掛け合い、チャオが各モデルでの利益のあり方を悩みながら答えていくその様に、様々な発見があり、ヒントが隠されていると思うので、ぜひ本書も手をとって頂きたい。

また、利益モデルについては、こちらの本のほうが新しいパターンが組み込まれていて幅広いものになっているが、利益モデルの構造や詳細な分析は、「プロフィット・ゾーン経営戦略―真の利益中心型ビジネスへの革新」(プロフィット・ゾーン経営戦略―真の利益中心型ビジネスへの革新 – papativa.jp)の方がオススメ。

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星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則

4822264114 星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則─本書自体で経営やマーケティングが学べて、それで十分というような本ではもちろんない。
本書は、普通に誰がも数千円ぽっちりで手にすることができるような経営書の内容を忠実に実行することで、実ビジネスで成果をもたすことができるんだ、ということ教えてくれる。その考え方にすごく勇気づけられる。自分にも同じような経営が出来るんじゃないかという希望を抱かせてくれるのだ。

紹介されている本の大部分が超メジャー、経営書やビジネス書をかじったことがある人なら一度は聞いたことはあるであろうものばかりだ。

実際、紹介されている本のほとんどはボクも読んでいて、しかもどちらかというと愛読書というか思い入れのあるものばかりだ。ポーターの「競争の戦略」なんかは「競争戦略論」とあわせて何度も読み返してるし、ペパーズ&ロジャーズの「ONE to ONEマーケティング―顧客リレーションシップ戦略」、ジャック・トラウトの「売れるもマーケ 当たるもマーケ―マーケティング22の法則」(もちろん「ブランディング22の法則」も)、A・アーカー「ブランド・エクイティ戦略―競争優位をつくりだす名前、シンボル、スローガン」あたりも一時期マーケティング関連の本を読みあさってたときにたぶん一番しっかり読んだ本だ。そしてジェームズ・C・コリンズとジェリー・I・ポラスの「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」。会社のビジョンやミッション、行動規範などを考える上で大きい影響を受けた。この本に出会ったことが会社とは何かということを真剣に考えるキッカケを与えてくれた。

どの本もボク自身にも思い入れもあるし、何度も読み返し線を引いたり、そこの一節をまるまる書き写しては社内の人たちにメールしたり。その意味では、ボクとしてはよく参照して使ってきた本だと思う。実際の経営で悩んだときも、これらの本のなかからヒントを得て、いくつかの決断を下したものも少なくはない。

でも、星野リゾートでの使い方とは全然レベルは違う。星野リゾートは、これらの本を「教科書」として扱う。だから、内容をしっかり理解するために「1行ずつ理解し、分からない部分を残さず、何度でも読む」。そして、「理論をつまみ食いしないで、100%教科書通りにやってみる」。これが大事だと言い切る。

ボク(ら)は、ついつい「教科書」の事例は海外企業のものだからとか、グローバル企業の事例だからとか、規模や業種が違うからと、何かと理由をつけて「つまみ食い」をする。導入しやすいところ、簡単にできそうなところから手を出すことが多い。しかし、それではダメだと星野さんは言う。

「3つの対策が必要だ」と書かれていたら、1つや2つではなく、3つすべてに徹底的に取り組む。そうすることによって初めて教科書の理論が効果を生む。

教科書通りにやってうまくいかなくても、教科書通りにしていて成果がでていない場合には、戦略を変える必要はない。とにかく再度、教科書を点検して、教科書通りにできていないところがないか調べ上げ、すべてやり切る。

ここまで教科書に絶対的な信頼を置くというのは、これはこれですごく難しいことだ。そのまま真似する、というのはアイデンティティや、自分たちのオリジナリティみたいなものを捨てるような気がしてしまう。ついつい「自分(達)なり」というところで色気を出してしまう。

そういれば、少し違う事例ではあるが、株式会社武蔵野の小山昇さんは、他の会社がやっててうまくいってることは、そのまま真似をすればいいんだ、というようなことをいつも言っている。下手にアレンジしたり、オリジナリティを加える必要はない。忠実に真似することを考えろと。これなんかも星野さんの考え方に近いところを感じるし、ある種、経営は、何か信じるものや一貫したものを徹底して実行していくことが最重要なんだということを教えてくれているようにも思える。

