岩井俊二「Love Letter」
フジテレビ系で岩井俊二の「Love Letter」を放送していたので、久しぶりに見た。
「Love Letter」は劇場でも3回観て、さらにビデオでも10回ぐらいは観ている。
絵コンテやサントラも持っていたりする。(岩井俊二のTVドラマや、映画に音楽を提供しているREMEDIOSの音楽はほんといい。)
一時期、熱烈な岩井俊二ファンだったのだ。
岩井俊二の映像をはじめて見たのは、関西だけで深夜放送してた「ドラマDOS」で放送された「見知らぬ我が子」という短編ドラマだった。これはかなり衝撃的だった。「ドラマDOS」は、新人映像作家の短編ドラマを放送する番組で好きだったのだけど、他の作品とは明らかにレベルが違う、その作品にあー、すごい新人だなぁと感じたことを覚えている。
その次に観たのは「夏至物語」だ。「夏至物語」を観て、「見知らぬわが子」の監督と同じということはスグに気づいた。やはり映像のセンスはずば抜けていた。
この頃から、ボクは岩井俊二という名前を覚え、徐々にその映像に興味を抱きはじめる。調べてみると、プロモーションビデオやCMもいろいろと手掛けているといことでそれらを手に入れた。
この頃、東京では「La Cuisine」という枠で「オムレツ」や「ゴーストスープ」などが放送されていたけれど、ボクは京都にいたためチェックできていなかった。
ボクの中で岩井俊二が決定的になったのは、「ifもしも、打上げ花火 上から見るか? 横から見るか?」を観た時。これにはほんとやられたと思った。ボクは8mm映画を撮っていたのだけれど、いつか相米監督の「台風クラブ」のような映画を小学生を主人公にして撮るってのが夢だった。「打上げ花火」はまさに小学生版「台風クラブ」。ボクがやりたいなぁと思っていた世界そのものだったのだ。
TVドラマとは思えない映像の美しさ、細かいカット割り、実に自然な子供達の表情、会話。人気のない病院の受付で「すいません」と言うときに声が裏返ってしまうユウスケ。夜の小学校、プールに忍び込んだ「ナズナ」が言う「墨守みたい」というぶっきらぼうのセリフ。「もうすぐ二学期だね。楽しみだね」と、もう会えないことをわかりつつ笑顔を見せるナズナ..
あげていけばキリがないぐらい好きなシーンがある。
「ifもしも」という番組が定めたルールをほとんど無視するかのようなストーリー展開も魅力的だ。
「打ち上げ花火」で完全に岩井俊二の虜にされてしまった僕は、本格的に岩井俊二の手掛けた映像の収集を始めた。「La Cuisine」で放送されたものもネットなどで知り合ったファンを通じてダビングしてもらったり、「ドラマDOS」で放送されて見逃していた「殺しに来た男」も手に入れた。手掛けたプロモーションビデオや、TVCMもほぼすべて持っている。
久しぶりに見た「Love Letter」もやっぱりよかった。泣ける。
愛するということは、その人の固有性を愛することだ。固有性はいくら言葉を重ねても決して「つかめない」。「趣味が合うから」「顔がタイプだから」「優しいから」… 言葉でどれだけ説明したところで、その人の固有性・此性を捉えることはできない。愛するということは、その人以外の何ものでもない、取替えのきかない此性を愛することだ。
柏原崇演ずる藤井樹が、同姓同名の藤井樹の名前を図書カードに書いていく。これこそ愛そのものじゃないだろうか。「名前=固有名詞」は、「此性」そのものだからだ。しかし、「藤井樹」は二人いる。自分とまったく同じ名前を持った人を愛してしまった幸運と不幸。
藤井樹(女)と渡辺博子(共に中山美穂)
と藤井樹(男)と藤井樹(女)(同姓同名)
という二つのシンメトリー。渡辺博子⇔藤井樹(男)の恋は、藤井樹(男)の「死」によって挫折し、藤井樹(男)→藤井樹(女)への恋も、「同姓同名」という「不幸」によって挫折する。ある意味、藤井樹(男)は、二度も「同じ女性」への恋に挫折しているのだ。
映画では、中山美穂演じる藤井樹(女)が過去を振り返えることで、自分のなかでは不幸以外のなにものでもなかった同姓同名の藤井樹(男)との思い出を再構築していく。そう。時を経てようやく藤井樹(男)の恋は、藤井樹(女)に届いたのだ。しかし、すでにその時、藤井樹(男)はこの世にいない。なんという悲しさだろう。
(こういう見方をすると、渡辺博子は、藤井樹(女)に似ていたからだけで愛されていた不幸な女性のようになってしまうなぁ….)
