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2003年09月09日

PMプロジェクト・マネジメント

PMプロジェクト・マネジメント

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プロジェクト管理の概念として、
時間を扱うときには、「可変時間作業」と「固定時間作業」に分けて考えることが大事らしいです。

当たり前の話なんですが、以前から、どうもクライアントや代理店が「人を増やせば時間が短縮できるだろう」「このスケジュールでできないのは体制が不足しているだろう」というようなことを言われることがちょくちょくあり、どう説明するのが一番わかってもらえるだろうかと頭を悩ませていたので、この言葉に出会ったときに、「これだ」と思ったわけです。

「可変時間作業」とはすなわち、「人・モノ・カネ」の「資源」の量によって所要期間が変わる作業。
「固定時間作業」とは、「資源」の増減によって所要期間が変わらない作業。たとえば、東京から仙台まで機械装置を運ぶのに4トントラックで5時間かかるとする。この業務は、人を増やしても時間が短縮されるわけではないと。

ウェブ構築のプロジェクトにおいても、業務を解体した後は、それぞれの業務が、「固定作業時間」なのか「可変作業時間」なのかを明確にすれば、クライアントにも説明しやすくなるのかなと思いました。

また、「可変作業時間」の場合、「じゃぁ人(カネ、モノ)をもっと増やして、時間を短縮してよ、というようなオーダーがあった場合は、他の作業時間に「変数」が加わるということも重要です。

プロジェクト管理では、「40時間の法則」というものがあります。これは、あるプロジェクトのWBSを作成した場合に、もっとも末端レベルの個々の作業は、40時間以下で完了できるものにしなければならない、というものです。

プロジェクトとは、40時間以下のMECEな個々の作業の集まりとして考えられるわけですが、個々の作業時間に対して見積もった時間(最初に見積もる場合には、過去の経験則などからこれぐらいだろうという予測によって数値を入れる)に対して、「変数」を加えていくのです。

たとえば、この作業に似た作業は過去に経験があるが、過去の経験と少し異なるところがあるので、+20%の変数。あるいは、この作業の管理者は経験豊富だが、実作業を行う人間が経験不足しているので+10%とかっぐいにね。(もちろん、作業時間短縮要因になる変数もある)

先の例でいくと、可変時間作業に対して、人を投入した場合、可変作業時間自体は減りますが、それによる管理工数が増えるところを、変数として何パーセントかということを決定して、該当作業につけておく。

すると、作業時間の見積もりには、「初期見積もり時間」と「バッファを見た見積もり時間」の両方を同時につくれるというわけです。

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2003/09/09 00:51

2003年06月04日

亡国のイージス

亡国のイージス 上

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亡国のイージス 下

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亡国のイージスを読んで、主体性ということをかんがえた。

戦後思想と主体性なんてテーマはさんざん語りつくされてきた。日本という国家、民族の主体性は何か? 日本人ぐらい「主体性」という問題を問いかける民族はいないのではないか? 江藤淳にせよ、加藤典洋にせよ、「主体性」のオンパレードだ。

「主体性」という言葉が持ち出されるとき、それがそもそも何を意味しているのかという問題はあるが、主体性という言葉で言い表されるような、主体の能動的態度というか決意というか、そういうものをわざわざ意識して持ち出さなきゃならないことこそが、日本の主体性のなきことを露呈しているのではないか。

主体性というものを必要とするというその事態にこそ、主体性の問題は潜んでいないか。

そもそもだ。主体性という言葉にぴったりあてはまる言葉は欧米には存在しないのではないか? subjectivity は違うだろう。subjectそのものが違うのではないか。主体は自足的なもので、わざわざ確認しなきゃならないものなのだろうか。

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2003/06/04 18:17

2003年05月23日

ノヴァーリスの引用

ノヴァーリスの引用集英社文庫

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新幹線に乗る前には必ず本を買う。
昨日も大阪に帰る新幹線に乗る前に、東京駅構内の本屋に立ち寄り、本漁りをしていたところ、「ノヴァーリスの引用」が文庫本として平積みされていた。

奥泉光は昔から好きで、ハードカバーで発売されるや買ってる。文芸誌に掲載されれば普段は買わない文芸誌も買う。「ノヴァーリスの引用」についても、随分前に読んでいる。もうほとんど内容も覚えてないので、読み返してみるか、ということで購入することにした。

