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2004年03月02日

小さな会社は「1通の感謝コミ」で儲けなさい―まごころを伝えるはがき、FAX、メールの総活用法

小さな会社は「1通の感謝コミ」で儲けなさい―まごころを伝えるはがき、FAX、メールの総活用法

小さな会社は「1通の感謝コミ」で儲けなさい―まごころを伝えるはがき、FAX、メールの総活用法

今日は九州出張。朝一で京都を出て、新幹線での日帰り往復。
京都からだと新幹線の方が楽だ。乗り換えが要らないので、一定時間考え事ができるし、本も読める。ということで、行きの新幹線でこの本を読んだ。(残り時間はほとんど爆睡してました...最近ある理由で睡眠時間が異常に短いのです。先週は1日あたり平均2時間ぐらいしか寝られてなくて、ふとした折に睡魔に襲われて、移動中などはコトンと眠りに落ちてしまう)

帰りは別の本を読んだのだけれど、そちらの本とこの本の対比が面白かった。帰りに読んだ本についてはまた機会があったら書くが、本書の竹田さんの考え方と全く違う考え方が展開されていて、それはそれで面白かった。

ところで、ボクがランチェスター理論(法則)に出会ったのは東京に出たばかりの頃だから7~8年前になるだろうか。神田の古本屋街を流していたときにサンマーク出版の「ランチェスター販売戦略」(田岡信夫さん)のシリーズがまとめ売りされていたのを手にした。ずいぶんと古い本だけれど、その理論には少しも古くささを感じず、夢中になって読んだ。(古くささを感じなかったのは単にボクが、ランチェスター理論について無知だったからかもしれないけど)

ランチェスター理論は不況になるとブームになるなんて言われているらしい。今、竹田さんの本に注目が集まるのは時代の要請ってところもあるのかもしれない。

田岡さんの「ランチェスター理論」は、「マーケティングの科学」的側面がかなり強く、戦略部分に重きが置かれているけれど、竹田さんの「ランチェスター理論」には、根本に「経営とは何か」「会社とは何か」という命題があり、そこから「会社のあり方」としてのランチェスター理論が提唱されている。

竹田さんの本は、「小さな会社・儲けのルール―ランチェスター経営7つの成功戦略」と、本書しか読んでないけれど、ボクはこの人の考え方にはすごく共感できる。それは竹田さんの考え方の根本にある部分に共感できるからだろう。

竹田さんの考え方の中心・根本にあるのは「会社は粗利益で生きている」「粗利益はお客からしか生まれない」「しかし、商品をどこで買うかはお客が100%決める。こちら側には1%も決定権がない」という至極当たり前の事実だ。

この当たり前の事実がある以上、会社経営とは、「お客を出発点にして」どのようにお客を獲得し、維持していくのかということを考え、実践していくことだ。これらに全力で取り組まなければならない、と竹田さんは説く。

経営要因をまとめると、以下の4大要因になる。この4大要因はランチェスターの法則の応用からウィイト付けできる。


  1. 営業関連(地域、客層、営業方法、顧客維持):53%
  2. 商品関連(有料のサービス):27%
  3. 組織関連:13%
  4. 資金関連:7%

「1」と「2」をまとめて「お客作り関連」とすると「80%」になり、「3」と「4」をまとめ「内部関連」とすると「20%」になる。「お客作り」と「内部関連」は「4:1」のウィイト配分にしなければならないわけだ。

つまり、1日あたりの業務時間を仮に10時間と考えた場合(普通8時間だろうけど、この業界だと10時間以上はざらだと思うんで....というようことを言ってると御上からお叱りを受けるけど)、8時間は「お客作り」に費やさなきゃならないということだ。
また、当然資金を投入する際にも、この比率が参考になる。「お客作り」に関係する部分にはケチってはいけない、というのが竹田さんの主張だ。

