Category Archives: マーケティング

凡人が最強チームに変わる魔法の営業ミーティング

凡人が最強チームに変わる魔法の営業ミーティング (単行本(ソフトカバー))
4534045484

佐藤さんの本は「凡人が最強営業マンに変わる 魔法のセールスノート」も非常に面白くて、こちらの本で提唱されていた予算を知るためのマジックワードと簡単な計算方法は、今でも、僕は多くのスタッフにネタとして話をするぐらいだ。すぐに読めて、内容も簡単で、明日からでも始めたくなる要素が満載だ。( papativa.jp – 凡人が最強営業マンに変わる魔法のセールストーク

今回は、「営業ミーティング」というすごく限られた分野でのテクニック。

営業ミーティングが単なる営業状況の報告会になってるケースはうちの会社でも多く見られる。上司と部下みたいな関係で、上司が部下の状況を確認して、部下はただ、状況を報告するだけ。そこには想像的なものがまったくない。会議というより「報告会」。得られるのは、上司が状況把握できて安心できたというぐらい。個々のスタッフにとっては、他の人が報告している時間の大部分を無駄な時間ぐらいに感じてたりする。(他の人の状況から得られるものも多いはずだけど、現場のスタッフレベルはこのあたりの意識は多分低い。自分が報告することがどうしてもメインになってしまう。)
状況報告が悪いことでもないけど、そんなものはメールでも済ませられる。せっかく多くの人が同時に集い、時間を共有するのだから、その場でしか出来ないことをなすべきだとは思うのだけれど、なかなかどんな手順で進めれば良いのかアイデアがない。

と、いうようなことに悩んでる方はけっこういるんじゃないだろうか。
で、この本を見つけてこの本を手にしたというわけ。

佐藤さんらしいシンプルなプロセスとロジック、そこにハッとした気づきが得られる問いかけや手法が混じる。
佐藤さんが唱える「凡人が最強チームに変わる魔法の営業ミーティング」とは、ずばり以下の5つのステップを実行するだけだ。

1 今の営業の「全プロセス手順」をハッキリさせる
2 その手順のなかから、改善させたい「部分」を決める
3 成果に直結しそうなヒントを探る
4 試して実行できそうなアイデアにまとめる
5 そのアイデアを実際に行って「結果を観察」して、1に戻る

1は現在の営業手順をみんなで共有することが目的なので、うまくいってるところやいってないところは関係なく、今のところはこういう手順でセールスしているというものをアウトプットする。

2は部分にフォーカスを当てる。当てる部分はどこでもいい。良くしたいと思ってるところからピックアップすれば良い。

3がこの本の心臓部分となるところだ。
どうやって成果に直結しそうなヒントを探すのか?
たとえ999回失敗したとしても、例外的にたった1回だけでも成功したのだとしたら、その1回に注目する
というアプローチをとる。
つまりどんな事例でも良い。とにかく成功したい状況について、その状況を事実して整理するのだ。
ポイントは、とにかくうまくいったことにだけ注目することと、その時の状況を事実だけで整理すること。
状況を整理するためのテクニックとして、著者は「ビデオ再現法」を説いている。
「◯◯さんというお客さんに限って言えば、そこで何が起きていたのか、事実をビデオを再現するかのように教えてください」
これが成功した事実だけを引き出していくための問いだ。

ここでの整理がそのまま、4のステップにつながっていく。
「成功事例のなかに、共通していることは、何か?」
「それらの共通点から、アイデアがあるとすれば、何か?」
ステップ3で得られた「事実」を材料として、そこから仮説を立てていく。
ステップ3を経ることで、ステップ4でのディスカッションが始まるというわけだ。
ここでも、そうは言ってもなかなかアイデアがでない会議ではどうするか?
あえて言うとすれば?」というフレーズを使うことや、二人ひと組で相談させる方法などが提唱されている。これはファシリテーターのテクニックの一つだが、覚えておきたいところ。

