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2006年11月05日

いまさらながら「すごい会議」を

すごい会議』は発売当初に読んだのだが、最近再び読み返してみた。たまたまとあるプロジェクトで大橋禅太郎さんのマネジメント・コーチを受けた会社の方とご一緒したということもあり、そこでお聞きした話にも刺激を受けた。また、上期を終えて問題は多々ありながらも目標をほぼ達成し、下期または来期に向けて、新たな組織体制、人事によって前向きなムードが芽生えつつある今だからこそ、会社としての目標を再確認し、それをマネジメント陣できちんと共有したい、という思いがあり、もっと前向きで創造的な会議をしたいと再び手にとった次第だ。

すでにあまりにも多くの人が「すごい会議」を実践して、そのことについて書いているのだが、あらためて自身の勉強のため、『すごい会議』について考えて見る。進行方法や手順は本に書かれてあることにのっとるとして、実践してみて疑問に思うところやポイント、こうしたほうがいいのではないかという考えをまとめてみる。

会議の進行手順のおさらい

1)会議の参加者に「うまくいってること」を3つ以上書いてもらい、それを発表してから会議を始める

2)この会議で得たい成果を紙に書いて発表してもらう

3)達成の障害となっている問題や懸念を書き出し、それらを「どのようにすれば~」の形に書き換える。

4)「言えない問題はなにか」を書いてから、「どのようにすれば~」の形に書き換える。

5)「あなた自身のひどい真実はなにか」を答えを書いて発表してもらう

6)「戦略的フォーカス」を参加メンバー全員で創り、合意し、約束する。

7)戦略的フォーカスにニックネームを付ける。それを達成するのに、必要不可欠な担当分野を6程度決める。

8)コミットメントリストに各担当のコミットメントを記入する。

9)「いまから一ヶ月以内に、自分の起こす一番大きな、インパクトはなにか?」を各自が書いて発表する。


■問題や懸念点の解決方法

手順3)、4)、5)は言わば、「問題」「懸念」をその根本的なところまで遡って棚卸しするステップといえる。「言えない問題」というステップを踏むことで、表面的な問題からより深層の根本的な問題をあぶり出していくための質問だ。これらのステップの後に、「戦略的フォーカス」の作成へと進むわけだが、ボクがひっかかるのは、ここで棚卸しされた問題の解決案、解決方法を考えないのか?ということだ。 すでに「どのようにして~」という文章に変換することで、アイディアが出やすくなっている。その状況を一旦宙ぶらりにして、「戦略的フォーカス」に進むのはなぜだろう? 問題を棚卸ししてることによって「戦略的フォーカス」その後のコミットメントリストの作成といったものの土台が生まれているのかもしれないが、すべてでなくともその場で解決可能なことは合意しておいても良いのではないかと思うのだ。

『すごい会議』のなかでも問題解決方法が提示されている。
STEP.1 問題点または懸念を「どのようにすれば」という質問に変換、STEP.2 「私の主張では~」をつけて、現時点での状況を15個ほどあげる。 STEP.3 「私の提案では」をつけて、提案、代替案、創造的な解決策、検討の可能性をあげていく。ここからやるもの、やらないものを決めて、アクションを起こすのが適当な人に「リクエスト」を行い、コミットメントリストを作成する(担当者/期日/望まれる成果)。ミーティング終了前に、残った問題を誰がいつまでに解決するか(またはとりあえず放っておくか)を合意する。
この集団解決方法を、5)の後に置いてはどうかと考えている。これだけで、会議はおそろしく長くなってしまうだろうが、せっかくあがった問題や懸念点、それにたいして解決策がでやすい雰囲気が生まれているのだから、そこでできる解決のためのTODOは決めてしまったほうが良いのではないかと思うのだ。

・・・と思っていたのだが、ここを見ると、「
これは、意見は集めずに、「どのようにすれば○○か」という文章を集めるだけです。」との回答があった。
また、「手順6,7,8(※このエントリーでは3)、4)、5)のこと)は答えを作る場所ではないのです。」「問題を前向きな形でたな卸しするだけです。「答え」を提示する人がいたら、それはストップします(経営者自身がやってしまい そうになることも多くみます)ここで、誰かが「答え」を言ってしまうとドチッラケなのです。 その答えが、各自、 意識的または無意識のうちに手順11でコミットメントとしてその解決策が約束される可能性を最大化するためにやっているとお考えください。」という回答が...