たとえば、電話やFAX。電話しても話中がないようにするために余裕をもった回線を引きなさい、電話やFAXはお客との重要な接点なのだから、そこをケチっていては経営は成り立たないと竹田さんは言う。
そういえば、うちの会社も最近時々話中になることがある。FAXも1台しかないけれど、ページの修正依頼などが大量に舞い込むときには、通話中になることが多い。このあたりは見直しが必要かも。

「お客作り」に関係することを「お客視点」から総チェックして、出来る限りお客に不便を与えてはならない。竹田さんの人間性や人柄が伝わってくる熱い主張だ。たとえば電話の取次ぎも、「お名前は?」「要件は?」というような確認をとらず、すぐに担当に取り次ぐこと。マナー研修では、必ず「お名前」「ご要件」の確認という「取調べ」を教えてもらうけれど、中小企業は、そんな必要はなく、すぐに取り次ぐべきだと竹田さんは言う。さらに、「古参」の社員から電話をとるようにしないさい、とも言う。

こういう主張に接すると、うちの会社などもしかしたら大企業病に罹ってしまう一歩前なのかもしれないと不安になる。電話をとるのは決まって新人だ。、新人が電話をとって、きちんと要件を聞いてから取り次ぐ、なんていう大企業ルールが適用されてしまっている。
これはボクらマネージャーの意識の問題なんだろうな。取り次がれて電話に出たら先物取引の営業や、求人の営業だったりして嫌気が差したりするのだけれども、考えてみれば、当然「お客さん」からの電話の方が圧倒的に多い。営業の電話を断るのだって3分もかかりはしない。なのに不要な電話に出てしまったことが最悪の事態かのように新人を叱ってしまったりする。これは猛省しなくては。

新人は取引先やお客の名前を知らないけれど、古参の社員になればなるほど、そのあたりの知識も豊富なわけなので、ちょっと気の利いた一言だって発せるかもしれない。取次ぎなどもないのでお客さんに不便をかけたりすることもない。上のものが積極的に電話に出るというのは中小企業なら「当たり前」のことかもしれない。「当たり前」のことが出来なくなる、わからなくなるというのは、危険な兆候だ。

本書では、このウェイトの重い「お客作り」に関して、特に「お客の維持」部分についての戦略と戦術を詳しく解説している。
タイトルどおり「感謝コミ」という「感謝」のコミュニケーション量をいかにして増やすかということだ。
たとえば、面白いのは「報・連・相」を実行するときの1番目の対象は「お客」でなければならない(P.94)、なんていう意見。この考え方には「はっ」とされられるものがあった。1番が「お客」。2番目が「上司や社内の関係者」。3番目が「仕入先」。こんなことは考えたこともなかった。このあたりも目からウロコという感じ。

P.97~110にかけていろいろな業界やシーンで「お礼状」を出しているかどうかというアンケート結果が掲載されているのだけれど、この結果を見ると、確かにきちんと「感謝コミ」を実行すれば、それだけでもお客からは驚かれ、喜ばれるだろうなということが想像できる。
そういえば、この業界では知ってる人も多いだろうけれど、今は買収されてしまってなくなったあるメール専門の広告代理店の社長は、お会いしたときや、何かの折には必ず自筆の熱いメッセージが書かれたFAXを送ってきてくれた。(あえて名前を出さなかったけど、わかる人にはわかるよね) 初めてFAXを受け取ったときには、かなり驚いたし、その方の人柄やマメさには関心したものだ。一度FAXを受け取ったら忘れないし、誰かに紹介する時も自信を持って紹介できる。あれも一種の「感謝コミ」なのだろう。

「感謝コミ」の実行は多分、むちゃくちゃ大変なことだ。大変なことだからこそ効果があるのだろうが、これを実行し続けていくことはかなり難しいだろう。たいていの場合、日々の業務に負われて、できなくなってしまうんじゃないだろうか。なので竹田さんは「感謝コミ」を日常業務の一部として習慣にまでしてしまわなければならないと語り、そのための考え方と方法を説明している。
竹田さんは、「感謝コミ」が実行できるかどうかは社長に責任があると言うが、まさにそうだろ。社長(あるいはそれ相応の地位にいる人)が「感謝コミ」の環境や仕組みをきちんとつくって実践していかなければ、社員やスタッフが出来るわけがない。社長やマネージャー陣の責任は重い。