そして、ステップ4であがったアイディアをステップ5で実践する。ステップ4でまとまった「実行できそうなアイディア」を実際の実行に移すステップだ。欲張らず、出来ることから絞って実行する、ということが大事だ。
佐藤さんは、「営業ミーティングは何度でもある」と言う。1回ですべてをやる必要はない。これを試したらどうだったかを次の会議で共有して、また別の案を試してみてと、何度もチャレンジしていけばいい。

語られていることや内容はすごく簡単なことばかりだけど、じゃあこういう方法を試したことがあったかというとほとんどなかった。早い人なら30分程度で読みきれるような内容だとは思うけれど、得られるものはあると思う。
特に営業系の部門のマネジャーやリーダーを任されれてる人、チームを引っ張っていかなければならない人にはオススメだ。

Popularity: 1% [?]

Posted in マーケティング, 書籍・雑誌 | Leave a comment

顧客の信頼を勝ちとる18の法則-アドボカシー・マーケティング

新年一発目で紹介する本はこれ。非常に読みやすく、且つ事例が豊富でとても面白い。
こういう本は読んどくべき。本書の考え方はもちろんだけれど、ここで紹介されている事例は、様々な分野、業態にまたがっているし、対象範囲も広い。こういう事例は知っておくだけで色々ヒントにもなるし、仕事においても必ず役立つ場面があるだろう。

顧客の信頼を勝ちとる18の法則-アドボカシー・マーケティング- (単行本)
4532314747

アドボカシーとはあまり聞き慣れない言葉だけど、「支援」「擁護」「代弁」等の意味で、つまり、アドボカシーマーケティングとは、「徹底的に顧客側に立って物事を考え実行する信頼ベース」のマーケティング手法のことを意味する。

これだけ聞くと、なんだ「顧客志向」「顧客第一主義」かと思ってしまいがちだけれども、本書で紹介される事例は、生半可な掛け声だけの「顧客志向」や「顧客第一主義」ではなく、真に顧客側に立つということがどういうことかを教えてくれる。

徹底した顧客志向ではノードストロームやリッツ・カールトン・ホテルなどがすぐに思い浮かぶ。本書内でもたびたび事例として登場するこれら企業だが、彼れが実践しているのは、自社の利益よりもまず顧客の利益を優先するという徹底的な姿勢だ。「顧客志向」といっても、ほとんどの企業は、自社の利益があって初めて顧客の利益となるのが普通だろう。しかし、真にアドボカシーな企業は、そんな常識さえも通用しない。たとえ自社に不利になることや、自社の利益に結びつかないことでも、顧客への「支援」「擁護」に惜しみない力を注ぐ。それが顧客ロイヤリティを高め、長期的には利益につながるということを知ってるからだ。

自動車保険会社の米プログレッシブ(Progressive)は、他の保険会社の保障内容を州単位での比較できるようなWebのサービスを提供していたり、商用トラクター販売のジョンディアは、競合他社のトラクターとの比較情報まで提供している。
自社に都合の良い情報だけを寄せ集めて発信したり、比較情報にしても自社製品やサービスにたくさん◯が付くように恣意的に作られた意味のない比較表などでは、もう消費者は簡単に見抜いてしまう。隠したり、誤魔化しても徹底的に調べられてしまう。であれば、欠点も含めて自身を曝け出し、真に顧客視点にたったサービス&サポートを徹底し、顧客の信頼を獲得していくほうが良い。人は「正直」が欲しくなる。「信頼」を獲得することを第一義に考える。

もちろん、こういう考え方の背景には、自社の製品やサービスに自信があるということは当然必要で、そこに磨きをかけていかなければならないことは言うまでもない。本書でも、「どこにも負けない品質に価値がある」(質の法則)というものの必要性が語られている。品質に磨きをかけ、自信があるからこそ、すべてを曝け出す。すべてを曝け出すからこそ品質レベルを高めなければならない。どちらが先というわけではないだろうが、どちらにせよ強い信念と覚悟を持って取り組まなければいけない。

