見積もり

ITプロフェッショナルの9月号の特集は「見積もり」だ。システム開発系でもプロジェクトマネジメントでも「見積もり」というテーマはよく扱われる。見積もり精度を向上させれば何%利益率は改善するなんていう「受注側」のメリットを解くものもあれば、人月単価の不透明性や、システム開発現場でのお客とベンダーとの確執を中心に「見積もり」を通じたコミュニケーションのあり方を問うものもある。なんにせよ「見積もり」というテーマは頻繁に登場する極めて重要なテーマだ。

本特集では「見積もり」についての問題をある程度網羅的に扱っているが、その中の一つに人月単価のばらつき、不透明性が指摘されている。

大手ベンダーのコンサルタントの平均単価は263万円。対して中小ベンダーのコンサルタントの平均単価は132万円らしい。その差は約2倍。
中級クラスのSEOの単価でも、大手ベンダーでは最高190万円。最低が95万円と、100万円近い差があったり、中小ベンダーだと、最高120万円、最低で60万円だったり。

ここでは触れられていないけれども、そもそも人月単価はどのようにはじき出されるのだろうか? 
人月単価は会社にとっては一種の管理数値なので、何かしらの係数から導き出されているはずだ。

単純に考えれば、その人の一ヶ月あたりの報酬金額と、会社の労働分配率目標値から人月単価ははじきだされるのではないか。一ヶ月100万円の報酬のコンサルタントがいたとして、その会社が必要としている経常利益が売上の10%だとする。経常利益率10%維持には、固定費から考えた場合、労働分配率目標は50%となるとする。すると、単純に、このコンサルタントが1ヶ月フルにある業務にあたった場合、会社としては、人月200万円が最低必要になる。ここでは原価を考えていない。仮に原価が平均40%であるとするならば、その原価を補う分を人月に乗せないといけないだろう。

というような考え方は、もちろん受注側の都合の良い人月の決定法だ。発注側にはその人が報酬100万円の価値があるのかどうかということも疑問だろうし、もっと地代の安いオフィスに引っ越すなどすれば、固定費は抑制できるのではないか、そうすれば労働分配率はもう少し上げても構わないだろう、なんて具合に考えることもできるからだ。

結局は、その人月単価に見合った働きができるかどうかというところで価値が問われる。1日15時間働いていようが月に何百時間とある業務に捧げていようが、その業務の成果でしか人月単価の妥当性は判断されない。しかし、ここにも売り手と買い手のギャップがある。発注側が見えない部分で稼動している受注側の価値ある行動ってのも必ずあるからだ。もちろんそれを受注側は可視化していく努力は必要だろうが、可視化するためにさらにコストがかかるというのでもあまり意味がない。このあたりのバランスは難しい。

本特集でも、「ベンダーに行ってほしいのが、生産性と品質を高めるための具体的な施策と管理指標を、見積書に記載することである」と触れられている。生産性向上の施策としては、開発プロセスやマネジメント・オフィスのせっち、生産性の管理指標としては時間当たりの仕様書作成ページ数や、時間当たりのコーディングやレビュー量、コンポーネントを用いた流用化率など。
確かに、人月ン百万という人間が毎回会議にでたり、仕様書を書いたりするのに○時間なんてかけてたら、発注者側としては納得いかないところもでてくるだろう。あらかじめ生産指標みたいなものを提示しておくということは重要かもしれない。でも、これをやればやったで、その生産性指標の妥当性、適正が問われるのだろうなぁと。

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