本書を読んでいろんな面でかなり反省させられるところがあった。単なる反省に留まらず、会社内の知識としてきちんと理解し、行動に移せるように、まず出来ることからマネージャー陣が率先してやっていかないとなんないなぁ。

マネージャー陣、本書はぜひ読んでくだされ。CSもね。
(これは身内に向けたメッセージ)

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2004/03/02 00:25

2004年02月29日

「紫の牛」を売れ!

「紫の牛」を売れ!

「紫の牛」を売れ!

セス・ゴーディングの新刊だ。
「紫の牛」とは「PURPLE COW」、つまり、「常識破り」な製品のことだ。セスは「紫の牛」こそがマーケティングの4Pに新たに加わる「P」だと言う。
いまや誰も製品や広告に注意を払わない。これは「パーミッションマーケティング」の時からのセスの一貫した主張だ。そんな世界におけるマーケティングは単に製品を売る、販売するというものではなく、製品そのものに人々の注意を集め、話題を起こさせるような「常識破り」のものがなければならない。

製品のマーケティングの成功そのものを製品自体に組み込む、市場中心のデザインである。

[略]

製品を考案し、デザインし、それに影響を及ぼし、状況にあわせて調整し、最終的に破棄することができないマーケターは、もはやマーケターとは言えない。ただの、でくのぼうだ。(P.130)

「マスマーケティング時代」ではアーリー・マジョリティ、レイト・マジョリティーをターゲットとしていた。「キャズム」ではイノベーターやアーリー・アドプターと、アーリー・マジョリティの間にある溝をどう乗り越えるかということがテーマになっていたわけだけれど、(ちなみに、このキャズムの考え方だけれども、「製品ライフサイクル」理論では、市場シェア10%前後の頃に、プラトー現象という頭打ちの状態がある。ボクは「キャズム」と「プラトー現象」は多分同じものだと思うんだけど。違うかいな?)
キャズムを乗り越えて、マジョリティに製品が受け入れられるようになると、企業は莫大な利益を得ることができる。

こういう考え方の場合、マジョリティに価値があると考えてしまいがちだれけれども、セスは、価値が高いのは、イノベーターやアーリー・アドプターだという。彼らに注目され、熱狂的に愛され、口コミが誘発されるような「常識破り」なものを生み出さなきゃ、「キャズム」を超えることはできないよ、というわけだ。
イノベーターやアーリー・アドプターに注目されようと思えば、大多数(マジョリティ)が受け入れるような「安全で一般的な製品」「誰もが可もなく不可もなく」というような凡庸な製品をつくっていてはダメというわけ。

セスの主張自体は、「パーミションマーケティング―ブランドからパーミションへ」に初めて出会ったときの驚きみたいなものはなかったけど、それなりに面白く楽しめた。
この人の本には事例が豊富なのと、レトリックが独特の毒を持ってる。「パーミッションマーケティング」だって、根本はダイレクトマーケティングなわけだけど、語り口が過激なんで、注目を浴びたといえる。

そう、その意味ではセスはセス自身、セスの書くものがすべて「紫の牛」なわけだね。

セスは「パーミッションマーケティング」や「バイラルマーケティング」にかなり注目が集まっていたけど、「セス・ゴーディンの生き残るだけなんてつまらない!―「ズーム」と進化がビジネスの未来を拓く」はそれほど話題にならなかった気がする。
でも、ボクは「ズーム」が一番面白かった。特に会社経営やマネジメントに携わっている人なら、一読をオススメしやす。

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2004/02/29 23:59

2004年02月25日

感情価格決定法ってただの受容価格帯調査じゃ...