また、本書内には他にも様々な事例とともに、アドボカシー・マーケティング実践のためのヒントが散りばめられている。その分野だけで有に一冊は本がかけるんじゃないかという内容の断片がいくつも盛り込まれているので、何度でも読み直したい。実際の企業と事例も豊富なので話のネタとしても知っておくと使えそうなものばかりだ。

例えば、顧客ロイヤリティを測定する方法として、顧客に次のような質問を行い、その結果を定量的に分析するという事例が紹介されているが、これなんかも簡単、単純だけれどすごいノウハウだと思う。
この会社を友人や同僚に紹介したいと思いますか?」これだけだ。なるほど。推奨意向を訊けば、それはそのまま顧客の企業に対してのロイヤリティを表す。
「ぜひ紹介したい」を10、「全く紹介したくない」は0、「どちらでもない」を5といった段階評価で設定し、顧客にアンケートを行う。その結果、顧客は「推奨者」「中立者」「誹謗者」のいずれかに分類することができる。
推奨者を増やして、誹謗者を減らすことが顧客ロイヤルティ育成の実践となる。
飛行機業界、レンタカー業界などでは明らかにロイヤルティと利益成長率に相関性が見られた。
ロイヤリティと売上や利益の相関性というのは、あまりきちんと測定されたものを見たことがなかった。この調査では明らかに、ロイヤルティが売上増とコスト減に貢献するということが明らかにされていて、なかなか興味深い。

本書内で紹介されている事例の幅広さや内容を見ると、「アドボカシー」という言葉で括られる活動や事業が極めて広範囲ということに気づくだろう。「アドボカシー」という新しい言葉(少なくとも僕は全然知らなかったのだけど)で括ってるので、何か最新のマーケティング手法や仕掛けなのかと思うかもしれないが、決してそういうものではなく、どちらかというと典型・基礎的なマーケティングについて、もう一度、「アドボカシー」というキーワードから見直してみたというような内容なのだ。以下は備忘録として一部事例を抜粋。

●患者本位の医療方針を貫くメイヨ・クリニック
患者数ではなく、提供する価値によって一定の給与が支払われる仕組みを取り入れ、患者一人一人に十分な時間をかける。

●ネスレグループ
ロイヤルティ育成の徹底、顧客の声(VOC)を商品開発や広告展開などへも生かす

●オーケーストア
正直すぎる説明書きが店内のあらゆる商品につけられるスーパー。

●ハーレーダビッドソン
ハーレーをコアにした生活提案「ライフスタイル・マーケティング」を実践。

●USAA
顧客を会員と呼び、会員の保険料を最適にすることを第一に、自社の儲けが少なくなる安い保険料のアドバイスも行う

●ニコン
外部部品を除いた内部一式部品をまるごと交換することで修理時間の短縮と品質向上を図りる「クールピットサービス」

●MKタクシー
徹底した従業員教育、顧客志向で、タクシー業界の慣習や常識を打ち破る

●Z会
毎年1000万通以上あったDMをなくして、ネットでのSNS「パルティオゼット」の開発と運営費にまわした

●アスクル
単体を「小アスクル」、メーカーやエージェント、顧客までも含めて「大アスクル」として定義し、大アスクルでの利益の最大化を目指す。

●TOTO
流通業者との信頼関係構築「TOTOリモデルクラブネットワーク」。
全国各地のエリアごとに「リモデルクラブ◯◯店会」を発足させて、同じエリアで活動する競合同士がコミュニケーションをとれる仕組みを提供。

●SASインスティチュート
利益は公開せず、世界からの注目を浴びることを避け、従業員を一番大切にする企業文化。
「幸せな社員がお客様を幸せにする」の企業ポリシー。年間離職率平均22%というソフトウェア業界において、SASの離職率は4%。