星野さんは、経営の「教科書」としての本は、著者が研究者として有名であったり、コンサルタントと大学教授を兼任しているようなものが良いと薦める。経営者の成功譚は「直感的な経営センス」の話が多いので、それらは教科書にはならない。

私が参考にする教科書の多くは、米国のビジネススクールで教える教授陣が書いたものだ。彼らは「ビジネスを科学する」という思想の下、数多くの企業を対象に手間と時間をかけて事例を調査し、そこから“法則”を見つけ出し、理論として体系化している。その内容は学問的に証明され、一定条件のもとでの正しさはお墨付きなのだ。

そう。これらの本に書かれたことは、セオリーであり、科学されたものだからこそ、それを教科書として、徹底して忠実に実践するということを信じていけるというわけだ。
そして実際に星野リゾートが手がけたホテルや旅館の改革やマーケティング戦略改革などと、その戦略の下敷きとなった「教科書」が紹介されていく。各々の「教科書」の内容と、実践の模様はそんなに深くは語られていないので、本書だけで、これらの経営・マーケティング理論をわかったようになるのは危険だろうけれど、エッセンスみたいなものは汲み取ることができる。

本書に刺激を受けて、再び、本書で紹介された「教科書」のいくつかを読み返し始めている。でも、星野さんが懸念されていたように、中途半端な「読み」と「理解」で、中途半端に導入というのは一番ダメかもしれない。導入するとするなら徹底的に。これを忘れないようにしなくては。

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いまさらだけど「グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略」

479811782Xグランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略 (Harvard Business School Press)  ─ まるまる1年ぐらい遅れて本書を手にした。恥ずかしいばかりだ。
買ったのは去年の初めの方で、ざっと目を通したのだけれど、豊富な事例については面白く感じたものの、それほど深く感じ入ることもなくほとんど放置状態だった。

ふとしたことで年明けに読み返してみたら最初読んだときとは全然違った風景が見えた。自分の今の気の持ち方や肌感覚の違いが大きいのだろう。「グランズウェル」が本当に現実のものとして、そこにあるということの確かさみたいなものを実感しているからだろうか。同じ本とは思えないぐらいに、何かある種の感動みたいなものを僕はこの本に覚えた、
なので、まだ読んでない社員も多いだろうから、あえて本書を紹介しておかないとダメだろうという使命感が沸き上がってきたというわけだ。

グランズウェルとは社会動向であり、人々がテクノロジーを使って、自分が必要としているものを企業などの伝統的組織ではなく、お互いから調達するようになっていることを指す。このような社会変革も、僕自身1年、2年前にはピンときてなかったのだけれど、今はかなり現実のものとして実感できる。

この業界に身を置いているからより一層そう感じるのは間違いないけれど、もうこの流れは止まらないと思う。今は、この業界だけの狭い一部的な動きかもしれないけれど、それはいずれ大部分を飲み込んでいくに違いない。

本書で紹介されている数々の事例を読んでいると、この社会変革が愉しみになワクワクするものに思えてくる。可能性はいくらでも広がっている。もちろん本書で取り上げれている成功事例の影には、その後ろに膨大な失敗事例が眠っているに違いない。本書の通りに試したけれど、全然うまくいかない、鳴かず飛ばずの企業のほうが多いに違いない。

しかしだ。企業にとって、今までの「消費者→認知→検討→選好→行動→愛用→顧客」へとステップを踏んで成長・育成していくようなマーケティングファネルモデルが崩壊しつつあることは間違いない。大声をあげて、ファネルの入り口に人を集め、ファネルの中に入ったら、購入段階まで進んでいくような働きかけを実施していけば、それではい、顧客の出来上がり、というような時代は終わった。

本書にもあるように、「消費者を導き、会話をリードしているのは、もはやマーケターではない」。
それらは様々なコミュニケーションサービスや、ソーシャルテクノロジー上での友人や知人の推奨、ネットのクチコミなどに取って変わられつつある。そう、「人々の耳を捉えるのは会話」なのだ。