なるほど。手順3)、4)、5)はあくまでもコミットメントの際に参照するためのものなのか... 

しかしこのFAQの存在は知らなかった。「1,3,5,2,4,6,7,8,9,1 0,11,12です。最初の1,3,5が準備段階で一人でやる部分で、2からが参加者と一緒にやる部分 です。」というのは手順を重視する「すごい会議」ではとても重要なことではないか。うーむ。後でこのFAQと手順を読み返してみてもう一度整理してみよう。

少し話は変わるが、そもそも「すごい会議」は、会議の効率を上げるための手法ではないということ。これは見落としがちだけれどもしっかりと理解しておかなければならない。
もちろん「すごい会議」は結果的には会議の効率を上げてくれるものではあるけれども、先に「効率の改善」を考えていると、おそらくうまく機能しない。そもそも会議は効率的かどうかよりも先に効果的かどうかを問わなければならない。どれだけ効率的でも、効果的ではない会議は意味がない。果たして今、会社で開かれる種々様々な会議が効果的かどうかということを問うてみよう。そして、効果を生むための会議手法として「すごい会議」の導入を考えると良いだろう。実際、最初に「すごい会議」を開くと、かなり時間がかかる。しかし、「すごい会議」でかけられた時間は、通常の会議のように時間のほとんどが「コメント」の交換だけで終わる会議より、ずっと大きい効果を得ることができる。


■会議の発言をファシリテーターがコントロールする

『すごい会議』の中で、会議の中での発言を「提案」「リクエスト」「明確化のための質問」の3つに絞るという方法がさらりと提示されている。このテクニックだけでも本書を手に入れる意味があるのではないかと思う。『すごい会議』の中で、大橋禅太郎さんがあれやこれやとこれじゃうまくいかないんじゃないか的な発言をしていたとき、ハワードさんが「では、おまえの提案はなんだ?」と聞いている。うまくいかなり理由を指摘するときは、「代替案を提示」しろということだ。ちょっとしたことだけれども会議内でファシリテーターがこの一言を発せるかどうかは鍵だろう。「リクエスト」の際には、「誰が」「特定の日付と時間」「そして、なにをもって成功とするのか」ということを記述するようにする。会議前のルールとして、会議では原則「提案」「リクエスト」「明確化のための質問」という3つのどれかを意識して発言してもらうことを説明しておくと良いかもしれない。
ちなみに、『すごい考え方』では会議では「一般的な意見」「提案」「コミットメント」という3種類の発言があり、会議の目的は最終的に「コミットメント」を得ることとしている。「一般的な意見」の中から「提案」につながる要素を抽出したり、そこから「コミットメント」を導き出したりという役割がファシリテーターには求められる。
書いてから発表する、という方法をとることそのことが、実は「コメント」を減らすことにもなるので、まずは面倒でもとにかく書いて、整理して発表するという手順を徹底させることも重要だろう。


■1つの戦略的フォーカスに収斂させる方法?

手順6の参加者全員で「戦略的フォーカス」を創り、合意するというところ。「X年Y月Z日までに~~~(なんらかの数字または測定できること)~~~を達成することによって、~~~(欲しいインパクト)となる。」という3行の文章を完成させるというステップだが、ここの進め方がいまいち理解できていなかった。ここでも、1人1人がこの文章を完成させて読み上げていくわけだけど、最終的にはそれを1つにまとめあげなければならない。「すごい会議」の第四章では、そのまとめあげかたは書かれていない。なんとなく意思決定者が最終的に決定を行うのかなというレベルなのだが、それで良いのだろうか?