●未来工業
年末年始に約20連休、GWに10連休を含めて年間の休日は140日。仕事は4時45分まで。
それでも給与水準は地域で一番。高いQWL(Quality of Work Life)を実現して、従業員満足度を高め、高い生産性をあげる。

●IKEAのサイト
Annnaと呼ばれるバーチャルオペレーターの導入。
(バーチャルオペレーターは、インテルの消費者サポートサイト導入の事例では、PCカメラ用ソフトのダウンロード成功率で63%→85%となった。これだけで年間100万ドル以上のコスト削減になったそうな)

そして、ジレットの元会長兼CEOジェイムズ・キルツの言葉。
「リスクテイクを奨励する必要があります。我が社では、成功の反対は失敗ではなく惰性であることを常に心に留めておくことをテーマにしています」

Popularity: 5% [?]

Posted in マーケティング, 書籍・雑誌 | 1 Comment

「買いたい人」を絞り込みリピート購買を増やせ!―カタリナ流ターゲット・マーケティング

これもH氏に借りて読んだ本。最近、H氏の机には魅力的なタイトルの本が並んでいる。
H氏が読む前に少し拝借して、ざっと流し読みしてした。

「買いたい人」を絞り込みリピート購買を増やせ!―カタリナ流ターゲット・マーケティング (単行本)
4478090122

たかがクーポン。されどクーポン。
クーポンにもこれほどまでにバリエーションがあるのだということに驚いた。

カタリナ社では、買物客がレジで会計を済ませた瞬間に、レジに併設された専用プリンターから出力され、手渡しされる「レジクーポン(R)」をソリューションとして提供している。
この「レジクーポン」は従来のばら撒き型のクーポンとは違い、買物客が「その日何を買ったか=トランザクションベース」と、「過去に何を買ったか=買い物履歴」ベースの2つから、その顧客に最適なクーポンを生成することができるというのが大きい特徴となっている。
「特定の商品グループの購入有無によるターゲティング」でも、こんなに多くのクーポン発券パターンがある。ただ、日本ってあまりメーカークーポンは馴染みがないので、カタリナ社のソリューションでどこまで対応できるのかはよくわからない。

■ベーシック
・特定商品グループの購入者に発券する。
自社(●●会社)のお米購入者に「次回、●●会社のお米をお買い上げの際に、××円値引き」。継続購入促進。

■プログレッシブ・ヘビー・ユーザー
特定商品グループ購入者の購入個数に着目する。
購入個数が2~4個なら、「次回5点お買い上げで50円引き」、5~9個なら「次回10点お買い上げで100円引き」

■フィックスド・プライス・ベースド
小売店での店頭販売価格の変動に対応し、店頭価格に応じて異なるクーポンを発券する。
店頭で定価販売されていたら「次回50円引き」、定価より30円安く販売されていたら「次回20円引き」等。
実売価格を維持した販促を行いたい際に有効。

■プライス・ベースド・レギュラー
競合商品の価格に応じて3種類のクーポンを発券できる。
「例えば、自社商品の店頭販売価格が100円の時、競合商品が80円以下、81~109円、110円以上などのパターンに分け、その日の競合商品の店頭かかっくに対して優位性のある値引き価格が印字されたクーポンが発券できる」

■アマウント・オブ・トリガー
一度の買い物で、特定の商品グループ内の商品の購入金額が設定した金額以上になった購入者に発券する。「ビールを××円以上購入したら、●●円のお買い物券を発券」

■リンクド・イベント
複数の商品グループからそれぞれの商品を購入した人にクーポンを発券する。
焼酎とポン酢と調理用シート購入者というように。

■ディドント・バイ
特定の商品グループを購入しなかった人に「次回●●商品をお買い上げの際、××円値引き」など。新規顧客開拓・離反呼び戻しなどを目的とする。

■ディドント・バイ/ディド・バイ
特定の商品グループを複数設定できる「ディドント・バイ」。
特定商品グループ1内の商品は購入せず、特定商品グループ2~9内だけ購入した人をターゲットとするなど。