であれば、企業は変わらなければいけない。遠くからメガフォンや拡声器を手にして、誰だかわからない人々の群れに向かって必死で叫んでても、その声は誰にも届かない。自らが人々の群れに加わり、会話に参加していかなければならないだろう。

本書は、その一歩を踏み出させるために勇気を与えてくれ、肩を押してくれるものだ。
この業界の人々と問わず、企業のマーケターや経営者で、まだこの本を手にしてない人は、是非とも読んでもらいたい。

本書内で紹介される概念として重要なのは、「ソーシャル・テクノグラフィックス・プロフィール」と、「グランズウェル戦略の5つの目的」の整理だろう。この2つのポイントに絞って本書の内容を簡単にまとめる。

「ソーシャル・テクノグラフィックス・プロフィール」は、ソーシャルサービスへの参加や関与の形態によって、そのタイプを以下の6つに分類したものだ。

創造者
月1回以上ブログを書いたり、ウェブサイトへ記事を投稿したり、YouTubeにビデオをアップしたりしている人々。

批評者
ネット上のコンテンツに反応する人。レビューやコメントを書いたりする人々。

収集者
ソーシャルブックマークでURLを保存したり、RSSフィードを使って情報収集したりしている人々。。

加入者
SNSに加入して、プロフィールを更新している人々。

観察者
他者のコンテンツを利用する人々。

不参加者
これらの活動のいずれにも参加しない人々。

ソーシャル戦略の立案の際には、自社商品の対象顧客や、自社が狙う市場や社会などで、この6つのタイプがどのような割合になっているかを調査することで、ソーシャル戦略の骨格が決まる。その対象ユーザーに「批評者」が多く、「創造者」が少ないようなら、元の素材となるコンテンツはこちらで用意し、それにユーザーがアレンジを加えたり、レビューできたりするような仕組みを盛り込むというレベルに留めたほうが良いかもしれないし、「創造者」が多いユーザー層ならば、創作意欲をかき立てるようなサービスや素材類の提供などが良いかもしれない。ソーシャル・テクノグラフィックスは、ソーシャルテクノロジーをどのように活用していくかという基準や目安を与えてくれる指標だ。

本書に掲載されている「日本」の「ソーシャル・テクノグラフィックス」は、
創造者:22%
批評者:36%
収集者:6%
加入者:22%
観察者:70%
不参加者:26%

だったが、2009年度のデータを見ると、
創造者:34%
批評者:30%
収集者:11%
加入者:26%
観察者:69%
不参加者:23%

となっていた。創造者が大きく伸びていることがわかる。
(もちろん「全体」として見ているのでは、この指標はほとんど何の役にも立たない。自社商品やサービスの利用者や競合ユーザー、対象年齢やコミュニティに属する人々などの切り口でこれらの指標を見ることが重要だ)

フランスなどは加入者が4%、不参加者が57%と、ソーシャルサービスへの参加度合いはかなり低いものとなっている。それに較べると、日本はmixiやgree、モバゲーといったSNSの存在のおかげだろうか、比較的加入者の比率が高い。

この「ソーシャル・テクノグラフィックス」だが、実は、本書が上梓された頃には大きな影響力を持っていなかったTwitterが大躍進したということもあり、最新のデータでは、「会話者(Conversationalists)」という概念が、創造者と批評者の間に加わっている。日本という限定された地域でこの新しい「会話者」というタイプがどれほどいるのかはわからないが、おそらく昨今のTwitterブームなどにより、けっこう高い割合になるのではないかと思う。
Social Technographics: Conversationalists get onto the ladder

なお、この「ソーシャル・テクノグラフィックス」のデータは、色々なデモグラフィックデータとかけ合わせてウェブで確認することができる。ただ、まだこちらのシミュレーターには「会話者」が入ってない。また、残念ながら「Japan」のデータは年齢別の切り口では提供されていない。
Consumer Profile Tool (now with 2009 data)

ソーシャル戦略の骨格には、当然ながら、何を目的としてソーシャルテクノロジーを活用するのかという目的視点が必要となる。本書では、グランズウェル戦略の5つの目的として整理している。

