ザ・チョイス―複雑さに惑わされるな!

ゴールドラット博士の5年ぶりの最新刊らしい。そんなに前のことだったかなと思うが。
「ザ・ゴール」を読んだ衝撃以降、すべての作品を読んでいる。ゴールドラット博士の本は、まさに「博士」という肩書きにふさわしい明晰さや論理性を備えている。どんな複雑な問題も独自の理論であっさり解決してしまう。

ザ・チョイス―複雑さに惑わされるな! (単行本)
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今回のテーマはサブタイトルの「複雑さに惑わされるな」に集約されている。企業活動であろうが、それが人間関係の問題であろうが、すべてを複雑に考えることで、私たちは大きな過ちを置かしてしまいがちだ。
本書内で博士は「ものごとは、そもそもシンプルである」というメッセージを繰り返す。どのような対立も解消は可能であり、どのような関係においてもウィン・ウィンを実現できるのだと言う。

私たちが何か問題に直面した際、その問題の解決を邪魔するのは以下の3つの要素だと博士は言う。

1)現実が複雑であること考えること
2)対立は当たり前で仕方がないことだと考えること
3)人は問題を相手のせいにしたがる

この3つが人の明晰な思考を阻害するのだ。

1)人はものごとを複雑に考えようとする傾向がある。複雑に考えようとするからそれが心理的な障壁となる。
ものごとは実はシンプルなんだという前提にたつと、何かうまくいかないこと複雑だと思うものがあるとすれば、それをまず何か「原因」に起因していると考える。その原因はたいていの場合1つ、根本的な原因が1つある。そしてそれらは好ましくない現象だから、根本的な原因は、受け入れることのできる妥協点を持てない対立だと考える。好ましくない状況は、満足のいかない妥協の結果として起こると考える。何かの状況を改善しようとする時は、小さな問題ばかり対象にしていてはダメ。もっと大きな問題に取り組まなければならない。このあたりは「チェンジ・ザ・ルール」などでも描かれた概念に繫がる。

2)問題は「根本的な対立の結果」として起こっている。この対立は解消・解決が可能である。
大きさの決まった1つのケーキを分け合う場合に、限られたケーキを取り合うのではなく、ケーキそのものの大きさを拡大することに集中すれば双方が勝者になれる。つまり、双方が勝者になれる解決策を探すのだ。
「いかなる人と人の関係にも調和は存在する」 いかなる関係においても双方の利益につながる変化が存在する、という前提にたつことが重要。

3)私たちは対立する状況に直面した時、相手を責める習性を築いている。対立構造をウィン・ルーズのような妥協点で解決しようとした場合、人はどうしても自分を守ろうとしてしまい、相手に対して寛大になれない。満足いかない結果に自分を追い込んだ相手を責める。

これらの思考を支えるには「明晰」さが必要である。明晰な思考ができるようになるには循環ロジック(トートロジー)を避けること。結果とそれに対する原因が循環していると、それが本当の原因かどうかはっきりと確認できない。結果の原因をxその根拠をはっきりと示すこと。そのためには別の結果が必要である。別の結果から、その原因を確認できれば袋小路から抜け出せ、根本的な原因を探すことができる。
例)「市場の嗜好が変わったから、この商品の売上げは減った」→「市場の嗜好が変わった」ということだけが原因ではない。「この商品の売上げが減った分、代替え商品の売上げが増えた」という別の結果が加わると、「市場の嗜好が変わった」という理由の有効性は上がる。

組織やビジネス問題に限らず、ここで提唱された前提、思考プロセスはあらゆる関係に応用が可能だろう。
しかし、個人的には今までの作品に較べて、本書は圧倒的に難しく感じた。具体的な事例なども取り入れてわかりやすく説明してくれてはいるのだが、それを身近な問題で引き受けて考えてみるとどうもうまくいかない。適応範囲が広いし、自分自身が問題を捉える場合に使えるので、一番手軽に「使える」のだろうが、一方で慣れ親しんだ固定観念、前提なのでそこを払拭するは相当難しいのだろうと思う。


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コメント

  1. あなたの職場では心配菌が繁殖していませんか?...

     働いていて、仕事での心配事が全くない、という人はおそらくいないのではないかと思...

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