■フランチャイズ
上記のターゲティング方法を組み合わせて、こ入う内容によって細かくターゲティングされた購入者へクーポンを発券する。

「特定の商品グループ購入以外の条件でのターゲティング」としても、
■オーダーサイズ/プレグレッシブ・オーダーサイズ
購入総額が設定された最小購入金額以上になった購入者にクーポンを発券。
購入総額の引き上げが目的。1000円以上の購入なら次回100円引き、2000円以上の購入なら次回200円引き等。

■カードベース
ポイントカードなどのカードを使用した場合にクーポンを発券。
カード会員のメリット拡大などを目的とする。

などのパターンが紹介されている。

僕などは、クーポンといえば、ホットペッパーのような新規客呼び込み用のクーポンか、店頭で貰うリピート用のクーポンの2つぐらいしか知らなかった。
購入総額を増やしたり、特定カテゴリーに興味を持たせることで、購入品数を増やすなど、色々な活用方法があるということを知ることができて、これだけでもこの本を手にしたかいがあったなと思う。まさかこんなに奥深いとは。

全部が全部ではないけど、当然、オンライン店舗のマーケティングプログラムにだって、こういう考え方は応用できるだろう。特に総合系のショッピングサイトでは、かなり有効なのではないだろうか?
イオンとか、イトーヨーカ堂とか、ファミリーマート.comとか、あの手の総合ECサイトはどうだろうか。すでにこの手のプログラムは盛り込み済みだろうか?

カタリナ社は、世界のスーパーマーケットチェーン4.7万店舗(米国のスーパーマーケットの全売上高の75%、日本のスーパーマーケットの45%をカバーしているそうだ)をネットワークに持っている。店舗にPOSスキャナーを提供し、POSスキャナーを通じてリアルタイムに消費者のデータを収集・分析できるインフラを構築している。

結果、カタリナ社は全世界で1.55億人(世帯)分の「購読者ID・FSP番号」を保持し、毎週3.5億回文、年間180億回分のショッピングバスケットデータを分析できるそうな。
データベースサイズは1.4ペタバイト。とてつもない量のデータを分析しているのだ。

こういった圧倒的な実データを元に分析した結果、
たった2.5%の買物客が、平均的なCPGブランドの売上の80%を占めている
とか
研究された1364ブランド、すなわち製品ジャンルの中でも最も人気のあるものすべてのうち、各々の売上高の80%を10%以上の購入者層が占めていたのは25ブランドに過ぎない

などという衝撃的なデータを発表している。

これはもう20対80の法則どころの話ではない。もちろんこのデータはアメリカの消費者の行動分析なので、そのままでは日本の市場もそうだと言い切ることはできないだろうけれど、それにしてもこれほどまでに偏りがでるのは衝撃的だ。

なにせ、あのコカ・コーラでさえ、ブランド合算の売上高の80%を占めていたのは18.8%の重要消費者だというのだ。(ここでは20対80の関係が成立してるけれど、それにしても世界的ブランドのコカ・コーラ社の商品でさえ、こんなに偏りがあるということに驚く)

カタリナ社の分析から見えてくるのは、今まで、マーケティングの常識とされていた考え方が通用しなくなりつつある世界の片鱗だ。

●ロイヤルティを持っていた上位顧客が、翌年以降も上位顧客である割合は18.6%
●8割以上の顧客が翌年には何らかの理由でブランドとの距離を置いてしまう。

さらに衝撃的な数値は続く。
この8割のうち、32.7%は、そのブランドをまったく買わなくなってしまう。24.9%は、そのブランドを含むカテゴリー自体を買わなくなってしまう、というデータだ。

ブランドロイヤルティの向上やら維持みたいなことをマーケティング戦略の基礎として位置づけていても、そのカテゴリー自体買わなくなってしまったらそのロイヤルティなんて何の意味もないわけだ。
本書では、このように今まであまり見たこと聞いたこともなかったような消費の世界が垣間見られて面白い。

