間違いブレスト

ブレスト

最近ある会社の方から「ブレストしたいんで来てください」と呼ばれることが多い。呼ばれることはありがたいし嬉しいのだけれど、そこで行われる「ブレスト」がどう考えても「ブレスト」ではないので、そこがちょっと哀しい。

ブレストとは言わずもがな「ブレーン・ストーミング」の略。ぐぐってもらえればいくらでも出てくるが、Ability Gardenこちらのページを読むと、広告代理店BBDO社の副社長だったアレックス・F・オズボーンが考え出した技法だそうな。特定の問題に対する解決策やアイディアをグループディスカッションによって生み出す方法であり、ページにもあるようにいちおう実施の手順が定められている。

この実施手順が「すべて」かといわれると他にも応用はあるだろうし、やりかたは各自で工夫すれば良いと思うのだが、この一線を越えたらブレストでもなんでもなくなるんじゃないかというところがある。それは「批判厳禁」というルールだ。
ブレストはそもそも質よりまず量を重視する。そのため参加者がどんどん意見を出すことで、たとえその意見が多少実現性が薄かったり、違和感があるようなものでも、逆にそういう意見を足がかりとして、別のアイディアにつなげたり、便乗してより膨らませたりすることが大事とされる。

しかし、ここ最近呼ばれるそのブレストと称される会議というのは、まったくこのルールが守られない。というか、普通の会議を「ブレスト」と言ってるだけなのだ。

その会議を司るリーダーの方は、ほとんどの意見を「そりゃ駄目だな」で切り捨ててしまう。そしてたいていは会議前にすでにその人の中では結論が出ていて、その意見を出したらそこで終わりなのだ。その意見に便乗するようなアイディアを出すと、「そりゃやりすぎだろ」、別方面から攻めても「いや、そりゃないな、ありえない」。結局、会議に参加する誰一人の意見もアイディアとして扱われることなく、そのままリーダーが出した意見で終息を向かえる。で、最後に、「じゃぁこのアイディアをベースにもうちょい捻りいれて企画書つくっといてよ」となる。が、実はこの「捻りをいれて」というのも曲者で、捻りを入れると、「なにこれ?」といわれることが多い。結局、修正修正の嵐で、気づくと、最初にこの人が言ったことそのまんまの提案書ができあがるだけだったりする。そのクセ、後で「結局さぁ、企画書、俺が指示したまんまじゃん」みたいなこといわれたりする。ちょっと呆れる。

それでこのリーダーの出す案が優れたものなら文句も言わないのだが、あまりにもひどい。企画でもなんでもないのだ。「”先端性”を表現するために、Flashなどを用いた動きのあるビジュアル」なんて、何年前の提案だよw そんな提案してるから駄目なんだろうと思うだけど。こちらが出す案、意見はすべて否定のでどうしようもない。

今は我慢の時で、もう少ししたら真剣に面と向かって、あなたは間違っています、と言うつもりだが、まだ付き合いが浅いので今は様子見だ。

ちなみに、このオズボーンだけれども、「ブレーン・ストーミング」以外では、オズボーンのチェックリストが有名。うちの会社のToolCardでもオズボーンのチェックリストにプラスαしたものがある。オズボーンのチェックリストとは、何かしらアイディアを考える際の法則で、「拡大してみたら」「縮小してみたら」「入れ替えてみたら」「結合してみたら」「真似てみたら」「代用してみたら」というような9つの視点のこと。考えをこの9つの視点からもう一度考え直すと、意外な発見ができたりして、新しいアイディアの発見に結びついたりする。
この状況を打破するためのアイディアをこのチェックリストをつかって考えてみよう。そっか、こちらがブレスト開催役を演じてこの人を呼べばいいんだ…(入れ替えてみたら) ボクのほうがファシリテーター役回りを演じればそれで気づきを与えられるかもしれん。なるほど。おそるべきオズボーンのチェックリスト。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク

コメント

  1. frank juso より:

    ゲゲゲ、いるんですね、こういう人が。というよりフツーですかね。

    IDEOというプロダクト・デザインの会社のことを書いた「発想する会社!」(早川書房)も、ブレストにまるまる一章を当てている(第4章「究極のブレインストーミング」)。タイトルのわりに中身は平凡、というかBBDO流ブレストの域をでておらないのだが、わざわざ章立てしているところをみると、本場アメリカでも結局、ブレストてまったく理解されてないのね。ついでですから一部紹介させてもらいます。

    「ブレインストーミングを台無しにする六つの落とし穴」
    1.上司が最初に発言する
    2.全員にかならず順番が回ってくる
    3.エキスパート以外立ち入り禁止
    4.社外で行う
    5.ばかげたものを否定する
    6.すべてを書き留める
    ※アマゾンが混んでいてリンク貼れませんでした。

  2. ゆで麺 より:

    いつもありがとうございます。

    「六つの落とし穴」のほとんどに該当してしまいますw
    「発想する会社」は私も読みました。IDEOぐらい徹底している会社も少ないのでしょうね。IDEOぐらいになると、全員がブレストの達人みたいな感じなんでしょうけど。

    (正直、IDEOのような会社が充分にビジネス面でも成功しているというのはちょっと驚きでした)

  3. 調査ウォッチャー より:

    「発想する会社!」の本、私も読みました。
    普通のことに見えても、ああいうブレストをするのは結構難しいのだよな・・・と思います。

    個人的には、3Mの「しくじったプロジェクトを再検討」するプロセスには、
    「これが本当の意味でのブレストではないだろうか」
    と思います。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です