ある広告人の告白 デイヴィッド・オグルヴィ


“ある広告人の告白[新版]” (デイヴィッド・オグルヴィ)

広告界の巨人、デイビッド・オグルヴィ。この業界にいると、この本のことはちょくちょくは耳にする。一度は読んでみたいと思っていたところ、ようやく「新版」として再販されたので、さっそく手にしてみた。

1964年に出版されたとは思えないくらい、ここに書かれてあることは今でも通用することが多い。特に、インターネットの発達でダイレクトコミュニケーションを手軽に手がけられるようになった今、科学的なリサーチに基づき、常に「売れる」広告をつきつめた彼の一言一言は、当時よりもずっとリアルに迎え入れられるのではないか。

昨今はやった神田さん系のダイレクトマーケティングノウハウの大部分がすでに本書につまっている。

オグルヴィは「偉大な広告」をこう定義する。

よい広告とは「広告自体に関心を集めることなく」商品を売る広告である(中略)。見た人に「なんて気の利いた広告だろう」と言われるのではなく、「これは知らなかった。この商品を試しみなくちゃ」と言われるような広告だ。

広告はあくまでも商品やサービスに注目を集め、関心、興味を呼び起こすためのものだ。別のところでオグルヴィは賞をとるような広告が良い広告というわけではないというようなことも言ってる。今の広告業界では「賞」が一つの権威になっていたり、「クリエイティブ」という言葉が、アイデンティティ強化の合い言葉のようになってたりする向きもあるが、そんな状況を予見しているかのようでもある。

これは「ウェブサイト」でも同じようなことが言えるだろう。「ウェブサイト」のインターフェイスやデザインや機能面ばかりが前景化するものではなく、そのウェブサイトを通じて、商品やサービス、会社の魅力が伝わる、ボクらがつくりたいウェブサイトというのはそういうものだ。「評価者」が見ても、なんの面白いとこもない。でも、実際に利用者が、課題をかかえて使うと、なんの疑問やひっかかりもなく、その課題を解決できる。そんなウェブサイトをつくりたいと思っている。

さて、本書内には「効果的なヘッドラインの書き方」から「人を惹き付けるイラストレート法」まで、広告制作における作法、ルールなどが満載で、どれもこれも忘れずにメモしておきたいことばかりなのだが、すべては書ききれないのでこれだけを取り上げておこうと思う。



成功する「広告キャンペーン」のために守らなければいけない11の掟というものだ。

  1. 重要なのは、「どう」言うかより「何を」言うかだ
  2. 素晴らしいアイデアを中心に構築されていないキャンペーンは失敗する
  3. 真実を述べよ
  4. 人を退屈させておいて、ものを買わせることはできない
  5. 礼儀をわきまえること、しかしおどけてはいけない
  6. 現代的な広告を作れ
  7. 委員会が広告を批判するのはかまわないが、広告を作らせてはいけない
  8. 運よくよい広告が作れたら、効果が薄れるまで繰り返せ
  9. 家族に読ませたくないような広告は絶対に書くな
  10. イメージとブランド
  11. 模倣者になるな

どの言葉もストレートに広告マンとしての矜持が伝わってくる一方、実は広告制作において非常に大事なことがコンパクトにつまっているコピーだ。特に、この1。「何を」言うかが大事という、この一言は重い。広告の形式や表現にとらわれる前に、まず「何を」言うべきか、「何を」伝えなければならないか、「何を」消費者に約束するのか。これもウェブ構築だって同じだ。どんな技術や表現や構造を採用するかというよりもまず、「何を」言うか、そこをしっかり考えなければならない。

あ。そうそう。ワンダーマンの本も新版として再販になってるようなので、こちらもあわせて読むと良いかもしれない。こちらも名著。ただ、こちらはより自伝著的側面が強いけど。ただ、ここで描かれた広告手法や考え方も今では定番になったものばかり。そのルーツを知ることができる。もちろんそれは今でも充分に通用する手法が多い。


ワンダーマンの「売る広告」” (レスター・ワンダーマン)

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