奥泉さんの書く小説の根本には、いつも現実というものがおそろしく危うい基盤に立っているという認識がある。
「ノヴァーリスの引用」も、大学時代に自殺したと思われる男とそれにまつわる物語を、同級生たちがふとしたおりに探偵趣味よろしく、「あれは他殺ではなかったか?」と推理をめぐらせることから始まる。推論の過程で、「過去」という「物語」が自分の都合のよいようにつくられていくのか、ということが明るみになっていくのだ。
しかし、「推理小説」との決定的断絶は、推理小説がある一点の真理(真犯人/トリック)というものに向かって、物語は収斂していくのにたいして、この小説では、むしろ「現実」の多義性というか多層性というものにむかって拡散していくところか。

登場人物達は、その人物の「死」にさまざまな物語を付与していく。この遊戯は、「死」という特異状況を題材にしつつも、実は私たちが普段から何気なくしている思考様式の相対化ではないか。

寺山修司はかつて、現実と虚構というニ項対立があるのではなく、虚構的虚構と虚構的現実の対立なのだ、というようなことを言っていた。

過去も現実も未来も。私たちはつねに「物語」を生きる。
社会や国家が提供してくれた巨大な物語が崩壊した今、わたしたちはわたしたち自身の物語化(虚構化)を行い、たえず生を活性化させていかなければいけない存在なのだ。

マーケティングには何の関係もないように思えるが、マーケティングもやはり大きく変わった。それは現実に生きる人々が依拠する「物語」が変わったからではないだろうか。(あまりにも強引すぎるか....)

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2003/05/23 03:22

2003年05月19日

グレートゲーム・オブ・ビジネス―社員の能力をフルに引き出す最強のマネジメント

グレートゲーム・オブ・ビジネス―社員の能力をフルに引き出す最強のマネジメント

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今日の「がんばれ社長
に『グレートゲーム・オブ・ビジネス』がとりあげられていたので、読み返してみることにした。

『グレートゲーム・オブ・ビジネス』では「オープンブック・マネイジメント」というマネイジメント手法をビジネスに持ち込むことが提案されている。

「オープンブック・マネイジメント」の考え方は至極単純で明快だ。会社の財務情報を社員にきちんと公開すること。そして数字の意味、判断の仕方を社員に教育すること。これにより、ゲームに参加する感覚で社員に事業に参加してもらうというただこれだけだ。

この手法では、まず原価の抑制が効く。徹底したベンチマークをそこに持ち込めば、社員一人一人に原価の低減という意識が生まれる。

しかし、原価を抑制してもそれは売上向上には繋がらないのではないだろうか? 個人的にはオープンブックマネイジメントは、成熟産業、製造業では極めて効果的かもしれないが、無形財ビジネス(サービス業や情報産業)では、効果がないわけではないだろうが、著者が社長を務めた会社のような成功は難しいのではないかと思うのだ。

財務諸表の数字をいくらいじくっても、売上をあげるための施策というのはなかなな導き出せない。なぜか? キャッシュインは、顧客からもたらされるからだ。財務諸表上では顧客に関する情報は極めて少ない。通常のP/Lでは、入ってくるお金の項目は営業外を除けば「売上」だけなのに対して、出て行くお金はそれでも細かい。細かくしようと思えばいくらでもできる。この「ゲーム」で売上をあげていくためには、もっと「顧客」の情報を増やした独自の財務諸表が必要だろう。それは各業界や業種によって異なるものかもしれない。

(かといって、ABC分析やRFM分析をやって、おー、うちの売上も80:20の法則にあてはまってるぞ、などと分析することでもないことはもちろんのこと)


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2003/05/19 18:07

2003年05月16日

ブランド!ブランド!ブランド!

ブランド!ブランド!ブランド!

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英国鉄道の重役たちが、アラン・ブランディー&マーシュ社を訪れた際、彼らは受付で無礼な応対を受けた。さんざん待たされた挙げ句、彼らを会議室に案内したのはボサボサ頭の従業員だった。しかも、案内された部屋は汚れ、食べ残しが散らかっていた。さらに待たされて、話をしに入ったのは、やる気のなさそうな連中だった。
 彼らが気分を害して部屋を出ていこうとしたとき、広告会社の人間が言った。「皆さん、今日は特別な対応をさせていただきました。英国鉄道の顧客がどういうサービスを受けているかを示すためです。貴社が抱えている本当の問題は、広告ではなく、従業員です。広告の仕事を始める前に、従業員教育のお手伝いを提案します」。こうして、この広告会社は仕事を手に入れた。
 もちろん、ピーター・ドラッカーが言うように、「事業の成果は、従業員の幸福ではない。満足して製品を何度も買ってくれる顧客である」。

ブランド構築のためには「関係」が非常に大事で、その「関係」はあらゆる顧客接点において考えられなければならない。広告や商品やロゴマークだけの問題ではなく、従業員、販売員も含め、すべての[]コンタクトポイント[]でブランドの約束を守らなければならないわけだ。

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2003/05/16 03:31