意思決定者が最終決定を行うとして、せっかく1人1人があげている戦略的フォーカスだ。これをうまく収斂させてチームの目標にできなければ、その後のステップには意味がないのではないか。
1つの方法としては、全員の戦略的フォーカスが出そろった段階で、今度はそれらの戦略的フォーカスを包括するさらに上位概念の戦略的フォーカスを全員に考えてもらう、というステップをとる方法。そうやって可能な限り上位の包括的戦略的フォーカスをつくっていき、最終的に意思決定者によって決定する。最終の戦略的フォーカスへの合意の際にも、まず自分がベストと思うものを提示し、自身のアイディアが採用されなくてもなされた意思決定が正しく機能するためにサポートしていく姿勢を生み出す。


トップマネジメントから「すごい会議」を導入する

全員で目標をつくり、コミットメントリストをつくり、ということで考えると、「すごい会議」は合議に基づくボトムアップ型のマネジメントスタイルのように思える。「戦略的フォーカス」などは、トップマネジメントでつくり、それを達成するために各階層のマネジメントが行われるというようなトップマネジメントスタイルを志向する会社には適合しにくそうなイメージがある。トップマネジメントで「すごい会議」を実践するなら、そこで合意された「戦略的フォーカス」が会社目標となるから問題はないのだろうが、ある部門やある階層のメンバーで行うとなると、下手するとそこでできあがる戦略的フォーカスが、会社の方向性とそぐわないものになる可能性もあるのではないか。

そういうことが起きないようにするためには、結局、会社としての「戦略的フォーカス」と「コミットメントリスト」を社員全員が知っておかなければならないだろう。これは当たり前のことのようだけど、実際、売上目標などの数値目標以外、会社がどういう方向を志向し、どうなろうとしているのかということを社員一人一人にまで理解してもらうことは大変なことだ。まずはトップマネジメントが「すごい会議」でしっかりとした戦略的フォーカスとコミットメントリストをつくり、その目標にむかって邁進し、その成果を達成することのインパクトやすばらしさを伝えていくことが必要なのだろうと思う。

すごい会議-短期間で会社が劇的に変わる!
すごい会議-短期間で会社が劇的に変わる!大橋 禅太郎

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starいやはやスゴイ・・導入は至難の技
star書籍の内容はともかく・・・
star非常に重要なことが2つ分かった

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2006/11/05 17:44

2006年10月13日

ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する

ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する
ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造するW・チャン・キム レネ・モボルニュ 有賀 裕子

ランダムハウス講談社 2005-06-21
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star正しすぎて、読むと眠くなる戦略?
star事例くらいしか役に立たない。
starマーケティング本のブルーオーシャン

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なんでも31カ国で翻訳されてるそうで、これはポーターの「競争の戦略」の19カ国を上回るそうな。ビジネス書としては超ベストセラーだ。

「ブルーオーシャン」とは競争のない未開拓市場のこと。一方で、競争相手がひしめき熾烈な競争市場を「レッドオーシャン」と呼ぶ。本書では企業は「ブルーオーシャン」を見つけ出し、その海に乗り出していかなければならないと説く。

と、書けば、「競争のない未開拓市場」なんてものがあれば、誰だって参入したいよと思うだろう。今さらそんな都合のよい市場があるかいなと。しかし、ブルーオーシャンは、単なる新規市場ではない。むしろ、既存の市場の延長にあるケースがほとんどだ。ある意味では今までの「差別化」や「ポジショニング」といった概念と大きく変わりはないのかもしれない。本書では「市場の境界を引き直す」という言葉を使っているが、結局のところ、市場において多くのプレイヤーが競争要因として捉えてるところとは異なる競争要因を見つけ出そうということだ。

