起業家2.0

WEB2.0時代を代表する?いくつかのベンチャー企業を起業家にフォーカスをあてて、起業からスタートアップ、そして現在にいたるまでの軌跡をつづっている。
紹介されている起業家さんの何人かにはお会いさせていただいたこともあるし、一緒に仕事をしたこともあるけれども、たしかに著者も言うように、楽天の三木谷さんや、livedoorの堀江さん、サイバーエージェントの藤田さんといった人たちが持っていた熱気というかオーラみたいなものとはまったく違う何かをもってる人が多いような気がする。

なんというか、無理していないというか、第一世代ネットベンチャーが自ら道を切り開いてきた開拓者であり、貪欲なまでの拡大志向や成長への強い意思をあらわにするのに対して、僕が知ってる本書の起業家の人たちは、あまり背伸びをしていない。身の丈にあったビジネス、サービスを展開し、それほど無理をしていない。自分たちのしたいことをしっかりと地に足をつけてやっている、そんなイメージだ。

しかし、じゃぁ好きなことをやってビジネスも順調で、何の苦労もなく成長してるのか、といえば決してそんなことはない。本書を読めば、その裏側を垣間見ることができる。たとえば、バイマなどのユニークなビジネスモデルを手がけているエニグモ。友達や親類から出資を募り、ようやく三千万円を集めて、初期システムの開発を発注していのだが、サービスオープン予定の2週間前になり発注先から丸投げしていた下請けの開発会社の社長が夜逃げしてしまい、開発がストップしてしまう。しかもシステムはなんと予定の1/10も完成していない状況。

さすがにこれほどひどい状況は経験したことはないけれども、似たようなことはあったので、その時の彼らの絶望感や悲しさは多少は理解できる。しかし、相当なショックだろう。しかし、彼らはなんとか発注金額に若干上乗せした金額を回収して、再度このお金で別の会社にゼロから発注を依頼して、半年遅れでサービスのスタートにこぎつけている。単に悲観にくれ、絶望に行動をとめるのではなく、なんとしてでもやり遂げるという強い意思。苦境を跳ね返すたくましさ。いわゆる華やかで軽やかなWEB2.0企業のイメージとはかけ離れた世界がここには描かれている。
クチコミ旅行サイトの最大手「フォートラベル」は、当初の事業資金を節約するために朝から晩までマクドナルドで事業プランの開発、サイト設計、開発などを行った。

今、成功している姿を見て、そして表側から見えるステップアップの様だけを見て、WEB2.0企業ってなんかクールでかっこいいな、ガツガツしてなくてスマートだな、と思うのはたぶん間違いなんだろう。当たり前だが、企業には他社との競争があり、つねに直面する人の問題、資金繰りの問題がある。理想と現実のギャップが必ずつきまとっていくるはずなのだ。

自分自身も少し忘れかけつつあった起業当時の思いとか、その当時のメンバーと乗り越えてきたさまざまな問題とか苦しさとかを思い起こさせてくれる一冊だった。今の苦しさとかってのは、当時とはぜんぜんレベルが違う、むしろかなり贅沢な苦しさだ。それは経営者やマネジャーにとっては、むしろ幸せなことなのだと思わなければならない。それは日々成長していること証だからだ。

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