より大きい価値や成果のために

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創業して3年目だったろうか。

東京事務所を開設しようということになり、ひとまず単身でボクが東京に行くことになった。なぜ、ボクみたいな営業下手が東京に行くことになったのか、その頃の経緯は覚えていないけど、多分、ボクが担当していたある大手のお客さんが東京のお客さんだったということが大きいんだろう。
東京最初のオフィスはある企業さんに間借りする形でスタートした。

当時、東京のお客さんというのはその大きいお客さんとあと数社ぐらいだったと思う。

間借りしている会社の社長さんにはいろいろな会社への営業に同行させてもらったりして、そこからポツリポツリと新しい仕事が生まれたりもしたけど、ほとんどの稼ぎは、元々京都にいた頃に獲得したそのお客さんからの仕事からが殆どだった。

その仕事は、今思えば、内容としてはたいした仕事ではないのだけど、毎月100万円ちょいぐらいの運用費みたいなものが頂ける仕事で、当時社員が数人だったうちの会社にとっては命綱みたいな仕事だった。

結局、その仕事はなんだかんだと4年近く続いたと思う。

その間にも会社は成長していった。事務所も間借りから、自前のものになったし、社員も増えた。でも、その案件の主担当は相変わらずボクがやってた。

会社全体としての売上は伸びてはいるものの、それでもそのお客さんからの売上や利益はまだまだうちの会社には大きいシェアだったし、そこはなんとしてでも死守していかねばと、ボクも使命感に燃えていたと思う。

ボクはその案件でかなりの時間をとられてたし、また、緊急の対応や無茶な要求にも応えていた思う。スケジュールが厳しくて、まともに寝られない日々が続いたり、実際、倒れて立ち上がれなくなってしまったことも何回かあった。気付いたら鼻血がでてたり、過労のせいか、真っ直ぐに歩けなくなってたり、耳鳴りや頭痛が続き、並行感覚がなくなったことも何度もある。

若かったからなんとか出来てたけど、今は到底無理な体力勝負の泥臭い仕事だ。

当時はこのお客さんは自分にしかコントロールが難しい、仕事も内容が多岐に渡るんで自分がやるしかない、他の人に引き継ぐのは難しいと思っていた。お客さんからも、ある程度の信頼は獲得できていたので、別の人がやることでクライアントの不信感に繋がり、案件を落としてしまっては元も子もない。

なので部分的にはスタッフにサポートはしてもらうものの、大部分の業務は一人でやってた。業務が大変だから、他の人に引き継いだら、その人が可哀相だろうとも思っていて、自分が犠牲になれば、会社にも大きい利益があるのだからそれでいいんだぐらいに考えていた。

こいう犠牲こそがリーダーの役割であり、グループの長の宿命みたいなものだと自分に言い聞かせていたのだ。

けど、実のところは、引き継ごうと思えば、なんとでもなったのかもしれない。

色々な理由や大義名分はあるけど、本質は、引き継げないではなく、引き継ぎたくなかったんではないかと思う。

当時、自分がどう考えていたかはもう覚えてもいないし、今までずっと、「引き継ぎたくても引き継げなかった」という文脈で過去を回想していたということもあり、実際どうだったのかは自分にもわからない。

でも、人間なんてものはセルフイメージを維持するために、知らぬ間に自分自身に嘘をつく。内心はそうじゃないとわかってても、自分の能力や立場や役割みたいなものを守るために、様々な偽証を働くものだ。

多分、あの頃、ボクはその仕事を、その案件を人に取られたくなかったのだ。
でなければ、あんなに頑なにあの仕事を自分でやり続けるわけがない。今、思えばいくらでも引き継げるチャンスもあったし、人もいたはずだ。

本来自分がやらなければならなかったことや、やるべきことから目をそむけるために、この仕事の忙しさを言い訳にしていたんではないかと思う。

他の人に引き継いでしまったら、自分が育ててきたお客さんを失ってしまうなんて、まるで自分一人の力で案件を獲得して維持してきたかのように思い込んでいたし、また、毎月継続的に安定的に粗利を産み出してくれるお客さんの担当でなくなってしまうということは、自分は同じような利益を生み出すための新しいお客を獲得しなければいけない立場に立つということを意味するわけで、営業が苦手なボクとしては、そういうところから逃れたいという思いもあったに違いない。

でも、当時、本来ボクがやらなければならなかったのは、そのお客の仕事を自分以外のメンバーもが対応できるようにしていき、自分がまた新しい仕事、お客さんを獲得していく、会社の環境や働き方を変えていく、そういうところだったのだと思う。

当時の東京事務所ではボクはリーダーだったし、職位もかなり高かった。職位が高い人間は、職位が高いからこそ出来る仕事、職位が高いからこそやらなければいけない仕事に時間を注ぎ込まなければいけない。

そのボクが、特定のクライアントの案件で時間をとられているというのは、会社全体で見てみたら全然好ましくない。確かに、そのクライアントで粗利は稼げているかもしれないけど、結局、ボクのキャパやそのクライアントのキャパで制限がかかってしまう。

結局、そのクライアントへの依存度が高くなり、会社としてのリスクが大きくなる。

ややこしい、難しいお客さんに生殺与奪権を握られている状態からいかに脱却していくのか、どうやって安定した売上や利益を得ていくための仕組みをつくっていくのか、そんなことを考えたり、そこを形にしていける人ってのは、ある程度の権限が必要だし、リーダーシップが必要だ。

現場の1担当者がそんなことできるかというと、なかなか難しい。そういう難しい領域、より会社的な視点や俯瞰的な視点にたった最適化に自身の能力や時間を注ぎ込むこと

これが結果的には、辛く厳しいクライアントの仕事に振り回され、逃れることができなくなっているよな状況を打開していくことになり、スタッフに良い職場や仕事を提供することができるようになる。

今、同じような話を現場のリーダーやマネジャーしてたりしていて、ふと、自分もそうだったということに気づいたのだ。

リーダーやマネジャーにも役割やら権限やら色々あるんだろけど、忘れてはならないことは、1案件や1つのクライアントの売上やら利益やらということに固執しすぎないで、もっと俯瞰的な視点でより大きなスループットを達成するにはどうすべきか、もっと大きい成果のためにどんな環境や状況を作っていくべきなのかというところに視点を持たなければならないということだ。

これは自戒の意味も込めてしっかりと胸に刻み込んでおこう。

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