1.耳を傾ける(傾聴戦略)

・リサーチ、顧客理解。
・顧客インサイトをマーケティングや開発に利用したい企業に適してる。
・プライベートコミュニティを立ちあげる/スローンケタリング記念がんセンター
・ブランドモニタリングを始める。

2.話をする(会話戦略)

・自社メッセージを広げる。より双方向的な手段でメッセージを広げたいと考えている企業に適している。
・バイラルビデオを投稿する/ブレンダー(料理用ミキサー)にiPhoneを突っ込んで粉砕する動画。
・SNSやユーザー生成コンテンツサイトに参加する/世界的な会計事務所アースと&ヤング(E&Y)は、毎年3500人もの新卒大学生を採用している。大学生の期待に応えるため、同社はSNSに進出。
・ブログスフィアに参加する/HPは複数のブログを用意し、様々な部署の社員が執筆できるようにした。

・コミュニティをつくる/P&Gの少女向けコミュニティ「ビーイングガール」

3.活気づける(活性化戦略)

・熱心な顧客を見つけ、彼らの影響力(クチコミの力)を最大化する。

・熱烈なファンのいるブランドに適してる。
・格付けやレビューを導入して、顧客の情熱を活用する/eバッグス
・コミュニテイを作る、顧客を活気づける/コンスタントコンタクト社
・ファンが作ったネットコミュニティに参加し、メンバーを活気づける/レゴ社

4.支援する(支援戦略)

・顧客が助け合えるようにする。顧客がお互いに親近感をいだいているような企業に効果的。
・従来のサポート⇔グランズウェルサポート/ボランティアのサポートに支えられるデル社
・Q&Aコミュニティ/ティーボ社、ケロッグ社はヤフーにダイエット希望者のコミュニティ

5.統合する(統合戦略)

顧客をビジネスプロセスに統合する。難易度が高いので、他の4つのいずれかの戦略を達成してから選択することが望ましい。

これら5つは従来のマーケテイング目的でいくと、

傾聴→リサーチ

会話→マーケティング

活性化→セールス

支援→サポート

開発→統合

となるものだ。
ソーシャルテクノロジーの活用においては、「リサーチ」は「傾聴」であり、「マーケティング」は「会話」となる。それはB2Bであっても、B2Cだっても、ソーシャルテクノロジーにおいては「人」と「人」との関係性に帰結するということを物語っている。「リサーチ」ではなく「傾聴」戸考えること、「セールス」ではなく「活性化」と考えること。この視点は単なる言葉の違いを超えて、非常に重要な観点だ。
企業やマーケターは、ついついグランズウェルにおいても、今までのマーケティングの手法や視点を持ち込んでしまいがちだ。しかし、それでは決してうまくいかない。今までのような「群集」や「マス」でなく、生身の血の通う一人ひとりの人間が相手なのだ、ということをしっかり肝に銘じておく必要がある。そのためにはこういった言葉のレベルでもその違いをきちんと理解して共有しておく必要がある。
本書にもグランズウェル戦略を始めるには「小さく始める」ことが大事だとある。こういう意識部分から始めて見るのも良いのではないか。

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顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」

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その数学が戦略を決める」は、今日大規模なデータが簡単に集まるようになり、またその大規模なデータを解析できるコンピューター環境が整ってきたおかげで、今まで人でなければ不可能と考えられていた「決断」や「判断」や「評価」の領域にコンピューター(本書では「絶対計算」というような言葉で表現されているが)が侵食してきている様を描き出した非常に面白い本だ。「絶対計算」対「人間」では、ほとんどの場合「人間」が負けてしまうという事例を様々な分野にわたって説明している。