Web制作会社だと「企画力」や「プロデュース力」や「プロジェクトマネジメント」「クリエイティビティ」「システム開発力」「スピード」「価格」みたいなところを強みとして競争してるかもしれないが、こういったどこの会社もが高めようとしている要素・価値ではないところで、顧客が期待する新たな価値を発見するということだ。

本書では「ブルーオーシャン」を見つけ出し、そこに乗り出すためのいくつかのフレームワークが提示されている。機会があれば、一度、ボクらの市場もこれらのフレームワークを使って見直してみると、何か気づきがあるかもしれない。

■分析のためのフレームワーク
Q1.業界常識として製品やサービスに備わっている要素のうち、取り除くべきものは何か
Q2.業界標準と比べて思いきり減らすべき要素は何か
Q3.業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か
Q4.業界でこれまで提供されていない、今後付け加えるべき要素は何か

■市場の境界を引き直すための6つのパス

パス1.代替産業に学ぶ
例)映画館の競争相手は、映画館だけではなくレストランも。「外出して楽しい夕べを過ごす」という目的から見れば同じ。

パス2.業界内のほかの戦略グループから学ぶ
「メルセデス」「BMW」「ジャガー」は同じ高級車セグメント。

パス3.買い手グループに目を向ける
例)購買者と実際の利用者が異なる場合。利用者に目を向けてみるなど

パス4.補完財や補完サービスを見渡す
例)映画館を訪れる人々→その前にマイカーの注射やベビーシッターの手配

パス5.機能志向と感性志向を切り替える
例)スウォッチは「機能志向」が強かった時計市場に「感性志向」を持ち込む

パス6.将来を見通す
後戻りしないトレンド。

本書の前半はこの手のフレームワークの提示と、それを活用して「ブルーオーシャン」を見つけ出す手順。後半は「ブルーオーシャン」に乗り出すために、どのようにして組織を動かしていくかという、どちらかというとマネジメント系の話になる。「割れ窓理論」を実践して、犯罪率を一気に下げることに成功したニューヨーク市警の裏側の話。どうやって犯罪を減らしたか、というのは「テッピィングポイント」などで知っていたけれども、実際、組織としてどんな風なマネジメントで、現場の警官の意識を変えていったのかということはよく知らなかったので面白かった。

単純に、大勢を動かすには、きわめて大きな影響力のある少数を動かすのが良いという当たり前の話なのだが。「80対20の法則」と同じことだ。
何か大きな組織改革で、全社員の意識を変えなければならないときは、まず、影響力のある少数に徹底して働きかけなければならない。

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2006/10/13 22:12

2006年05月19日

見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み

見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み
見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み遠藤 功

東洋経済新報社 2005-10-07
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star気軽に読めて直ぐに役立つ
star大事なテーマを取り扱っている
star現場力を鍛える第二弾

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まだ会社が小さくて、社員数も少なかった頃は誰が何をやってるかなんて誰もが理解してた。誰が今てんぱってて、誰がどのお客さんの案件やってて、どこのフェイズにいるのか、どんなトラブルが発生しているのか、意識せずとも「見え」ていた。次第に人が増え、情報の伝達の効率性や共通スキルの蓄積などのために部署ができ、業務が細分化され、気づけば「見えない」領域が広がっていた。

そして「情報共有」が経営課題として持ち上がる。「隣の人が何してるかもわからない」なんて悩みが俎上に上がり、掛け声のように「情報共有」が叫ばれる。

しかし、よくよく考えて見ると、当たり前だが、「情報共有」は目的ではない
「情報共有」はあくまでも手段だ。であれば、「隣の人が何をしているか」を把握する必要なんて実はないことも多いのではないか。何かの目的のために情報共有しなければならないのであって、ただ「隣の人が何をしてるか」を理解しても、その目的が達成されなければ意味はない。

