「買いたい人」を絞り込みリピート購買を増やせ!―カタリナ流ターゲット・マーケティング

photo credit:  BaBalingus via photopin cc

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これもH氏に借りて読んだ本。最近、H氏の机には魅力的なタイトルの本が並んでいる。
H氏が読む前に少し拝借して、ざっと流し読みしてした。

「買いたい人」を絞り込みリピート購買を増やせ!―カタリナ流ターゲット・マーケティング (単行本)
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たかがクーポン。されどクーポン。
クーポンにもこれほどまでにバリエーションがあるのだということに驚いた。

カタリナ社では、買物客がレジで会計を済ませた瞬間に、レジに併設された専用プリンターから出力され、手渡しされる「レジクーポン(R)」をソリューションとして提供している。
この「レジクーポン」は従来のばら撒き型のクーポンとは違い、買物客が「その日何を買ったか=トランザクションベース」と、「過去に何を買ったか=買い物履歴」ベースの2つから、その顧客に最適なクーポンを生成することができるというのが大きい特徴となっている。
「特定の商品グループの購入有無によるターゲティング」でも、こんなに多くのクーポン発券パターンがある。ただ、日本ってあまりメーカークーポンは馴染みがないので、カタリナ社のソリューションでどこまで対応できるのかはよくわからない。

■ベーシック
・特定商品グループの購入者に発券する。
自社(●●会社)のお米購入者に「次回、●●会社のお米をお買い上げの際に、××円値引き」。継続購入促進。

■プログレッシブ・ヘビー・ユーザー
特定商品グループ購入者の購入個数に着目する。
購入個数が2~4個なら、「次回5点お買い上げで50円引き」、5~9個なら「次回10点お買い上げで100円引き」

■フィックスド・プライス・ベースド
小売店での店頭販売価格の変動に対応し、店頭価格に応じて異なるクーポンを発券する。
店頭で定価販売されていたら「次回50円引き」、定価より30円安く販売されていたら「次回20円引き」等。
実売価格を維持した販促を行いたい際に有効。

■プライス・ベースド・レギュラー
競合商品の価格に応じて3種類のクーポンを発券できる。
「例えば、自社商品の店頭販売価格が100円の時、競合商品が80円以下、81~109円、110円以上などのパターンに分け、その日の競合商品の店頭かかっくに対して優位性のある値引き価格が印字されたクーポンが発券できる」

■アマウント・オブ・トリガー
一度の買い物で、特定の商品グループ内の商品の購入金額が設定した金額以上になった購入者に発券する。「ビールを××円以上購入したら、●●円のお買い物券を発券」

■リンクド・イベント
複数の商品グループからそれぞれの商品を購入した人にクーポンを発券する。
焼酎とポン酢と調理用シート購入者というように。

■ディドント・バイ
特定の商品グループを購入しなかった人に「次回●●商品をお買い上げの際、××円値引き」など。新規顧客開拓・離反呼び戻しなどを目的とする。

■ディドント・バイ/ディド・バイ
特定の商品グループを複数設定できる「ディドント・バイ」。
特定商品グループ1内の商品は購入せず、特定商品グループ2~9内だけ購入した人をターゲットとするなど。

■フランチャイズ
上記のターゲティング方法を組み合わせて、こ入う内容によって細かくターゲティングされた購入者へクーポンを発券する。

「特定の商品グループ購入以外の条件でのターゲティング」としても、
■オーダーサイズ/プレグレッシブ・オーダーサイズ
購入総額が設定された最小購入金額以上になった購入者にクーポンを発券。
購入総額の引き上げが目的。1000円以上の購入なら次回100円引き、2000円以上の購入なら次回200円引き等。

■カードベース
ポイントカードなどのカードを使用した場合にクーポンを発券。
カード会員のメリット拡大などを目的とする。

などのパターンが紹介されている。

僕などは、クーポンといえば、ホットペッパーのような新規客呼び込み用のクーポンか、店頭で貰うリピート用のクーポンの2つぐらいしか知らなかった。
購入総額を増やしたり、特定カテゴリーに興味を持たせることで、購入品数を増やすなど、色々な活用方法があるということを知ることができて、これだけでもこの本を手にしたかいがあったなと思う。まさかこんなに奥深いとは。