本書の冒頭に「ワインの値段の予測」に関する話が出てくる。
通常ワインの評価は、専門家や評論家たちが「ワインを口にふくんで吐き出す」というような方法をとる。よく見る光景だ。「今年のボルドーのワインは最高の出来」とか「今年のボジョレー・ヌーボーは10年に1度の出来だ」みたいなことを囁くのは、そういった専門家たちが、実際にテイスティングして判断している。
ここにオーリーという人物が登場する。彼は数字を分析してボルドーワインの品質を評価した。ワインの古典的な感覚的な評価方法ではなく、ある生産年の特徴がワイン競売価格の高低にどう影響するかの相関性を統計的に分析した。
彼が導き出したワインの価格を決定づける方程式は極めて単純な前提から説明できた。それは、
収穫時期に雨が少なく、夏の平均気温が高かった年に最高のワインができる。」というものだ。そして、この前提は次のような式で表現できると導き出した。
ワインの質=12.145+0.0017×冬の降雨+0.0614×育成期平均気温-0.00386×収穫期降雨
ワインの批評家や専門家はこのような単純な式で、ワインの評価ができることを鼻から信じずバカにした。けれど、オーリーはこの式で収穫前のワインの値段や評価を予測し、見事にそれらを的中し続けた。

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似たような話は、「マネー・ボール」( papativa.jp – マネーボール)という本の中にも出てきた。
この本は、アメリカ大リーグの弱小チームだったアスレチックスが常勝チームに変わっていくまでの過程を描いたものだが、いわゆるありがちなお涙頂戴的な熱血青春要素はほとんどない。アスレチックスが常勝チームに変わることができたのは、球団のGMであったビリー・ビーンが生み出した方程式「得点数=(安打数×四球数)×塁打数÷(打数+四球数)」にあった。
これはチームの得点力を求める方程式だ。自身のブログにも書いたとおり、「この公式を使うとメジャーチームのほとんどの得点が正確に予測できてしまう」のだ。そして、重要なのは、「この公式にはチーム打率や盗塁数などが入ってない。つまり、打率や盗塁数は得点を生み出すことにたいして重要ではない」ということ。
この方程式の理論に則って考えると、例えば、足の速い盗塁ができる選手よりも、選球眼の良い四球が多い選手のほうが重要ということになる。実際、この理論に沿ってチームの改革を進めていき、アスレチックスは万年Bクラスチームから、常にAクラスで優勝を争うチームに生まれ変わったのだ。

これらの話は、非常に複雑に思えるものや、数量化や方程式化するのが難しいだろうと考えているものが、意外と単純な要素で簡単な方式で推量することができることを明らかにしている。
その意味では、この「顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」 (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS) 」という本も同じようなことを明らかにしたと言えるかもしれない。

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この本を知ったのは、最近になってようやく「グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略 (Harvard Business School Press) (ハードカバー)」を読んだからだ。買ったのは随分と前のことで、ざっとは読んだのだけど、途中で放置してた。なんだかふと思い立って手にして読んだら、うーん、なんでこれをちゃんと読んでなかったのかとすごく後悔したのだけど、まぁ、それはいいとして、本書の中に、この本が紹介されていたのだ。それもここ数年で発売されたビジネス書の中でも最も重要な本のうちの1つだと絶賛されていた。(「グランズウェル」についてはこれはこれで別途エントリーにまとめようと思う。)

「顧客ロイヤリティ」を測定するための単純な質問は、つい最近読んだ、「顧客の信頼を勝ちとる18の法則-アドボカシー・マーケティング-」(papativa.jp – 顧客の信頼を勝ちとる18の法則-アドボカシー・マーケティング)でも紹介されていて、ブログにも書いたところだった。なんとなくここには偶然の導きがあるなと感じたので読んでみたのだが、ほんとに素晴らしい本だった。少なくとも経営者は読んでおいたほうが良いだろう。

「顧客ロイヤリティ」というものも、重要であることは誰もが理解しているに違いないだろうけれど、実際、じゃぁ顧客ロイヤリティをどの測定したらいいのかということへの回答は誰も持っていなかったというのが現状ではないだろうか。さらに、顧客ロイヤリティが収益力や成長性や売上といったものと相関性を持ってることを証明することも難しいことは言うまでもないし、また、仮に、複雑なアンケートや調査を行って「顧客ロイヤリティ」を導き出すことができたとしても、それを導き出すための変数があまりにも多く複雑だと、その結果をもって顧客ロイヤリティをどのように育成していけばいいのか、獲得していけばいいのかというフィードバックがそもそも出来ないという問題もあったわけだ。
そこで本書の考え方が登場する。タイトル通りこの質問はまさに「究極の質問」だ。長年、顧客ロイヤリティを様々な角度から調査したり評価しようと考えてきた専門家や企業幹部から見たら、拍子抜けするぐらいに単純化されている。

