ドラッカーへの旅 知の巨人の思想と人生をたどる

ドラッカーへの旅 知の巨人の思想と人生をたどる (単行本)
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本書内で取り上げられているテーマの大部分は、ドラッカーの多くの著書で繰り返し色々な形で主張されていることばかりなので、多少なりともドラッカーの書物に触れたことのある人ならば、良い復習のテキストにもなるだろう。

ドラッカーを読んだことのない人にとっては、本書だけでドラッカーの思想を理解するというのは難しいだろうが、ドラッカーがビジネスやマネジメントという世界に与えた影響の大きさ、そしてその言葉の重さや先鋭さみたいなものは充分感じ取れるだろう。ドラッカーのその深遠な思想の入り口としても最適ではないかと思う。

ドラッカーはもう何度も何度も読み返していて、彼の思想の根本は頭では理解してるつもりだ。でも、それなのに行動に移せていないことが多い。だから何度も何度も読み返して、振り返っては、反省と軌道修正が必要になる。

例えば、ドラッカーは成長戦略の第一歩をこんな風に語っている。

成長戦略の第一歩は、どの分野をいかに伸ばすかを考えることではない。『どの分野から撤退すべきか』こそ、最初に考えるべき点である。企業が成長するためには、成長しきった分野、時代遅れになった分野、生産性のあがらない分野からいかに撤退するかをめぐり、体系的な戦略を築かなければならない。

どの事業を伸ばすか、育てるか、それを考えるのは重要だけれども、資源は有限だ。すべての可能性に資源を割り振っていては、どの分野でも卓越することは難しい。だから、マネジャーは未来を読んで、最も可能性のあるべき分野にリスクを賭けながら、同時に、現在のどの事業を諦めるのかという決断も下さなければならない。
GEの金融部門の大躍進は、ジャック・ウェルチが1、2位になれない事業からは撤退するという決断を下したからこそあったのだろうし、インテルがマイクロプロセッサーという領域に注力し、そこのリーディングカンパニーになりえたのは、元々の主力事業であったメモリーチップ事業から撤退を決断できたからだ。
ジョブズ復帰後のAppleの大躍進も無駄に広がっていったMacラインナップの統廃合と整理から始まった。

果たしてボクらは、何かを捨てるという決断をしたことがあったか。

未来に投資することも勇気だが、捨てることも勇気だ。何かを捨てるとうのは、一見、売上を伸ばす、会社を成長させるというマネジャーの使命や信条とは逆行する決断だ。何かを捨てれば、当然、短期的には売上や粗利は減少する。

しかし、一方でマネジャーは長期的な視点に立った決断も必要だ。どんな事業であれ、サービスであり、いずれかは陳腐化し、時代から取り残される。イノベーションの可能性が閉ざされた分野からは、潔い撤退も長期的な視点からは必要不可欠なのだ。捨てるのを恐れ、次の成長分野への投資が消極的・中途半端なものになる方が、会社としてはリスクを負うことになるかもしれない。このことはしっかり肝に銘じておかねばならない。

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