昨今、トヨタ流の経営手法が人気で、「見える化」というキーワードもトヨタ経営の重要なワードの一つだけれども、「見える化」というのも一種の「情報共有」だ。

本書では、「見える化」の目的とは、ずばり問題を解決するためと言い切る。そして、「問題」とは「基準や標準の姿と現実に起きている姿とのギャップ」だ。

「情報共有」という抽象的な言葉を解いていくと、それは問題を解決するために、理想と現実のギャップを可視化すること、ということになる。問題を見えるようにすることで、組織がその問題を自律的に(ボトムアップ的に)解決させていくための現場力を養っていくことが必要なのだ。

本書では「見える化」の必要な領域を、「問題」を中核とし、それを取り囲む「状況」「顧客」「経営」「知恵」の4分野をあげている。

「問題の見える化」を以下の5分野と設定している。

1.異常の見える化
2.ギャップの見える化
3.シグナルの見える化
4.真因の見える化
5.効果の見える化

異常が発生していることを見えるようにすること。自らが見ようと意識せずとも見えてしまうような仕掛け(シグナル)を盛り込むことが重要だ。異常を見えるようにすることで、異常へどのように対処していくか、という意識が生まれる。もちろん、それが異常であると判断するには、何が普通か、基準かということが前提として明らかになっていなければならない(ギャップ)。そして、その異常や問題がなぜ発生したのかということが見え(真因)、さらに問題は解決されたのかどうか、どのように解決されたのか(効果)ということが見えなければならない。

私たちの会社にも問題は山積みだ。ただ莫大な問題を前に途方に暮れるのではなく、その問題を自律的に解決していけるための「見える化」を進めよう。

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2006/05/19 00:09

2006年05月17日

規制とは/CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー

CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー
CODE―インターネットの合法・違法・プライバシーローレンス レッシグ 山形 浩生 柏木 亮二

翔泳社 2001-03-27
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star原書で読みましょう
starレッシグに泥を塗った山形浩生
star理解できるまで読め

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会社に転がっていたが、手つかずだったので読んで見た。
電車の行き帰りにざっと読んでみた。大きい本で電車の中で読むのはかなり抵抗があるが...
メモ。

規制」は「法、社会の規範、市場、アーキテクチャ」という四つの制約条件によってもたらされる。
レッシングは「喫煙」という行動を例に説明している。
未成年者の喫煙や路上喫煙時の罰則といった法律的な規制、食事中には喫煙するべきではないというような社会的規範による規制、そしてタバコの値段といった市場による規制、そしてニコチン量やフィルタの有り無しといったタバコのテクノロジーというべきものによる規制。

喫煙という行動の規制はこれら四つが絡み合い生まれる。1つの制約条件を変えると、すべての制約条件は影響を受け、そこに違う関係、様相が生まれる。

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2006/05/17 21:18

2006年04月27日

千円札は拾うな。

先週、なんとか引越をしたのだけれど、まだ家に問題がありすぎて、全然片付いてない。とりあえず寝られるというレベルで、しばらく時間がかかりそうだ。

電車通勤になったので、何冊か本を買った。前から気にいっていたのだけれど、タイトルが狙いすぎてるんじゃないかというまったく個人的な好みで敬遠していた。
でも買って本当に良かったと思った。

千円札は拾うな。
千円札は拾うな。安田 佳生

サンマーク出版 2006-01-20
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この手の経営哲学みたいなものというのは成功者には何かしら必ずあって、ある人はこう言うけど、別の人はまったく正反対のことを言ってる、なんてことはよくある。
どれが正解というわけではなくて、結局のところ、その考え方やポリシーに一貫性があるかどうかということだけが重要なのだろうと思う。ダメなのはある処ではこっちを真似て、またある処ではあっちを真似てというような無節操さなのだろう。

成功する人ってのは、自分が信じているものに自信があり「世間的には」「一般的には」「常識では」というような標準化されたマニュアルからはみ出してしまうことをいとわない。むしろはみ出しているからこそ、差別化でき、競争優位を築いている。
本書で書かれていることを実践していくには、相当の覚悟と自信が必要だろう。