その質問とは、「X社を友人や同僚に薦める可能性は、どのくらいありますか?」と訊くだけだ。
(X社のところは「製品名」とか「サービス名」とか、顧客ロイヤリティを測定したい対象名を入れれば良いだろう)

これに10点満点で何点かを回答してもらう。

10点は薦める「可能性が非常に高い」
5点はどちらでもない
0点は「可能性が非常に低い」

直感的に何点かをつけてもらえば良い。回答結果は3つのセグメントに分けられる。

10点、9点をつけた顧客は、「推奨者」
8点、7点をつけた顧客は、「中立者」
6点以下は「批判者」

となる。
(ただし、欧米では10点満点で10点、9点がAAやAを表すということや、6点以下がダメというのは誰もが理解していることかもしれないが、日本には残念ながらそういう文化はないので、ここには少し工夫は必要かもしれない。日本では5段階評価のほうが馴染むかもしれないし、あるいは10段階評価にしてもその裏側についての説明が必要かもしれない)

推奨者は、その会社やサービスへの満足度が高い。このセグメントはたいていの場合、再購入率が高く、顧客維持率も高い。そして、紹介客の80%は、このセグメントの客に薦められている。
中立者は、「受身」で満足しいている状態。ロイヤリティではなく、惰性が動機づけになってる場合が多い。
批判者は、その名の通り。否定的なクチコミの大部分は、このセグメントから発せられる。

そして、ここでも以下のようなシンプルな計算式が登場する。

推奨者の割合 – 批判者の割合 = 推奨者の正味スコア(NSP)

このNSPが収益性や売上などと相関性を持つ指標となる。
いろいろ事例が出てるので、本を読んでもらえればわかるが、平均的にはNSPが12%ポイント増加すると、企業の成長率が倍増するとある。
また、NSPは、ほぼどんな業界にでも使える指標でということを、膨大な調査とサンプル収集、分析によっても明らかにしている。(一部、一部のプレイヤーでの支配性が高い市場や、そもそもその市場において顧客が他に選択肢を持てないような領域においては該当しないケースもある。)
企業はこのNSPスコアを定期的に測定して、このスコアをあげることを目標にすることで、「顧客ロイヤリティ」という裏付けを伴った、売上や利益などの評価ができるわけだ。

顧客ロイヤリティを「推奨意向性」だけで測定し、さらにそれを推奨者と批判者の割合からNSPという指標を出す。
この単純さがいいのは、顧客ロイヤリティを伸ばすのは、とにかく自社や自社サービス、商品を他者(社)に薦めてもらえるようにしなければならない、という実際の企業行動や活動に繋がりやすいということがあるだろう。
複雑な計算式で導きだされていたら、何を重視したらいいのか、どこをどうすれば改善できるのかが直感的にわからない。
推奨意向者を増やす/批判者を減らす、というのはとにかくわかりやすい。わかりやすいということは行動に繋がりやすいということだ。
数値化するということもすごく重要なことで、たいていの場合、数値として表せないものは改善していくのは難しい。
NSPのような指標があるから、いかにして推奨者を増やすかと、いかにして批判者を減らすかということに意識が向くわけで、これがただ掛け声として「顧客ロイヤリティを高めよう!」だけでは、なかなか実際のところ顧客ロイヤリティを高めることはできない。そもそも高まってるかどうかの判断もできない。