また、本書は一般的なGMS(総合スーパー)やSM(食品スーパー)では、どんな消費行動、消費構造になっているのかということも、いくつかの実データと共に明らかにしていて、それも興味深いものが多いのだ。
平均客単価が顧客ボリュームゾーンではない、というような盲点や、購入者は買上品目で金額をコントロールしていることが分かるというようなデータ、そして客単価の最初の壁が3,000円であることなど。

こういったデータや、普段何気に流してた数値の裏側などの意味を読みといていく手法は、決して実店舗だけに有効なのではなく、僕らが手がけているようなオンライン店舗などのマーケティング戦略にもそのまま応用できるものだろう。

全体的には、カタリナ社自身のプレゼンテーション的な意味合いが濃い内容ではあるけれども、特に総合系のショッピングサイトなどを手がけている人は読んどいて損はないと思う。

Popularity: 2% [?]

Posted in EC関連, マーケティング, 書籍・雑誌 | Leave a comment

戦略PR 空気をつくる。世論で売る。

戦略PR 空気をつくる。世論で売る。 (アスキー新書 94) (新書)
4048675745

とある仕事で、戦略PR関連の提案打ち合わせに参加させてもらって興味が湧いた。H君が一足先に手に入れてたので貸してもらった。AISASだとか、AIDMAだとか、そういうユーザー行動心理モデルは、常に「A→I」から始まっているけれども、そもそもこの前に、もう一つ「Interest」が必要なのではないかと提唱する。それを、著者は「カジュアル世論」と呼ぶ。

「カジュアル世論」とは、言い方を変えれば、その商品やサービスが受け入れられたり、買いたくなるような空気や雰囲気、ムードのことだ。

事例としてあげられている永谷園の「冷え知らず」がわかりやすい。戦略PRにより今まで脇役に過ぎなかった「生姜」が、今来てる、ブームだというような世論を作り出す。世論操作というと、洗脳やプロパガンダなどの悪いイメージがついつい過ぎってしまうけれども、あくまでも「カジュアル」という形容がついていることもポイントだろう。
カジュアル世論を作り出すための著者は次のようなステップを設定している。

STEP.1 商品の便益に関連しそうな、世の中の「関心事」を調べる
STEP.2 商品の便益を世の中や消費者の関心に合わせて翻訳する
STEP.3 その二つを結びつけ、テーマを設定する
STEP.4 テーマを「ニュース」にするための材料を用意する
STEP.5 テーマを広がるための具体的なPRプランを用意する

STEP.1~STEP.3まででの「テーマの設定」がものすごく重要だ。テーマはこちらが言いたいことではなく、あくまでも消費者がどのような関心を持ってるかということから設計しなければならない。
大ヒットしたニンテンドーDSの「漢検DS」は、「漢字力が低下している」というテーマ設定を行い、それを戦略PRの軸に据えた。パナソニックの美容家電「ナノケア」では忙しい女性にあわせた「効率美容」。オバマ大統領なら「チェンジ」がそれにあたる。その商品やサービスを買いやすくする、買いたくなる空気。これこそが、AISASやAIDMAの「AI」の前に位置する「Interest」だ。

こうして設定されたテーマを敷衍させて、「カジュアル世論」を醸成するためには次の3要素が重要だと言う。
それは「おおやけ」「ばったり」「おすみつき」だ。これら3要素をメディアやチャネルに絡めて語ると、

「おおやけ」感を生み出すために 「マスコミ」の活用
「ばったり」感を生み出すために 「クチコミ」の活用
「おすみつき」感を生み出すために 「インフルエンサー」の活用

