井筒さんの総決算?「ヒーローショー」

B0040X2XSK 井筒監督の総決算らしい。「ヒーローショー」を観た。うーむ。個人的にはいまいち。前評判では最近流行りの本当の「痛さ」が伝わってこない不良モノや暴力描写へアンチテーゼとして、徹底した暴力を描く、救いようのない暴力を描くのだ、というようなことが喧伝されていたので、ちょっと期待していたのだ。
観てるだけで生地的に苦痛になるような気持ち悪さや痛さみたいなものがどう描かれるのか、「わらの犬」を愛する井筒さんだからこそ、「わらの犬」を観た後の、あの言いようのない嫌悪感というか生理的な疲労みたいなものを表現してくれるのではないかと期待していた。
しかし、観てみると、あれ?あれ?という感じ。確かに暴力は描かれてる。その暴力は凄惨だ。行き過ぎた暴力によって人が死んでしまう。でも、それはどうも「意味なく暴走して歯止めがきかなくなる若者」を表現するための単なる記号としての暴力のにしか思えないのだ。あまりにも執拗に「本当の痛さ」を描こうとするあまりに、逆に、全然「痛く」見えなくなってしまったのではないか。また、少し青春群像的な要素までも盛り込もうとしたのかもしれないが、これもどっちつかずで中途半端な印象が否めない。どっちにも振り切れてない。

B00005HNHO暴力の「痛さ」という意味でも、あるいは青春群像劇としても、ボクとしては「岸和田少年愚連隊」の方が数倍も好きだ。「岸和田少年愚連隊」で描かれる暴力は、ある意味、爽やかだし、漫画ちっくではあるけれど、でも、彼らの方が生きることに必死だ。必死な様子は本当にいきいきと描かれてる。生きることに必死であるからこそ、殴られれば痛いし、痛いことからは必死で逃げようとする。そして、ずっと逃げっぱなしでは男が上がらないので、その後どうなろうが、何度でもやり返すし、その馬鹿げた日常の方がよほど「痛み」の真実味があるように思えるのだ。

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