一瞬でキャッシュを生む!価格戦略プロジェクト

一瞬でキャッシュを生む!価格戦略プロジェクト

「一瞬で」ということは、要は、価格を上げて売れりゃ、今までより多くのキャッシュを生むという意味だ。価格を上げる分には、ほとんどコストがかからない。「価格を上げる」というのが中小企業の売上増、粗利増に効果がある。そんなことを著者は力説する。ごもっとも。
でも、じゃぁ自分の商品やサービスがどの程度の価格なら売れるのかってのはよくわからない。つまり、プライシングへの科学がないと。ということで紹介されるのは「感情価格決定法」。

見込み客への簡単なアンケートから最適な価格を知ることができるという調査手法だ。うーむ。しかし、著者はさも凄いことのように語っているけど、「感情価格決定法」ってどこからどう見てもただのPSM(Price Sensitivity Meter)分析。これってそんなに知られていない手法でしょうか?

この手法は「米国コンサルタント、マーティン・シェナルド氏が開発したノウハウ」で、神田氏はマーティン氏の「ノウハウについて数千万円の投資を行い、日本での独占ライセンスを得」たそうで、ものすご~く貴重なノウハウと著者は思い込んでいる節があるけれど、この程度のものなら、いまやデスクトップリサーチでも簡単にできる。

マクロミルのQuick-ANALYZE-PSM分析
http://www.macromill.com/client/service/quickanalyze/index.html

この本で公開されなくとも、たとえば「シンプルマーケティング」の著者森さんのページ(シストラットコーポレーション)でも「最適価格の調査手法」は紹介されている。もちろん無料で。
Googleで「PSM分析」で検索すればいくらでも出てくる。

この程度の情報をパッケージングを変えることや、見せ方を変えることで、ものすごく貴重な情報やノウハウのように見せてしまうのが神田さんの凄いところなのかもしれないけど。

ボクは神田さんの「顧客獲得実践会」には入ってないけど、多分、あそこで紹介されているのは、ダイレクトマーケティングや、一般的なマーケティング・リサーチなどでは当たり前のノウハウの焼き直しがほとんどなんだろうな。ま、本書では神田さんは単なる「監修」だけど。

本書で繰り返し訴えられている「価格を上げる努力をしよう」という意見には反対するところもないし、そもそもPSM分析などを知らない普通の中小企業には、こういう調査方法があるということを知るだけでも自信になるだろう。それはそれで良いことだとは思う。
ただ、PSM分析がまるで神のノウハウかのように扱われているのは、ちょっとまずいような気がする。実際、PSM分析にも問題はあるし、当然、これでプライシングの全てが解決するわけではないからだ。


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2004/02/25 09:33

2004年02月14日

広告の天才たちが気づいている51の法則

広告の天才たちが気づいている51の法則

広告の天才たちが気づいている51の法則

1998年の全米最優秀ビジネス書に選ばれた本らしい。この本のなかにでてくる比喩や逸話、たとえ話、レトリックはものすごく秀逸だと思う。翻訳本を読んでるに過ぎないとはゆえ、これぞ「言葉の力」と思わせるものがこの本にはある。

この手のマーケティング書ってのはたいていの場合、著者の主張を裏付けたり、説得力を高めたりするために、精緻な調査の結果得られたデータや情報を持ってきたり、心理学的な実験や研究成果をひっぱってきたりする。
しかしながら、この本のなかでは、(おそらく)意図的にそのような「科学的な説明」は避けられている。

たとえば、広告キャンペーンを打つことは、エンコしたクルマを押すことに喩えられる。エンコしたクルマを押すとき、最初に少しでも動き始めるまでには相当な力必要だが、動き始めればあとは慣性の法則に従って、最初に必要としたほどの力も必要なく動かすことができる。
広告キャンペーンも同じだ。効果を出すまでの第一歩は大変だけれど、一度効果が出始めれば、たとえやめてもしばらくの間は効果が持続する
広告キャンペーンにも「静止している場合はその静止状態を続け、動いている場合には、同じ方向に動き続けようとする」慣性の性質があるということだ。