本書の安田佳男さんの経営哲学の根本には、ビジネスとはまず投資だという考え方がある。そして、何十倍、何百倍という投資効率を生み出す可能性があるのは、人材情報、そしてブランドだけだ、と言い切る。

だから安田さんは、まず人に投資する。「優秀な人材には仕事をさせない」という過激な見出しも、裏を返せば、優秀な人に「自由な時間」を与えるほど効率のいい戦略はない、という投資対効果の考えがある。人の最も大切な能力は「新しいものを生み出す能力」であり、優秀な人はそれができる。目先の利益や売上を優先し、優秀な人が目先の仕事をこなすことに追われるほど無駄な投資はない。

社員が恐縮するぐらい大きな金額の決済権を与えることによって、社員にお金の使い方を学ばせたりということも、人への投資の一貫だ。会社とは決済する人が寄り集まっている場であり、社長とは一番決済できる金額が大きい人だ。だから一人一人の決済能力を育てることが、会社の成長にも繋がると考える。

また、本書では何度も登場する言葉で、タイトルにもなっている「捨てる」という勇気。今までの常識や偏見を捨てることによって、新しい価値を見いだしたり、大きな成長ができるのだと言う。「売上を伸ばすために顧客を捨てる」「大切すぎる顧客は作らない」という考え方も目の前の千円札を捨てることによって、より大きなお金を得ることができるという本書のタイトルに繋がっている。

常識や既存の事業の延長でしかビジネスを描けない状況を打破するためには、常識外れの目標を立てなければいけないと言う。これも安田さん流の捨てるためのフレームワークだろう。

残業をやめて週休3日にする」というところから考えてみる。
これはもうビジネスのやり方、方法、プロセス、すべて変えて考えなければならない。今やってることの改善だけでは到底可能にならない。
、常識外れだからこそ、まったく違うやり方、違う方法での解決を見つけ出さなければならなくなる。つまり頭を使わなければならなくなる。
松下幸之助さんの「値切りは半額に、値上げは三倍に」という考え方も根本はそこにある。常識の範囲内、今の延長でしか物を考えられないと、木を見て森を見ず。到底無理な目標があるからこそ、頭を使わなければならない。中途半端に1割、2割の値引きだと、下請けは頑張ってなんとかしようと思うかもしれない。しかし、半額となれば、頑張るでは通用しない。

東京に戻ってきて、いろいろな人から話を聞くごとに、ちょっとまずい状態だなぁと感じる。それは京都の比ではない。急成長、急拡大したツケが来ているということなのだろうか。

しかもボクも含めてだが、マネジャークラス以上全員が、今のビジネスモデルでしか事業を考えられてない。予算目標は昨年対比から自動で導き出され、そこから必要な社員数が割り出されて、採用が開始される... オペレーションができあがりつつあるといえばあるのだが、毎年毎年完全にゴムが伸びきった状態で、多くのスタッフが疲弊してぐったりするほどの状態でなしえたことを前提として、次年度戦略や予算をつくるので、規模が大きくなっていくごとに会社にとってすごく重要なものが疲弊していってる感は否めない。

取扱額が大きいという理由だけで、人を人とも扱わないようなクライアントの仕事が社員に任され、売上比率が大きくなっていけばいくほど、切られると困るという不利な立場に追いやられていく。

本書を読んで、会社のなかのさまざまな問題や課題が一気に駆けめぐり、今の考え方や常識に縛られてては、一向に問題は解決しないのではないかという思いが強くなった。僕たちは、もしかしたら「千円札」ばかり必死に拾っているのではないか。風に舞い、ちらばる千円札を追いかけ、少しでも取りこぼすまじと、人をどんどんつぎこんでは、ひたすら千円札を拾わせている。そんな気がした。

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2006/04/27 12:59