と整理される。非常にシンプルでわかりやすい。「生姜」の例ならば、各種マスコミが「生姜ブーム」を取り上げ「おおやけ」感が生まれ、そこにインフルエンサーとして料理研究家の村田裕子さんが起用されて「おすみつき」が得られる。そして、こういった一連の活動などからクチコミが誘発されて「ばったり」感が醸成されるというストーリーだ。

「戦略PR」という言葉は、360度マーケティングや、ホリスティックマーケティング、メディアニュートラルというような言葉とも重なる部分が多いと思う。要は、ユーザーにいかにして意味・意義ある情報を届けていくのか、情報への到達の筋道を立てて行くのか。商品やサービスが魅力的に見える、あるいは買いたくなるような環境を作りあげるのかということ。PRというとどうしてもパブリシティのことしか思い浮かばず、ついついプレスリリースを投げること=PRのように捉えてしまいがちだけれども、そうではない。あくまでも情報環境をどう作るか、そこには俯瞰的な視点が求められるだろう。

Popularity: 1% [?]

Posted in マーケティング, 書籍・雑誌 | 1 Comment

フリー〜〈無料〉からお金を生みだす新戦略

ネット関連の仕事に従事しているなら絶対読んどくべきだと思う。
最近、読んだ本についてエントリーするのがすごく億劫で避けてたけど、これだけは書いておこうと思う。

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略 (単行本)
4140814047

「無料モデル」と聞くと、僕らはすぐに「広告」を思い浮かべる。Google、ヤフー、mixiなどなど、私たちが思いつくネットサービスの大手の大部分の収益は広告に支えられてるからだ。ウェブのサービスを企画してるときに、「無料」が前提になると、たいていの人は収益化の方法として「広告」を最初に考え、そして広告での収益化の現実を知るほどに、いかに広告モデルが厳しいかということを知る。もう少し踏み込んでもせいぜい無料版を餌にして、有料版の顧客を捕まえるというような手法や、最近ならGreeやモバゲーなどで注目されはじめたデジタルアイテム課金などによるモデルぐらいまでしか思いつかないというのが正直なところだ。

しかし、実際、無料モデルというものにも色々な形態があり、応用がある。本書の巻末には「直接的内部相互補助」「三者間市場あるいは市場の“二面性” ある顧客グループが別の顧客グループの費用を補う」、そして「フリーミアム(一部の有料顧客が他の顧客の無料分を負担する)という大きく3つの「フリー」のおけるビジネスモデルが整理され、そこに50ものモデルが提示されている。

これを読むだけでも、さまざまなビジネスモデルのアイディアが沸いてきて、僕なんかは勇気づけられる。僕らの会社にも多くのサービスや製品群があるけれど、「フリー」のモデルから考えて見たことは実はあまりなかった。無料=広告/広告は無理、みたいな単純、画一的な思考で片付けてしまって、色々な可能性を探るということをしていないのではないかと思った。
早速、本書を読んでから、自社サービスや製品を50のモデルに当てはめて考えてみたら、今まで想像もしてなかったようなモデルがいくつか出てきて、これだけでも本書を読んで良かったと思えたところだ。(しかし、ほんと「本」ぐらい知識やノウハウを体系的に得るのに安い媒体はないと思う。こんな知見とか知識を2000円にも満たない価格で手に入れられるのだから。本を読まない、読めない人はものすごい損をしていると思う。)

直接内部相互補助」とは、「消費者の気を引いて、ほかのものも買ってみようと思わせるもの」を無料として提供して、その「ほかのもの」を有料にするモデルだ。一時期、携帯電話が1円で販売されていた頃があったけど、あれもこのモデルに近いだろう。製品を無料でばらまき、その製品の利用料金で収益化する。

「三者間市場」は、僕らがもっともよく知るモデルだ。「二者が無料で交換することで市場を形成し、第三者があとからそこい参加するためにその費用を負担する」。難しく書かれてるけど、テレビ局(民放)と視聴者と広告スポンサーの関係だ。
ウェブメディアの多くもこのモデルを採用してる。一見そうではなさそうだけど、このモデルなのはクレジットカードなど。銀行が無料で消費者にカードを発行して、そのカードが使われたら手数料が入るというモデルだ。