全部が全部ではないけど、当然、オンライン店舗のマーケティングプログラムにだって、こういう考え方は応用できるだろう。特に総合系のショッピングサイトでは、かなり有効なのではないだろうか?
イオンとか、イトーヨーカ堂とか、ファミリーマート.comとか、あの手の総合ECサイトはどうだろうか。すでにこの手のプログラムは盛り込み済みだろうか?

カタリナ社は、世界のスーパーマーケットチェーン4.7万店舗(米国のスーパーマーケットの全売上高の75%、日本のスーパーマーケットの45%をカバーしているそうだ)をネットワークに持っている。店舗にPOSスキャナーを提供し、POSスキャナーを通じてリアルタイムに消費者のデータを収集・分析できるインフラを構築している。

結果、カタリナ社は全世界で1.55億人(世帯)分の「購読者ID・FSP番号」を保持し、毎週3.5億回文、年間180億回分のショッピングバスケットデータを分析できるそうな。
データベースサイズは1.4ペタバイト。とてつもない量のデータを分析しているのだ。

こういった圧倒的な実データを元に分析した結果、
たった2.5%の買物客が、平均的なCPGブランドの売上の80%を占めている
とか
研究された1364ブランド、すなわち製品ジャンルの中でも最も人気のあるものすべてのうち、各々の売上高の80%を10%以上の購入者層が占めていたのは25ブランドに過ぎない

などという衝撃的なデータを発表している。

これはもう20対80の法則どころの話ではない。もちろんこのデータはアメリカの消費者の行動分析なので、そのままでは日本の市場もそうだと言い切ることはできないだろうけれど、それにしてもこれほどまでに偏りがでるのは衝撃的だ。

なにせ、あのコカ・コーラでさえ、ブランド合算の売上高の80%を占めていたのは18.8%の重要消費者だというのだ。(ここでは20対80の関係が成立してるけれど、それにしても世界的ブランドのコカ・コーラ社の商品でさえ、こんなに偏りがあるということに驚く)

カタリナ社の分析から見えてくるのは、今まで、マーケティングの常識とされていた考え方が通用しなくなりつつある世界の片鱗だ。

●ロイヤルティを持っていた上位顧客が、翌年以降も上位顧客である割合は18.6%
●8割以上の顧客が翌年には何らかの理由でブランドとの距離を置いてしまう。

さらに衝撃的な数値は続く。
この8割のうち、32.7%は、そのブランドをまったく買わなくなってしまう。24.9%は、そのブランドを含むカテゴリー自体を買わなくなってしまう、というデータだ。

ブランドロイヤルティの向上やら維持みたいなことをマーケティング戦略の基礎として位置づけていても、そのカテゴリー自体買わなくなってしまったらそのロイヤルティなんて何の意味もないわけだ。
本書では、このように今まであまり見たこと聞いたこともなかったような消費の世界が垣間見られて面白い。

また、本書は一般的なGMS(総合スーパー)やSM(食品スーパー)では、どんな消費行動、消費構造になっているのかということも、いくつかの実データと共に明らかにしていて、それも興味深いものが多いのだ。
平均客単価が顧客ボリュームゾーンではない、というような盲点や、購入者は買上品目で金額をコントロールしていることが分かるというようなデータ、そして客単価の最初の壁が3,000円であることなど。

こういったデータや、普段何気に流してた数値の裏側などの意味を読みといていく手法は、決して実店舗だけに有効なのではなく、僕らが手がけているようなオンライン店舗などのマーケティング戦略にもそのまま応用できるものだろう。

全体的には、カタリナ社自身のプレゼンテーション的な意味合いが濃い内容ではあるけれども、特に総合系のショッピングサイトなどを手がけている人は読んどいて損はないと思う。

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