言葉の力、営業が弱い?

市況などからついつい弱気な発言が口をつく。
あるいは、この市場はもう限界、厳しい、難しいみたいに勝手に自分で線を引く。

これは良くない。もちろん、何の根拠もなくそんなことを言ってるわけでもないし、どんな状況に立たされようともノー天気に「大丈夫」で突き進むのが良い結果を生むわけでもないだろう。ただ、言葉ってのは、そのことを口にしていると、結構、その通りになっていったりする。だいたいそういう方向に向かっていくものだ。この市場はもう限界だ、と言い続ければ、多分、ボクらではもう「限界」が訪れる。仮に、それが単なる思い込みにすぎず、他はまだまだ成長していたとしてもだ。自己暗示みたいなものもあるのかもしれないけど、自己暗示だって大事だ。

「お前には才能がない。」と言われ続けて育てられるのと、「お前にはすごい才能がある」と言われて育てられるのでは、仮に同じポテンシャルを持ってる人でも、全然違う才能を開花することになるであろうことは容易に想像がつく。たとえ自己暗示だろうが、可能性を広げる言葉を使うほうがいいに決まってるのだ。

先週、ある会社の社長がこんなことを言っていた。その会社は今やFLASHを活用した大掛かりな仕掛けを盛り込んだサイト構築ではかなりの実績がある会社なのだが、つい数年前まではFLASHなどは得意でもなんでもなかった。「どうやってFLASH強くしたんですか?」と訊くと、「FLASHできる奴がたまたま一人入ったので、ウェブサイトでもお客さんにも『FLASH得意ですよ』ってのを言い続けてた。そしたらそういう仕事が増えてきて、いつの間にかフラッシャーも増えた」と答えてくれた。「言い続ければ、その方向に行くもんですよ」と、その社長は軽く言っていたが、自分達の例に照らし出してみても、その社長が言ったことはあながちトンでもな考え方ではないんではないかと思えた。

うちの会社ではとにかく「営業が弱い」っのは口癖みたいになってて、うちが広告代理店を中心とした営業を組み立てることの理由によく用いられる。「営業が弱いから、代理店に活路を見出した」というようなロジックだ。(あるいは、他が代理店仕事を嫌うからこそ、代理店に入り込んだ、というような「人の嫌がることを積極的にやることで活路を見出したのだ」ロジックのいずれかが使われる) この「営業が弱い」って言葉は、ほんとによく使われる。最初に使ったのは社長だが(別に社長に責任を負わせようとか、そういう意図ではない)、社長が言うから、当然、それに釣られて役員陣も普通に使う。もちろんボクも使う。多分、みんなが使っているので、大方の人がそういうものだと思ってしまっている。

しかし、じゃぁほんとに「営業が弱い」のだろうか。客観的に見て、やはり営業が弱い、営業がボトルネックだとしてもだ、「営業が弱い」を連呼し続けたところで、メリットがあるわけでもない。どうせ連呼するならもっと前向きな言葉を使うべきだろう。

実際、営業が弱いのかどうかというと、そもそも営業が強いってのはどういう状況なのかがわからない。特にボクらのような業態で、飛び込み営業で新規客を次々と開拓していくってイメージはない。そういう会社もあるのかもしれないけど、あんまり効率が良いようにも思えない。ある程度の規模のソリューションビジネスにおいける営業ってのは、業界や市場でのセミナーや展示会の活用や紹介、広告といったものが殆どではないか。
入り口になるよな商品をつくって、まず安い価格から品質やサービスレベルを知ってもらって、長期的な付き合いに繋げていったり。営業という言葉が意味するさまざまな活動をボクらがどこまで真剣に取り組んだか?

今までそういう活動をきちんとやってきたのかというと、「きちんと」やってきたとはどうも言い難い。「営業が弱い」という言葉の裏返しは、結局、こういう活動をきちんとできないということなんじゃないか。「営業が弱い」と連呼するからこそ、そういう活動が会社内ではちょっと浮いた活動になってしまうということもあるのではないか。そんなことを口に出しては言わないが、潜在的にはそんなことをやっても仕事とれるのかな… という気分を作り出しているのではないか。

代理店の仕事をやらないとか、代理店しかしないとか、そういう極端な状況を設定したいわけでもなく、単純に、「営業が弱いから代理店」という因果関係というか、ストーリーの立て方が、そもそも代理店への依存度を高めてしまい、結果的に代理店経由の案件から抜け出せなくさせてしまうのではないかということだ。代理店依存が高まれば高まるほど、目指しているポートフォリオとは乖離していく。誤解されそうなので断っておくと、代理店の仕事が嫌だとかというわけではない。単純にある特定のお客さんに会社の生命線が握られてしまうのは、経営上良くないだろうというだけのことだ。それは代理店経由だろうが、直取引のお客さんだろうが同じだ。

営業力ってのは会社の生命線みたいなものではないかと思う。そもそも新規客を作っていけない会社は滅びる。会社の存在を支えるもっとも大きい要素の1つだ。それが弱いから、他者に頼る、御願いする、ってのは、よくよく考えてみると、ちょっと変ではないか。もちろん、メーカーなどはある種、販売力のある販売店やディーラーやら、フランチャイズやらに支えられていたりもするだろうし、この業界に限らずいろなところで「営業」を外部に依存せずには生きられない業態、業界はいくらでもあるだろう。

が、そもそも営業可能でもあるのに、その選択肢に対しては「弱い」からということで積極的には取り組まずに、「頼る」という生き方にひたすら傾倒していくというのはどうだろう。それは少し安易かもしれないなぁと思えてきたわけだ。

まぁ、見方を変えれば、代理店に入り込みたくても入り込めないところもあるわけで、そういうところから見ると、うちは「営業巧者」に見えるところもあるのかもしれない。代理店は代理店特有の営業方法というか作法というかそういうのがやはりあるわけで、それはそれでやはりノウハウはいるんだろう。

そもそも「営業が弱い」って言葉を口にするのは辞めよう。この言葉を使ってる限り、多分強くなることはない。もっと営業してくには、営業を強くするには何をしていけばいいのかということを考えたほうがいいだろうし、どうせ口にするなら、どこが強いから、と前向きな理由をつけて語るほうがいい。「マーケティングが得意だから、代理店さんと一緒にやる」みたいなね。(これも本当にそうだと思うし)

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