「Love Letter」は劇場でも3回観て、さらにビデオでも10回ぐらいは観ている。
絵コンテやサントラも持っていたりする。(岩井俊二のTVドラマや、映画に音楽を提供しているREMEDIOSの音楽はほんといい。)
一時期、熱烈な岩井俊二ファンだったのだ。
岩井俊二の映像をはじめて見たのは、関西だけで深夜放送してた「ドラマDOS」で放送された「見知らぬ我が子」という短編ドラマだった。これはかなり衝撃的だった。「ドラマDOS」は、新人映像作家の短編ドラマを放送する番組で好きだったのだけど、他の作品とは明らかにレベルが違う、その作品にあー、すごい新人だなぁと感じたことを覚えている。
その次に観たのは「夏至物語」だ。「夏至物語」を観て、「見知らぬわが子」の監督と同じということはスグに気づいた。やはり映像のセンスはずば抜けていた。
この頃から、ボクは岩井俊二という名前を覚え、徐々にその映像に興味を抱きはじめる。調べてみると、プロモーションビデオやCMもいろいろと手掛けているといことでそれらを手に入れた。
この頃、東京では「La Cuisine」という枠で「オムレツ」や「ゴーストスープ」などが放送されていたけれど、ボクは京都にいたためチェックできていなかった。
ボクの中で岩井俊二が決定的になったのは、「ifもしも、打上げ花火 上から見るか? 横から見るか?」を観た時。これにはほんとやられたと思った。ボクは8mm映画を撮っていたのだけれど、いつか相米監督の「台風クラブ」のような映画を小学生を主人公にして撮るってのが夢だった。「打上げ花火」はまさに小学生版「台風クラブ」。ボクがやりたいなぁと思っていた世界そのものだったのだ。
TVドラマとは思えない映像の美しさ、細かいカット割り、実に自然な子供達の表情、会話。人気のない病院の受付で「すいません」と言うときに声が裏返ってしまうユウスケ。夜の小学校、プールに忍び込んだ「ナズナ」が言う「墨守みたい」というぶっきらぼうのセリフ。「もうすぐ二学期だね。楽しみだね」と、もう会えないことをわかりつつ笑顔を見せるナズナ..
あげていけばキリがないぐらい好きなシーンがある。
「ifもしも」という番組が定めたルールをほとんど無視するかのようなストーリー展開も魅力的だ。
「打ち上げ花火」で完全に岩井俊二の虜にされてしまった僕は、本格的に岩井俊二の手掛けた映像の収集を始めた。「La Cuisine」で放送されたものもネットなどで知り合ったファンを通じてダビングしてもらったり、「ドラマDOS」で放送されて見逃していた「殺しに来た男」も手に入れた。手掛けたプロモーションビデオや、TVCMもほぼすべて持っている。
久しぶりに見た「Love Letter」もやっぱりよかった。泣ける。
愛するということは、その人の固有性を愛することだ。固有性はいくら言葉を重ねても決して「つかめない」。「趣味が合うから」「顔がタイプだから」「優しいから」… 言葉でどれだけ説明したところで、その人の固有性・此性を捉えることはできない。愛するということは、その人以外の何ものでもない、取替えのきかない此性を愛することだ。
柏原崇演ずる藤井樹が、同姓同名の藤井樹の名前を図書カードに書いていく。これこそ愛そのものじゃないだろうか。「名前=固有名詞」は、「此性」そのものだからだ。しかし、「藤井樹」は二人いる。自分とまったく同じ名前を持った人を愛してしまった幸運と不幸。
藤井樹(女)と渡辺博子(共に中山美穂)
と藤井樹(男)と藤井樹(女)(同姓同名)
という二つのシンメトリー。渡辺博子⇔藤井樹(男)の恋は、藤井樹(男)の「死」によって挫折し、藤井樹(男)→藤井樹(女)への恋も、「同姓同名」という「不幸」によって挫折する。ある意味、藤井樹(男)は、二度も「同じ女性」への恋に挫折しているのだ。
映画では、中山美穂演じる藤井樹(女)が過去を振り返えることで、自分のなかでは不幸以外のなにものでもなかった同姓同名の藤井樹(男)との思い出を再構築していく。そう。時を経てようやく藤井樹(男)の恋は、藤井樹(女)に届いたのだ。しかし、すでにその時、藤井樹(男)はこの世にいない。なんという悲しさだろう。
(こういう見方をすると、渡辺博子は、藤井樹(女)に似ていたからだけで愛されていた不幸な女性のようになってしまうなぁ….)
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コメント
Love Letter / 岩井俊二
今日は朝まで遊んでたので、夕方まで寝てて、「鋼の錬金術師」あたりからだらだらとテレビを見てたら、「Love Letter」が始まった。何回か観たけど好きな映画なので、いろいろ細かいコトをしながらだったけど観てた。 「Love Letter」は岩井俊二監督、中山美穂主演の映画...
岩井俊二、よいですね。
今度の新作映画はどうなんでしょう?
個人的には松たか子の出てた映画(タイトルど忘れ)が好きでした。
「リリィ・シュシュのすべて」は本から入りましたが、衝撃的でした。
映像の方はちょっとしんどかったですけど。
「四月物語」ですね。あれもよかったなぁ。ちょうど東京に引越しした頃に見たんで、気分的にもはまってしまって、繰り返し何度も見ました。
新作も楽しみですね。
「リリィ・シュシュ」はボク個人としてはあまり好きではないんです。なんか胸が苦しくなる。小説の方もそんな感じですか?
そうだ!四月物語。
雨の日の本屋、櫻散る街の風景。匂いまで伝わってきそうな岩井さん独特の映像がよかったな。
リリィ・シュシュ、本は2部構成で出来上がっていて、映画になったのは後半部分。だったと思う。
前半はネット掲示板をそのまま載せた感じで話は進行してたと思います。
バーチャルだとどうしてああも陰湿になるのか・・。でも、そこが面白い。
興味があれば一度読んでみてください。
う、うらやましい。。。
私も岩井俊二ものは収集していますが
さすがに全部は難しいです。
特にCMなんて。。。プロモは東京少年とreimyまででそこから先がなかなかみつからないです。
連絡いただかれば、幸いです。さ岩井です、なんちて。
ちなみに「LOVE LETTER」の民放オンエアの編集はひどかった。そう思いませんか?
>シュウさん
プロモはサザンのものや平松絵里ムーンライダーズ、CMだと江口洋介がでてた日産のルキノ、Panasonic Let's Noteとかもやってました。特に岩井俊二らしいかというとそういうわけでもないですが。
民放の編集は確かにひどかったですね。