ウィリアム・エグルストン [William Eggleston’s Guide]
市橋さんの写真集のことを書いた勢いで、なぜかウィリアム・エグルストン。
誕生日プレゼントで妻から「William Eggleston’s Guide」という1976年のニューヨーク近代美術館での展示会の図録をプレゼントしてもらったのだ。
William Eggleston’s Guide [Facsimile] (ハードカバー)
しかし、ここに載ってる写真のどれも凄いこと凄いこと。1枚の写真の持つ意味の芳醇さ。どの写真にも「物語」が横たっていて語りかかけてくるようだ。でも、その「物語」が何かの社会的なメッセージや思想と結びついているかというと、そうではなく、ただアメリカ南部の素朴で普通の生活と日常があるだけだ。しかし引き込まれてしまう。
そもそも純日本人のボクにはミシシッピー州やテネシー州には何の思い入れもないし行ったことすらない。しかも、エグルストンが切り取る光景は「決定的瞬間」とはほど遠い、変哲のない時間だ。にも関わらず、そこにボクは哀愁と愛着の入り混じった感情を抱いてしまう。写真をしげしげと眺めてはそこに流れる時間や物語を想う。
海外の小説とかを読んでいて、全く文化も違うし、考え方も違う世界の話なのに、どうにも懐かしさと愛着が沸いてしまうことがよくあるけど、それに似た感覚だろうか。
ウィリアム・エグルストンという名前は、ニューカラーの代表としてよく知ってはいて、いくつかの代表的な写真も知ってはいたもののの、まとめて見たのは初めてだった。まったくこの図録は吃驚した。そもそもそんなに多くの写真集を見ているわけでもないので、ボクの感想などたいした意味もないのだろうけど、しかし噂にたがわぬすごい図録だ。
オリジナルプリントとか個展だとどれだけのものだったのだろうか。一度でいいから本物を見てみたい。