少し話は脱線するが、うちの会社では労働時間の長さというのが常々問題になっていた。
それは今も解決したというわけではないけれど、でも改善に取り組みだしてからと比較すると、実際、今はものすごく改善されていたりする。
この問題に取り組みだしたのは今から4年前で、それまでは勤務時間とか労働時間は、もちろん測ってはいるけど、それをちゃんと意識して見たことはなかった。なんとなく感覚的に今月は稼働が高いなとか、帰りが遅いなとか、あのチームは高稼働が続いてるなというようなことを見てるだけだった。
ある出来事の後から、勤務時間や労働時間を事務所やチームなどで細かく見るようになった。事業経営会議でもその数値は報告されるし、役員には強制的にデータが毎月集計されて送られてくる。
そうすると人はそれについて意識する。意識するというのは重要なことで、数値が悪いとなると、改善していかないとという思考が働く。短期的にすぐに変わるかというとなかなかそういうわけにもいかないのだけれど、それでも意識しているか、意識して行動しているかで、結果は随分変わってくる。
意識しだしてからの実際の数値は、かなり改善されてきてるのは事実だ。
このブログを読んでる人の多くは、うちの社員で、社員からしてみたら、まだまだ全然だよという人も多いとは思うけれど、それでも4年前に較べるとものすごい改善されている。(まぁ、このあたりのことは「感覚的」「精神的」なところも大きく影響を及ぼすだろうから、数値はそうでも感覚的には違うよ、という声があるだろうとも思う。)
今の状態がベストだとも思ってないし、まだまだ改善の余地はあるわけだけど、数値化して意識することや、その数値がどう推移しているかを見て、状態が良くなってるのか悪くなってるのかを把握するということは、そもそも「改善」に取り組んでいくということにとって、すごく重要なことだということを言いたかっただけだ。

さて、本書には、この質問を活かしていくためのヒントや、気をつけないといけないことなどが色々説明されている。
質問はすごく単純だけれど、単純であるがゆえに、使い方を誤ると、全然意味のないものになってしまうので、それは本書を読んで注意をしてもらいたい。

僕はこの本を読んで、この質問は、顧客に対して利用できるのはもちろんだけど、他にも応用できる要素がたくさんあるなと考えた。1つは「従業員」に対してだ。従業員の会社にたしての満足度や評価みたいなものにも応用できるのではないか。

最近は、従業員へのマーケティングみたいなことも話題にあがる。どうやって従業員のモチベーションを高めるのかとか、それを専門に調査したりコンサルティングしたりする会社もあるぐらいだ。
そういった会社の調査や分析はそれはそれで無意味なものではないと思うけれど、実は、従業員の満足度だって、この質問やNSPでほぼ把握できるのではないか。もちろん、誰がどんな回答をしたかということが分かってしまうと、それがバイアスになってきちんとした評価ができなくなるという点は、従業員の場合にはよりシビアだろうけれど、そのへんをうまくカバーできれば、「推奨意向」と会社への満足度とか、ロイヤリティは近しいものになるのではないだろうか。

そして、これはどうだかわからないけど、会社へのロイヤリティが高い従業員が増えれば増えるほど、企業としての競争力も高まるのではないかとも思う。(が、もちろん、単に会社への満足度が高いだけではだめで、その前提として、その会社が顧客に対しても高い満足度を与えられているということは必要。そうしないと、従業員にとっては居心地いいけど、顧客から見たら、ダメな会社みたいになることだって十分考えられる) 

経営者は顧客ロイヤリティを高めるということももちろんだけれど、自社を他者(社)に熱狂的に推奨してくれるような従業員をつくっていくことも仕事の1つなのではないか。そのための環境や制度やルールやポリシーや理念、仕事のあり方やサービスの内容、どのような顧客と付き合うか、といったことを考えていかなければならないのではないか。なんとなくだけどそんな風なことを考えていて、本書の「質問」が従業員の満足度を考えるヒントになった。

あと、ECサイトなどでのサイト運営などでPDCAサイクルを回していく際にも、単純にセッション数だとか、カート放棄率や、コンバージョン率みたいなアクセス解析数値だけではなく、こういう指標もKPIとして設定していく必要もあるかもしれない。(となると、末端顧客から評価を収集して、分析するという仕事が必要になる。) NSPと収益性が連携していることは、本書で十分に示されているので、このKPIを高めることは、すなわちゴール=たいていの場合は売上最大化とか利益とか?をもたらすことに直結していくだろうし。経営者にはオススメと書いたけれども、こういうところにも応用は十分可能だと思うので、現場の人でも一読する価値はあると思う。

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