なるほどと思う。このようなたとえ話は、信憑性云々よりも読み手のなかにすっと入りこんできてしまう。大量のデータやそれを裏付ける調査結果、事例をいくつも提示されるよりも馴染みやすく覚えやすい。
「法則」みたいなものは、比喩やたとえ話に絡めると、実はすごく覚えやすいのだなということがわかった。本書では51の法則(といえないものも多いけど)が説明されているけれど、おそらく普通のマーケティング・ビジネス書類でこれだけの数の法則が書かれたらまず覚えきれない。でも、本書の場合なら、広告とはまったく関係のない話や身近に転がっている事例などに絡めて、重要なことが語られているので、一読しただけでかなりの数の法則が身についたような気がする。

1つ1つの話もコンパクトにまとめらているので、どこから読みはじめてもいい。とりあえず手元においておいて、ちょっとした時間にぱらぱらとページをめくるだけでも役に立ちそうだ。

法則26「ということは、つまり」
売り込みの文句の最後には「ということはつまり」ということばをさりげなく添える。すると、自然と製品の「特長」ではなく、「効用」を自然と話せるようになる。

「このクルマのエンジンはV8です。ということはつまり、長持ちする、ということになります。小さなエンジンのように目いっぱい仕事をさせる必要がないからです。そのうえ、追い越すときのパワーも十分、そして、これが最も大切なことですが、事故に巻き込まれそうなときにも、一気に加速して回避するだけの能力があるわけです。」 「このダイヤモンドの透明度はSI-1です。ということはつまり、人間の目には全く不純物が見えない、このすばらしい美しさを損なうものは全く何もない、だれかが手にとって確かめても、このダイアモンドの欠陥は突き止められないだろう、ということです。」
なるほど。

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2004/02/14 02:46

2004年02月13日

儲けを生みだす表現力の魔法―感動は設計できる

儲けを生みだす表現力の魔法―感動は設計できる

儲けを生みだす表現力の魔法―感動は設計できる

人身事故で新幹線がとまっていたときに読んだ本。
著者は「100万人感動倶楽部」なる会員組織を主催する自称「感動プロデューサー」だ。

下手するとそれこそ30分もかからないうちに読み終えてしまいそうなぐらいに文字数が少ない本だし(やけに空白が多い。1ページの文字数が少ない。小林恭二の小説みたいだ)、書かれてあること自体は他でもよく見られるものでとりててて目新しさはないのだけど、説明や考え方の見本として使われる題材や比喩が演劇や映画、歌舞伎といった分野だったりして、ボクにとってはちょっと新鮮だった。ボクはもともと8mm映画を撮ってた人間なので、映画や演劇のことはある程度知っているつもりだったけど、たとえば、戦略を「脚本」、戦術を「演出」、「戦闘」を「表現力にたとえるような発想は全然なかった。(著者は「戦略」や「戦術」「ターゲット」「攻略」といった言葉が、「戦争用語」だという点に疑問を感じる。「誰に勝つ負ける」なのかと。こういう考え方・視点は面白い)

著者が主張しているのは実に単純なことで、とにかく顧客を感動させようということだ。それも心の底から、本当に感動させなくちゃならないと。感情を揺さぶるには表現力を鍛えるしかない。では、その表現力を誰に学ぶか。それはそれを一番知ってる人に学ぶのが良い。それは常にお客さんが感動したかどうかを価値基準とし、それを実行している演劇の役者や脚本家、映画監督、俳優、ディズニーランドのキャストといった人達を参考にしようということだ。

著者自身、演劇をやってきたことで、演劇とマーケティングを融合させ生み出した「感情」に働きかけるマーケティング手法を生み出し、それを著者は「ドラマティックマーケティング」と名づける。