事例としてもピックアップされていて面白かったのが、プラスティス・フュージョンという電子カルテと医療業務管理ツールのシステムを提供する会社。この手のソフトウェアは通常5万ドルはするらしいが、同社はこれを無料で提供している。
このモデルの一部はフリーミアムモデルで、広告が付かないバージョンのソフトは月額100ドルかかるというようなものなのだが、実際の収益の大半は、もう1つの「三者間市場」モデルのほうにある。

無料ソフトを配ることで、ユーザー(医師)を集めると、そこには必然的に患者のデータが集まることになる。
「特定の病気を研究する医療機関は、多数の患者の長期にわたる医療記録を必要としているので、研究対象ごとに、匿名にしたデータは50〜500ドルで売れる。1人の医師が250人の患者を扱うとすれば、最初にユーザーとなった2000人の医師から50万件の記録が集められる。さまざまな機関が種々の研究をしているので、1人の患者のデータは複数の機関に売ることができる。1人のデータが平均500ドルで売れれば、2000人の医師にソフトを5万ドルで売るよりもはるかに大きな収益を得られるのだ」と記されている。この試算にどれほどの正当性があるかはおいておいても、こういう発想は非常に面白い。
「Web2.0の条件」に「データは次世代のインテルインサイド」なんて言葉があったけど、まさにその言葉を裏付けるかのようなビジネスモデルだと思う。

アクセス解析ツールを無料で提供して、そこで得たデータを有料機能の目玉にするみたいなサービスモデルも考えられるだろう。すでにGoogleAnalyticsは、同分野サイトのベンチマーク数値などと比較できるような機能は提供しているけれど、考えて方によっては、ああいうものも「三者間市場モデル」としての材料にはなる。(Googleは製品の有料化やデータの有料化等は考えていないだろうから、「フリーミアム」でも「三者間市場モデル」でもないだろうけど)

少し違うが、会計事務所のTKCなんかも近い発想があるように思える。提携している全国の会計事務所から吸い上げられた財務データをベースとして、TKCのレポートは作成されている。そのレポートには、各種会社経営に必要な指標群がわかりやすく整理されているだけではなく、同業種で同規模(社員数や売上等)の会社で優良企業の平均数値や黒字企業の平均数値といったベンチマークとなるデータが同時に見られるようになっている。このデータこそ、全国のネットワークの蓄積があってこそのものだ。個別の会計事務所の能力やサービスではできないことをネットワークとデータの蓄積によって可能にし、それを付加価値として提供しているというわけだ。(でも、このモデルは「三者間市場モデル」じゃないな)

フリーミアム」は、基本機能やサービスを無料で提供し、利用者を集め、その中から本機能や追加機能サービス、特別対応みたいなもので有料版の利用者を獲得するという戦略だ。デジタル製品においては、「典型的なオンラインサイトには5%ルールがある。つまり、5%の有料ユーザーが残りの無料ユーザーを支えているのだ。」と言及されている。実製品の世界で、無料サンプルを配って、その5%しか本製品の購入につながらないとしたら、そのビジネスモデルは多分崩壊している場合のほうが多いだろうけれど、デジタル製品やサービスにおいては、無料サービスを提供するコストが非常に小さいので、5%の有料版利用者でサービスや製品を支えることができるのだ。

僕らの生活の周りには、様々な「フリー」のモデルが浸透していて、それがきちとした経済を成立させていることがよくわかる。そして、それはデジタル時代においてより加速し、深く浸透していっているのだろうし、これらのモデルを無視してビジネスを考えていくこと難しいだろうと思う。むしろデジタルであることの最も大きい恩恵を授かることができる領域なわけなので、積極的に活用していくべきだろう。

Popularity: 2% [?]

Posted in マーケティング, 書籍・雑誌 | 1 Comment