マーケティング手法の名前はどうでもいいけど、神田さんは自身のマーケティング手法をはじめ「エモーショナルマーケティング」と言った。こちらも顧客の「感情」という普遍的で変わらないもの(と、神田さん自身は考えている)と考え、そこに焦点をあわせたマーケティング手法だった。
神田さんがダイレクトマーケティング業界で培われてきた考え方や、心理学的アプローチを採用し、顧客の心理的側面、反応をマーケティングにうまくいかすための施策を語るのに対して、平野さんは、顧客の感情を階段を上るようにして、これでもかこれでもかと高めさせていくことで、「感激」してもらうことが大事だと説く。
神田さんが「変化球タイプ」なら、平野さんは「直球勝負タイプ」といったところだろうか。もちろんどちらが大事とか重要とか偉いとか、そういう話ではない。重なる部分は多いけれど、タイプとしては全然違う。

顧客の感情段階とは
著者は「感動は設計できる」と主張している。「感動」は「顧客満足」という次元にはない。そのことをわかりやすく次のような公式を使って表現している。

顧客の期待>実行
は不満・クレームにつながり、
顧客の期待>>実行
は、怒りや「こんな商品買っちゃいけない」という口コミにもつながる。

顧客の期待=実行
ならどうか? もちろんこれなら「顧客満足」につながろうだろう。でも実は「顧客満足」が高くてもブランドスイッチは起こる。本書でも取り上げられているGMの調査は有名だ。90%の顧客が「満足した」「とても満足した」と答えたのにも関わらず、買い替え時にGMの車を選んだのは僅かだったという結果だ。この結果はよく単なる「顧客満足」では、ブランドスイッチを防ぐことはできないという事例の典型としてよく使われる。

では、著者はどう考えるか。
顧客<実感 を提供することだ言う。
期待通りの「実行」ではなく、期待を超えた「実感」を提供すること、これしか成功の秘訣はないと言い切る。

さらに、
顧客<<実感
では顧客は感激し、
顧客<<<実感
では感謝や熱狂のレベルになる。

つまり、提供すべき感情のレベルは、

怒り<不満<満足<感動<感激<感謝・熱狂

ということになる。

「満足」という地点に立ち止まらず、「感動」さらには「感激」、そして「感謝・熱狂」という境地にまで顧客の感情を持っていかなければならないというわけだ。

カンカラコモデケア
感動を巻き起こすためには、「表現力」を鍛えなければならない。伝わらなければ、感動など到底起こすことはできない。ということで著者は、「表現力」を磨く方法や、感動させるための表現方法などをレクチャーしてくれる。
いくつか面白いものがあったが、1つだけメモ代わりに取り上げておく。それは「カンカラコモデケア」だ。

毎日新聞広告局長だった故山崎宗次さんが主催した「山崎マスコミ塾」の中で語られた伝説の作文術である「カンカラコモデケア」。
「表現」に「カンカラコモデケア」を盛り込むことで、より伝わる表現になるというものだ。(ボクは「カンカラコモデケア」という言葉は聞いたことがあったが、誰がつくったものかは知らなかった。検索してみると、がんばれ社長では、評論家の扇谷正造さんが著作のなかで書いていたとされている。)


  • カン
    感動」:文章に「感動」を入れる。「はっ」とするような驚きや発見、自分が感じた感情を入れるということ。
  • カラ
    カラフル」:視覚の大きな要素、カラー(色)を入れる

  • 今日性」:旬な話題、情報を入れる。

  • 物語性」:ストーリーを語ること

  • データ」:データを入れる

  • 決意」:強い思いやメッセージを入れる

  • 明るさ」:明るい未来を感じさせるもの、文章自体の明るさ

ボクの書く文章には、基本的に「カンカラコモデケア」が欠けてるなぁと痛感。
「カンカラコモデケアカンカラコモデケアカンカラコモデケア...」と、念仏のように唱えてこれから文章を書くことにしよう。

カンカラコモデケアについては、以下のページにも詳しいことが載っている。参考までに。

カンカラコモデケアの法則
http://www.willseed.co.jp/diary/html/200307/25.htm

がんばれ社長!-文章力を鍛える-
http://www.e-comon.co.jp/magazine_show.php?magid=256

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2004/02/13 01:14